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【子ども】

2025年11月17日 (月)

【子ども】 裁判所における少年審判の審理の過程  (裁判所における少年事件の実務)

 先月に日本加除出版から出版されたばかりの「裁判所における少年事件の実務」を購入しました。

 まずは、おさらいとして、裁判所における少年審判の審理の過程について検討したいと思います。

 少年側から依頼を受ける弁護士としても、裁判所の流れを知っておくことは有益だと思います。

第1 事件受理時の検討

 事件が裁判所に送致されると、裁判官は、書記官の事前チェックによる補助を踏まえて法律記録を検討して、調査命令を発する(少年法8条2項)。

 裁判官は、まず、非行事実を検討し、法律記録に基づき非行事実が認定できるか、その証拠が足りているか、補充捜査依頼や証人尋問等の証拠調べが必要かについて検討し、非行事実の蓋然的心証が得られれば、調査命令を発する。非行事実に争いがあり、証人尋問が必要になるなどして、1回の審判期日で終局することが難しい場合には、この時点で審理計画を策定し、場合により検察官関与を検討する。

 要保護性については、法律記録に基づき、本件非行に関する動機や経緯、結果等の事情、被害者の被害状況や心情、少年の前歴を含めた身上経歴、生活状況や保護環境、保護者の監護状況等の要保護性に関する事情を確認し、今後の調査計画や審判運営に当たって留意すべき点について検討する。

第2 調査進行中の調査官との連携とカンファレンス

 裁判官の調査命令により、調査官は、法律記録を受け取り、社会調査を開始する。調査官の役割は、心理学、教育学、社会学等の行動科学の知見に基づく、事実の調査と調整である(少年法9条、少年審判規則11条参照)。

 調査官は、法律記録や従前の社会記録を検討した上、少年、保護者、関係者等の面接、関係機関への照会、少年鑑別所等との協議を行いながら、事実の調査を実施していく。また、少年に対して内省や改善を促し、必要な教育的措置を行い、さらに保護者等とも関係を調整するなどの働きかけを行う。そして、少年の非行メカニズムを解明し、非行に至った少年の問題を明らかにして、要保護性の程度を評価して、処遇についての意見を提出する。

 この社会調査の期間は、主に調査官に情報が集約されていき、調査官は、必要に応じて、即時、裁判官に報告し、裁判官や書記官と協議を重ねる。この協議のことをカンファレンスと呼ぶ。その実施の時期や頻度は事件によって異なるが、各時期において協議すべき事項を整理すると、次のように考えられる。

 初期(送致から数日程度)は、非行事実(犯情)の評価、調査対象の範囲、被害者対応、保護者等の呼び出しなどについて意見交換をする。

 中間期(送致から2週間程度。通常、少年調査が1~2回、保護者調査が1回なされている時期。遅くとも審判の1週間前まで)においては、調査官の調査が進捗している基本的な情報が集約されてきている段階であるため、その調査状況と調査仮説・非行メカニズムを簡潔に報告してもらい、少年の要保護性上の問題点の整理や、処遇選択上のあい路は何かについて意見交換をする。その上で、更に調査すべき事項や働きかけの対象などを確認する。在宅試験観察や身柄付き補導委託については、この段階で見込みの有無を検討する。

 審判前(少年調査票提出後。審判前日であることが多い)においては、少年調査票を前提にして、その補足説明や、非行メカニズムと働きかけの結果の確認、それを踏まえた処遇選択の意見交換、審判運営上の留意点の確認等を行い、審判準備を行う。

 このうち、裁判官と調査官との連携にあたっては、特に中間期でのカンファレンスが重要である。これを中間カンファレンスと呼ぶ。裁判官と調査官との間で見立てや調査仮説の違い、調査不足があった場合、審判前ではその後の修正や追加調査の機会がほぼない。裁判官としても、中間期に報告を受けることで、追加の調査指示等ができ、事案の理解が深まり、要保護性について心証を形成できる。

第3 審判運営と処遇の選択は、明日の続きへ😅 

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2025年11月13日 (木)

【子ども】 義務者である夫が勤務先を退職してしまった事案 福岡高裁令和5年5月8日決定

 判例時報2631号で掲載された福岡高裁令和5年5月8日決定です。 

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(高縄山)
 妻が別居中の夫に対して婚姻費用分担金の支払いを求めたところ、夫が抑うつ症状との診断を受け勤務先を退職したとしてその支払いを拒絶した事案において、
 
 夫の就労が不可能な程度かは疑いが残るとして、退職後も退職前収入の約4割の収入があるものとして扱い、起訴収入額をその43%と認めた上で、夫に婚姻費用分担金の支払いを命じた原審判が維持された事例
 このようなケースで、たまに、会社等を退職する方がおられますね。
 本件では、別居前には特に症状はなかったこと、別居後の面会交流を巡って発症し悪化したというもので受診や退職の経緯、調停への対応状況を考えると就労不可能な程度に重篤であるかについては疑問が残ること、症状の具体的な内容及び程度、通院の頻度、投薬内容も不明であることなどから、基礎収入を0円とは計算しておりません。
 無職になったからといって、婚姻費用分担義務を免れるわけではないということです。
 但し、強制執行は大変そうな気がします。回収できるのかな?

2025年11月 7日 (金)

【子ども】 日弁連総合研修サイト 少年事件における付添人活動~捜査段階から審判までを、WEBで受講しました😅

 日弁連総合研修サイトの講座を最近受講することが増えました。今回は、少年事件における付き添人活動~捜査段階から審判まで(2024年)です。

 講師は、井原綾子弁護士と川村百合弁護士です。

第1 少年事件における付添人活動~捜査段階から審判まで

 1 少年事件における弁護士の役割

  ⇒少年法の目的(少年法第1条) 少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う。

  ⇒少年に寄り添いながら非行の原因を探り、立ち直りに向けた方策を少年と共に考え、その手助けをしていくのが弁護士の役割

 2 2021年少年法改正の概要

  ★特定少年における検察官送致の特例 

   ⇒少年法第62条2項2号 いわゆる「原則逆送」対象事件の拡大(強盗、不同意性交、建造物等以外放火など)

    原則逆送の例外 「調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。」

    ※原則逆送事件において例外的に保護処分とするかどうかにあたって、犯行の「結果」も考慮要素に含まれることになった。犯情の幅が大きい事件において、犯情をどのように評価するかが、逆送するか否かの判断に影響すると考えられる

 3 捜査段階における弁護活動

①接見での注意事項及びポイント

  ※被疑事実の確認 ※要保護性を基礎づける事実の確認(少年の資質面、環境面) ※黙秘するかどうか ※少年との信頼関係をどう構築するか

②全件送致主義との関係

  ※不起訴という概念がなく、いずれにしても家裁送致され審判を受けることになる

  ※審判における処分の見通しや、要保護性との関係で調整が必要な事項など早期に判断して必要な活動の整理をしなくてはならない

伝聞法則が適用されないこととの関係

  ※成人の刑事事件と異なり、すべての記録が家裁送致後に裁判所の目に触れることとなる

  ※一方で、こちらで取得・作成した証拠についても、家裁送致後に特に制限なく裁判所に提出することができる。

④家裁送致日の確認、上申書要望書もしくは付添人選任届の準備

  ※検察官に家裁送致日を確認する

  ※(国選付添人対象事件の場合)上申書及び要望書の提出

  ※(国選付添人非対象事件の場合)付添人選任届及び日弁連少年保護事件援助申入書の準備

⑤観護措置回避活動について

  ※観護措置を回避すべき事案かの見極め

  ※家裁送致時における意見書提出の準備、裁判官面談など

 4 審判段階における付添人活動

①早期の記録閲覧及び謄写(前件がある場合は前件の社会記録の閲覧)

  ※事案の早期の把握と、見通しを正確に立てるため、家裁送致後は早急に法律記録を閲覧、謄写する(謄写は裁判所の許可が必要)

  ※前件の非行がある場合には、その際の社会記録も閲覧して情報収集する

②審判期日の調整、鑑別所での面会日程を調査官と調整

  ※家裁での少年審判の開廷日は固定されていることが多いので、家裁送致後すぐに審判期日の調整を行う必要がある。

  ※鑑別所での少年との面会につき調査官とタイミングが重ならないよう、双方の予定を調整しておくとよい

③非行事実に争いがある場合等は、非行事実に関する意見書の提出を検討

  ※非行事実に争いがある場合等(一部争っている場合や、犯情の評価が問題になる場合も含む)には、争点の明確化及び証拠調べの要否の検討のために、非行事実に関する意見書を早期に裁判所に提出することが多い。

④非行事実に争いがある場合等、審判の進行について裁判所と協議が必要な事件の場合は、早期に裁判所とカンファレンスの機会を持つ

  ※証拠調べが必要な事案等では、どのような証拠調べをするかや証拠調べ期日をいつにするかなどの調整が必要なので、早期に裁判所とカンファレンスが必要である

⑤調査官と早期に情報を共有し、裁判所の問題意識を把握する

  ※被疑者段階でこちらが得た情報についても、積極的に情報共有することで問題意識を共通のものにすることが重要

  ※調査官の問題意識や、少年の課題を聞くことで、環境調整などの活動に活かす

⑥記録の内容や調査官との情報共有の内容をもとに、審判結果の見通しを再度立てる

  ※逆送可能性はあるか、在宅か施設収容どちらの可能性が高いか、逆送可能性がある場合逆送回避のためには何が必要か、施設収容の可能性がある場合、保護観察や試験観察とするためには何が必要か、等の方針を整理する

⑦鑑別所での少年との面会

  ※非行の原因等を一緒に考え、これまでの生活やこれからの立て直しについて一緒に考えていく

  ※捜査段階で黙秘していた場合でも、家裁送致後は基本的には黙秘を解除することでよい

  ※審判結果の見通しをどこまで伝えるか(伝えないのか)

⑧事案に応じた環境調整活動

  ※社会復帰に向けた環境調整活動

  ※保護者(親)との関係調整、帰住先の確保、就業先の確保、学校との調整、通院先やカウンセリング先の確保など

  ※被害弁償、謝罪等の被害者対応  ⇐犯情を軽減する

⑨社会記録の閲覧

  ※鑑別結果通知書、少年調査票

  ※社会記録は閲覧のみ可能であり、謄写はできないのでメモを取る必要がある(特に逆送は詳細に)

  ※社会記録内の情報の中に、少年には知らせるべきでない情報があることもあるので慎重な対応が必要

⑩意見書作成及び提出

  ※大きく分けて、非行事実についての項目要保護性についての項目を記載する  ★犯情も忘れずに

  ※付添人なりの視点や、少年が付添人にのみ話した内容など、調査票には記載されないであろう内容を記載することを意識すると良い

  ※提出時期は、調査票が提出される前が望ましいが、場合によっては調査票提出後の提出となることもあり得る 

⑪審判への出席

  ※審判前に、審判の進行について裁判官とカンファレンスをして協議しておくとよい

  ※付添人からも必ず少年に質問し、少年が裁判官に伝えたいことが十分に話せる状況を作る

⑫抗告意思の確認

  ※審判後(場合によっては審判前にでも)に、早急に抗告意思を確認する(できれば施設に移送される前がよい)

  ※抗告する場合には、早急に決定書謄本の申請をする(1日でも早くとりつける)

  ※抗告申立書は、趣旨を明示して提出する必要があることに注意  ★2週間しかないので負担が大きい

 5 処分の種類

  ★不処分

  ★保護処分(保護観察、児童自立支援施設・児童養護施設送致、少年院送致)

    特定少年が保護観察になる場合には、6ヶ月か2年(遵守事項違反は上限1年の範囲で少年院収容の期間を定める)を明示して意見書を作成

  ★児童福祉法の措置(児童相談所長送致)

  ★試験観察 ⇐少年に対する最終的な処分を留保して、相当の期間、少年の生活態度や行動等を調査官の観察に付する中間処分

     在宅試験観察と補導委託  ※試験観察中の調査官との役割分担

     ※試験観察中の再非行 どうするのか

 (補遺) 非行少年の特徴

     自尊感情が低い 自己評価が低い 成功体験がない 目標がない 意見表明の経験がない 仲間への依存

第2 活動にあたって悩ましいポイントについてのパネルディスカッション

 1 非行の背景、非行少年の特徴

 2 社会資源の開拓と試験観察

 3 裁判官と調査官とのカンファレンスのあり方

 4 原則黙秘

 5 特定少年の原則逆送 

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(燧灘)

2025年11月 5日 (水)

【子ども】 新少年事件実務ガイド(第4版) 続き

 昨日の続きです。付添人を依頼された弁護士は、「新少年事件実務ガイド(第4版)」は必ず読んでおかないといけない書籍の1つだと思います。

 P174 「保護者の審判出席は権利でもあり、調査官調査や審判への出頭は保護者の義務でもあります。いずれも、裁判所が保護者の監督意思・監督能力の有無および程度を見極める重要な場面です。付添人は、事前に調査官調査や審判が行われること、おおよその時期、それらの場で質問される事項、それに対する回答が持つ意味・効果などを説明しておきます」

 p229 「抗告する場合には2週間以内に具体的な抗告理由を明記した抗告申立書面を提出する必要があります。そのため、そのことも説明し、抗告するのであれば早めに付添人に連絡するように伝えます。また、施設収容保護処分の場合には、保護処分の決定後、数日中に少年が施設へ収容されてしまいますその際には、遠方の収容施設での面会になることもありますので、早めの結論と準備が求められます」

 P229 「とくに、抗告を検討している場合で示談が未成立のとkには、抗告にむけての示談を成立させておくことが考えられます」

 P230 「保護処分決定は、確定を待たずに執行されます。また、抗告申立てには執行停止効はありません。そのため、施設収容保護処分の審判決定がなされた場合には、抗告の有無にかかわらず、少年は、いつでも処遇施設へ収容される可能性があります」

 P233 「審判期日に決定書の交付申請書も用意しておき、決定後直ちに書記官に提出しましょう。とくに抗告について検討するときは、決定書を詳しく分析しなければなりません。そのため、書記官に対しその旨を伝えて早急に作成・交付するよう申入をします」

 P243「少年院は、従前、初等・中等・特別・医療の4種類に分類されていました。2014年に全面改定された新少年院法において、従来の初等中等が統合されて第1種少年院、特別が第2種少年院、医療が第3種少年院に変更されました。これらの少年院の標準的な矯正教育は2年以内ですが、第1種少年院では6ヶ月以内の期間で行う短期課程も実施されています。また、少年院で刑の執行を受ける16歳未満の少年受刑者の収容施設として、第4種少年院が加わりました。さらに、18歳以上の特定少年のうち2年間の保護観察に付された者に観察中の重大な遵守事項違反があった場合に、少年院に収容することができる制度が開始されたことから、遵守事項違反のあった特定少年を一定期間収容し、その特性に応じた処遇を行う第5種少年院が新たに設けられました。」

 P245「まず、第1種少年院には、6ヶ月以内の短期間の処遇とそれ以外の長期間の処遇があり、前者には6ヶ月以内の短期間処遇と4か月以内の特別短期期間処遇があります。6ヶ月以内の短期間処遇は、短期義務教育課程と短期社会適応過程に対応したもので、指導を実施するうえで基準期間は11周囲内です。」

 P247 「家庭裁判所は、保護処分として少年院送致を選択する場合には、送致すべき少年院の種類を指定して決定を行います。その際に、家庭裁判所は、少年の処遇に関し、少年院に勧告をすることができます。実務上、家庭裁判所は、収容すべき期間や処遇上の留意点などについて、少年鑑別所との事前協議を行った上で勧告しているようです」

 P283 「通常の刑事事件の控訴申立てと同様の対応をしてしまうと不適法になるからです。例えば、抗告申立書は、理由を具体的に記載して、2週間以内に提出しなければなりません。そのため、成人の刑事事件における控訴と同じ感覚で、抗告申立書に抗告の理由は追って申述すると記載したままで抗告期間を経過すると棄却されます。その他、審判時点では決定書が作成されていない場合が多いこと、施設収容保護処分の場合、少年との十分な時間回数の面会が困難になることなど、抗告申立書の作成に支障となる事情にも留意しなければ弁護活動が不十分なものになります」

 P285 「実務上、裁判官は決定をする時点では、まだ決定書を作成していないのが大半です。決定書が作成されるのは、決定からしばらく経ってからということも少なくありません。そこで、付添人としては、早急に決定書を作成するように求めるとともに、決定書の入手を待たずに、速やかに抗告申立書の作成に着手します」「少年と保護者から詳しく事情を聴くことも必要です。また、すぐに記録を閲覧謄写し、特に社会記録の閲覧では、少年調査票や鑑別結果通知書の処遇意見欄等の分析に着目して、保護処分の理由の把握に努めます」「少年事件の保護処分決定は、刑事事件と異なり、告知によって直ちに執行力を生じます。抗告を申し立てても、執行停止の効力はありません。そのため、例えば少年院送致決定の場合は、決定から2~4日程度で少年院に送致されてしまうことが通例です」

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(楢原山山頂)

 

2025年11月 4日 (火)

【子ども】 新少年事件実務ガイド(第4版)

 今年出版された新少年事件実務ガイド(第4版)」を購入しました。第3版からの愛読書ですが、今年第4版が出ていたようです。

 現在、家裁においても、裁量的に国選付添人がつけられることが増えており、よい傾向であるとは思いますが、見聞する限り、付添人としての自覚が不足されている方が家裁から選任されることもあるようです。

 確かに、本書P155によっても付添人活動は、①審判期日の決定ないし変更、②記録の閲覧、謄写、③少年との面会、④事件関係者との連絡、目撃者調査、現場見分などの事実調査、⑤親またはそれに代わる監督者との面接、⑥学校、勤務先との連絡・面接、⑦被害者対応、⑧鑑別技官との面接、⑨調査官との面接、⑩裁判官との面接、⑪証拠の提出、⑫意見書の提出、⑬審判への立会など広範囲になり負担が大きなものですが、若手を中心に付添人活動に熱心な弁護士は多いと思いますので、とりわけ国選事案においては、そういう弁護士が選任される仕組み作りが大切ではないかと思います。少なくとも、漫然と、大人の自白刑事事件と同様な対応ではあってはならないと思っています。

 少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に努められる弁護士である必要があります。

 さて、本書は旧版を含めて示唆のある指摘が多数あります。

 P39 「示談・被害回復の重要性 被害者のある犯罪で、非行事実に争いがない事件であれば、被害者に対する被害回復や示談が必要になります。少年の保護処分を決めるにあたっては示談の成否を重視する傾向にありますので、おそそかにせず十分な対応が必要です。また、被害者への謝罪を通じて少年の反省が促されるなど、更生につながる視点が必要です。単純に被害回復をして示談を成立させるだけでなく、少年と話し合いながら対応を進め、保護者らと協働して要保護性の減少につながるような活動が求められます」

 P83 「保護者から聴取し説明すべき事項 (1)自己紹介、弁護士の役割等の説明、(2)被疑事実・非行事実の聴取・説明、(3)少年の生活状況等の確認、(4)手続・見通し等の説明、(5)今後の打合せ等」

 P144「付添人活動をするうえで留意すべき点 少年審判においては予断排除原則が存在せず、裁判官はあらかじめ記録を検討し、非行事実の存否についても要保護性の有無や程度についても、事案に応じた一定の心証を形成したうえで審判期日に臨むことがほとんどです。そのため、少年審判に際しての付添人活動では、裁判官が心証を固めてしまう前にいかに付添人意見を理解させるかが勝負となりますので、審判期日に先立った活動が重要で、当日にはじめて付添人の意見を述べるのでは、遅きに失することになります。そこで付添人は審判期日前に、裁判官や調査官に対して積極的な活動を行うことに留意しましょう」

 P163 「社会記録については、現在は謄写が認められない運用になつています。謄写が認められない以上、付添人としては閲覧の際に丹念に読み込み、必要な箇所をメモしてくるほかありません。調査官や鑑別所がどの点を問題視し、どういう調査からどのような結論に至ったのか十分に把握しておくことは付添人活動に不可欠であり、必要に応じて説得的な反論を展開する前提となるからです。」

 

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(野田古墳1号)  

2025年9月28日 (日)

【子ども】 父親に監護権が求められた珍しい事例

 判例タイムズNo1535号で掲載された東京高裁令和7年3月4日決定です。

 別居中の夫婦間において、主たる監護者である妻が未成年者らを連れて夫と別居したが、妻に不貞行為があり、妻の監護下における未成年者らと不貞相手との関係のさせ方等に不適切な点があることが考慮され、夫が監護者に指定された事例です。

 本件では、妻が不貞相手との交際時に未成年者らを同席させるなどして巻き込み、その後も、相手方との離婚が成立する前に、未成年者らを連れた状態で不貞相手と同居し、不貞相手を「パパ」と呼ぶことを容認するなど、未成年者らと父である相手方との健全な父子関係を害する監護を行っていることが、子の福祉の観点からみて不適切な監護と評価されたものです。

 なお、監護権者を判断するに際しては、司法研究報告書第72子の監護引渡をめぐる紛争の審理及び判断に関する研究で紹介された判断基準を用いています。

 第1に、従前の監護状況(子が従前どのように監護養育されてきたか)

 第2に、監護態勢(子が今後どのような監護養育を受けられるか)

 第3に、子との関係(子が親とどのような関係を気づいているか)

 第4に、他方の親と子との関係に対する姿勢(子が親から他方の親との関係を維持するために必要な配慮を受けられるか)

 等の事情を総合して検討すべきとされています。

 本件でも、①従前の監護状況に関しては、主として妻が監護していたといえるが、現在の監護は先ほど述べたように不適切な監護といえること

 ②監護態勢や③子との関係、④他方の親と子との関係に対する姿勢については双方に優劣はないことを挙げて、あてはめて検討しております。

 

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(永納山)

2025年9月 6日 (土)

【子ども】 調停成立前や審判前に、子どもと面会できないの!?

 来年5月までに施行が予定されている改正民法により、調停成立前や審判前に、親子交流について可能な定めが置かれました。

 即ち、家庭裁判所では、子の監護に関する処分の審判事件等において、①子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がなく、②事実の調査のために必要があると認めるときは、当事者に対して、子との交流の試行的実施を促すことができるようになりました。

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                             (広島・三瀧寺)

 よく考えると、これまでは、父母の婚姻中の場面における親子交流については、明文の規定すらありませんでした。改正民法により、父母の協議が調わないような場合においては、父または母の請求により家庭裁判所が親子交流に関する事項を定めることができると規定がおかれました。

 また、父母以外の親族との子の交流の場合も、子どもの利益のために特に必要があるような場合には、父母以外の一定の親族との子どもとの交流が認められるようになりました。

 但し、そのハードルはまだまだ高そうです。

2025年9月 5日 (金)

【子ども】 共同親権 ってどうなるの!? 日本の場合

 「こんなに変わった! 家族法制ー離婚後共同親権・養育費・親子交流等ー」からの引用と示唆です。

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                             (広島・三瀧寺)

 日本の場合は、改正民法817条7項は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断をするに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないと定めており、単独親権、共同親権、いずれが原則であるかについては明記しておりません。

 むしろ、①父又は母が子に心身に著しく害悪を及ぼすおそれがあると認められる場合、

 ②父母の一方が他方の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそればある場合

 においては、共同親権は困難ですので、単独親権ということになります。

 それ以外の場合でも、先ほどの民法が定めた要素に基づいて判断されるために、共同親権、単独親権になるのかについては確定的なことは言えません。

 P42には、当方単独親権を主張しているが、予備的に共同親権の主張をされるようなケースにおいても、やはり共同親権になるかどうかは先ほどの要素で判断されるために、「最悪でも共同親権になりますよ」という安易なアドバイスは避けることを進めています。

 そして、仮に、共同親権ということになった場合には、今後は誰が実際に監護するのかということで、監護権の帰属が問題となります。

 P69には、「現実的には、監護権の指定を受けた方の親は、身上監護に関する事項について、常に、非監護者である親権者の権利を害しない限度で、非監護権親たる親権者に優先することになるので、改正前の親権争いが、改正後は監護権争いにシフトすることが予想されます」と解説されています。

 それやったら、今まで通り、単独親権+面会交流でいいんじゃないのかなとも思ったりします。

 共同親権の実益が大きく減殺されることが多く発生するのではないかと危惧します。

2025年8月27日 (水)

【子ども】 共同親権の判断要素 

 令和8年5月までに共同親権を含む改正民法が施行されます。そのため、男女を問わず、共同親権についてのご相談が少しずつ増えているように思います。

 民法は、共同親権にするのか、単独親権にするのかについては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこと、また、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合、父母の一方が他方の一方に対してDV等のため父母が共同で親権を行うことが困難である場合は、単独親権としなければならないと定めています。

 今回、法務省から、「Q&A形式の解説資料(民法編)」が公表されましたので、少し読んでみました(なお、「家庭の法と裁判No57号」に掲載されています。)。

 まず、共同親権にすべきか、単独親権にすべきかについては、一概にいえず、子の利益の観点から最善の判断をすべきであると解説されています。

 従って、共同親権が原則という建前は採用していないことになります。

 そして、「Q19」には「高葛藤のケースや、父母の一方が相手方と『関わりたくない』『口も聞きたくない』などの感情的な主張をしたケースにおいては、単独親権の定めがされることになるのか」という質問が掲載されています。

 この点は微妙な書き方をしつつも、「父母が高葛藤であるケースにおいては、家庭裁判所における調停手続を経てもなお父母間の感情的な対立が大きく、父母が親権を共同して行うことが困難であると認められることがあると考えられるが、新民法第819条第7項は、そのようなケースにおいて裁判所が親権の共同行使を強制することを意図するものではなく、父母の協議が調わない理由等の事情を顧慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときは、必ず単独親権としなければならないとしている。」と解説されています。

 また、「Q21」では端的に「高葛藤であるケースにおいて、どのような場合に、『父母が共同して親権を行うことが困難』と認められるか」という質問に対しては、「例えば、父母の一方が他の一方に対して、誹謗中傷や人格を否定する言動を繰り返しているような場合には、『父母が共同して親権を行うことが困難』な場合に該当し得る」と解説されています。他方で、「父母間に感情的な対立があったとしても、相互の人格を尊重し、子の養育のために最低限のやり取りが可能であるというケースもあり得る。そのような場合には、『父母が共同して親権を行うことが困難』とまではいえず」と解説されています。

 この解説については、田舎弁護士の感覚にもマッチします。

 ところで、養育費等を支払わないケースも、度々相談を受けるところです。

 これについては、経済的DV等によって父母が互いに話し合うことができない状態にあることから、親権の共同行使が困難な場合も、「父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき」にあてはまることがあると考えられる(Q16)と解説されています。

 どうしようもない父ちゃんや母ちゃんの場合には、単独親権となり、夫婦間の仲は悪くても子どものことを誠実に考えられる父ちゃんや母ちゃんの場合には、共同親権ということになるのでしょう。

 「家裁の法と裁判」No57をご参照下さい 

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(笠松山・野田登山口)

2025年6月27日 (金)

【子ども】 当時3歳2か月の児童のホットドックの誤嚥事故に関し市立保育所の管理職員の職務上の注意義務が認められた事例 東京高裁令和6年9月26日判決

 判例時報No2621号に掲載された東京高裁令和6年9月26日判決です。

 第1審は、保育所勝訴、第2審は、保育所敗訴となった事案です。

 第2審は、①X1(児童)に提供された本件ホットドックについては、パンは、その表面に唾液が付いてたり、牛乳などを飲ませたりすると、表面だけが粘性が高くなり、付着性が高くなって口の中や咽頭の中に残りやすく、ウインナーも、表面がなめらかで丸味を帯びている上、男性も強いため、表面に皮が付いていると相応の咀嚼能力が必要であり、いずれも、誤嚥による窒息の危険性が高かった、②X1には知的障害があり、食べ物をよく噛まないで細かくなる前に飲もうとしたり喉に詰まらせることがあったとした上で、X1が本件ホットドックをよく噛まないままこれを飲みこもうとして誤嚥し窒息したと認定しました。

 そして、Yの保育行政に当たる公務員に職務上の法的義務に違反があるかの検討において、本件保育所の所長などの管理職員としては、食事中の誤嚥事故防止対策として、窒息のおそれがあるパンとウインナーを食材とするホットドックの危険性について、調理担当者や保育士に十分認識させるとともに、小さく切り分けるなど、ホットドックの提供方法について十分に配慮をするよう調理担当者や保育士に周知し実践させるよう職務上の義務を負っていたと指摘し、かかる義務違背がなければ調理担当者や保育士において咀嚼を容易にするための措置を講じることが期待でき、X1の誤嚥は高度の蓋然性をもって避けられたから、当該管理職員に過失も認められるとして、Yの損害賠償責任を認めました。

 第1審と第2審とでは、ホットドックの誤嚥の危険性についての把握の仕方、X1の発達の遅れの内容の把握の仕方で、相違がありました。 

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(皿が嶺・ヒマラヤケシ)

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