東京労働大学講座労働法「労働条件4(労働安全衛生と労災補償)」で、講師は小畑史子京都大学教授です。
(横峰寺遍路道)
Ⅰ 労災補償
1 イントロ
※労働安全衛生は、労災の予防 労災補償は労災が起きてしまった場合の救済
※国から、労災保険法による労災保険給付 →業務によって負傷疾病障害死亡が生じたといえるか否か
※使用者等から、民法の不法行為や労働契約の債務不履行に基づく損害賠償 義務違反があつたか否か
※労災保険制度の誕生 不法行為に基づく損害賠償請求においては、過失責任主義 労働者に立証 また、使用者等に資力がない場合も
→ 無過失責任制度 負傷等が業務に起因する(業務起因性)といえれば、使用者等の過失の有無は問わない労災保険制度
すべての事業主から保険料を徴収してプールをしておき、いざ労働者が労災にあつたときにそこから労災保険給付を支給する労使保険制度
2 業務災害
(1)種類
業務災害に関する保険給付 補償給付
複数業務要因災害に関する保険給付(※兼業・副業の労働者の場合) 補償の2文字がとれている
(2)業務災害
業務上とは、行政解釈によれば、業務起因性を意味する 業務起因性とは、業務又は業務行為を含めて労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることに伴う危険が具現化したものと経験則認められることと定義される
業務起因性があるというためには、その災害が、労働者の事業主の支配ないし管理下にある中で起こったことが必要(業務遂行性)
(3)手続
(4)業務起因性の判断
(5)業務遂行性
支配下、管理下
休憩しているとき、始業前の災害、事業場外の労災、出張中
※大分労基署長事件 福岡高判平成5年4月28日 出張所で夕食中に飲酒した後階段から転落して死亡 「通常随伴する行為」
(6)業務上疾病
※職業病リスト
※その他業務に起因することの明らかな疾病
(7)脳血管疾患・虚血性心疾患の業務起因性
※過労死
※(1)①発症直前から前日までの間に発生状態を時間的及び場所的に明確にしうる異常な出来事に遭遇したこと
②発症に近接した時期において特に過重な業務に就労したこと 1週間
③発症前の長期間にわたって著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと 6か月
※(2)過重負荷 自然的経過を超えて
※国・岡山労基署長事件 福岡高判令和5年9月26日 過労死ライン 月80時間 月80時間が超えていなくても総合考慮
連続勤務 勤務間インターバルの不足 総合的に考慮
(8)精神疾患とその末の自殺の業務起因性
※①ICD-10に分類あれる精神障害
②発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められる
③業務以外の心理的負荷及び個体的要因により当該精神障害を発病したとは認められない
※自殺は故意に死を至らしめるものではないか? しかし、業務上の精神障害によって正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され又は自殺を思いとどらせる精神的抑止力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたと認められる場合には、結果の発生を意図した故意には該当しない
※業務による心理的負荷評価表 業務以外の心理的負荷評価表
※国・熊本労基署長事件 福岡地判令和6年7月5日
(9)2020年労災保険法改正ー兼業・副業労働者の増加を受けて
※他の勤務先から得ていた賃金も、給付基礎日額の算定の際に合算
※単独では過労死ラインを超えることはないとしても、合計すると過労死ラインを超えていた場合、すべての勤務先での業務上の負荷を合計すると被災してもおかしくないレベルとなるならば、過労死・過労自殺・精神疾患は業務災害であると認定する
3 通勤災害
※補償の文字がつかない
※労働者にも一部負担金
※通勤
4 損害賠償
(1)民事損害賠償
※労災は、慰謝料は含まない
※不法行為 債務不履行
(2)賠償責任の軽減
※労働者側にも相当の寄与要因がある場合、過失相殺法理の類推適用や過失割合の按分等により損害賠償責任が軽減
※電通事件 最高裁平成12年 労働者自身の性格や家族の対応が減額事由になるのか? 労働者の健康に配慮して適切に管理する義務
(3)労災保険給付と損害賠償
※二重取りはできない
※労災保険法の給付をすれば労基法の補償はしなくていい 労基法の補償を行えば民法の損害賠償はしなくていい
※原因が第三者にあれば国は保険給付の価額の限度で第三者に対する損賠賠償請求権を取得 被災者が第三者から賠償を受ければ政府はその価額の限度で保険給付をしない
Ⅱ 労働安全衛生
※労災の防止は昔は労基法
※労働安全衛生法へ 労働者も注文主もリース業者等も義務主体 ソフトな行政手法も併用 夥しい数の規則を従える 労基監督官が監督 義務の内容としては、有害物質の使用禁止、危険な機械の製造許可制度、安全措置設置義務付、管理体制整備等
※健康診断を行う義務 年1回 健康診断結果の記録、医師等の意見を聴取 それを勘案して就業場所の変更・労働時間短縮等適切な措置をとる
※健康プライバシー 会社に健康状態、特に精神的状態を知られてくない
ストレスチェック(66条の10) 大きな会社であればいいのだが、そうでない会社の場合は。。。特定されてしまう
毎年1回 年々自分のデータが溜まっていく 会社の方には知られない しかし、休職 専門家と相談したいと考えた場合には、健康プライバシーを外して、労働者の要望に応じて会社が措置していく
最近のコメント