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2026年3月14日 (土)

【法律その他】最高裁判所令和7年12月23日第3小法廷判決 消費者が液化石油ガスの供給等に関する契約を終了させる場合に消費設備に係る配管の説地費用等に関して所定の金額を液化石油ガス販売事業者に支払う旨を定めた条項が、消費者契約法9条1号にいう「当該消費契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たるとされた事例

(最高裁判所判決文)

1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 (1) 被上告人は、液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給等を業とする株式会社である。
 (2) 被上告人は、令和元年頃、株式会社東栄住宅が販売する戸建て住宅(以下「本件住宅」という。)にLPガスの消費設備に係る配管及びガス栓(以下、併せて「本件消費設備」という。)を設置したが、本件消費設備の部品代金や設置費用、給湯器やそのリモコンの設置費用等(以下、本件消費設備と給湯器等を併せて「本件消費設備等」といい、本件消費設備等の設置費用等を「本件設置費用」という。)を東栄住宅に請求しなかった。
 (3) 上告人は、令和元年6月、東栄住宅から本件住宅を購入した。その際、東栄住宅は、上告人に対し、東栄住宅が指定するLPガス販売事業者である被上告人からLPガスの供給を受ける必要があるなどと説明した。
 (4) 上告人は、令和元年7月、被上告人との間でLPガスの供給等に関する契約(以下「本件供給契約」という。)を締結し、本件住宅へのLPガスの供給を受けるようになった。
 (5) 本件供給契約に係る契約書には、次のような条項がある
 ア 被上告人が本件住宅にLPガスを供給する期間は、供給開始日から10年以上とする。
 イ 被上告人が負担した本件設置費用は21万円(消費税込み)であり、上告人が被上告人から本件住宅へのLPガスの供給を受けている間、被上告人はこれを請求しない。
 ウ 上告人は、供給開始日から10年経過前に本件住宅へのLPガスの供給を終了させる場合、本件設置費用に関し、被上告人に対し、次の算定式で得られた金額(以下、当該算定式で得られる金額を「本件算定額」という。)を、供給終了後、直ちに支払う(以下、この条項を「本件条項」という。)。
 (算定式)
 21万円-{21万円×0.9×(供給開始日から供給終了日までの経過月数/120)}
 (6) 本件消費設備は、本件住宅に付合しており、本件供給契約が締結される前から上告人がこれを所有している
 (7) 上告人は、令和3年6月、被上告人に代わって日本瓦斯株式会社から本件住宅へのLPガスの供給を受けることとし、被上告人からの供給は終了した。
 2 本件は、被上告人が、本件条項は、本件設置費用に関し、上告人に本件算定額の支払義務があることを定めた合意である旨主張し、上告人に対し、本件算定額である17万3775円及び遅延損害金の支払を求める事案である。
 上告人は、本件条項は、消費者契約法(令和4年法律第59号による改正前のもの。以下同じ。)9条1号にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」(以下「違約金等条項」という。)に当たり、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴って被上告人に生ずべき平均的な損害は存せず、その全部が無効になるなどと主張して争っている。
 3 原審は、前記事実関係等の下、本件条項は、10年間にわたって上告人から被上告人に対して支払われるガス料金の中から回収することが予定されていた本件設置費用について、その未回収分を上告人において支払う旨の合意であって、違約金等条項に当たらないと判断し、被上告人の請求を認容した。
 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
 (1) 被上告人は、本件住宅に本件消費設備等を設置しながら、東栄住宅に対して本件設置費用を請求しておらず、上告人は、本件住宅の購入に当たって東栄住宅より被上告人からLPガスの供給を受ける必要がある旨説明を受けていた。このことからすると、被上告人は、東栄住宅の協力の下に、本件住宅を購入した者との間で優先的にLPガスの供給契約の締結について交渉することができる事実上の地位を確保するため、自らの判断で本件設置費用を東栄住宅に請求しなかったということができる。また、被上告人は、上告人と本件供給契約を締結するに当たり、上告人が被上告人からLPガスの供給を受けている間は上告人に本件設置費用を請求しないこととするとともに、本件条項により、上告人が供給開始日から10年経過前に本件供給契約を終了させる場合は、経過期間に応じて本件設置費用に関して支払われるべき本件算定額を逓減させることとしていたが、これらは、本件供給契約を締結するように上告人を誘引し、併せて本件供給契約が短期間で解約されることを防止し、本件供給契約を長期間維持するためのものであったといえる。このような本件供給契約の締結に至るまでの経緯及び本件供給契約の内容からすると、本件設置費用は、本件供給契約を獲得し、これを長期間維持するために先行投資された費用ということができる。
 また、本件条項は、一見すると、本件消費設備等の設置の対価として本件算定額の支払義務を定め、上告人が10年間にわたって被上告人に支払うガス料金から本件設置費用を回収することを予定するものであったようにもみえる。しかしながら、本件供給契約上、本件算定額は供給開始日から10年が経過するまでの間において1か月ごとに一定額ずつ減少するとされているものの、10年経過後には上告人が被上告人に支払うべきガス料金が減額されるという定めはなく、本件設置費用とガス料金との関係は明確にされておらず、本件設置費用がガス料金から回収されることになっていたのかも明らかではない。このような本件供給契約の内容に加え、被上告人が、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約を多数締結しているLPガス販売事業者であることからすると、被上告人においては、既に消費設備の設置費用の回収が終わっている契約者に対し、従前と同様のガス料金を設定するなどし、他の契約者の消費設備の設置費用を負担させることができるような料金体系となっていて、実際には、上告人のみならず、契約者全体から得られるガス料金から本件設置費用を回収する仕組みとなっていたことがうかがわれる。これらのことからすると、本件算定額が本件消費設備等の設置の対価といえるものかどうかは明らかではないといわざるを得ない。
 以上からすると、本件条項は、本件消費設備等の設置の対価を定めたものではなく本件供給契約が供給開始日から10年経過前に解約されるなどして被上告人がその後のガス料金を得られなくなった場合に本件算定額の支払義務を負わせることで、短期間の解約が生ずることを防止し、本件供給契約を長期間維持することを図るとともに、併せて先行投資された本件設置費用に関して被上告人が被る可能性のある損失を補てんすることも目的の一つとするものというべきであり、実質的にみると、解除に伴う損害賠償の額の予定又は違約金の定めとして機能するものということができる。したがって、本件条項は、違約金等条項に当たるというべきである。
 以上と異なる見解の下に、本件条項が違約金等条項に当たらないとした原審の上記判断には法令の解釈適用を誤った違法がある。


 (2) 本件条項が違約金等条項に当たることからすると、本件算定額の全部又は一部が、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害、すなわち、一人の消費者と被上告人との間で、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約が解除されることによって被上告人に一般的、客観的に生ずると認められる損害の額を超えるものである場合、本件条項は当該超える部分について消費者契約法9条1号により無効となる。そして、この点について、本件条項の目的の一つが、先行投資された本件設置費用に関して被上告人が被る可能性のある損失を補てんすることにあることからすると、LPガスの供給契約が解除されてそれ以降のガス料金を得られなくなると、被上告人において先行投資費用として負担した消費設備に係る設置費用の未回収分の損害が生じたようにみえなくもない。
 しかしながら、上記のとおり、供給開始日から10年が経過しても上告人が被上告人に支払うべきガス料金が減額されることになっておらず、本件設置費用とガス料金との関係が不明確なものとされていたという本件供給契約の内容等からすると、被上告人において、ある契約者に係る消費設備の設置費用は、契約者全体から得られるガス料金から回収する仕組みとなっていたものというべきである。このことに加え、本件供給契約と同種のLPガスの供給契約においてLPガスの価格に法令上の規制がなく、LPガス販売事業者は自由にガス料金を設定することができることも併せて考慮すると、被上告人としては、解除時点では消費設備に係る設置費用の全部を回収できていない契約者が一定数生ずるという事態が起きることを見越し、利益が確保できるように契約者全体のガス料金を適宜設定し、設置費用が未回収となったことの負担を他の契約者に転嫁することが可能になっていたといわざるを得ない。そうすると、上記事態が起きたとしても、被上告人に上記未回収分の損害が生じたとはいえないというべきである。
 そして、他に、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害に当たり得るものは見当たらない。
 以上からすると、本件供給契約と同種の消費者契約の解除に伴い被上告人に生ずべき平均的な損害は存しないというべきである。
 したがって、本件条項は、その全部について消費者契約法9条1号により無効となるというべきである。
 5 以上によれば、原審の上記違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであって、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、被上告人の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は是認することができるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 なお、裁判官林道晴の補足意見がある。
 裁判官林道晴の補足意見は、次のとおりである。
 私は、法廷意見に賛同するものであるが、補足して若干意見を述べておきたい。
 本件は、かねてからLPガス販売事業において「無償配管」や「貸付配管」と呼ばれていた商慣行(以下「無償配管の商慣行」という。)に関する法的問題点のうち、消費者契約法に関するものについて判断を示したものである。
 無償配管の商慣行とは、戸建て住宅の建築の際、建設業者等が、提携しているLPガス販売事業者に当該住宅の消費設備に係る配管(以下「屋内配管」という。)の工事を無償で行わせ、当該LPガス販売事業者は、当該住宅の購入者等(以下「家主」という。)とLPガスの供給契約を締結する際に、屋内配管の設置費用を一括して請求せず、当該家主が所定の期間内に当該供給契約を解約するなどの場合に、当該設置費用の精算を求めるというものである。無償配管の商慣行については、本件のように、ガス料金と設置費用との関係が不明確なものとされていることが多く、そのことによってガス料金が不透明なものとなっている上、家主が短期間で解約しようとすると高額な設置費用を一挙に支払うことを余儀なくされるため、LPガス販売事業者を選択する自由を阻害するおそれがあるなどの問題点のあることが指摘されており、これまでその是正に向けた取組が経済産業省や公正取引委員会等によって種々行われてきた。そして、令和6年7月2日に改定された液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針において、今後、無償配管の商慣行を行わない方向で取り組んでいくことが望ましい旨が明記されるに至ったものの、本件条項と同種の条項の法的性質やその効力をはじめとする複数の重要な法的問題点(本件では、被上告人は、屋内配管が本件住宅に付合し、上告人がその所有権を有することについて争っていないが、屋内配管が戸建て住宅に付合するか否かなども上記法的問題点の一つといえる。)について、いまだその解釈等が定まっていなかった。
 本判決は、無償配管の商慣行を巡る上記現状に鑑み、本件条項が、違約金等条項に当たり、消費者契約法9条1号により全部無効となるとする判断を示したものである(なお、最高裁令和6年(受)第1373号同7年12月23日第三小法廷判決は、屋内配管が原則として戸建て住宅に付合するものであることなどについて判断を示している。)。もっとも、本判決が消費者契約法9条1号の平均的な損害について述べたところは、大量取引を前提とした継続的なLPガスの供給契約において、LPガス販売事業者が、供給契約全体で発生するリスクを計算してガス料金を適宜設定できる立場にあるということのみならず、屋内配管の設置費用とガス料金との関係をあえて不明確なものとすることで、ある契約者に係る設置費用を当該契約者からだけではなく、契約者全体から回収するという仕組みを構築していたことに着目してなされた判断である。そして、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則16条15号の7(令和6年経済産業省令第32号(令和7年4月2日施行)による改正後のもの)は、LPガス販売事業者に対し、基本料金、従量料金及び消費設備等に係る費用の三つに整理してガス料金等を請求するという、いわゆる三部料金制を採用することを義務付けているところ、LPガス販売事業者が、屋内配管の所有権が家主に帰属することを前提として、三部料金制の下、家主が月々負担すべき設置費用の額を基本料金及び従量料金と区別して請求するような場合には、本判決の射程は当然には及ばなくなるものと解される。LPガス販売事業者においては、今後、三部料金制を徹底するなどし、ガス料金の透明化を図ることが望まれるところである。
(裁判長裁判官 林 道晴 裁判官 渡辺惠理子 裁判官 石兼公博 裁判官 平木正洋 裁判官 沖野眞已)

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 ガス会社は、配管やガス設備を無償で設置する一方、契約書には一定期間内に解約した場合には、設備の未回収分を支払うという条項を設けています。そして、契約期間内の途中でガス会社を変更した家主に対しては、設備費用が請求されてきていました。

 この裁判では、設備費の請求が、実質的には違約金だと判断されたわけです。

 この点について、補足意見では、基本料金・重量料金・設備費を明確に分けて、設備費を月額でわかりやすく請求する三部料金制を採用している場合には、今回の判決の射程外となる可能性が示されています。

 

 

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