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2025年8月 7日 (木)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 労働条件3(休暇・休業)  竹内寿早稲田大学法学学術院教授

 東京労働大学講座労働法「労働条件3(休暇・休業)」で、講師は、竹内寿早稲田大学法学学術院教授です。

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                              (古権現山)

Ⅰ 総論:休暇、休業とは

1 法定の休暇、休業 / 法定外の(労働契約等に基づく)休暇、休業

  一時的に労働から離れる 本来は労働義務を負う日における労働義務が消滅ないし免除  VS 休日(もともと労働義務を負わない)  

2 休暇と休業  

Ⅱ 年次有給休暇

1 趣旨、沿革、実情

  ※賃金を受けながら休暇を保障

  ※ヨーロッパ諸国におけるバカンス制度に由来

  ※平成30年改正 5日分は使用者が時季指定して与えるよう義務付け

  ※令和5年 取得率65.3%

2 年休権の法的性格

  白石(しろいし)営林署事件 最高裁昭和48年3月2日判決 二分説  年休権を39条1項から3項に基づいて発生する使用者の義務ないし労働者の権利と、5項に基づく具体的な休暇の時季決定に関わる権利とに二分して理解する説

3 年次有給休暇の取得要件と日数

(1)概説 ①一定期間の継続勤務 + ②ある一定の期間における全労働美の8割以上の出勤

(2)継続勤務(労基法39条1項、2項も同様) ※雇い入れの日 ※在籍 ※勤務の継続性は実質的に判断

(3)全労働日の8割以上の出勤(労基法39条1項、及び、10項)※労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨

(4)年次有給休暇の日数及び単位(労基法39条1項、2項、3項、4項)

4 時季指定による年次休暇の取得

 ※時季指定の効果 具体的な時期が指定された場合には、使用者が適法に時季変更権を行使しない限り、当該具体的な時期に労働義務の消滅という効果+39条9項に基づく賃金(年次有給休暇手当)が発生

5 使用者の時季変更権

 ※事業の正常な運営を妨げる場合とは?

   →事業の内容、規模、当該労働者が担当する業務の内容、業務の繁閑、代替要員の確保の難易、同時季における休暇請求者の有無、人数などが諸般の事情を総合考慮して判断。

   一般的には、これらの諸般の事情を総合考慮して、①時季指定を行っている労働者の当該年休取得予定日における労働が事業にとって必要不可欠であり、かつ、②代替要員の確保が困難である場合(時季変更権の行使、不行使を判断する時点において、そのようなおそれ(蓋然性)が客観的に、具体的に認められる場合)には、事業の正常の運営を妨げる場合に該当すると判断される。

  時事通信社事件 最高裁平成4年6月23日判決 長期連続の年休の場合、労働者が使用者の業務計画や他の労働者の休暇取得等との事前の調整を経ないで長期連続の休暇について時季指定を行う場合には、休暇が事業運営にどのような支障をもたらすかの判断、休暇の時季や期間をどの程度変更するかの判断について、ある程度の裁量が認められている

6 年次休暇の利用目的

 →自由利用原則  休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由 白石営林署事件 

  使用者に目的を告知する義務を負わない 使用者は利用目的を尋ねることが許されず、利用目的の申告がなされないことを理由に時季変更権行使の適法性を根拠づけることもできない

 ※争議行為目的での年休利用?

7 計画年休  集団的にとる仕組み

 ※計画年休協定を締結することが必要

 ※各労働者の有給休暇のうち5日を超える部分であることを要する

 ※計画年休協定が締結された場合、当該労使協定が定める日数についてその定めに従い休暇日が特定される

 ※計画年休協定に基づく休暇付与に反対する労働者についても、発生する

8 使用者による時季指定を通じた年休付与の義務

 ※当該年度に付与される日数として10日労働日以上の年次有給休暇の権利を有する労働者に対して、年休日数のうち5日については、使用者が、時季を指定することにより、付与しなければならない

 ※労基法39条5項または6項の方式に年休が付与された場合、当該付与日数(5日を超える場合は5日)については、使用者が時季指定して年休を付与する必要はない

 ※使用者による時季指定にあたっては、あらかじめ対象労働者の意見を聴かなければならず、また、当該意見を尊重(して時季指定)するよう務めなければならない

9 年次有給休暇手当

10 取得されなかった年休の取扱い

 ※2年の消滅時効(労基法115条の「その他の請求権」)(令和2年の民法改正の変更を受けない)

 ※取得されなかった年休は、翌年度にのみ繰越可能

11 年休取得を理由とする不利益取扱い

 ※労基法39条は不利益取扱いを定めていない一方、附則136条が使用者は第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないと規定

 沼津交通事件 最高裁平成5年6月25日判決 附則136条はそれ自体としては使用者の努力義務を定めたもの 諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては、労基法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められない限り、公序に反して無効となるとすることはできない

Ⅲ 育児介護休業法に基づく休暇、休業

1 育児介護休業法の発展

2 育児休業、出生時育児休業、介護休業、子の看護等休暇、介護休暇の概要とこれらの休暇、休業の特徴

(1)育児休業

 ※満1歳未満の子を養育する労働者は、申出により、子が満1歳に達するまで、育児休業をすることができる

 ※事業主は申出を拒むことができない

 ※本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対し、事業主は、面談や書面交付等により休業の取得意向の確認を個別に実施しなければならない

 ※2回に分割して取得が可能

 ※事業主は、育児休業期間中の賃金の支払を義務づけられない 雇用保険法の下で、原則として、育児休業給付として休業前の賃金67%が支給される +出生後休業支援給付金(13%)   合計80% これは実質手取りに相当する

(2)出生時育児休業

 ※子の出生後、8週間以内の期間に、4週間を上限に取得可能 申出は、原則、休業2週間前まででよい

 ※労使協定の締結により、労働者が同意した範囲内で、休業中の就労が可能(休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分が上限)

(3)介護休業

(4)子の看護等休暇及び介護休暇

Ⅳ (年次有給休暇以外の)休暇、休業等の取得と不利益取扱い

1 不利益取扱いを禁止する明文の規定との関係

 ※産前産後の休業、育児介護休業法に基づく休暇、休業については、明文の規定あり

 ※強行規定

 ※これらの休暇、休業を申し出る等した労働者については、そのことを理由に、不利益取扱いをすることは、当該取り扱いがこれらの規定に違反しないと認めるに足りる合理的な特段の事情が存しない限り、原則、同条に違反するものとして違法となる

2 明文の規定に違反しない場合の公序(民法90条)違反の可能性

  →賃金の算定上、欠勤として取り扱うことは、違反しないが、休暇、休業を各種手当て、賞与の算定、昇給等との関係で欠勤扱いすることが、上記各規定に違反するとはいえない場合であっても、判例上は、更に、権利の行使を抑制し、ひいては法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるときは、休暇、休業を欠勤扱いとすることは公序に反して無効

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                           (古権現山登山道の落書き)

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