【金融・企業法務】 中小企業のM&Aでの、泣き所
中小企業のM&Aでは、株式譲渡というスキームが多様されています。
しかし、このスキームでは、売主となる株主が本当に対象会社の株式を全てを所有しているのかということが問題になることがほとんどです(印象)。
この点について、「M&Aの視点からみた中小企業の株式・株主管理」(株式・株主管理)は、この点について、3つのポイントを提示しています。
「1.株式譲渡スキームでは、売主となる株主の特定が不可欠な調査事項である。
2.株主名簿を昔から作成している会社においては、株式の変遷を追うことが容易となり、株リスクの把握に資する。
3.株主名簿でない書類を株主名簿と称していることがあるため、注意が必要である。」(P22)
「株式譲渡契約を締結する売主は、通常M&Aをする際に最終契約書において、自己が正式な株主であることについての表明保証を行うため、表明保証違反にならないために現在の株主が真の株主であるかを正確に把握しなければならない。そのため、株主名簿を見て最新の株主と株式数がどうなっているかを確認する必要が出てくる。原始定款記載の株主(発起人)から現在の株主構成に至るまでの変遷がエビデンスベースで揃っていることで現在の真の株主であると判断することができる。株主の特定を買い手が要求する場合には、原始定款と最新の株主名簿を見比べて、株主の異動の有無を調査するところからスタートすべきである。」(株式・株主管理P23)
しかしながら、設立時以降の株主名簿がない場合は、株式の変遷を追うことが大変な作業になります。
↓
株主調査によっても株主が確定できない場合には、「株式が売買の目的物である以上、契約当事者が真の株主であることが大前提となることから、変遷が追えない範囲が過半数ある場合は、もし株主譲渡後に株の帰属を争われた場合、買い手単独で株主総会決議を取ることが困難になるため、株式譲渡ではなく事業譲渡や分割などの、株主リスクの小さい他のスキームで進めるかについても買い手としては検討事由になってくる。」
↓
なぜ株主の調査をしなければならないようなことが発生した大きな原因は、「平成2年改正旧商法の施行前に設立された株式会社は、設立時に7人以上の発起人が必要であった。そのため、出資は社長のみが行い、他6名は名前だけ借りて設立する会社が多く存在していた。」
ところが、「中小企業M&Aの案件は、古い会社が多いため、原始定款では7人以上載っているにもかかわらず、現在の株主名簿には1人若しくは2人しかいないという会社に頻繁に遭遇する。設立当時から現在までの株式の変遷を確認していくのと同時に、発起人が実質株主だったのか名義株主だったのかの判断等も行っていくことになる。」「買い手としては、このような問題点が存在していることを認識したうえで、早めに法務DDで詳細な株主の変遷調査をしていくことになる。」(株式・株主管理P24)
↓
「仮に、対象会社を探しても株主名簿が見付からない場合には、株主総会の議事録や株主として記載されたその他の客観的な資料から判断していくしかない」
また、中小企業の場合、「過去に行われた株券の交付のない株式譲渡の問題」も検討が必要です。なぜなら、「中小企業では株券が発行されず現在に至る株式会社が多く存在し、過去の変遷においても株券を交付せずに譲渡しているケースが散見される。株券発行会社で現に株券が発行されていない場合には、過去の株式譲渡の有効性に加え、クロージングにおける株式譲渡の手続が論点となり、実務上の対応策が必要となる。」(株式・株主管理P105)
↓
この点を解決するためには、株主権の取得時効という場合もありますが、そのハードルは高そうです。
« 【金融・企業法務】M&Aの視点からみた中小企業の株式・株主管理 | トップページ | 【金融・企業法務】商事法務 2025年度第6回会員解説会「公益通報者保護法改正のポイント」 »









































































![: チェーンストアエイジ 2011年3月1日号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51YpQR-PogL._SL75_.jpg)




































![埼玉弁護士会: 遺留分の法律と実務[第三次改訂版] 相続・遺言における遺留分侵害額請求の機能](https://m.media-amazon.com/images/I/51w65h8gDoL._SL75_.jpg)























最近のコメント