【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 労働条件2(賃金) 野川忍明治大学名誉教授
東京労働大学講座 労働法 労働条件2(賃金)は、野川忍明治大学名誉教授の解説となります。
Ⅰ 労働契約における賃金の意義
※労働契約関係における最重要義務としての賃金の支払い
※原則は民法624条(ノーワーク・ノーペイ) 例外としての民法536条2項(危険負担)
Ⅱ 法律上の賃金規制
(1) 賃金額の規制 → 最低賃金法(契約の自由の制約)
(2) 賃金支払方法の規制 → 労基法24条の4原則 (通貨払い原則【デジタル貨幣の容認】、直接払い原則、全額払い原則、定期払い原則)
(3) 休業手当 民法536条2項(全額支払う) 労基法26条(6割でいい)との併存 →???
民法と労基法とで、「責めに帰すべき事由」の内容が違う。
民法は、過失責任主義 不可抗力の場合は仕方が無い。労基法は、民法上は責めに帰すべき事由がない場合でも、賃金を支払う必要がある。例えば電気が止まったような場合にも、労基法26条を使って6割まで請求できる。労基法は、どっちがリスクを負うべきかという視点で考える。
Ⅲ 賞与と退職金をめぐる法律問題
(1)賞与をめぐる問題
※支給日在籍者条項の取扱い(大和銀行事件 最高裁昭和57年10月7日判決)
→査定対象期間中在籍し、支給日に退職している労働者への不支給措置の有効性?
最高裁は、条件付きで可能とする。
(2)退職金 功労報償と賃金の後払いという二重の性格
※同業他社への就職と退職金減額措置(三晃社事件 最高裁昭和52年8月9日判決)
※懲戒解雇と退職金不支給措置(小田急電鉄事件 最高裁平成15年12月11日判決)
Ⅳ 賃金システムの改革と法的課題
(1)能力主義賃金制度の導入と評価制度
※就業規則による導入の不利益変更性 ノイズ研究所事件 東京高判平成18年6月22日判決
※合理性の判断 ハクスイテック事件 大阪高判平成13年8月30日判決
※労働協約による導入(合理性の判断不要)
※人事評価 →人事評価権に内在する公正評価義務 (制度整備、開示説明、苦情処理システムの必要性)
(2)同一労働同一賃金の意義と課題
※働き方改革関連法における同一労働同一賃金の趣旨
労契法20条 → パート・有期労働法8条
最高裁平成30年6月1日判決
ハマキュウレックス事件 →各種手当ての相違につき多くを不合理と認定
長澤運輸事件 →精勤手当及び超勤手当以外の不合理性否定
最高裁令和2年10月13日判決
大阪医科薬科大学事件 →前者は賞与につき不合理性否定
メトロコマース事件 →後者は退職金につき不合理性否定
日本郵便三(東京、大阪、佐賀)判決 最高裁令和2年10月15日判決 → 各種手当の相違につき多くを不合理と認定
名古屋自動車学校事件 最高裁令和5年7月20日判決 → 基本給と賞与の格差
(3)賃金の切り下げをめぐる法的課題
※労働条件変更としての賃金切り下げ 米国(量的【解雇】に対応) 日本(質的に対応)
不利壁変更の手法 個別同意、労働協約、就業規則
※就業規則を用いた賃下げの諸相
大曲市農協事件 最高裁昭和63年2月16日判決 → みちのく銀行事件 最高裁平成12年9月7日判決
※個別合意を用いた賃下げ
山梨県民信用組合事件 最高裁平成28年2月19日判決
→当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべき
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