【金融・企業法務】 譲渡制限株式は、譲渡自由なのです 実は!
■ 譲渡制限株式とは
会社法では、株式の譲渡については株式譲渡自由の原則を定めています。株主は原則として株式会社に出資した資金の払戻が認められていないので、投下資本回収のために株式を第三者に譲渡する必要があります。ところが、日本の中小企業の株式会社においては、発行している株式の全てについて譲渡制限株式にしているところが大半です。つまり、株主が株主以外の第三者に株式を譲渡する場合には会社の承認を要する旨の定めを置いています。以下、株券不発行会社を念頭にみてみます。
■ 譲渡制限株式の譲渡可能性
では、株主は譲渡制限株式を第三者に譲渡できないか?というと、実は、譲渡自体は可能なのです。但し、当事者間では譲渡が有効だとしても、会社に対しては、株式譲渡を対抗できないという、相対的な効力となっております。
■ 譲渡制限株式について会社に譲渡承認請求
譲渡制限株式について会社に対して譲渡承認請求があった場合、会社は2週間以内に譲渡を承認するか否かを決定し、その結果を請求者に通知する必要があります。その期間内に通知がない場合には会社は株式譲渡を承認したものとみなされます(「みなし承認」)。「2週間以内に決定」とありますが、取締役会設置会社であれば取締役会で対応できますが、取締役会非設置会社であれば株主総会の手続が必要ですから、株主総会の手続(株主総会招集通知は1週間前には必要)が必要であれば、そもそも株主総会の手続になれていない会社が大半でしょうから、「2週間以内に譲渡を承認するか否かの決定」が事実上困難であることも多いと考えられます。
(以下、譲渡承認請求に買取先指定請求があった場合)
■ 株式買取通知は40日以内に通知が必要(会社が買い取る場合)
会社が苦労して株式譲渡不承認決定通知書を期限までに請求者に送ったとしても、次には、会社が株式を買い取るのであれば、会社は当該通知から40日以内に会社自ら取得する旨を通知する必要があります(株式買取通知)。会社が買い取る場合には、取締役会設置会社であっても、株主総会の特別決議を経る必要があります。そして、株式買取通知を行う場合に、株式価格相当額(簿価準資産価格)を供託所に供託した供託所の写しも同封しなければなりません。
■ 株式買取通知は10日以内に通知が必要(指定買取人が買い取る場合)
他方、指定買取人に買い取らせる場合にも、取締役会設置会社においては取締役会の決議、取締役会非設置会社においては株主総会の特別決議によって行います。基本的には会社が買い取る場合と同じですが、指定買取人は、株式買取通知と供託所の写しを株式譲渡不承認決定通知書の日から10日以内に完了させることが必要です。
■ 株式の代金
簿価準資産額に基づく株式価格に不満を抱く当事者は、株式買取通知の日から20日以内に株式売買価格決定申立を行う必要があります。申立期限を徒過してしまった場合は、簿価純資産額に基づく株式価格相当額が確定的な株式売買価格として決定されることになります。
■ まとめ
譲渡制限株式において譲渡承認を拒否した場合、これほど複雑な作業が予定されるのです。これほどまでの作業を強いられるのであれば、結果的に譲渡を承認することも多いのではないかと思います。
それ故に、「譲渡制限株式」は譲渡自由なのです。
経営者の皆様、当社は「譲渡制限株式」だとして安心しきっていませんか。
最後に田中亘東京大学教授の説明を引用します。
「ポイントは、譲渡制限株式といえども、究極的には、株主は当初意図した譲渡先か、さもなければ株式会社の指定した買取人または会社自身に対し、株式を譲渡する道が確保されているということである。」

(楢原山)
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