判例タイムズNo1542号が届きました。基本的に毎月1冊届きます。そのため判例時報よりは分量があります。
(道後・ふなや)
田舎弁護士の視点で、関心を持った解説や裁判例を紹介します。
①医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム。。。。交通事故事案を除き、医療に絡む事案は、数えるほどしか経験しておりません。医療事案というのは、依頼人当事者の熱意も非常に多い事案です。ただ、まともに闘えためにはそれなりの資金が必要です。専門医からの意見書の取付だけでも重なれば100万円位必要になりますし、また、医学書はなんと言っても高いです。たまに、患者さん側で自分がこんなに苦しんでいるのだから弁護士は助けてくれるだろうと思われる方がいますが、医学的知見を得るためには相応のコストを負担していただく必要があります。しかもその医学的知見が患者さんの思いと相反することもあるのです。今では、基本的には専門外ということで相談自体を受けておりません。
次に、②夫婦の一方が他方の名義預金を引き出した場合の不法行為・不当利得の成否についての裁判官の論文です。これは、主要な争点にはなりませんが、派生的に質問を受けることがあります。論文での事例はかなり複雑なので、相談の多い同居中の夫婦の共有財産である預金を出金されたというような場合についての相談があります。
どうでしょうか。財産分与で考慮されると回答する弁護士が少なくないのではないかと思います。
ただ、裁判例は、違法説、折衷説、適法説と、裁判官の間で見解が大きくわかれているようです。
さらに、③糸島の消防士に対する懲戒処分の2つの最高裁判例(令和7年9月7日判決)です。懲戒免職処分、停職6月の懲戒処分、いずれも有効と判断しております。
反対に、④地方公務員である原告に対し酒気帯び運転をして物損事故を起こしたことを理由としてなされた懲戒免職処分が、考慮すべき事項を考慮に入れないままされたものとして、裁量権を逸脱し又はこれを濫用した違法があると判断された事例(静岡地裁令和7年3月6日判決)には驚きました。公立小学校の教諭が、酒気帯びで物損事故まで起こしているという事案です。ところが、裁判所は、原告が、本件運転当時せん妄であり、せん妄であれば責任能力等の観点から非難可能性の程度を左右する重要な事情であるにもかかわらず考慮に入れないまま判断されたことを重くみて処分を取り消しました。
最後は、⑤建物の瑕疵を理由に、建物の施工者の不法行為責任及び住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく瑕疵担保責任を認めた上で、建物建替費用相当額が損害に当たることを否定し、各瑕疵の補修費用相当額等の限度で原告らの請求を一部認容しました(東京地裁令和6年8月23日判決)。
不法行為の成否については、有名な平成19年最判と平成23年最判があります。
平成19年最判は、9階建ての共同住宅・店舗として建築された建物をその建築主から購入した上告人らが、当該建物にはひび割れや鉄筋の耐力低下等の瑕疵があると主張して、同建物の設計及び工事監理をした株式会社及び同建物の施工をした株式会社に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求するなどした事案において、建物の建築に携わる設計、施工者及び工事監理者は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い、設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体または財産が侵害された場合には、原則として、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う旨判示しました。
そして、平成23年最判は、上記の建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体または財産に対する医医研が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると判示しました
本判決では、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵には該当しないものの、瑕疵担保責任の瑕疵には該当するとしてその責任を認めています。
以上が、判例タイムズNo1542号で田舎弁護士が気になった解説です。
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