日弁連総合研修サイトの講座を最近受講することが増えました。今回は、少年事件における付き添人活動~捜査段階から審判まで(2024年)です。
講師は、井原綾子弁護士と川村百合弁護士です。
第1 少年事件における付添人活動~捜査段階から審判まで
1 少年事件における弁護士の役割
⇒少年法の目的(少年法第1条) 少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う。
⇒少年に寄り添いながら非行の原因を探り、立ち直りに向けた方策を少年と共に考え、その手助けをしていくのが弁護士の役割
2 2021年少年法改正の概要
★特定少年における検察官送致の特例
⇒少年法第62条2項2号 いわゆる「原則逆送」対象事件の拡大(強盗、不同意性交、建造物等以外放火など)
原則逆送の例外 「調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。」
※原則逆送事件において例外的に保護処分とするかどうかにあたって、犯行の「結果」も考慮要素に含まれることになった。犯情の幅が大きい事件において、犯情をどのように評価するかが、逆送するか否かの判断に影響すると考えられる
3 捜査段階における弁護活動
①接見での注意事項及びポイント
※被疑事実の確認 ※要保護性を基礎づける事実の確認(少年の資質面、環境面) ※黙秘するかどうか ※少年との信頼関係をどう構築するか
②全件送致主義との関係
※不起訴という概念がなく、いずれにしても家裁送致され審判を受けることになる
※審判における処分の見通しや、要保護性との関係で調整が必要な事項など早期に判断して必要な活動の整理をしなくてはならない
③伝聞法則が適用されないこととの関係
※成人の刑事事件と異なり、すべての記録が家裁送致後に裁判所の目に触れることとなる
※一方で、こちらで取得・作成した証拠についても、家裁送致後に特に制限なく裁判所に提出することができる。
④家裁送致日の確認、上申書要望書もしくは付添人選任届の準備
※検察官に家裁送致日を確認する
※(国選付添人対象事件の場合)上申書及び要望書の提出
※(国選付添人非対象事件の場合)付添人選任届及び日弁連少年保護事件援助申入書の準備
⑤観護措置回避活動について
※観護措置を回避すべき事案かの見極め
※家裁送致時における意見書提出の準備、裁判官面談など
4 審判段階における付添人活動
①早期の記録閲覧及び謄写(前件がある場合は前件の社会記録の閲覧)
※事案の早期の把握と、見通しを正確に立てるため、家裁送致後は早急に法律記録を閲覧、謄写する(謄写は裁判所の許可が必要)
※前件の非行がある場合には、その際の社会記録も閲覧して情報収集する
②審判期日の調整、鑑別所での面会日程を調査官と調整
※家裁での少年審判の開廷日は固定されていることが多いので、家裁送致後すぐに審判期日の調整を行う必要がある。
※鑑別所での少年との面会につき調査官とタイミングが重ならないよう、双方の予定を調整しておくとよい
③非行事実に争いがある場合等は、非行事実に関する意見書の提出を検討
※非行事実に争いがある場合等(一部争っている場合や、犯情の評価が問題になる場合も含む)には、争点の明確化及び証拠調べの要否の検討のために、非行事実に関する意見書を早期に裁判所に提出することが多い。
④非行事実に争いがある場合等、審判の進行について裁判所と協議が必要な事件の場合は、早期に裁判所とカンファレンスの機会を持つ
※証拠調べが必要な事案等では、どのような証拠調べをするかや証拠調べ期日をいつにするかなどの調整が必要なので、早期に裁判所とカンファレンスが必要である
⑤調査官と早期に情報を共有し、裁判所の問題意識を把握する
※被疑者段階でこちらが得た情報についても、積極的に情報共有することで問題意識を共通のものにすることが重要
※調査官の問題意識や、少年の課題を聞くことで、環境調整などの活動に活かす
⑥記録の内容や調査官との情報共有の内容をもとに、審判結果の見通しを再度立てる
※逆送可能性はあるか、在宅か施設収容どちらの可能性が高いか、逆送可能性がある場合逆送回避のためには何が必要か、施設収容の可能性がある場合、保護観察や試験観察とするためには何が必要か、等の方針を整理する
⑦鑑別所での少年との面会
※非行の原因等を一緒に考え、これまでの生活やこれからの立て直しについて一緒に考えていく
※捜査段階で黙秘していた場合でも、家裁送致後は基本的には黙秘を解除することでよい
※審判結果の見通しをどこまで伝えるか(伝えないのか)
⑧事案に応じた環境調整活動
※社会復帰に向けた環境調整活動
※保護者(親)との関係調整、帰住先の確保、就業先の確保、学校との調整、通院先やカウンセリング先の確保など
※被害弁償、謝罪等の被害者対応 ⇐犯情を軽減する
⑨社会記録の閲覧
※鑑別結果通知書、少年調査票
※社会記録は閲覧のみ可能であり、謄写はできないのでメモを取る必要がある(特に逆送は詳細に)
※社会記録内の情報の中に、少年には知らせるべきでない情報があることもあるので慎重な対応が必要
⑩意見書作成及び提出
※大きく分けて、非行事実についての項目と要保護性についての項目を記載する ★犯情も忘れずに
※付添人なりの視点や、少年が付添人にのみ話した内容など、調査票には記載されないであろう内容を記載することを意識すると良い
※提出時期は、調査票が提出される前が望ましいが、場合によっては調査票提出後の提出となることもあり得る
⑪審判への出席
※審判前に、審判の進行について裁判官とカンファレンスをして協議しておくとよい
※付添人からも必ず少年に質問し、少年が裁判官に伝えたいことが十分に話せる状況を作る
⑫抗告意思の確認
※審判後(場合によっては審判前にでも)に、早急に抗告意思を確認する(できれば施設に移送される前がよい)
※抗告する場合には、早急に決定書謄本の申請をする(1日でも早くとりつける)
※抗告申立書は、趣旨を明示して提出する必要があることに注意 ★2週間しかないので負担が大きい
5 処分の種類
★不処分
★保護処分(保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致、少年院送致)
特定少年が保護観察になる場合には、6ヶ月か2年(遵守事項違反は上限1年の範囲で少年院収容の期間を定める)を明示して意見書を作成
★児童福祉法の措置(児童相談所長送致)
★試験観察 ⇐少年に対する最終的な処分を留保して、相当の期間、少年の生活態度や行動等を調査官の観察に付する中間処分
在宅試験観察と補導委託 ※試験観察中の調査官との役割分担
※試験観察中の再非行 どうするのか
(補遺) 非行少年の特徴
自尊感情が低い 自己評価が低い 成功体験がない 目標がない 意見表明の経験がない 仲間への依存
第2 活動にあたって悩ましいポイントについてのパネルディスカッション
1 非行の背景、非行少年の特徴
2 社会資源の開拓と試験観察
3 裁判官と調査官とのカンファレンスのあり方
4 原則黙秘
5 特定少年の原則逆送
(燧灘)
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