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【労働・労災】

2026年3月30日 (月)

【労働・労災】 実践労働法実務 外国人労働者の法律実務 を購入しました

 昨年12月に出版された実践労働法実務外国人労働者の法律実務を購入しました。

 外国人労働者に関連するご相談は過去振り返っても数件程しか対応したことがありません。

 今治市の外国人の統計データを紹介されているコンサルのHPがありましたので、リンクをはっておきます。

 昨年のデータで、総人口14万7702人のうち、在留外国人の数は4566人と、約3%を占めています。在留外国人としては、1670の自治体のうち、173位とかなり上位です。

 国別をみると、上位6つが、フィリピンが2044名、ベトナムが744名、中国が727名、インドネシアが386名、ミャンマーが173名、ネパールが122名となっております。

 在留資格としては、上位3つが、技能実習2号ロが、1301名、特定技能1号が、1196名、技能実習1号ロが648名となっております

 そもそも在留資格って、複雑でわかりにくいのですが、整理すると概ね以下のとおりです。

 在留資格の種類及び分類については、別表一が本邦において行うことができる活動、別表二が本邦において有する身分または地位となります。

 日本人の配偶者の場合は、別表二に属し、在留活動・就労活動に制限はありませんが、在留期限はあります。

 特定技能や技能実習は、別表第一に属します。

 技能実習ですが、技能実習1号、2号、3号の3種類があります。

 1号は、技能実習計画に基づき、入国後に講習を受け、及び技能、技術又は知識にかかる業務に従事する活動であって、在留期間は最大で1年です。なお、ロは、団体監理型を指します。2号及び3号は、技能実習計画に基づき技能等を要する業務に従事する活動であって、在留期間は最大で2年です。1号から2号、2号から3号に移行するには、技能実習計画において定めた技能検定または技能実習評価試験の合格に係る目標が達成されていることが必要です。

 特定技能は、2019年4月から施行された在留資格です。深刻な人手不足に対応するため生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていくことを目標としてできた制度です。

 1号は、従事しようとする業務に必要な相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有していることが試験その他の評価方法により証明されていることが必要です。2号は、熟練した技能ということになります。在留期間の上限が1号では5年、2号ではありません。

 今治市においては、

 技能実習1号ロ   648名

 技能実習2号ロ  1301名

       イ    2名

 技能実習3号ロ   167名

 特定技能1号   1196名

 特定技能2号    11名

となっています。

 本書ですが、視点1 即時介入の必要性(使用者に寮の退去や帰国を迫られている、在留期限が切迫している等)、視点2 在留資格制度による就労制限の有無、復職・転職の制限、視点3 手続き参加(在留継続)の可否、手続きのための再来日の可否の3つの視点から、①解雇、②配転無効・資格外活動業務指示、③労災、④未払賃金について、A入管法別表第二の在留資格、B就労目的の在留資格、C技能実習に分けて検討されています。

 今後も余り参考にすることは多分ないと思いますが、万が一の時に備えて購入することにしました。 


 

2026年3月23日 (月)

【労働・労災】 判別要件の一部としての対価性要件 日本ケミカル事件最判

 最高裁平成30年7月19日判決(日本ケミカル事件)は、最高裁判所が対価性要件を定立したものであり、薬剤師に対して支払われていた月給制の手当型の固定残業代である「業務手当」について、最高裁が初めて個別事件で適法としたものです。

 最高裁は、まず、雇用契約において、ある手当が時間外労働等に対する対価として支払われているか否かは、①雇用契約に係る契約書等の記載のほか、具体的事案に応じ、②使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、③労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を顧慮して判断すべきであると基準を定立しています。

 原審が示した対価性があると言えるためには、労基法37条が、④定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識してただちに支払いを請求することができる仕組み(発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み)が備わっており、⑤これらの仕組みが雇用主により誠実に実行され、⑥基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり、⑦法定の時間外手当の不払いや長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる、というような事情が認められることを必須のものとしているとは解されないと判断しました。

 本件事案への当てはめです。

 第1は、以下の(ア)(イ)から、上告人の賃金体系においては、業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと位置付けられていた。

 (ア)本件雇用契約に係る契約書及び採用条件確認書並びに上告人の賃金規程において、月々支払われる所定の賃金のうち業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた。

 (イ)上告人と被上告人以外の各従業員との間で作成された確認書にも、業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨の記載がされていた。

 第2は、業務手当は、1か月当たりの平均所定労働時間(157.3時間)を元に算定すると、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するものであり、被上告人の実際の時間外労働等の状況と大きくかい離するものではない

 第3に、これらによれば、被上告人に支払われた業務手当は、本件雇用契約において、時間外労働に対する対価として支払われるものとされていたと認められる。

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(東陽町・おみたま)
 現在でも固定残業を採用する事業所は少なくありませんが、それを採用するに際しては十分な注意が必要だと思います

 

 

2026年3月22日 (日)

【労働・労災】 団体交渉の行き詰まりを理由とする団体交渉の拒否が「正当な理由」のあるものと認められた事例 東京地裁令和6年8月7日判決

 判例時報No2640号で掲載された東京地裁令和6年8月7日判決です。

 原告側には、労働で有名な弁護士がついています。

 労働組合法第7条2号の「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」に該当するか否かが問われました。

「2 本件交渉事項に関して合意に至る可能性がないとして本件団交申入れに応じなかった補助参加人の対応は、正当な理由のある団交拒否であるといえるか否かについて

  (1)本件A団交の経過に係る前提事実(前記第2の2(4))及び本件各証拠(乙A10~A14、A78)によれば、前記認定事実のとおり、原告らとAは、平成28年2月4日から同年4月13日までの間に5回にわたり成田ベースの閉鎖に伴う成田ベースのFAの雇用等に関する交渉を行ったものの、同交渉は行き詰まり、本件A団交⑤において、Aが、これ以上の交渉の進展は期待できないとして原告らとの交渉を打ち切ったことが認められるが、このような原告らとAとの間の交渉経過や、前記第2の2(4)のとおりのAの原告らに対する説明内容等を踏まえれば、本件A団交におけるAの交渉態度に不誠実な点は見当たらず、Aが交渉を打ち切った時期が不相当であったとか、Aの原告らに対する説明や資料の提示が不十分であったことを認めるに足りる証拠はない。


 そして、前記認定事実のとおり、原告らは、平成29年4月1日、補助参加人に対し、本件A団交終了後の平成28年5月31日にAに解雇された本件組合員らの復職を交渉事項とする本件団交申入れをしたものであるが、原告らが本件団交申入れの趣旨についてFAとしての復職を希望するものであると補助参加人に説明したことや、補助参加人が、原告らによる上記説明を受けて、原告らに対し、本件団交申入れには応じない旨のほか、FAとして復職する以外の解決策について話合いができるのであれば団交に応じる旨通知したものの、その後も、原告らは、本件団交申入書と同じ文面の団交申入書(乙A3)により、再度、補助参加人に対して団交申入れをしたにとどまり、FAとして復職する以外の解決策の提示等は何らしていないことからすれば、本件団交申入れは、本件A団交で行き詰まりとなったために交渉が打ち切られた事項である、Aの成田ベースの閉鎖に伴うFAの雇用等につき、原告らにおいて新たな解決策ないし妥協案を示さないまま、飽くまでFAとしての雇用継続ないし復職を求めて交渉を再開するよう補助参加人に要求するものであると認めるのが相当といえる。

 そうすると、補助参加人が本件団交申入れに応じて本件交渉事項につき改めて団交しても、原告らと補助参加人が合意に至る可能性はなかったものと認められるから、補助参加人において本件団交申入れによる交渉再開に応じる義務があるものとは認められない。
 

 したがって、本件交渉事項に関して合意に至る可能性はないとして本件団交申入れに応じなかった補助参加人の対応は、正当な理由のある団交拒否であると認めるのが相当である。」 

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(東陽町・おみたま)

2026年3月10日 (火)

【労働・労災】 労働者と使用者との間に当該労働者の職種及び業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合において、使用者が当該労働者に対してした異なる職種等への配置転換命令につき、配置転換命令権の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例 令和6年4月26日判決

 判例時報No2639号に掲載された最高裁令和6年4月26日判決です。

 上告人が技術職として雇用され、その際に技術職に限定する旨の合意がありました。その後、被上告人が、どの同意を得ることなく、総務課施設管理担当へ配置転換を命じました。

 裁判では、配置転換命令権の濫用に当たるか当たらないかが問題とされました。

 第1審と第2審は、配置転換権の濫用には当たらないと判断しました

 最高裁は、職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、個別的合意なしに配置転換を命ずることはできないと判断しました。その結果、配置転換命令が無効と判断しました。 

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(小学生の息子)
 このような場合は、整理解雇として、解雇が可能かどうかを検討することになります。①人員削減の必要性(職種廃止の必要性)、②解雇回避努力義務の履践、③被解雇者選定の妥当性、④手続の妥当性という4要素を検討することになります。
 

2026年3月 2日 (月)

【労働・労災】 パワハラ行為者に対する懲戒処分

 労働法実務パワハラの法律実務の解説を読みました。

 パワハラ行為者に対する懲戒処分は、難しい判断に強いられることが多いです。

 まず、パワハラを理由とした懲戒処分については、就業規則に定める懲戒事由に該当する事実が存在するかどうか、存在するとしても、当該懲戒処分を科すことが相当かどうか(処分の重さや手続等)を検討しなければなりません。

 とりわけ、雇用や職の喪失を伴う場合には裁判所は慎重に判断しています

 P188以下は、パワハラ加害者に対する懲戒処分を有効と判断したものと、無効と判断した裁判例をいくつか紹介してます。

 同僚に対して威圧的言動をとったなどとして出勤停止5-7日の懲戒処分を受けた事案は、従前の懲戒処分事例と比較して明らかに重たすぎるとして無効と判示した長崎自動車事件(福岡高判令和2年11月19日)が紹介されています。

 また、消防職員に対する懲戒処分例もいくつか紹介されています。

 氷見市事件は、停職6ヶ月の懲戒処分がなされた事案ですが、最高裁は有効と判断しております。

 糸島市・市消防本部消防長事件は、懲戒免職事案で、懲戒免職処分を無効と判示した福岡高判を紹介されていますが、最高裁は懲戒免職処分を有効と判断しております。

 長門市・市消防長事件も、分限免職処分を有効と判断しています。

 最高裁は、公務員のハラスメントに対しては厳格な姿勢を示しているように思います。

 


 

2026年3月 1日 (日)

【労働・労災】 損害賠償の相手方ー加害者が国立大学法人の職員である場合

 労働法実務パワハラの法律実務(旬報社)を読みました。

 加害者が国立大学法人の職員である場合、加害者個人を被告にするかどうか悩むことがあります。

 国立大学法人と職員との関係は労働契約であるものの、公務員と同様に国賠法に基づき国立大学法人のみが責任を負い、職員個人は責任を負わないのか、若しくは、職員個人も民法に基づき不法行為責任を負うのかについては、個人の責任を否定する裁判例と肯定する裁判例があります。

(個人の責任を否定した例)

① 大阪地判令和3年2月18日

  看護師長から看護師へのパワハラ行為、退職強要、違法配転行為

② 高松高判平成31年4月19日

  教員が行う教育活動

③ 神戸地判平成27年6月12日

  保険学研研究科長のハラスメント行為

(個人の責任を肯定した例)

④ 病院部門副部長のパワハラ行為

  →国立大学法人と民法上の雇用関係にある職員間の指揮監督及び安全管理作用上の行為であつて、教育研究活動等の国立大学法人の業務上の行為に当たらず、任用関係にある公務委員間における指揮監督又は安全管理作用上の行為ともいえず、純然たる私法経済作用というべき

 

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(唐子山城)
 裁判例は分かれているので、困りますね。

 

 


 

2026年2月28日 (土)

【労働・労災】 労働法実務 労災におけるメンタル疾患の法律実務(旬報社)

 今年の3月に出版された「労働法実務 労災におけるメンタル疾患の法律実務」です。

 7章で構成されています。

 第1章の労働保険制度のポイントは、以下のとおり説明されています。

 「⚫労災保険制度は、業務上の傷病・死亡や通勤による傷病・死亡について、使用者の過失の有無を問わず、法律に定められた定型的な給付を社会保険制度のもと行うものである。

 ⚫労災保険の適用事業は、労働者を使用する全ての事業である。

 ⚫労災保険法の適用対象となる労働者は、労基法上の労働者であり、客観的な事実や実態に基づき、「使用される者で、賃金を支払われる者」と言え、実質的な使用従属関係があるかどうかにより判断される。

 ⚫労基法上の労働者とは言えない者であつても、特別加入がなされれば、労災給付がなされる。

 ⚫副業や兼業をしている労働者が、「複数事業労働者」に該当し、複数の事業の業務上の負荷を総合して評価した場合に業務起因性が認められる場合には、複数業務要員災害に当たるとして保険給付が行われる。

 ⚫業務災害として認定を受けるためには、業務遂行性が認められること、業務起因性が認められることが必要であり、精神障害の場合には、業務起因性を判断するための労災認定基準が設けられている。

 ⚫被災労働者にとっては、通勤災害よりも業務災害と認定された方が有利になるため、可能な限り業務災害に当たる方向で検討を進めるべきである。

 ⚫保険給付の中には、被災労働者及びその家族を支えるための様々な種類が存在する。」

 第2章は、精神障害の労災認定です。

 「⚫労基署における認定実務においては、「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(令5・9・1基発0901第2号)に基づいて業務上外の判断がなされる。

 ⚫現在の精神障害と発病の因果関係については、ストレスと個人のぜい弱性の相関関係によって発病するという「ストレスー脆弱性理論」を前提として、業務が相対的に有力な原因であるかによっているのが行政実務である。

 ⚫行政実務は認定基準によっているが、認定基準の意味を把握するためにも実務要領や専門検討会議の議事録を参照することが必要である。

 ⚫行政実務上、同種労働者基準説をとることになっているが、司法上の判断は分かれている。」

 「ストレスーぜい弱性理論」については余り勉強したことがありませんでした。この理論は、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷が非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こり、脆弱性が大きければ、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとするもの」であり、現在の精神医学においても一般的に採用され、裁判例上も広く採用されているものである。そして、「ストレスーせい弱性理論」に基づいて、労災保険の対象を確定するための因果関係が認められるために、発病からおおむね6か月の心理的負荷を判断して、これが強度のものであったかについて、認定基準の別表を参照しつつ判断することになります。

 第3章は、労災申請手続の実務です。

「⚫精神障害の労災事案を受任した場合、業務起因性のみならず、発病関係をも重視して調査を行うべきである。

 ⚫電子データ等の証拠の散逸を防ぐべく、業務起因性の調査は速やかに行うべきである。

 ⚫証拠収集手段として、主として、①労基署が使用者等に対し調査権限を行使することのほか、②被災労働者側から使用者に対して証拠の任意開示を求めること、③証拠保全手続を行うことの3つがあり、使い分けを行うべきである。

 ⚫被災労働者ないし遺族は経済的に困窮している場合があり、申請中の生活を支える制度の案内を行うべきである。

 ⚫労災保険請求の審理の各段階の特徴をよく把握し、対策を行うべきである。

 ⚫不服申立手続の請求期間は2か月ないし3か月ないし6か月と短いため、注意すべきである。

 ⚫労災給付の時効は2年と短期間的な場合が多く、注意すべきである。

 ⚫労災の打ち切りについては、治癒(症状固定)の概念を踏まえ、慎重に対応すべきである。」

 第6章は、労災事件における労働時間です。

 「⚫労災認定基準において、労働時間は極めて重要な位置づけがされており、労働時間の立証に努めるべきである。

 ⚫労基法上の労働時間と業務起因性の判断基準としての労働時間は異なる概念である。

 ⚫業務起因性の判断基準としての労働時間は、業務のために必要な活動に従事していることが客観的に明らかであると言える時間のことをいう。

 ⚫業務起因性の判断基準としての労働時間の立証手段は様々なものがあり、業務のために必要な活動に従事していることを客観的に裏付けていくべきである」

 →業務起因性の判断基準としての労働時間は、業務の過重性を図るための労働時間であるため、時間外割増賃金の対象となる労基法上の労働時間とは趣旨目的が異なっており、それよりも緩やかに広い範囲で労働時間が認定される傾向にあると説明されています。

 


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2026年2月27日 (金)

【労働・労災】 都道府県警察所属の警部補が自殺した場合において、当該都道府県警察を置く都道府県が、上記警察補の上司らが上記警部補の心身の健康を損なうことがないように注意する義務に違反したことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うとされた事例 最高裁令和7年3月7日判決

 判例タイムズNo1540号で掲載された最高裁令和7年3月7日判決です。

 広島高裁は、「精神疾患等の公務災害の認定について」(認定基準)の認定要件に係る「発症直前の1か月以上の長期にわたって、質的に加重な業務を行ったこと等により、1月当たりおおむね100時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合にいう質的に過重な業務を行ったとはいえないから、Aの自殺とAが従事した業務との間に因果関係はないと判断しました。

 認定基準においては、認定要件の1つとして、「対象疾病発症前のおおむね6か月の間に、業務により強度の精神的または肉体的負荷を受けていたことが認められること」を要件にしております。

 この事案だと、100時間を超えたのは、6ヶ月の中では、1回だけでした。

 しかしながら、最高裁は、

(1)上記警部補の自殺直線の1か月間における時間外勤務時間数は、その前の1か月間における約43時間から、その場合以上に増加して112時間を超えるに至っており、上記警部補が自殺直前の時期に行っていた業務の量は、従前から行っていた業務に相当程度の負荷を伴う複数の業務が加わることによって大きく増加していた

(2)上記警部補は、自殺直前の1か月間に、僅か1日の休みを挟んで14日間もの連続勤務を2回にわたって行っており、これらの連続勤務の中には拘束時間が24時間に及ぶ当直の勤務がそれぞれ5日含まれていた上、上記警部補は、各当直明けの非番の日にも相当の時間の勤務を行った

(3)上記警部補が自殺の当時発症していたうつ病エピソードについて、上記警部補が自殺直前の時期に行っていた業務の他には、その発症に寄与したと解すべき事情はうかがわれない

(4)上記上司らは、上記警部補について上記の複数の業務が加わったことを当然に把握している立場にあった上、上記警部補が勤務する甲番の勤務日誌を閲覧し、上記上司らのうち1人は上記警部補から時間外勤務実績報告書の提出も受けていたこと

(5)上記上司らのうち1人は、上記警部補が自殺の3か月前に受けたストレス診断で最低評価となっていたことを知っていた

(6)上記上司らは、上記警部補の負担を軽減するための具体的な措置を講じていない

 という事情の下では、都道府県は、警部補の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務に違反したことを理由として国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うと判断しました。 

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(高知城)
 三浦守裁判官の補足意見では、労災認定基準に示された知見について、法令で定めるものではないから、これらに示された知見を斟酌しうるといっても、形式的に当てはめるべきものではなく、あくまで、経験則上の1つの知見として斟酌するものであることが指摘されています。

 

2026年2月25日 (水)

【労働・労災】 休職の法律実務 (旬報社)

 休職の法律実務(旬報社)を購入しました。「休職」とは、ある労働者について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除するまたは禁止することをいいます。

 労働者が健康を害した状況にあり、就労が困難な状況にある労働相談においては、①健康保険法上の傷病手当金受給手続、②傷病休職制度の適用とその問題点、③当該傷病についての労災申請、④労災申請に対し不支給決定がなされた場合の不服申立手続、⑤労災と認められた場合の解雇禁止の主張、⑥使用者の安全配慮義務違反等について追及すべきことになります。

 過去のケースにおいても、概ねこのような流れで推移しているように思います。

 近時メンタル事案など、労使が対立するようなケースも散見されるようになりました。

 勉強はしておく必要はあります。

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2026年2月11日 (水)

【労働・労災】使用者の労働時間把握義務につき、労働時間を労働者の自己申告で把握することは不適法であるとして、タイムカードに沿った時間外勤務時間を認めた事例 名古屋高判令和6年2月29日判決

 判例時報No2637号で掲載された名古屋高判令和6年2月29日判決です。

 労働時間管理における自主申告制の適法性については、以下のとおり判断しました。

 使用者は、労働者の労働時間を適正に把握する義務を負っているが、その把握方法として、自己申告制が許容される場面は限定される。労働時間を労働者に自己申告させること自体、曖昧な労働時間管理となりがちであり、所定労働時間を超える労働時間の申告を躊躇させる方法に働くものだからである。

 平成29年1月20日付厚生労働省労働基準局長「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」におても、自己申告制はやむを得ない場合の例外的な措置である旨が明記されている。

 個々の事業場の実情に照らして自己申告制による労働時間の把握が認められる場合はあるが、Yの事業場において、敢えて自己申告制を採用すべき事情は何ら認められない。したがって、本件における自己申告制は不適法であって、Xらの労働時間はタイムカードによって把握すべきである。

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                            (嫁ちゃんランチ)

 なお、平成31年4月1日に施行された労安法66条の8の3は、「事業者は、厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」と定め、同規則52条の7の3は、「厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする」と定めています。

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