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【離婚】

2026年4月 9日 (木)

【離婚】 財産分与の除斥期間は、2年? 5年?

 改正民法が4月1日から施行されて、いろいろと慌ただしい日が続いております。

 財産分与についての条文も改正されました。

第768条
①協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
②前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して③協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から5年を経過したときは、この限りでない。
前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

 質問があるのは、改正法施行前の離婚を理由とする財産分与の除斥期間も、5年になったの?というものです。

 新民法附則4条に、施行日前に離婚した場合における財産分与の請求期間については、なお従前の例によるとして現行民法によるものとしております。

 従って、施行日より前に離婚した場合の財産分与の請求期間は離婚の時から2年以内であり、施行日以後に離婚した場合の財産分与の請求期間は離婚の時から5年以内となります。

 これ間違いませんか? 

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(永納山城)

 

 

 

 

 

2026年4月 4日 (土)

【離婚】 必携実務家のための法律相談ハンドブック 

 新日本法規から令和8年1月に出版された必携実務家のための法律相談ハンドブックです。

 P9 配偶者が重い精神病にかかった場合、「令和6年改正においても妥当し、配偶者の生活が成り立ち得る具体的な対策を講じた上でなければ、配偶者が強度の精神病に罹患したことのみをもって離婚請求が認められることはない」 

 P9 配偶者が認知症と判断された場合、「当該配偶者の今後の療養や離婚後の生活などに鑑み、婚姻の継続を相当と認める事情があるときは、離婚請求は認められない」

 P17 離婚訴訟は、民事訴訟の一種ではあるものの、人事訴訟であるため通常の民事訴訟とは異なった取扱いがなされます。例えば、時機に遅れた攻撃防御方法の却下、自白の犠牲、自白などは適用されません。

 P27 過去の婚姻費用の考慮は、財産分与の一事情として考慮されるものであり、財産分与が可能であることを前提にしているため、清算すべき財産がない場合には、過去の婚姻費用のみを請求することはできず、この場合には、婚姻費用の分担を求めることなります。

 P39 抵当権が設定されている場合は、債権者の了承が得られない限り、移転登記を行うと期限の利益を喪失することになるため、債務の完済後に移転登記手続をする旨の合意をした上で、債務の完済前に、従前の所有者が第三者に当該不動産を売却などしないよう、仮登記をしておくことになります。

 P40 特有財産と共有財産が混在する場合

  ①基準時の額から婚姻時または内縁開始時の額を控除した額を対象財産とするもの

  ②混在によって特有財産が消滅したとして、全額を対象財産とするもの

 P46 財産分与の基準時  家庭内別居の場合 単身赴任の場合

 


 

2025年12月30日 (火)

【離婚】 家庭の法と裁判 59号 非行少年に関わる児童福祉の対応、改正家族法の要点と解説

 「家庭の法と裁判第59号」が送られてきました。

 特集は、非行少年に関わる児童福祉の対応として、児童相談所における非行相談対応について(触法少年の事例を中心に)は、①通告・送致、②受理、③調査、④診断、⑤判定・援助((1)指導、(2)児童福祉施設入所措置、里親等委託措置、(3)児童自立生活援助事業の実施、(4)家庭裁判所送致)、⑥家庭裁判所からの児童相談所長送致、⑦保護処分としての児童福祉施設入所、⑧一時保護、⑨児童の権利擁護の各段階の概要及び、具体的な事例でわかりやすい説明がされています。 

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(朝倉野々瀬古墳8号)
 特別企画は、親子交流をとりあげています。
 
 P41からの親子交流の主文例は参考になろうかと思います。
 家事関係裁判は、①共同相続人の一人が生命保険契約に基づき保険金受取人として受領した被相続人の死亡保険金について、民法903条の類推適用による特別受益に準じた持ち戻しを否定した事例(東京高裁令和6年8月29日決定)がとりあげられていました。
 
 「保険金額が遺産総額の少なくとも3分の1を超える状況にある事案においては、特段の事情を肯定する方向で検討をする必要が生じる」ようです。
 もう1つは、昭和33年に都立産院で発生した新生児の取り違え事件につき、当該産院を設置管理していた東京都に対し、分娩助産契約に基づく調査義務の履行として、取り違えによって生き別れの状態にある生物学上の親を調査してその経過及び結果を報告することを求めた原告(当時新生児)の請求を認容した事例です(東京地裁令和7年4月21日判決)。
 生物学上の親調査義務を分娩助産契約の付随的な義務として認めている驚きの裁判例でした。
 

2025年11月14日 (金)

【離婚】 離婚後も婚姻費用分担審判で定められた生活費を請求できるのでしょうか😅

 令和2年1月23日の最高裁決定によれば、婚姻費用分担審判の申立ての後に、当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権は消滅しないと判断しました。

「1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
 (1) 妻である抗告人は,平成30年5月,夫である相手方に対し,婚姻費用分担調停の申立てをした。
 (2) 抗告人と相手方との間では,平成30年7月,離婚の調停が成立した。同調停においては,財産分与に関する合意はされず,いわゆる清算条項も定められなかった。
 (3) 上記(1)の婚姻費用分担調停事件は,上記(2)の離婚調停成立の日と同日,不成立により終了したため,上記(1)の申立ての時に婚姻費用分担審判の申立て(以下「本件申立て」という。)があったものとみなされて(家事事件手続法272条4項),審判に移行した。


 2 原審は,要旨次のとおり判断し,抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は消滅したから,離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして,これを却下した。
 婚姻費用分担請求権は婚姻の存続を前提とするものであり,家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容等が形成されないうちに夫婦が離婚した場合には,将来に向かって婚姻費用の分担の内容等を形成することはもちろん,原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等につき婚姻費用の分担の内容等を形成することもできないというべきである。そして,当事者間で財産分与に関する合意がされず,清算条項も定められなかったときには,離婚により,婚姻費用分担請求権は消滅する。


 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。


 民法760条に基づく婚姻費用分担請求権は,夫婦の協議のほか,家事事件手続法別表第2の2の項所定の婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審判により,その具体的な分担額が形成決定されるものである(最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参照)。また,同条は,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかである。


 しかし,上記の場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当である。このことは,当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても,異なるものではない

 したがって,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない

 4 以上と異なる見解の下に,本件申立てを却下した原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口 厚)」

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(星ケ森)

 判例タイムズの解説は以下のとおりです。

「 解説
 (1) 婚姻費用分担の申立てに係る審判又は調停の係属中に離婚が成立した場合に,離婚成立時までの過去の婚姻費用分担請求権が当然に消滅するか否か,当該申立てが不適法となるか否かという論点については,従前から学説,下級審裁判例が分かれている状況にあった。その見解は大別して,①消滅説,②転化説,③存続説に分類できる。

 ①消滅説は,離婚後は,過去の婚姻費用分担請求権は消滅するという見解である(柏木賢吉「婚姻費用分担請求権の消滅時期-婚姻費用分担請求権は離婚によって消滅するか-」ジュリスト330号87頁〔東京家庭裁判所身分法研究会の多数意見〕,中川淳『改訂親族法逐条解説』〔日本加除出版,平成2年〕123頁等。この見解による裁判例として,神戸家審昭37.11.5家月15巻6号69頁,判タ152号71頁)。婚姻費用分担請求権は婚姻関係の存続を前提とするものであるから,具体的な請求権の形成前に夫婦が離婚し,婚姻関係が消滅したときには,婚姻費用分担請求権も消滅すること,離婚後の過去の婚姻費用は財産関係の清算である財産分与の中で解決すべきことなどを理由として挙げる。この見解によれば,離婚前から係属中の婚姻費用分担の審判等の申立ては,離婚により原則として不適法となるものと解される。

 ②転化説は,離婚後は,過去の婚姻費用分担請求権は消滅するが,財産分与請求権に性質が変化して存続するという見解である(昭和41年2月全国家事審判官会同家庭局見解・家事執務資料集(上)373頁,大津千明「離婚給付に関する実証的研究」司法研究報告書32輯1号119頁注6,島津一郎編『注釈民法(21)』〔有斐閣,昭和41年〕201頁〔島津一郎〕等。この見解によると解される裁判例として,大阪高決平11.2.22家月51巻7号64頁)。この見解に立った上,係属中の婚姻費用分担の審判等の申立ては,離婚後は財産分与の審判等の申立てに変更されたものとして扱うことができると解すれば,係属中の申立ては適法となる。

 ③存続説は,離婚後も,離婚時までの過去分の婚姻費用分担請求権は存続するとの見解である(柏木・前掲87頁〔東京家庭裁判所身分法研究会の少数意見〕,中山直子『判例先例 親族法-扶養-』〔日本加除出版,平成24年〕97頁等。この見解によると解される裁判例として,名古屋高決昭52.1.28判タ354号282頁等)。この見解によれば,係属中の婚姻費用分担の審判等の申立ては離婚後も当然適法ということになる。

 (2) 原決定は消滅説を採ったものと考えられるが,本決定は,この考え方を否定し,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚した場合について,存続説を採ることを明らかにした。本決定は,その理由として,①婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在しないこと,②家庭裁判所は離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解されることを挙げている。

 最大決昭40.6.30民集19巻4号1114頁,判タ178号210頁は,婚姻費用分担に関する処分は,婚姻費用の分担額を具体的に形成決定しその給付を命ずる裁判である旨を判示しており,婚姻費用分担請求権は,家庭裁判所の審判又は当事者間の協議によりその具体的な分担額が形成決定されるものである。しかし,民法760条は,夫婦は婚姻から生ずる費用を分担する旨のみを定め,その文言上,上記形成決定の時点で,婚姻関係という身分関係が存在することまで要件としておらず,具体的な分担額の形成決定前であっても,婚姻中に夫婦の一方が過当に婚姻費用を負担した場合に他方に対して婚姻費用の分担を請求する根拠となる実体法上の権利自体は,同条に基づき発生しているものと解される。上記①は,そのような,婚姻費用分担審判の申立て時において既に発生している実体法上の権利について,離婚したということ自体が権利消滅事由となるものとは解されない旨をいうものと考えられる。

 また,同最決は,婚姻費用分担の審判においては,将来の婚姻費用の分担額のみならず,審判時より過去に遡って婚姻費用分担額を形成することができる旨も判示しているところ,上記②は,これを前提としつつ,離婚して将来分の婚姻費用分担額の形成ができなくなった場合であっても,審判時よりも過去の時点の一部である,離婚時までの婚姻費用のみの分担額を形成決定することは当然に許される旨をいうものと解される。

 財産分与と婚姻費用分担請求権との関係については,最三小判昭53.11.14民集32巻8号1529頁,判タ375号77頁が,裁判所は,当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる旨を判示しており,過去の婚姻費用の清算は財産分与の中で行うことができる。しかし,同判示は,当該清算の方法を財産分与に限る趣旨のものであるとは解されない。本判決は,財産分与についての合意が未了であり,今後財産分与の請求をする可能性が残っている場合であっても,係属中の婚姻費用分担審判の申立てにおいて過去の婚姻費用の分担額の形成決定をすることができる旨も判示しており,同最判について上記と同様の理解を前提としたものと考えられ,婚姻費用分担請求について,財産分与の請求との競合を認める見解(いわゆる限定相関説)と親和的なものといえよう。
 本決定の判示内容は,上記のとおり,条文の文言及びこれまでの判例の流れに沿うものと解される。

 (3) なお,本決定は,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したという場合について判示したものであり,夫婦が離婚した後に,離婚時までの過去分の婚姻費用分担審判の申立てをすることの適否や,婚姻費用分担請求の始期(過去のどの時点まで遡り得るか)については,その射程外であると解される。」

 これ間違いそうですね😅

2025年11月 1日 (土)

【離婚】 最近増えている相談 ズバリ  「共同親権主張したいのですが。」 「単独親権にならないんですか。」でしょう😅  

 このブログでも、このテーマは複数回紹介していると思います。今回は、「家庭の法と裁判」N058号の特別企画第1回目でこのテーマに関する論文が掲載されていましたので、紹介しますね。

 簡単にいえば、裁判所において親権を定める場合には、必要的単独親権事由が認められれば、単独親権と定められます。

 必要的単独親権が認められない場合には、①「父母と子との関係」、②「父と母との関係」、③「その他一切の事情」を総合考慮の上、共同親権か単独親権のいずれかかを定めることになりますが、事案によっては、必要的単独親権事由の有無を検討するまでもなく、新民法819条7項柱書前段の総合考慮に基づき、単独親権と定めることもあり得ると考えられます。

 必要的単独親権事由としては、1号は「父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」と定められています。典型例としては、子に対する虐待のおそれがある場合ですが、それ以外にも、親権喪失や停止事由に該当する場合が挙げられています。

 2号は「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」と定められています。典型例としては、DVが挙げられています。それ以外にも、虚言や重大な約束違反を栗真エス、人格を否定する言動を執拗に繰り返すことが挙げられています。

 1号や2号がない場合には、先ほどの①②③を総合考慮することになります。

 ①は口論を繰り返していたり養育費を支払う等親の責務をはたしているか等の事情が挙げられています

 ②は文字どおりですが、親権の共同行使のために最低限必要な意思疎通ができる関係にあれば足りると考えられています。

 さて、「新民法の下で共同親権を定める場合は、親権者と定められることは必ずしも子と同居することを意味するものではなく、子の居所が監護の在り方は、別個に検討されることとなる点に留意をする必要がある」(P5)と説明されています。

 そうなると、共同親権の場合には、監護権者の指定が重要になるのだなと考えていました。

 ただ、P18を読むと必ずしもそのようでもないようです。

 P18では、「③離婚訴訟において、父母の一方又は双方から、親権者の指定(単独親権又は共同親権)とともに、監護者指定等を定める旨の附帯処分の申立てがされる場合が想定される。」と書かれています。

 そうですね。

 しかし、P18では、続いて、「③の場面においては、現行民法下では、子の最善の利益の観点から、親権と監護権を分属させることはほとんどなかったところ、共同親権が認められた新民法したにおいても、一方の親を単独親権者としつつ、他方の親を監護者とすることは通常考え難い」、「③の場合において監護者の定めについて検討する余地があるのは、共同親権者とする場合に限られると思われる」、「共同親権者としながら、一方の親を監護者と指定し、子の監護教育などに関する包括的・優先的な権限を与えるべき事案は多くない」、「また、共同親権としつつ、監護教育等について何らかの定めをする場合であっても、特定の事項に関する親権行使者の指定や監護の分掌では足りず、監護者を指定する必要があるかといった観点から個別具体的な事情を踏まえて慎重に検討する必要があろう」と説明されています。

 よくよく考えると、共同親権としながら、監護者を定めてしまうと、共同親権とした意味の大半を没却してしまうことになりますね😅

 

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(笠松山)

2025年10月17日 (金)

【離婚】 給料の差押え 大阪地裁令和6年8月23日決定

 判例時報2629号で紹介された大阪地裁令和6年8月23日決定です。

 債務者が就労しつつ生活保護費を受給しているところ、養育費・婚姻費用請求権者である債権者から給与債権に対する差押えを受けたという事実関係の下で、債務者による差押の全部取消しの申立て(民事執行法153条1項)が認められず、差押禁止債権の範囲変更の限度で認容された事例が紹介されていました。

 まず、実務上、給与等の実質的な手取りの額が生活保護基準額を下回っている場合には差押の全部又は一部が取り消される傾向にあります。

 生活保護費が振り込まれた預貯金債権が差し押さえられた場合にも、預貯金の残高の原資が生活保護費であることが確認されると、差押えが全額取り消されることが多いと言われています。

 他方、養育費債権等の扶養義務にかかる債権については、単に給与の2文の1が差押られたので生活が苦しいという事情だけではその範囲変更が認められるわけではなく、請求債権が扶養義務等に係る債権である場合には却下されることが多いと言われています。

 養育費等については、実務的には、義務者が生活保護費を受給していても、「少ないパンでも我が子と分かち合うべき」などという生活保持義務の考え方に従って免責されないことが多いと言われています。

 本決定においても、債務者が生活保護費を受給していることを踏まえて、特段の事情のない限り、差押えを全部取り消すべき旨判示しています。

 しかしながら、本決定では、債務者の嗜好品代・娯楽費の支出が多いことに着目がされ、また、従前の養育費等の支払い状況や養育費増額の経緯なども考慮して、差押可能範囲を基本的に給与の5分の1と定めました。

 余り考えたことがない論点でしたので、参考になりました。 

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(笠松山・火災後)

2025年9月 4日 (木)

【離婚】 「共同親権」 って、一体どうなるの!?  アメリカでは??

 来年(いつかわからないけど😅)、共同親権を含んだ新しい家族法制が施行されます。そのため、最近、共同親権についてのご相談が増えております。

 令和7年7月に出版された「こんなに変わった! 家族法制 離婚後共同親権・養育費・親子交流等」を新日本法規さんの営業の方から購入して勉強してみました。

 ご相談には、女性からは、共同親権は嫌だ!、男性からは、共同親権WELCOME という内容のものが大半です。

 ただ、当事者が合意できない場合に、共同親権になる場合って、現実的にはなかなかないのではないかと思います(個人的な感想)。

 共同親権ですが、どういう場合を想定しているかと言いますと、「夫婦間と子の問題とを理性的に分けられる人がいるとして、そういう人たちに、親権のために離婚できずに不本意な家庭生活や別居生活を続けさせるのではなく、婚姻状態は解消するけれども、子の養育は両親が適切に関与させるという形態で子の利益が確保できるのならば、そういう選択肢もあっていい」というものです。

 2024年4月の小泉法務大臣の答弁においても、「夫婦間の問題に関しては非難し合う状態が続いていたとしても、その親権の共同行使に関わる情報に関してはやり取りができる、意見が交換できる、これは、自分たちの問題ではなくて子供の利益のために子供のことを話し合う、そういう余地がそれぞれのご夫婦に生まれるならば、そのコミュニケーションは、子供の利益のために共同で親権を行使することに関わる最低限のコミュニケーションは取れるということ」と説明されています。

 そのような冷静な思考ができるご夫婦であれば、共同親権というのはむしろ望ましいと思います。

 しかし、田舎弁護士がみるところ、弁護士に相談されるような案件の場合、そのような冷静な思考ができるご夫婦は例外的な印象です。

 アメリカにおいても、1994年から2010年の統計ですが、25%が共同親権、大多数の65%は母親の単独親権、残りの10%が父親の単独親権となっており、共同親権は25%程度です。

 アメリカですら、共同親権はこの程度の割合ですので、我が国では、アメリカを上回るようなことが生じるとは個人的には考えにくいと思っております。

 

2025年7月 5日 (土)

【離婚】 最新事例にみる婚姻関係の破綻原因

 令和7年2月に新日本法規から出版された「最新事例にみる婚姻関係の破綻原因」です。著者は高裁の部総括判事であった赤西芳文弁護士です。

 第1例から、なかなか強烈なケースでした。

 【1】 妻が「犬は我慢させられないが、夫は我慢すべきとして同居を拒否し、犬の死亡後も同居しないことなどから、離婚請求が認められた事例(東京地判平16・6・23)

    ⇒夫は、犬以下のような発言ですね😵

 【4】 有責配偶者(不貞)からの離婚請求であるが、クレジットカードを取り上げる、携帯電話やメールを使えなくする等のことをした相手方配偶者にも破綻の責任があるとして、離婚請求が認められた事例(東京高判H26・12・24)

    ⇒第1審は、離婚請求を棄却しています。微妙なケースですが、このような判断もあり得るということでしょう。

 【10】 妻に不貞の疑いをかけ、ボイスレコーダーやGPS機器設置による監視をし、攻撃的追及・非難をしたことにより夫婦関係が破綻したことを理由に離婚及び妻の慰謝料が認容された事例(大阪公判H28・7・21)

    ⇒第1審は、離婚請求を認め、慰謝料については否定されています。根拠無き嫉妬に基づく典型的なモラハラと評価されたようです。

 【19】 夫が、妻が家事育児を担うという婚姻当初の役割分担を変更する必要を認めることができず、流産の際の冷淡な対応、無配慮な言動、育児に対する非協力等から、妻と夫の気持ちは大きくすれ違うようになったとして、離婚請求が認められた事例(東京高判H29・6・28)

    ⇒第1審は、破綻を認めずに、離婚請求を棄却しております。第2審の段階では別居期間が3年を超えているので、それも大きな原因になったのだと思います。

 【28】 夫が妻の不貞行為を一旦宥恕した場合、その後夫婦関係が破綻するに至った時は、夫が既に宥恕した不貞行為をもって有責配偶者からの離婚請求と主張することは許されないとして、妻からの離婚請求が認められた事例(東京高判H4・4・24)

    ⇒第1審は、妻の離婚請求を認めませんでした。宥恕した場合には、先の不貞と後の破綻原因とは因果関係がないということなのでしょう。

 【45】 別居期間が9年近くに及ぶ有責配偶者である夫からの離婚請求について、離婚すれば、婚姻費用の支払いがなくなり、妻が経済的に苛酷な状況に置かれ、精神疾患に罹患している三男の監護・福祉に著しい悪影響が及ぶ、夫の離婚給付の提案は不確実であるとして、離婚請求が棄却された事例(東京高判令和元・8・28)

    ⇒第1審は離婚請求を認めましたが、第2審は否定しました。第2審は、夫の有責性の程度が高く、離婚によつて妻が経済的に苛酷な状況におかける可能性が高いこと、そして、精神障害のある三男の監護福祉に悪影響を及ぼすことを理由にしております。

     有力な政治家のようですが、自分の妻子を大事にできない方はどうかと思いますね😵 

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(清澄白河・松平定信のお墓)

 

 

2025年6月20日 (金)

【離婚】 妻である被告との離婚を実現させるために婚姻費用分担金の支払をすることなく兵糧攻めともいうべき振る舞いを続けた原告が有責配偶者に当たるとして、原告の離婚請求を棄却した事例 令和4年4月26日東京家裁判決

 「家庭の法と裁判」6月号に掲載された令和4年4月26日東京家裁判決です。

 裁判所は、原告と被告との間に婚姻の継続を困難にするほどの性格、価値観等の不一致があったと認めるには足りないとしつつも、別居期間が4年6か月を超えていることから、夫婦関係は破綻していると認定しました。

 その上で、妻である被告との離婚を実現させるために婚姻費用分担金の支払をすることなく兵糧攻めともいうべき振る舞いを続け、婚姻関係の修復を困難なものにしたことを理由に、原告を有責配偶者と認定して、離婚請求を棄却しました。

 なお、原告は、第1審の口頭弁論終結後に、被告に対して未払金の全額を支払いましたが、控訴審においても、これを考慮しても、原告の離婚請求は信義誠実の原則に反すると判断しております。

 原告ですが、離婚調停が不調になると、月額46万円の生活費の支払いをしていました、これにより被告が原告から借りていた賃料月額23万円の家賃の支払いができなくなると、今度は、未払い賃料の支払を求めて訴訟を提訴しました。他方で、被告は、原告に対して、婚姻費用分担金の請求を求めて裁判所は月25万8000円の支払いを認めましたが、第1審の口頭弁論終結時に至るまで生活費の支払いをしませんでした。 

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(宇和島・野川登山道)

 原告ですが、モラハラの極みのような対応をされています。裁判所も、身勝手な振る舞いを続けと原告の対応に非難を加えています。

 普通に婚姻費用を支払っておけば、既に離婚ができていたというケースだと思います。

 このような手段で早期の離婚を図ろうと画策することはリスクが大きくてやめた方がいいでしょう。

 また、被告には未成年の子どもも監護していたということですから、父親としてどうなんでしょうか。

 小さな子どもがいる場合は、子ども1番で考えていただきたものです。

2025年5月 2日 (金)

【離婚】 デジタル財産をめぐる離婚・相続時の調査と法的対応

 「家庭の法と裁判」50号が送られてきました。家裁月報が廃刊となりその後継誌として1号から継続購入しておりますが、早いもので、もう55号となったんですね。

 今回の特集は、デジタル財産をめぐる離婚・相続時の調査と法的対応として、暗号資産、電子マネー、各種ポイント、ネット銀行の預金、ネット証券口座にある株式等のデジタル財産を取り上げています。

 第1が、離婚時の財産分与におけるデジタル財産の把握・調査及び法的対応です。

 一方配偶者が暗号資産を保有しているかの確認方法としては、自ら調査を行う方法については事実上難しいこと、弁護士会照会については照会先から協力が得られないこと、調査嘱託についても探索的な嘱託は認められないこと、改正法により情報開示命令が新設されたことからこれを利用する方法もあることなどが説明されています。

 電子マネー、無償ポイント、ネット銀行やネット証券についての留意点が解説されています。

 第2が、相続時におけるデジタル遺品の調査と法的対応です。

 調査ですが、田舎弁護士程度のIT知識では難しいですね。解説者は、デジタル終活を進めています。参考になりましたので、少し引用しますね(P17)。

 「デジタル遺品の相続における一番の問題点は、個人のデジタル機器内の調査ができない限り、その所在の把握が非常に煩雑となる点にある。そのため、デジタル遺品相続に対する生前対策(いわゆるデジタル終活)としては、自身が利用するパスコンやスマホ等のログインパスワードを家族やパートナーと共有することが必要不可欠となる。生前から共有することも考えられるが、生前からの共有を避けたいという意向を有する人が多いことも実情であることから、以下のような方法で、『万が一の際、家族やパートナーに対し、自身のデジタル機器のログインパスワードを伝えることができる仕組み』を構築しておくとよい」

 第3が、財産分与・遺産分割において取得したデジタル財産に対する強制執行です。

 暗号資産と電子マネーに関して解説されています。

 第4が、デジタル財産の税務です。

 なかなか難しい議論がかかれています。 

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                              (淡路ケ峠)

 

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