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2025年8月26日 (火)

【労働・労災】 調理場の保存食を窃取したことを理由として教育委員会が学校給食の調理員に対してした懲戒免職処分が違法であると判断された事例 令和6年7月22日名古屋地裁判決

 判例タイムズNo1534号で紹介されていた令和6年7月22日名古屋地裁判決です。

 取扱い方針は公金または物品を窃取した者は免職とされていたことから、懲戒免職処分となってしまつたという事例です。

 しかし、裁判所は、以下の理由で懲戒免職は重たすぎると判断しました。 

 取扱い方針は重要ですが、その機械的な判断は避ける必要があるようです。

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(笠松山)

(2) 検討
 上記(1)の判断枠組みに基づき、本件懲戒免職処分が社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者である処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものと認められるか否かについて検討する。
 ア 本件非違行為は、学校給食の調理員であった原告が、公金物である保存食を窃取したというものであるが、窃取の対象物である本件物品は、油揚げ2袋及びパン2個であり(上記1(2)ウ)、その財産的価値自体は少額であって、その数も比較的少量にとどまる。また、本件非違行為の当時、本件物品4点のうち3点は保存期間が経過しており、その余の1点も保存開始から6日程度経過していたというのであり、それを検査等に使用することが必要となっていたことはうかがわれないから(上記1(2)ウ)、近い時期に廃棄されることが見込まれていたものと認められる。これらのことからすれば、財産的損害の点から見た本件非違行為の結果は、相当に軽微なものであるといわざるを得ない。
 他方で、安全な給食を提供する役割を担う学校給食の調理員が保存食を窃取する行為は、必ずしも財産的損害の程度にかかわらず、学校給食の衛生管理の適正な遂行及びこれに対する市民の信頼を損なう結果を生じさせ得るものである。しかしながら、このことを踏まえても、本件非違行為は一回的行為であり、原告が本件非違行為のほかに保存食等を窃取していたことを認めるに足りる的確な証拠もないことに加え、保存食の検査等のための本件物品の使用が現実に必要となったことはうかがわれないことを考慮すると、本件非違行為による公務の遂行及びこれに対する市民の信頼の失墜の程度が重大であるとまではいえない。
 さらに、上記1(3)ウのとおり、本件非違行為及び本件懲戒免職処分については、市教委の公表に基づく報道がされていることは認められるものの、原告が出勤しなくなかったことによる人員調整等の支障及び本件非違行為による他の調理員の信頼関係の毀損を除くと、本件非違行為により、被告の業務に具体的な支障が生じたことはうかがわれない。
 これらのことからすると、原告が、保存食を含む公金物の窃取が懲戒免職処分の対象となる行為である旨の注意喚起を受けていたにもかかわらず、明確な窃取の意思の下で、自己中心的な動機に基づいて本件非違行為に及んだものと認められること(上記1(2)イ及び(3)イ)などの被告指摘の事情を踏まえても、本件非違行為が免職を相当とする程度の非難可能性のある行為と評価することはできないというべきである。

 イ 本件非違行為は、本件取扱方針にいう「公金又は物品を窃取した」に該当し、その処分の量定の標準例は「免職」と定められている。

 しかしながら、一般に、窃取行為による財産的損害の多寡は、その非難可能性の程度に影響を及ぼす重要な要素であるところ、本件取扱方針においても、個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる量定以外とすることもあり得るとされていることや、免職は懲戒処分の中で最も重い量定であって、本件取扱方針に掲記された各非違行為についてみても、標準例として免職以外の量定が定められているものが少なくないことに照らすと、公金物の窃取に係る上記の標準例は、窃取行為による結果が軽微であることなどにより、処分の量定として免職を選択することが相当でないと評価すべき事情が認められる場合には、免職以外の処分を選択することを想定したものであると解される。上記アで検討したとおり、本件非違行為については、財産的損害の点から見た結果が相当に軽微であり、他にその結果や態様等の悪質性について重大視すべき事情は認められないことに照らせば、本件取扱方針の標準例に従って処分の量定として免職を選択することが相当でないと評価すべき事情があるというべきである。このことに加え、上記第2の2の前提事実(1)、上記1(3)ア及びイのとおり、原告が過去に懲戒処分歴を有しておらず、本件非違行為の後に謝罪や反省の態度を示していることなどの各事情を総合的に考慮すれば、原告に対し、免職を選択することは重きに失するものといわざるを得ない。本件懲戒免職処分は、これらの事情を看過してされたものであって、社会通念上著しく妥当を欠き、処分行政庁において、その裁量権の範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。
 

 ウ したがって、本件懲戒処分は違法である。

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