【金融・企業法務】 美容師が使用者との間で締結した退職後の競業避止義務に関する合意に違反して、退職後に近隣の店舗で美容師として勤務した事案において、使用者の損害賠償請求を一部認容した事例 令和7年3月26日付東京地裁判決
判例時報No2634号で掲載された令和7年3月26日付東京地裁判決です。
タイトルからすれば、珍しく使用者を勝たせているなという印象を受けました。
争点のX(原告)とY1(元勤務美容師)との間の競業避止義務に関する合意が公序良俗として無効であるか否かについては、①美容師が退職時にXの顧客情報等を使用して顧客を転職先の店舗に移すことによってXの利益が害させることを防ぐためには、近接する場所での競業を禁止するのは合理的な方法であるといえる、②競業避止義務の範囲は、退職後1年間東京都内に限定されているから、退職後に美容師として就労することができなくなるわけではなく、前記の目的に照らして合理的なものといえるとして、代償措置がないことを考慮しても、公序良俗に反するとはいえないと判断しました。
但し、損害額については、Xは800万円弱の請求をしておりましたが、裁判所はわずか6万円です。
使用者は一部勝訴しておりますが、その金額はわずか6万円です。
裁判所は、Y1及びXを退職して競業をしていない美容師3名の再来失客(退職前1か月間にXが運用する店舗で当該美容師を指名した顧客)のうち当該美容師の退職後は同店舗を利用していない顧客の割合)を参照して、競業禁止避止義務違反による顧客の減少による逸失利益を算定しました。
具体的には、Y1の退職前1ヶ月間のY1の指名客数が135人であること、Y1の再来失客率が97%であること、退職後に競業行為をしていない美容師3名の再来失客率(88%、66%、60%)からすれば同店舗の美容師が退職した場合には競業をしていなくても概ね90%の顧客が来店しなくなることもあり得ることを認定し、これらの事情を基礎として、Y1が競業をしたために同店舗に来店しなくなった顧客の数は約10人であるとして、この人数に顧客一人当たりの単価を乗じて、競業避止義務違反による顧客減少による逸失利益を6万円としました。
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