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2025年8月

2025年8月31日 (日)

【金融・企業法務】 買い手の視点からみた中小企業M&AマニュアルQ&A第3版 中央経済社

 中央経済社から出版された「買い手の視点からみた中小企業M&AマニュアルQ&A 第3版」を購読しました。

 20250824_151214                               (笠松山)

 M&Aのご相談やDDのサポート業務がここ数年で増えているように思います。ただ、多くの書籍は、大企業向けで、中小企業を対象にするものは乏しかったと思います。

 本書は、①中小企業M&Aへの入り口、②基本合意の前段階ー事前検討、③基本合意、④デュー・ディリジェンス、⑤最終契約、⑥M&Aの実行とPMIに章立てをして、具体的に解説がされています。

 中小企業の場合、会社法のルールに従って運用されているということは余りないように思われます。

 取締役会が設置されていても、取締役会が開催されたことはない

 株主総会も開催されたことはない

 監査役はいても監査をしたことはない

 株券発行会社なのに、株券がない

 株主名簿がない

 などなど

 金商法や東証などの法規制や取引所ルールのある大企業とは全く異なるM&Aになっております。

 買い手の視点から、中小企業を買収する際に、どのような点に注意を払いながら進めたらいいのかについて、本当にわかりやく説明がされています。🎵

 

2025年8月30日 (土)

【金融・企業法務】 企業の内部資料の開示経路と実務対応

 商事法務No2398号が届きました。

 その中で、企業の内部資料の開示経路と実務対応で、まず、取締役会議事録の閲覧・謄写が取り上げられていました。以前、田舎弁護士が関与している会社においても、取締役会議事録につき、審議内容をどこまで詳細に記録するか、取締役会資料の取扱いをどうするのかについては、しばしば検討課題になっております。

 まずは、取締役会が実質的な議論を交わす場となり、審議も活発化しているため、その内容はできる限り取締役会議事録に残しておきたいという要請、取締役会の実効性向上のために、決議事項や報告事項に関する資料が充実化していること 

 しかし他方で、取締役会議事録は、株主による閲覧謄写の対象となり、企業秘密の外部流失にも気を配る必要性があることから、審議内容の記載方法や資料添付の要否について問題意識を抱えてしまうことになります。

 そこで、後者の、株主による閲覧・謄写の請求ですが、実務上は、裁判所においては、株主が閲覧謄写の必要性について相応の理由を説明した場合には、閲覧謄写を許可する可能性が相応にあるという認識を有しておく必要があります。

 そして、実務上の見解として、詳細に記載することが望ましいとの指摘と、簡潔な記載とすることにも合理性があるとの指摘とがあり、なかなか一概に決することができない状況です。

 解説者によれば、「閲覧謄写請求の実態を踏まえた自覚的な選択の重要性である」とまとめております。

 取締役会資料についても、議事録の一部を構成するのか、それとも、議事録外の参考資料としておくことか、これも一概にはいえません。

 そこは、さまざまな工夫で対応、例えば、「取締役会資料には重要な内部情報が多々掲載されているはずであり、①参考資料は取締役会議事録の構成要素に含めないようにすること、②議事の経過の要領及びその結果を示すものとして必須の資料であったとしても、たとえばサマリー版、要約版などを議事録に添付することにとどめ、その他の部分は議事録外の参考資料にすることなどの工夫も一考に値する」と説明されています。 

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(焼き肉・水本)
 株主による取締役会の閲覧謄写請求なんて、ハードルが高いと思っていましたが、さにあらず。むしろ、ハードルは低いということですので、この点について留意する必要があります。

2025年8月29日 (金)

【学校】 国立大学システムが描く2040年イノベーティブ日本 「国立大学 75号」

 少子化と人口減少が進む日本、混迷を深める国際社会、そして地球規模の環境問題という切迫した状況にあって、日本の「知の拠点」となる国立大学は将来に向けてどのような役割を果たすべきかについて、国立大学協会は、「わが国の将来を担う国立大学の新しい将来像」を公表しました。詳細像は、国立大学法人化20年を貴会に改めて国立大学の役割を問い直し、2040年を想定した将来像実現への決意を表明したものです。

 田舎弁護士の息子くんも、現在国立大学の学部生ですが、来年には国立大学の院生になる予定です。もしかしたら、研究者になるかも😅

 というわけで、息子くんの将来にも大きな影響がありますので、その将来像の策定に座長、副座長として携われました梅原出横浜国立大学学長、仁科弘重愛媛大学学長のコメントを確認したいと思います。

 将来像については、多様性の受容とグローバル化が、今よりも格段に進んだ社会になっていること、そして、その社会形成の担い手として、国立大学はどうあるべきかを議論していきました。

 大学の機能強化や研究力の向上を図るためには、年間1万人の博士号取得者を2040年には3倍の3万人に、海外からの留学生の比率を7.9%から30%以上に、また、37.4%の女子学生比率を50%に近づけるという数値目標を掲げています。

 博士号についても、研究者ばかりではなく、銀行員でも営業職、政治家でも、2年3年博士課程で勉学と研究を行った人が増えるということで、総和としてわが国の知のレベルアップが図れます。

 また、国立大学85校を総体ととらえた多様な問題解決のためのシステムを構築し、多様な連携、協力関係を築きながら、課題解決を図っていくことができるようにしていきます。

 そして、地方大学の場合はそれぞれに事情が異なっており、そのため、大学に求められるニーズも様々であることから、文科省や自治体はもとより、関係省庁や地域企業などとも密に話合い、大学間連携も活かしながら、その大学の個性を十二分に発揮できる方策を考えていくことが大切です。 

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(木地奥林道)
 おそらくまとめると以上のとおりになるのではないかと思います。田舎弁護士が考えても、地方国立大学が「知の拠点」として充実した教育や研究ができなくなると、若者が都会の大学に進学し地方には戻ってきてくれなくなる、また、現場に近い大学が企業の技術力を支えるような研究ができなくなると地方の産業の衰退につながると思います。 2040年は今よりはよりよい社会になっているためには、国立大学システムの構築が肝要だと思いました。

 

2025年8月28日 (木)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 雇用平等 富永晃一上智大学法学部教授

 東京労働大学講座労働法も、講義としては本日が最終日でした。テーマは「雇用平等」で、講師の先生は富永晃一上智大学法学部教授です。 

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(楢原山登山道)
1 平等と差別 
 ※不平等と差別は異なる。 不平等は、不均等・不均等な状態 差別は、特定の理由での不均等・不均衡取扱い
 ※人への差別の一部が、法律上、明示的黙示的に禁止
  人への対象 当事者の力関係が不均衡且不合理
  労働力と人とは分離不可能 使用者と労働者とは不均衡な力関係
2 雇用差別の禁止
 ※①差別禁止(←今回のテーマ) ②不平等・不均衡の抑制
 ※①の例 性、国籍・信条・社会的身分、年齢、障害等・・・差別禁止事由
   理由(差別意思)に着目して禁止  (直接差別)
3 差別の構造
 ※労基法3条、4条
 ※均等法6条
4 不当な取扱い
 ※差別的取扱い と 不利益取扱い
 ※差別的取扱い 有利不利いずれも両面的禁止
 ※不利益取扱い 不利益な取扱いの片面的禁止
   BFOQ(性別、職務に決定的影響)、ポジティブアクション
 ※間接差別  差別意思がない場合  
5 平等原則
 ※間接適用 三菱樹脂事件
6 国籍・信条・社会的身分
 ※労基法3条(労働条件) 無効 罰則 差額賃金 損害賠償
    性別は含まれていない
7 性別
 ※賃金(労基4条)
  山陽物産事件 「世帯主」 運用がそうではない。
  男女賃金格差の公表義務(25年改正で令和8年4月1日から101人以上に拡大予定) 
 ※退職・採用(判例⇒均等法6条4項、9条1項2項)
   退職関係の差別 結婚退職制 住友セメント事件 東急機関工業事件 日産自動車事件(最高裁) 古河鉱業事件
 ※募集・採用差別(雇用均等法5条)
 ※配置・昇格差別(判例⇒均等法) 野村證券事件
 ※間接差別(均等7条)  対象となる措置は、募集、採用、雇均6条各号に関する措置に限定
 ※差別禁止の例外 ポジティブアクション(雇均8条)
 ※セクシャルハラスメント(均等法) 対価型 環境型
8 妊娠等
   ※妊娠/出産を理由とする不利益取扱い
  妊娠出産等を利用とする就業環境を害する言動
9 均等法の概観
 
10 障害者(障害者雇用促進法)
 ※職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者
 ※処遇一般の差別禁止
 ※合理的配慮の提供義務
11 その他
 ※年齢
 ※SOGI

2025年8月27日 (水)

【子ども】 共同親権の判断要素 

 令和8年5月までに共同親権を含む改正民法が施行されます。そのため、男女を問わず、共同親権についてのご相談が少しずつ増えているように思います。

 民法は、共同親権にするのか、単独親権にするのかについては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこと、また、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合、父母の一方が他方の一方に対してDV等のため父母が共同で親権を行うことが困難である場合は、単独親権としなければならないと定めています。

 今回、法務省から、「Q&A形式の解説資料(民法編)」が公表されましたので、少し読んでみました(なお、「家庭の法と裁判No57号」に掲載されています。)。

 まず、共同親権にすべきか、単独親権にすべきかについては、一概にいえず、子の利益の観点から最善の判断をすべきであると解説されています。

 従って、共同親権が原則という建前は採用していないことになります。

 そして、「Q19」には「高葛藤のケースや、父母の一方が相手方と『関わりたくない』『口も聞きたくない』などの感情的な主張をしたケースにおいては、単独親権の定めがされることになるのか」という質問が掲載されています。

 この点は微妙な書き方をしつつも、「父母が高葛藤であるケースにおいては、家庭裁判所における調停手続を経てもなお父母間の感情的な対立が大きく、父母が親権を共同して行うことが困難であると認められることがあると考えられるが、新民法第819条第7項は、そのようなケースにおいて裁判所が親権の共同行使を強制することを意図するものではなく、父母の協議が調わない理由等の事情を顧慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときは、必ず単独親権としなければならないとしている。」と解説されています。

 また、「Q21」では端的に「高葛藤であるケースにおいて、どのような場合に、『父母が共同して親権を行うことが困難』と認められるか」という質問に対しては、「例えば、父母の一方が他の一方に対して、誹謗中傷や人格を否定する言動を繰り返しているような場合には、『父母が共同して親権を行うことが困難』な場合に該当し得る」と解説されています。他方で、「父母間に感情的な対立があったとしても、相互の人格を尊重し、子の養育のために最低限のやり取りが可能であるというケースもあり得る。そのような場合には、『父母が共同して親権を行うことが困難』とまではいえず」と解説されています。

 この解説については、田舎弁護士の感覚にもマッチします。

 ところで、養育費等を支払わないケースも、度々相談を受けるところです。

 これについては、経済的DV等によって父母が互いに話し合うことができない状態にあることから、親権の共同行使が困難な場合も、「父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき」にあてはまることがあると考えられる(Q16)と解説されています。

 どうしようもない父ちゃんや母ちゃんの場合には、単独親権となり、夫婦間の仲は悪くても子どものことを誠実に考えられる父ちゃんや母ちゃんの場合には、共同親権ということになるのでしょう。

 「家裁の法と裁判」No57をご参照下さい 

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(笠松山・野田登山口)

2025年8月26日 (火)

【労働・労災】 調理場の保存食を窃取したことを理由として教育委員会が学校給食の調理員に対してした懲戒免職処分が違法であると判断された事例 令和6年7月22日名古屋地裁判決

 判例タイムズNo1534号で紹介されていた令和6年7月22日名古屋地裁判決です。

 取扱い方針は公金または物品を窃取した者は免職とされていたことから、懲戒免職処分となってしまつたという事例です。

 しかし、裁判所は、以下の理由で懲戒免職は重たすぎると判断しました。 

 取扱い方針は重要ですが、その機械的な判断は避ける必要があるようです。

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(笠松山)

(2) 検討
 上記(1)の判断枠組みに基づき、本件懲戒免職処分が社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者である処分行政庁の裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものと認められるか否かについて検討する。
 ア 本件非違行為は、学校給食の調理員であった原告が、公金物である保存食を窃取したというものであるが、窃取の対象物である本件物品は、油揚げ2袋及びパン2個であり(上記1(2)ウ)、その財産的価値自体は少額であって、その数も比較的少量にとどまる。また、本件非違行為の当時、本件物品4点のうち3点は保存期間が経過しており、その余の1点も保存開始から6日程度経過していたというのであり、それを検査等に使用することが必要となっていたことはうかがわれないから(上記1(2)ウ)、近い時期に廃棄されることが見込まれていたものと認められる。これらのことからすれば、財産的損害の点から見た本件非違行為の結果は、相当に軽微なものであるといわざるを得ない。
 他方で、安全な給食を提供する役割を担う学校給食の調理員が保存食を窃取する行為は、必ずしも財産的損害の程度にかかわらず、学校給食の衛生管理の適正な遂行及びこれに対する市民の信頼を損なう結果を生じさせ得るものである。しかしながら、このことを踏まえても、本件非違行為は一回的行為であり、原告が本件非違行為のほかに保存食等を窃取していたことを認めるに足りる的確な証拠もないことに加え、保存食の検査等のための本件物品の使用が現実に必要となったことはうかがわれないことを考慮すると、本件非違行為による公務の遂行及びこれに対する市民の信頼の失墜の程度が重大であるとまではいえない。
 さらに、上記1(3)ウのとおり、本件非違行為及び本件懲戒免職処分については、市教委の公表に基づく報道がされていることは認められるものの、原告が出勤しなくなかったことによる人員調整等の支障及び本件非違行為による他の調理員の信頼関係の毀損を除くと、本件非違行為により、被告の業務に具体的な支障が生じたことはうかがわれない。
 これらのことからすると、原告が、保存食を含む公金物の窃取が懲戒免職処分の対象となる行為である旨の注意喚起を受けていたにもかかわらず、明確な窃取の意思の下で、自己中心的な動機に基づいて本件非違行為に及んだものと認められること(上記1(2)イ及び(3)イ)などの被告指摘の事情を踏まえても、本件非違行為が免職を相当とする程度の非難可能性のある行為と評価することはできないというべきである。

 イ 本件非違行為は、本件取扱方針にいう「公金又は物品を窃取した」に該当し、その処分の量定の標準例は「免職」と定められている。

 しかしながら、一般に、窃取行為による財産的損害の多寡は、その非難可能性の程度に影響を及ぼす重要な要素であるところ、本件取扱方針においても、個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる量定以外とすることもあり得るとされていることや、免職は懲戒処分の中で最も重い量定であって、本件取扱方針に掲記された各非違行為についてみても、標準例として免職以外の量定が定められているものが少なくないことに照らすと、公金物の窃取に係る上記の標準例は、窃取行為による結果が軽微であることなどにより、処分の量定として免職を選択することが相当でないと評価すべき事情が認められる場合には、免職以外の処分を選択することを想定したものであると解される。上記アで検討したとおり、本件非違行為については、財産的損害の点から見た結果が相当に軽微であり、他にその結果や態様等の悪質性について重大視すべき事情は認められないことに照らせば、本件取扱方針の標準例に従って処分の量定として免職を選択することが相当でないと評価すべき事情があるというべきである。このことに加え、上記第2の2の前提事実(1)、上記1(3)ア及びイのとおり、原告が過去に懲戒処分歴を有しておらず、本件非違行為の後に謝罪や反省の態度を示していることなどの各事情を総合的に考慮すれば、原告に対し、免職を選択することは重きに失するものといわざるを得ない。本件懲戒免職処分は、これらの事情を看過してされたものであって、社会通念上著しく妥当を欠き、処分行政庁において、その裁量権の範囲を逸脱したものと認めるのが相当である。
 

 ウ したがって、本件懲戒処分は違法である。

2025年8月25日 (月)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法部門 労働委員会と不当労働行為 森戸英幸慶応大学教授

 東京労働大学講座 労働法部門 労働委員会と不当労働行為 森戸英幸慶応大学教授です。 不当労働行為って経験したことがありませんので、大変勉強になりました😅

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(冬の楢原山)
Ⅰ 不当労働行為救済制度の意義と目的
 ※労働組合の結成とかその自主的な活動を妨げる可能性のある使用者の行為(不利益取扱、団交拒否、支配介入)=不当労働行為(労組法7条)の禁止 
 ※過去の後始末をする裁判所とは別に、「未来を見据えた手打ち」「将来に向けての労使関係の正常化」のために行政(労働委員会)による救済手続きを法定 労組法27条以下  目的が違う!
Ⅱ 不当労働行為救済システムの全体像
 ※不当労働行為救済制度の目的は、議論がある。 団結権侵害説  VS  立法政策説(⇒裁判所は労組法7条を使えない) 
 判例は、団結権・団体行動権を保障するための規定 基本は、団結権侵害説か(医療法人新光事件) 他方、救済措置の中身は労働委員会が独自に決定してよい(第二鳩タクシー事件)
 ※(救済申立)都道府県労働委員会⇒(再審査申立)中央労働委員会
Ⅲ 不当労働行為法上の「使用者」
 ※第1義的には労働契約の相手方当事者だが、それ以外の者でも基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、労組法上の使用者に該当(朝日放送事件)
  労働契約に隣接ないし近似した関係がある場合を含む
 ※グループ会社の中核企業、親子関係における親会社?
 ※労働者派遣における派遣先会社は?
Ⅳ 不利益取扱い 総説
 ※不利益取扱い一般の禁止 労組法7条1号本文前段
 ※黄犬契約の禁止
 ※過半数組合とのユニオンショップ協定を許容
 ※報復的不利益取扱いの禁止
 ※7条1号違反の効果
Ⅴ 不利益取扱いの成立要件
 ※労働者、労働組合、「組合員であること」、「加入し・・・結成しようとしたこと」
 ※労働組合の正当な行為
 ※「故をもって」
    組合活動を嫌悪する取引先からの要求で組合員を解雇した使用者に不当労働行為意思はあるといえるのか(山恵木材事件)
 ※不利益な取扱い
   採用拒否 判例は原則として否定(JR北海道・JR貨物事件) 例外 特段の事情があれば、・・・雇止め、定年後再雇用拒否、事業譲渡時の譲受会社での不採用等  
Ⅵ 団体交渉拒否
 ※団交拒否のほか、不誠実交渉
 ※団交拒否の正当理由(使用者でない、義務的団交事項でない、誠実に交渉した、交渉が行き詰まりに達した、組合側の交渉態度・条件が不合理)
Ⅶ 支配介入
 ※使用者との対等な交渉主体であるために必要な自主性、団結力、組織力を損なうおそれのある使用者の行為の類型(組合結成・運営に対する干渉、組合弱体化行為)
 ※意思連絡なしでも利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して支配介入行為を行っている(JR東海新幹線科長脱退干渉事件)
Ⅷ 労働委員会
 ※公・労・使三者構成
 ※審査 和解もある 救済内容は独自(申立主義ではない)
 ※申立期間 1年 但し、紅屋商事事件
 ※審問 和解 合議 命令
 ※確定した救済命令の不履行⇒過料
 ※再審査手続(高裁みたいなもの)
 ※行政処分なので、取消訴訟  被告は、都道府県、国になる
 ※取消訴訟(①労働委員会の事実認定の当否、②不動労働行為の成否、③救済命令が発せられている場合はその内容が適法かどうか)
 ※取消となれば、命令を再出発 棄却判決⇒命令に違反した者は刑罰
 ※救済命令(お願い) ←私法上の権利義務確定権限はなし(裁判所ではない)
  原職復帰、バックペイ、団交応諾命令、誠実交渉命令、具体的支配介入行為の禁止滅入れ、再査定命令、ポストのノーティス、文書交付など
  著しく不合理な命令は裁量権濫用 第二鳩タクシー事件
  
Ⅹ 不当労働行為の司法救済
 ※7条1号違反の法律行為 ⇒無効
 ※7条各号の行為 不法行為の違法性を具備
 ※7条2号違反 団体交渉請求権は認められるか?

2025年8月24日 (日)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 集団的労使関係の展開 2 団体行動、労働協約 川田琢之筑波大学教授

 東京労働大学講座 労働法 集団的労使関係の展開 2 団体行動、労働協約です。今回は、川田琢之筑波大学教授です。 

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(三辻山)
Ⅰ 団体行動
1 団体行動に対する法的保護の基本構造
  ※憲法28条(団体行動権) 労働組合法
  ※法的保護の基本構造 
    団体行動を、争議行為と組合活動に分けて法的保護のルールを設定
    争議行為、組合活動のいずれについても、正当性が認められることが保護の要件
    争議行為、組合活動のいずれについても、保護の効果は次の3つ(刑事免責、民事免責、不利益取扱からの保護)
    争議行為と組合活動の区別 リボン闘争 大成観光事件
2 争議行為の正当性判断
  ※条文に手かがりがない ⇒ 主体、目的、開始時期・手続、手段・態様の4つの側面から検討する 
    山猫スト
    政治スト・同情スト
    抜き打ちスト
3 組合活動の正当性判断
  ※主体、目的、態様の3つの観点から判断する
    就業時間中で行われる組合活動  × 労働義務との抵触
    許諾権の下で施設管理権濫用となる場合
4 団体行動(主として争議行為)に関するその他の主要問題
Ⅱ 労働協約
1 労働協約の意義、労働協約に関する条文・基本概念
  ※労働組合と使用者との間に締結される、組合員の労働条件や当該当事者間の団体的労使関係の運営等の事項を定めた取り決め
2 労働協約の成立
  ※労組法14条 書面+署名又は記名押印 が効力発生要件  ← 形式的明確性  ←労使関係の安定化 多数当事者に関わるもの
  ※Q要式を欠く労使間合意の取扱い  都南自動車教習所事件 最高裁平成13年3月13日判決  
3 労働協約の効力 1:規範的効力 協約締結組合の組合員の労働条件を定める効力
  ※労組法16条 協約の適用を受ける労働者の労働契約に対する強行直律効・補充効
  ※有利原則 労働契約で労働協約より有利な労働条件を定めることを許容する考え方 ←否定的な見解が有力
  ※労働協約の規範的効力による不利益変更
    ⇒不利益変更の原則的肯定 就業規則による労働条件の場合と比較すると、原則・例外が逆転
    ⇒締結手続・内容に着目した不利益変更の効力否定
      朝日火災(石堂)事件 山梨県民信用組合事件
    ⇒労働条件の集団的処理の限界 当該組合員から個別に授権を得なければ労働協約による不利益に変更することができない
4 労働協約の効力 2:一般的効力 一定の要件が満たされる場合に生じる、協約締結組合の組合員以外の労働者の労働条件を定める効力
  ※労組法17条 事業上単位での拡張適用
  ※労組法18条 地域単位での拡張適用 ←適用例は少ない
  ※労組法17条の基本構造  同一事業場の、常時適用される同種の労働者の4分の3以上の労働者が、同一の労働協約の規範的効力の適用を受けていること
  ※労組法17条の一般的拘束力の少数組合員への適用 ⇒一般的拘束力は少数組合の組合員には及ばないとの考え方が確立している
   未組織労働者に限られる
  ※労組法17条の一般的拘束力による労働条件の不利益変更 
5 労働協約の効力 3:債務的効力 労働協約の締結当事者間における権利義務関係(債権債務関係)を定める通常の契約としての効力
6 労働協約の終了
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                            (奥に、工石山がみえます)

2025年8月23日 (土)

【金融・企業法務】 サステナビリティ SDGs CSR ESG の用語の整理

 月刊監査役No778号で掲載された「サステナビリティ開示基準を踏まえた企業経営と監査役等の役割」と題した論文が掲載されていました。執筆者は、阪智香関西学院大学商学部教授です。

 サステナビリティ SDGs CSR ESG の用語の整理です。

 確かに、系統を立てて用語の整理をしたことはないので、参考になりました。以下、一部を引用します(P17~)。

 「サステナビリティ」は、1987年に公表された国連報告書「Our Common Future」において、「将来世代のニーズを損なうことなく、現世代のニーズを満たす開発」と定義された「持続可能な開発(サステナブル・デベロップメント)」に由来する。この概念は、環境保全と経営成長の両立を図り、ひいては人類社会全体の存続可能性を追求するものである。

                             ↓

 この概念のもと、国際社会は1992年の地球サミットを経て、2015年には「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した。良好な自然環境や安定した社会は経済活動の基盤であり、それらが持続可能でなければ、企業だけが利益を上げ続けることはできない。したがって、企業の活動もまた、持続可能な開発と整合することも求められる。「サステナビリティ」とは、将来の世代を視野に入れた環境・社会・経済の持続可能性を意味し、企業はCSR(企業の社会的責任)の遂行を通じてその実現に貢献することが、事業の正当性と継続性の条件ともされるようになった。

                             ↓

 サステナビリティの実現に向けて、ビジネスの変革を促す鍵は、資金の流れを変えることである。その転換点となったのが、2006年に国連が発表した「責任投資原則(PRI)」である。この原則は、投資判断に環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の要素を組み込むことを提唱し、世界の機関投資家の間でESG投資を広める契機となった。日本においても、2017年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資を開始したことで急速に普及した。

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 ESG投資にグリーンボンド等を含めたサステナブルファイナンスの拡大に加え、気候変動などのサステナビリティ課題が企業経営のリスクに直結するようになったことで、リスク調整後リターン向上を追求するメインストリームの投資家にとっても、企業のサステナビリティ情報に対するニーズが高まった。

                            ↓

 こうした背景のもと、パリ協定が採択された2015年に、主要国の中央銀行・金融当局などで構成される金融安定理事会(FSB)の下に、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が設置され、2017年にはTCFD提言が公表された。この提言はIFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)および日本のSSBJによるサステナビリティ開示基準の原型となった。

                           ↓

 「持続可能な開発」という理念の誕生から約40年を経て、CSR、ESG投資、SDGsといったピースが結びつき、それを具体化する手段としてサステナブルファイナンスと、その推進力となるサステナビリティ開示基準が整備されてきた。

                           ↓

 サステナビリティ開示は、企業や投資家の意思決定を変えサステナビリティ課題にレジリエント(強靱)なビジネスの構築を促す。この点にこそ、サステナビリティ開示基準のこころがある。

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                             (稲叢山)

 すごくわかりやすく整理されていました😁

 

2025年8月22日 (金)

【刑事】 被害者参加制度について

 平成20年12月1日から、刑事公判手続において、一定の犯罪に限定はされますが、被害者参加制度が運用されています。

 被害者参加制度でできることは、大きく5つあります。

 第1は、公判期日への出席です。

 刑事公判手続に準当事者として関与することができ、傍聴席ではなく、バーの中に入って検察官の横又は後ろに着席します。

 第2は、検察官に対する意見申述です。

 検察官の権限の行使に関して意見を述べることができます。検察官は、権限の行使・不行使について、必要に応じて、理由を説明しなければなりません。

 第3は、証人尋問です。

 情状に関する事項に限られますが、直接、尋問をすることができます。但し、検察官の尋問終了後、検察官が相当と認め、裁判所が許可した場合に限られます。

 第4は、被告人質問です。

 犯罪事実に関する事項も質問できます。但し、意見陳述に必要な範囲です。これも、検察官の尋問終了後、検察官が相当と認め、裁判所が許可した場合に限られます。

 第5は、事実又は法律の適用についての意見陳述(被害者論告)です。

 事実又は法律の適用について意見を述べることができます。また、検察官求刑とは別に独立して求刑をすることもできます。ただし、検察官の論告・求刑後、検察官が相当と認め、裁判所が許可した場合に限られます。

 但し、心情に関する意見陳述とは異なり、犯罪事実についての意見陳述や求刑も可能ですが、情状証拠にはなりません。

 なお、被害者参加弁護士は、200万円未満の資力しかない方の場合は、国選弁護士を選任することも可能となりました。

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                             (姫路・門藤)

2025年8月21日 (木)

【弁護士研修】 日弁連eラーニング 「弁護士による犯罪被害者支援の基礎」第3回被害者支援活動各論2 上平加奈子弁護士

 日弁連eラーニング「弁護士による犯罪被害射支援の基礎」第3回被害者支援活動各論2「捜査段階、マスコミ対応、損害賠償命令、少年審判、医療観察法、検察審査会等の場面における被害者支援」、講師は上平加奈子弁護士の研修を聴講しました。

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                            (万博・大屋根リングから)

1 捜査段階の支援(マスコミ対応を含む)

  ●刑事手続の流れにおいて、被害者ができること(捜査機関とのやりとり)、被害者がやらざるを得ないこと(マスコミ対応など)

  ●弁護士による支援

   ※被害者ができることの支援

    被害届・告訴状の作成、提出支援

    警察・検察での事情聴取への同行、立会

    警察官、検察官に対して捜査の進ちょく状況の問い合わせ

   ※マスコミ対応

    代理人として窓口になりやりとりする 

    メディアスクラムへの対応

 

2 その他の手続における支援(損害賠償命令、少年審判、医療観察法、検察審査会)

  ※損害賠償命令制度

    メリット 

     審理回数も4回以内とされており、通常の民事訴訟よりも早い

     印紙代が2000円

    デメリット

     弁論の終結までに申立て

     被告人に限られる

     起訴状記載の公訴事実と異なる法律構成 ×

     異議申立があった場合には通常の民事訴訟に移行

 ※少年審判の場合

    ●事件記録の閲覧・謄写 (社会記録は含まれない)

    ●審判結果等の通知申出

    ●審判状況説明の申出

    ●(対象事件のみ)審判傍聴

    ●意見陳述もある

 ※医療観察法

    制度の概要・目的、手続の流れ、決定後の処遇

    被害者等の傍聴、被害者等に対する通知、記録の閲覧・謄写(裁判所の許可必要)

 ※不起訴になった場合

    不起訴記録の閲覧 検察官との面談 検察審査会に対する申立て 審査手続 被害者に対する説明(半年から1年半くらいかかる 厳しい結果になることも想定される 令和元年12月まで 起訴相当1.4% 不起訴不相当9.1% ) 

2025年8月20日 (水)

【弁護士研修】 日弁連eラーニング 「弁護士による犯罪被害者支援の基礎」 第2回被害者支援活動各論1「公判段階における被害者支援」 合間利弁護士

 日弁連eラーニング「弁護士による犯罪支援の基礎」 第2回被害者支援活動各論1「公判段階における被害者支援」で、講師は千葉弁護士会所属の合間利弁護士です。 

20250809_140116                             (万博・中国館)

1 はじめに

 ※被害者参加をするかどうか 

   参加することの良い点 参加することで負担になる点

   参加したからといって量刑が重くなるとは限らない

   心情に関する意見陳述ではダメなのか?

2 検察官への参加の申出

 ※起訴後~終結まで

 ※参加対象事件  原則として財産犯は含まない

 ※参加できる人の範囲 被害者等

 ※参加してできること ①公判期日への出席 ②検察官に対する意見 ③情状事項についての反対尋問 ④被告人質問 ⑤事実または法律の適用に関する意見陳述(被害者論告)

 ※検察官への参加の申出 申出方法 申出後の流れ(①検察官から裁判所への通知、②裁判所による参加許可決定、③参加許可決定が被害者への交付、④被害者参加弁護士選定)

3 参加決定後~公判まで

 (1)検察官との協議・連携

    面会・打合せ、記録の閲覧・謄写(次長通達)(※民事事件では利用できない)、被告人質問や証人尋問の内容の調整、氏名秘匿・遮へい・付添等の申入、裁判日程の調整・確保

 (2)裁判所との協議

    控え室の確保・動線の確認・遮へい状況の確認、傍聴席の確保、遺影の持ち込み(予め裁判所と協議)

 (3)公判前整理手続

    出席はできないので、検察官からの情報収集

 (4)被害者等本人との協議

    公判に向けた情報提供・整理、心情に関する意見陳述の準備

 (5)その他

    弁護人からの申入れ

4 公判段階

 (1)公判への出席

    ●付添・遮へい、●被害者参加弁護士のみの出席でも可、●被害者参加人旅費等の支給(バーの中に入れば)

 (2)証人尋問

    ●検察官に対して申出(⇒裁判所へ通知)、●内容は限定的(情状のみ)

 (3)被告人質問

    ●検察官に対して申出、●質問の対象は限定されない(意見陳述の範囲)

 (4)心情に関する意見陳述  ⇒書面を朗読するのが一般的(代読の場合もある)

    ●量刑の資料となる ●作成方法に工夫を ●陳述の時期(被告人質問の後、論告の前が適当)

 (5)爺実及び法律の適用に関する意見陳述(被害者論告)  ←量刑の資料にはならない。(意見なので)

    ●検察官に対して申出 ●訴因の範囲内での意見 求刑も可(但し抽象的な刑罰にとどめることが多い) ●論告の後

 (6)その他

    ●法廷傍聴 ●公判記録の閲覧・謄写

5 上訴審

  ※被害者参加は可能 改めての参加申出が必要

  ※心情に関する意見陳述は可能

  ※上訴審ではできることは余りない

6 判決後

 (1)出所情報・処遇・釈放予定情報通知制度  ※希望に基づいて検察官に伝える

 (2)心情伝達制度              ※保護観察の場合

 (3)意見聴取制度              ※仮釈放等の判断の資料となる

2025年8月19日 (火)

【消費者法】無料求人広告トラブル

 相変わらず、無料求人広告トラブル事案があります。無料求人広告詐欺をはたらく違法業者は、ハローワークの求人票などをリストとして、知識の乏しい中小企業を狙ってきます。

 契約を無効にした令和元年9月9日付東京地裁判決がありましたので、参考のために、判決文を引用します。

主   文

 1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

 第1 請求
   被告は,原告に対し,45万3600円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
 第2 事案の概要
   本件は,原告が,被告との間で求人情報サービスの利用契約を締結したとして,利用代金45万3600円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 1 前提事実(争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
  (1)原告は,広告代理業等を目的とする株式会社であり,訴外株式会社Aとの間の基本業務提携契約に基づき,同社が運営する「B」と称する求人情報サービス(以下「本件サービス」という。)を顧客に対して提供している(甲9)。
  (2)被告は,水産物全般,乾物の加工,販売,輸出入等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
  (3)原告は,平成30年11月26日,被告に対し,電話にて本件サービスの利用を勧誘し,被告は,同日,原告に対し,本件サービスの利用の申込みをした(甲2,3,10)。
  (4)本件サービスの利用規約(以下「本件規約」という。)には,要旨以下のとおり記載されている(甲2)。
   ア 本件サービスの申込日の翌日から3週間,無料で求人広告を掲載する。
   イ 3週間の無料掲載期間中に解約申入れをしない限り,自動的に有料掲載期間に移行する。無料掲載期間中に解約申入れをするためには,同期間中に,解約申入れのFAXが原告に到達する必要がある。
   ウ 有料掲載期間は12か月間であり,顧客は,請求書が到達した日の翌日から8日以内に有料掲載期間の広告料として42万円(消費税別)の支払義務を負う。有料掲載期間中に顧客の都合で解約を申し入れた場合,広告料は返金されない。
  (5)原告は,無料掲載期間の最終日である平成30年12月17日の午後12時19分に被告に到達した郵便物(「ご挨拶」と題する書面。以下「挨拶状」という。)で,無料掲載期間が終了間近になった旨を被告に通知した(甲6)。
  (6)原告は,平成30年12月18日,被告に対し,本件サービスの利用代金に係る請求書を発送し,同請求書は,同月19日,被告に到達した(甲7,8)。
  (7)被告は,平成30年12月20日,原告に電話をかけ,原告の担当者であるCから有料じゃなくていいと言われたにもかかわらず請求書が届いた旨の苦情をのべたが,原告の担当者であるDは,マニュアル及び規約に基づいているとして,解約には応じなかった(甲10)。
  (8)原告は,平成31年2月22日,本件訴訟を提起した。


 2 争点及び当事者の主張
   原告と被告との間の本件サービスの利用契約(以下「本件契約」という。)は,公序良俗に反し無効か(被告の主張は後記(1)のとおりであり,公序良俗違反による契約の無効を主張するものと解釈できる。)。

  (1)被告の主張
    原告は,被告が本件規約を理解し,同意した上で申込みをしたと主張するが,被告は,原告の担当者であるCから,本件規約とは異なる説明を受けて申込みをした。原告が提出した交渉記録(甲10)には,①から④まで規約の説明に関する記載があるが,被告担当者は,①(申込書を頂いた日の翌日から起算して3週間が無料期間である事)の説明しか聞いていない。
    Cは,電話で,無料掲載期間の終了の連絡及び更新の意思確認をすると説明した。被告は,原告の挨拶状を受け取っていない。仮に挨拶状を受領していたとしても,配達されたのは無料掲載期間の満了日であり,被告が休業日であることや担当者が不在であることに全く配慮しておらず,注意喚起の意思がないことは明らかである。
    被告は,無料掲載期間終了前に担当者から電話連絡があるとの説明を受けていたにもかかわらず,突如請求書が届いたので,原告に問い合わせの連絡をしたところ,無料期間のみの希望の連絡がなかったので有料期間に移行したと,申込時と異なる説明をされた。申込時の担当者に電話をつなぐよう求めたが断られた。
    インターネットによる求人情報を検索する場合,一般に求職者は,「求人」や「求人サイト」というキーワードで検索する場合が多い。実際にそのように検索してみたところ,本件サービスは,検索結果の10頁目まで見ても表示されなかった。求職者が閲覧する可能性があまりにも低いにもかかわらず,45万3600円という代金はあまりにも高額である。
    被告は,インターネット上で,同様の事例で困っている人を多数見つけた。すべてが原告や本件サービスに関するものとはいえないが,勧誘方法やその後の対応が極めて悪質である。
    本来,求人サイトは,求職者と企業をつなぐことが目的だが,本件サービスにそのような目的がないことは明らかである。本件サービスは,求人広告としての実体がなく,反社会的勢力による振り込め詐欺に類するような行為であるから無効である。 

 (2)原告の主張
    本件規約には,無料期間経過後有料掲載に移行する旨が明記されており(4条),思慮分別のある成人が読めば十分理解可能である。
    被告は,原告担当者が電話での意思確認を行うと約束したと主張するが否認する。原告担当者は,本件規約4条1項について被告担当者に説明しており,あえてこれと異なる約束をすることはない。
    被告は,挨拶状の送付時期を問題としているが,挨拶状の送付は注意喚起であり,早期に送付した場合,注意喚起にならないおそれがあるため,解約期限に近接した時期に送付している。
    被告は,検索サイトにおける検索結果を問題とするが,サーチエンジンのランク付けのアルゴリズムは年々高度化が進む上,頻繁に変更が行われ,そのたびに激しく順位が変動するため,SEOに王道はなく,地道にコンテンツを充実させて認知を広げていく以外に着実な手段は存在しないと言われており,利用者の増加とともに徐々に検索結果でも上位に位置づけられるようになるのであるから,現状における検索結果のみをとらえた被告の主張には理由がない。
    なお,検索エンジンの中で最も使われているグーグルで,「全国の求人情報」で検索すると,4頁目にBが表示される。

第3 争点に対する判断


 1 上記前提事実のとおり,本件規約によれば,本件サービスは,3週間の無料掲載期間内に被告によるFAXでの解約申入れが原告に到達しない限り,自動的に1年間の有料掲載期間に移行し,42万円(消費税別)という高額の広告料の支払義務が発生する仕組みになっている上,その後,被告が中途解約をしても,支払済みの広告料は返還しないものとされている。

   原告は,被告に対し,電話で本件サービスの利用を勧誘しており,その際,上記のような本件規約の内容を説明したと主張するが,被告はこれを否認し,3週間の無料掲載期間についての説明しか受けていないと主張しているところ,原告提出の交渉記録(甲10)には,本件規約の内容が不動文字で印刷されているにすぎないから,この記載のみから,原告担当者が被告に本件規約の内容を電話で説明した事実を認定することはできず,他に当該事実を認めるに足りる証拠はない。

   したがって,原告は,被告に対し,本件サービスの利用を勧誘するに際し,3週間の無料掲載期間については説明したものの,3週間以内に解約しなければ自動的に有料掲載期間に移行し,1年分の広告料が発生することの説明まではしなかったとみるべきである(なお,Cが,被告に対し,有料掲載に移行する前に電話で事前に意思確認をする旨の発言をしたことまで認めるに足りる証拠はない。)。

 2 上記のとおり,本件サービスは,3週間の無料掲載期間を1日でも経過すれば,直ちに1年分の広告料の支払義務が発生する仕組みになっているにもかかわらず,原告から被告に対して,事前に有料掲載期間に移行するか否かの意思確認を行う仕組みにはなっていない。原告は,挨拶状によって注意喚起を行っていると主張するが,挨拶状が被告に到達したのは,無料掲載期間の最終日の午後であるから,真に注意喚起の趣旨で挨拶状を送付しているとは認められず,単に注意喚起をした体裁を整えようとしているにすぎない。
 

  そして,原告は,無料掲載期間が経過するや否や,直ちに請求書を被告に送付して1年分の広告料の支払を請求し,被告が抗議をしても本件規約を盾に解約に応じず,訴訟提起に至っているところ,原告が,東京地方裁判所に,求人情報サービスの利用代金の支払を求める訴訟を多数提起していることは当裁判所に顕著な事実である。また,証拠(乙1各枝番)によれば,すべてが本件サービスに関するものであるかは不明であるものの,本件と同様の紛争が多数発生していることが窺われる。

 3 被告は,本件サービスには求人広告としての実体がなく,本件の請求は詐欺に類する行為であると主張するので,当裁判所は,原告に対し,繰り返し,原告の業務内容や,本件サービスによる求人の実績について明らかにするよう求めたが,原告は,この点について何ら主張立証を行わなかった。したがって,本件サービスには求人広告としての実体はないものと評価せざるを得ない。

 4 以上を総合すると,原告は,専ら無料掲載期間内に解約しなかった顧客(この中には,本件規約を読んで,無料掲載期間内に解約手続が必要であることを認識したが手続を失念した者のほか,被告のように,そもそも本件規約を読んでおらず,解約手続が必要であることを認識していないかった者も含まれる。)に,1年分の広告料を支払わせることのみを目的として,本件契約を締結しているものといわざるを得ないから,本件契約は,公序良俗に反し無効である。


第4 結論
   以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第34部  裁判官  田中邦治

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 この業者ですが、東京の裁判所に多数の裁判を提訴されているようです。ただ、この案件の被告のように、応訴する側にも、費用対効果を度外視して、闘う覚悟が必要です。

【弁護士研修】 「弁護士による犯罪被害者支援の基礎」 第1回 被害者支援活動概観 山崎勇人弁護士

 日弁連eラーニング「弁護士による犯罪被害者支援の基礎」第1回被害者支援活動概観(21年2月)(山崎 勇人弁護士)を聴講しました。 

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(万博)

第1 犯罪被害者等支援に関する法律・制度

    昭和55年 犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)制定 

    平成12年 犯罪被害者保護法、刑訴法等改正法 

          ストーカー規制法 児童虐待法制定

    平成13年 犯給法改正(支給対象拡大、支給金額UP) DV防止法制定

    平成16年 犯罪被害者等基本法制定 翌年施行 犯罪被害者等基本計画

    平成19年 改正刑事訴訟法 ※被害者参加制度、損害賠償命令制度  翌年12月1日運用開始

    平成25年 被害者保護法及び総合法律支援法の改正  ※旅費等の支給制度、国選被害者参加弁護士の資力要件緩和

    平成26年 総合法律支援法の改正 ※ストーカー等被害者援助制度が新設

    平成29年 改正刑法 ※強制性交等罪が創設

第2 弁護士による被害者等支援

   ※心身の不調、生活上の問題、周囲の人の言動による傷つき 加害者からの更なる被害 捜査・裁判に伴う様々な負担

   ※①事実を知りたい ②被害事件について意見を述べたい ③被害回復を図りたい ④被害を受けたことを知られたくない ⑤更なる被害にあいたくない 

   ※警察による被害者連絡制度 検察庁による被害者等通知制度 刑事訴訟記録等の閲覧謄写 不起訴事件の記録の閲覧謄写 公判での傍聴 少年事件に関する情報収集制度

   ※意見を述べる権利・利益に関する対応 

     事件として立件してもらいたい 公判、審判で意見を述べたい 仮釈放、保護観察の場面で意見等を伝えたい

   ※被害回復を受ける権利・利益に関する対応

     損害賠償請求 刑事和解 損害賠償命令制度 犯罪被害給付制度

   ※プライバシー保護に関する対応

     証人尋問の際の証人等の負担を軽減するための諸措置の導入  被害者情報の保護

   ※再被害の防止に関する対応 

     関係機関との連携(警視庁 再被害防止要項)  加害者に関する情報の取得  

   ※相談にあたっての心構え、留意点

     犯罪被害者の心理状態等の特徴(①信頼関係の構築に時間がかかる、②頭の中が整理できておらず何を相談したいかがわからない、③本当に言いたいこと、やりたいことを我慢している、④結論を出すまでには時間がかかる)   

   ※対応にあたっての基本的な心構え(①被害者の置かれた状況、背景に想像力を働かせる、②被害者の精神的、肉体的負担に配慮、③事件に対する見通しの説明は慎重に行う)  

   ※説明にあたっての留意点(①説明にあたつての留意点、②重大事件における弁護士自身の負担~バーンアウト、代理受傷の防止、③犯罪被害者支援団体との連携(役割分担))

   ※弁護士費用等への配慮(①日弁連委託援助業務【日弁連⇒法テラスに委託】 資力要件300万円未満、②国選被害者弁護士制度 資力要件200万円未満、③被害者参加人に対する旅費等の支給 ←資力要件なし 私選でもOk。 ④民事法律扶助)

第3 被害者参加制度

   ※被害者参加制度   公判開始から判決まで

   ※対象犯罪が限定されている。窃盗罪、強盗罪などの財産犯は含まれない。

   ※参加できる者の範囲 被害者等+被害者の法定代理人

   ※参加の申出は、検察官に対して行う(裁判所ではない)

   ※公判期日への出席、証人尋問(情状証人に対する反対尋問に限定されている)、被告人質問、心情に関する意見陳述(以前から)、事実及び法律の適用に関する意見陳述(被害者論告)

第4 損害賠償命令制度

   ※被害者参加制度と同じ時期に制定されたもの

   ※保護法24条~

   ※過失犯については除外されている(4回の審理で終わらない) 但し、危険運転致死傷罪は対象となる

   ※被害者及び一般承継人(相続人)

   ※不法行為に基づく損害賠償+遅延損害金 

   ※当該被告事件の弁論終結時までにしなければならない。

   ※請求額にかかわらず、2000円(これは利点) 但し、異議申立て等によつて訴え提起の擬制があった場合は通常民事訴訟の手数料から2000円を控除した額の手数料を納める必要がある

第5 その他の制度等

  ※事件記録の閲覧謄写

    起訴後第1回公判期日前まで  刑訴法47条但書の弾力的運用により開示が認められているため担当検察官に閲覧謄写を求める

    第1回公判期日以降、刑事裁判確定まで 保護法3条1項に基づき、裁判所に閲覧・謄写を申請

    確定後 刑訴法53条、刑事確定訴訟記録法4条に基づき、検察庁に閲覧謄写を求める

  ※被害者のプライバシー保護等に関する制度

    被害者特定事項の秘匿条項

    起訴状における被害者情報の匿名記載

    付添い、遮へい措置

  ※犯罪被害給付制度(犯給法)(昭和55年成立)

  ※更正保護段階における制度(受刑中の処遇状況や出所情報などに通知制度)

    犯罪者等通知制度 

    再被害防止のための出所情報通知制度

2025年8月18日 (月)

【法律その他】刑事事件における被害者等の保護のための諸制度

 平成19年6月の刑事訴訟法の改正により被害者参加制度が平成29年12月から実施されています。

 田舎弁護士も、過去、複数回、弁護人としての立場、または、被害者代理人としての立場で、被害者参加制度に接したことがあります。

 ただ、よく考えてみると、複数回被害者参加制度に対応しているにもかかわらず、専門書等を購入して本格的な学習をしたことがありません。

 今回からは、被害者参加制度についてとりあげていきたいと思います。

 購入した書籍は、3冊です。

 ①東京法令出版から出版された2訂版犯罪被害者支援ハンドブック

 ②東京法令出版から出版された2訂版ケーススタディ被害者参加制度

 ③司法協会から出版された刑事事件における犯罪被害者等の保護のための諸制度に関する書記官事務の実証的研究

 です。

 現時点では、斜め読みしかしておりませんが、現時点での印象とすれば、3冊の中で、1冊を選択するとすれば、①2訂版犯罪被害者支援ハンドブックがあればいいかなと思いました。

 ②の書籍は、事例は豊富ですが、立法的な提言が多かったように思います

 ③の書籍は、極めて詳細な内容の書籍ですが、その分、時間をかけて読むのは難しいところです。

 ①の書籍は、コンパクトにまとまっており、書式が豊富なのがよいです。

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2025年8月17日 (日)

【労働・労災】給与体系の変更について、原告らが自由な意思に基づき同意したとはいえないとされた事例 東京地裁令和6年2月19日判決

 判例タイムズNo1533号で紹介された東京地裁令和6年2月19日判決です。

 山梨県民信用組合事件の最高裁平成28年2月19日判決以降、形式的な同意をとるだけでは、同意ありと認めてくれなくなったことが確定しているので、この案件も、その判例からすれば、同意ありとされない事案であることは明らかと言えます。

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(1)旧給与体系から新給与体系への変更について原告らが自由な意思に基づき同意をしたといえるかについて


 ア 旧給与体系は、平成25年就業規則及び従業員の同意により導入され、その内容は平成27年給与規程に承継されていたものであるところ(前記2(2)イ参照)、被告は、新給与体系が原告らの労働条件となった根拠として、原告らの新給与体系への変更に対する同意を主張している。このような就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である(最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決・民集70巻2号123頁)。


 イ 本件についてみると、認定事実(7)ないし(9)によれば、被告は、平成28年春頃に多数の従業員から給与計算が不明瞭であるとか残業単価が低額であるなどの指摘を受け、これを契機に旧給与体系の見直しを行い、新給与体系に変更することとしたものであり、新給与体系への変更に関する説明会において、従業員に対し、本件説明会資料を交付した上、残業単価が最低賃金を下回っているためこれを是正する必要があり、分かり易さの点から、日給月給制を月給制に改め、各種手当を廃止して基本的には基本給と定額残業代というシンプルな構成とすること、新給与体系の給与シミュレーションと旧給与体系の給与シミュレーションを比較すると新給与体系への変更後も旧給与体系における支給水準が維持される想定であること、過去の未払賃金を清算する予定であること等を説明したこと、原告らは当該新給与体系への変更に関する説明会に参加した後、口頭又は平成29年労働条件契約書に署名押印して被告に提出する方法により新給与体系への変更に同意したことが認められる。

 しかしながら、旧給与体系の時間外職能給、夜勤・長距離手当、特別手当及び特務手当(固定又は変動)がいずれも基礎賃金に当たることは前記2で検討したとおりであるし、無事故手当は給与算定期間内において事故等を起こさなかった者に支給されるものであり(平成27年給与規程27条、被告代表者〔22頁〕)、これは通常の労働時間又は労働日の賃金であって、除外賃金にも当たらない以上、基礎賃金に当たるものであったが、新給与体系への変更に関する説明会において被告が説明した旧給与体系の法的な問題点は最低賃金法違反のみであった。

 本件説明会資料に記載された旧給与体系のシミュレーションにおいては、時間単価の算定に関し、特務手当、特別手当及び夜勤・長距離手当の支給はないものとされており、旧給与体系における時間単価の基礎賃金には無事故手当が算入されていなかったが、新給与体系への変更に関する説明会において何が時間単価の算定の基礎に含まれるかについての説明はなされておらず、無事故手当が基礎賃金に含まれていないことは本件説明会資料の「対象合計」欄記載の金額はいずれも「基本給」「職能給」「愛社手当」「皆勤手当」及び「調整給」欄記載の金額の合計額と一致するという検討を経て初めて読み取ることができる事実であり、被告従業員において、これらの手当が基礎賃金に含まれるべきか否かを認識することは困難であったといえる。

 そして、旧給与体系の時間外職能給、夜勤・長距離手当、特別手当、特務手当(固定又は変動)及び無事故手当が基礎賃金に含まれることを前提に、平成28年11月度から新給与体系に切り替わるまでの間において、原告らに対し実際に支給された旧給与体系の賃金をベースに基礎賃金(平均額)及び時間単価(円以下四捨五入。基礎賃金(平均額)を給与計算期間の所定労働時間(日給月給制のため)数で除したもの)を算定した結果は下表の「旧」欄に各記載のとおりである。他方で、請求対象期間中に原告らに実際に支給された新給与体系の賃金をベースに定額残業代を除いて基礎賃金(平均額)及び時間単価(円以下四捨五入。定額残業代を除いた基礎賃金(平均額)を月平均所定労働時間173時間(月給制のため)で除したもの)を算定した結果は下表の「新」欄に各記載のとおりであり、旧給与体系と新給与体系を比較すると、時間単価については後者が前者の約69%から約81%の幅で減縮され、基礎賃金(平均)についても前者に比して後者は約3万円から約7万円の幅で減少していることが認められる。その結果、例えば、原告X2の平成29年6月度と同年8月度の給与明細書(乙3の18)を比較すると、いずれも所定労働時間168時間であって、時間外労働時間数も前者は70時間15分、後者は70時間と近似し、休出残業時間は前者が後者を上回っているにもかかわらず、総支給額は前者に比して後者が3万円以上少なくなっている。

 このような基礎賃金及び時間単価の減額幅からすれば、日給月給制から月給制に変更されたこと、基本給が増額されたこと、過去の残業の実情を踏まえて設定した定額残業代がされていることなど原告らに有利な変更点を合わせ考慮しても、新給与体系への変更は原告らにとって著しい不利益を含むものであったというべきである。

                      原告X1     原告X3     原告X4     原告X5     原告X2
旧 基礎賃金(平均)            ¥264,686 ¥236,470 ¥262,436 ¥222,406 ¥257,595
  時間単価                  ¥1,622   ¥1,449   ¥1,610   ¥1,363   ¥1,580


新 基本給+愛社手当+特別手当合計(平均) ¥192,368 ¥195,526 ¥211,875 ¥191,579 ¥212,000
                      ¥-72,318 ¥-40,944 ¥-50,561 ¥-30,827 ¥-45,595
  時間単価                  ¥1,112   ¥1,130   ¥1,225   ¥1,107   ¥1,225


新単価/旧時間単価              約69%     約78%     約76%     約81%     約77%

 被告は、本件訴訟において、旧給与体系における時間外職能給、夜勤・長距離手当、特別手当及び特務手当が基礎賃金に当たることを争っているが、旧給与体系において無事故手当、夜勤・長距離手当、特別手当及び特務手当は平成27年給与規程に沿った運用がされていたと認められる(前記2)こと、時間外職能給については割増賃金としての対価性があることを確認できない状態であったことからすれば、新給与体系への変更に関する説明会が実施された時点においても、仮に未払賃金請求訴訟が提起された場合には、時間外職能給、夜勤・長距離手当、特別手当及び特務手当について、裁判所により基礎賃金に含まれると判断される可能性が相当程度あることを認識し又は認識すべきであったといえる。無事故手当についても、本件訴訟で基礎賃金に含まれることを争っていないこと、元顧問社会保険労務士の見解に従っていたというほかに的確な根拠はなかったことからして、同様である。 

 そして、新給与体系への変更による不利益が前記のようなものであることを考慮すると、被告従業員が新給与体系の変更について自由な意思に基づいて同意したといえるためには、被告従業員が新給与体系の変更に関する同意に先立って、新給与体系への変更により労働基準法37条等が定める計算方法により時間単価を算定した時間単価が減少するという不利益が発生する可能性があることを認識し得たと認めることができることが必要であったというべきである。

 しかしながら、本件では、平成25年労働条件通知書の控えは原告らに交付されておらず、新給与体系への変更に関する説明会における説明内容、本件説明会資料の記載は前記のとおり旧給与体系における基礎賃金の範囲すら正確に把握することが困難であったと認められ、原告らが新給与体系の変更に同意した際、時間単価が旧給与体系に比して約69%から約81%の幅で減縮されるという不利益が発生することが認識し得たとは到底認められない。そうすると、原告らが自由な意思に基づいて新給与体系の変更に同意したと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとは認められない。
 

ウ 小括
  以上によれば、新給与体系が原告らの同意により原告らの労働条件になったものと認めることはできない

2025年8月16日 (土)

【学校】 大学の講師の職が、大学の教員等の任期に関する法律4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たるとされた事例 最高裁令和6年10月31日判決

 大学の関係者から注目をされていた判例です。

 任期法は、平成9年に制定されたときは、国公立大学の教員が終身雇用制を採用されていたことから5年という任期を定めた任用もできるようにするために設けられた制度です。

 ところが、国立大学が法人化されたことに伴い、国立大学法人の教員も非公務員となり、有期での採用が可能となり、任期法制定時における意義は失われました。

 しかし、平成25年に任期法が改正され、10年特例が設けられました。つまり、平成25年からは、任期法4条1項各号は、10年特例が適用されるための要件として機能することになったのです。

 そうだったんだ~

 では、最高裁判決の判旨をみてみます。

 任期法は、4条1項各号のいずれかに該当するときは、各大学等において定める任期に関する規則に則り、任期を定めて教員を任用し又は雇用することができる旨を規定している(3条1項、4条1項、5条1項、2項)。これは、大学等への多様な人材の受入れを図り、もって大学等における教育研究の進展に寄与するとの任期法の目的(1条)を踏まえ、教員の任用又は雇用について任期制を採用するか否かや、任期制を採用する場合の具体的な内容及び運用につき、各大学等の実情を踏まえた判断を尊重する趣旨によるものと解される。

 そして、任期法4条1項1号を含む同法の上記各規定は、平成25年法律第99号により労働契約法18条1項の特例として任期法7条が設けられた際にも改められず、上記の趣旨が変更されたものとも解されない。

 そうすると、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職の意義について、殊更厳格に解するのは相当でないというべきである。

 前記事実関係によれば、生活福祉コースにおいては、被上告人を含む介護福祉士等の資格及びその実務経験を有する教員により、介護実習、レクリエーション現場実習といった授業等が実施されており、実務経験をいかした実践的な教育研究が行われていたということができる。

 そして、上記の教育研究を行うに当たっては、教員の流動性を高めるなどして最新の実務経験や知見を不断に採り入れることが望ましい面があり、このような教育研究の特性に鑑みると、上記の授業等を担当する教員が就く本件講師職は、多様な知識又は経験を有する人材を確保することが特に求められる教育研究組織の職であるというべきである。

 したがって、本件講師職は、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たると解するのが相当である。

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                            (万博・文明の森)

 

2025年8月15日 (金)

【交通事故】 障害を有する未成年者の逸失利益の算定 大阪高裁令和7年1月20日判決

 判例時報No2624号に掲載された大阪高裁令和7年1月20日判決です。

 第1審は、逸失利益の算定となる基礎収入としては、賃金センサスの85%と判断しました。

 第2審の大阪高裁は、減額をせずに、賃金センサスの金額を認めました。

 20250809_125435                          (万博・オーストラリア館)

 未成年者の逸失利益を認定するに当たって全労働者平均賃金を用いる際には、一般に当該未成年者の諸々の能力の高低を個別的に問うことなくその数値を用いているのが通例であり、あえて全労働者平均賃金を増額又は減額して用いることが許容されるのは、損害の公平な分担の理念に照らして、全労働者平均賃金を基礎収入として認めることにつき顕著な妨げとなる事由が存在する場合に限られるというべきである。

 Aは、先天性の聴覚障害を有していた児童であるところ、Aにつき、就労可能年齢に達した時点における基礎収入を当然に減額するべき程度の労働能力の制限の有無やその程度を検討するに当たっては、死亡当時のA固有の聴覚の状態像を正確に理解した上で、就労可能年齢に達したときのAの労働能力の見通し、聴覚障害者をめぐる社会情勢・社会意識や職場環境の変化を踏まえたAの就労の見通しを検討して、Aの労働能力を評価すべきであると考えられる。

 以上の検討の結果、Aが就労可能年齢に達した時点において、まず、前記イのとおり、Aの中枢系能力は、平均的なレベルの健聴者の能力と遜色ない程度に備わり、聴力に関しても、性能が飛躍的に進歩した補聴器装用に併せて、一定程度不足する聴力の不足部分を手話や文字等の聴力の補助的手段で適切に補うことにより、支障なくコミュニケーションができたと見込まれるから、Aは、聴覚に関して、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるとはいえない状態にあるものと評価することができる。

 また、前記ウのとおり、本件事故当時においても、将来、障害者法制の整備、テクノロジーの目覚ましい進歩、さらには聴覚障害者に対する教育、就労環境等の変化等、聴覚障害者をめぐる社会情勢や社会意識が著しく前進していく状況は予測可能であった。そして、現に、Aが就労可能年齢に達した現時点においては、障害の「社会モデル」の考え方が浸透し、事業主の法的義務となった社会的障壁を除去するためのささやかな合理的配慮の提供として、聴覚障害者に対し様々な補助的手段の併用が認められ、聴覚障害者がそれらを駆使して、健聴者とともに同じ条件で働く職場環境が少なからず構築されているといった、聴覚障害者をめぐる就労現場の実態があり、このような労働実態は、本件事故当時においても蓋然性をもって合理的に予測可能であったといってよい。

 さらに、前記エのとおり、Aは、就労可能な年齢に達した時点において、本件支援学校等の教育によって社会的障壁を除去する意識や行動力を身に付け、聴力の補助的手段としてAが選択した方法を認めて協力してもらうなど、決して過重とはいえない合理的配慮がされる就労環境を獲得し、健聴者と同じ職場で同じ条件で働くことができたであろうことが、本件事故当時においても、これまた、蓋然性をもって合理的に予測することができたといえる。

 そうすると、Aは、就労可能年齢に達した時点において、生来の聴覚障害を自分自身及び職場(社会)全体で調整し、対応することができると合理的に予測できるから、損害の公平な分担の理念に照らして、全労働者平均賃金を基礎収入として認めることにつき顕著な妨げとなる事由はなく、健聴者と比べて、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるということはできない。


 このように、Aは、一般就労、即ち、障害の有無にかかわらず、健聴者と同じ職場で同じ勤務条件や労働環境のもとで同等に働くことが十分可能であったと考えられる。そうすると、Aの逸失利益を算定する際の基礎収入については、平成30年の全労働者平均賃金を用いるのが相当であって、Aの基礎収入につき、この平均賃金から何らかの減額をする理由はないといわなければならない。

2025年8月14日 (木)

【労働・労災】 職場におけるメンタルヘルス不調対策の実務と書式

 昨年8月に民事法研究会から出版された「職場におけるメンタルヘルス不調対策の実務と書式」を出張の行き帰りで読みました。

 最近、従業員が精神的な不調のために、欠勤が続く、仕事ができていないなどの相談が、昔と比べると増えているように感じます。

 20250809_141853                                (万博)

 よくある相談としては、「Q17 復職を可とする主治医の診断書が提出された場合の対応」です。

 解説は、①医学的な見解をとりつけること、②主治医との連携を適切に図ること、③丁寧な対応をとることを心がけ、雇用喪失を前提とした対応をとらないことに留意しつつ、職場復帰が可能か否かの判断を行うと説明されています。

 この点については、厚労省作成の職場復帰支援に関する手引きが参考になります。

 また、「Q31 職種限定がなく、従前の業務ができない場合の対応」もよく相談があります。

 これについても、職種・業務内容の限定契約がないゼネラリストについては、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復していなくても、①現実に配置可能な他の業務がある場合や、②復帰直後は従前の職務について労務の提供が十全にできないとしても、当初は軽易な業務につかせれば、短期間で十全の職務に復帰できる場合には、復職を認めると解説されています。

 さらに、本書は書式も充実しております。

 良書だと思います😄

 

2025年8月13日 (水)

【労働・労災】 公務員の懲戒😟

 水町先生の公共部門労働法(令和7年6月出版)を読んで、公務員の懲戒ですが、民間企業のそれとはかなり趣が異なるように思いました。

 まず、公務員の懲戒処分は、4種類です。免職、停職、減給、戒告です。

 「諭旨免職」という措置は、これは法律上の用語ではなくて、本人の辞意に基づいて提出された辞職願いに対して、辞職承認を行うことを意味し、懲戒処分ではないと位置付けられています。

 ここで辞職ですが、民間企業とは異なり、辞職には任命権者による承認が必要とされています(依願免職処分)。従って、辞職を申し出た職員に非違行為があり懲戒免職処分をする必要がある場合などは辞職を承認せずに懲戒手続に付することができます。すごいですね。

 ちなみに、起訴休職の場合の給料も、全期間について最大6割が支給されるとのことです。

 さて、懲戒処分の選択判断と裁量については、民間企業でも言われているようなことが書かれています。そのなかで、公務員の場合には、懲戒処分の基準表が定められていますが、当該基準表は裁量権の濫用判断に影響を及ぼすものとなりえます。

 懲戒処分手続については、懲戒処分書と処分説明書の交付が義務づけられています。また、懲戒処分の判断の前には、弁明の機会を付与することが法的に要請されています。

 懲戒免職処分と退職手当との関係ですが、国家公務員退職法の改正により、退職手当支給制限処分と懲戒免職処分とは別の独立した処分とされていることから、その運用については、国家公務員退職手当法の運用指針に従い、慎重な検討が必要と考えられています。 

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(万博・サウジアラビア館)

 

2025年8月12日 (火)

【弁護士考】 電話による法律相談は行っていません😟

 田舎弁護士の場合、顧問先様かご依頼をいただいているお客様以外の方からの電話による法律相談は一切対応しておりません。

 電話による法律相談の場合には、時間を費やして対応しているにもかかわらず、その報酬を得ていないからです。

 もっとも、集客のために、電話による法律相談を可としている所もありますが、田舎弁護士の場合は、毎日電話やメールにてご相談のお問い合わせをいただいている顧問先様が多いために、そのような対応をしてしまうと、顧問先様への対応がおろそかになつてしまいます。 

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(万博会場)
 お電話をいただいても、受付担当の段階で、その旨を伝えてお断りさせていただいております。
 しかしながら、困るのは、友人知人と称する方や名刺交換をした方です。
 法律相談以外の連絡であればWELCOMEですが、法律相談であれば、内心ではうんざりしてしまいます。弁護士も20年以上のキャリアを有していると、事務所にいる間は日々仕事におわれています。
 法律相談を始めると、30分、1時間という貴重な時間を失うことになります。
 そして、その分ですが、顧問先やご依頼いただいている案件が後回しとなってしまいます。
 8月号のしまなみ通信にも、その旨のことは記載しておいたのですが、余り効果がありません。
 そういえば、先日、長女と、ガソリンを給油にする際に満タンにするか、2000円とか3000円の定額にするのかという話をしました。
 長女からは、定額にしても割引などのメリットもなく、給油にかかる時間を考えると、満タンの方がメリットが大きいと言っていました。
 田舎弁護士も同感です。
 給油ということは、自宅からガソリンスタンドまでの往復の時間やその際のガソリン消費を考えると、定額のメリットは感じません。
 特にそのための時間が仮に30分かかるということであれば、それにより30分の時間を失うことになります。
 さすが我が子だなと思いました😄 
 弁護士は、時間を売る仕事をしているということを世の中の方に理解をしていただきたいと思います。

2025年8月10日 (日)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 集団的労使関係の展開1(労働組合、団体交渉)

 東京労働大学講座労働法です。今回は、集団的労使関係の展開1(労働組合、団体交渉)で、講師は山川隆一明治大学法学部教授です。

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                            (皿が嶺・暑いので冷たさを😄)

Ⅰ 総論

1 労使関係法(集団的労働関係法)の意義

 ※団体交渉を通じた労働者の交渉力のサポート

2 労使関係法政策の展開

 ※憲法28条(団結権・団体交渉権・団体行動権) 3権の関係ー団交権を中心とみるか

 ※労働組合法・労働関係調整法

   民刑事免責、労働協約の効力、不当労働行為の禁止と救済、労働争議解決の支援

3 我が国の労使関係と法

 ※企業別組合 協調的労使関係・労使協議制(←団体交渉ではない)

4 労使関係法政策の課題

Ⅱ 労働組合

1 労働組合の結成

 ※自由設立主義 許可や登録は不要。

 ※労働組合の定義

 ※労組法上の救済・手続参画のための要件(民主性・規約要件) 労働委員会の資格審査

 ※利益代表者性は実態で判断

 ※憲法28条による保護は労組法より広くなりうる

2 労働組合の運営

 ※加入と脱退  

 ※ユニオン・ショップ協定(ユ・シ協定) 解雇を通じた実際上の加入強制

 ※組合規約

 ※統制  団結自治と組合民主主義(人権尊重)

   表現の内容・時期・場所に照らして団結活動の必要性と調整 ⇒組合員集会は自由に意見を交わすことが期待

 ※便宜供与 

   組合事務所・掲示板・在籍専従・組合休暇

   チェックオフ(使用者が組合との協定に基づき、組合費を賃金から天引きし、一括して組合に渡すこと)

   ⇒組合員組合費の支払を使用者に委任、使用者はそのための費用を賃金から控除(相殺)、組合は組合費の取立てを使用者に委任

    エッソ石油事件 最判平成5年3月25日

   ⇒労基法24条1項との関係(過半数代表との協定の要否) 済生会中央病院事件 最判平成元年12月11日 要する

 

Ⅲ 団体交渉

1 団体交渉義務

  ※複数組合交渉主義

  ※団体義務違反に対する救済

    雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと

    労働委員会による救済(行政救済) 労組法27条以下

    裁判所による救済(司法救済) 憲法28条

2 団交の当事者・担当者

  ※ 使用者 朝日放送事件 最判平成7年2月28日 雇用主以外の事業主であっても雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、(派遣法制定前の話)

  ※ 労働者 駆込み訴え 雇用終了後に組合に加入した場合の使用者の団体応諾義務

     雇用終了を争う場合・雇用終了は争わないが紛争が未解決の場合

     雇用終了後に紛争が顕在化した場合(アスベスト問題等)

  ※ 労働者の代表者  共同交渉(上部団体等の参加)

3 団交事項

  ※義務的団交事項 ①使用者が処分権限をもつ事項であつて、かつ、②労働条件その他労働者の待遇に関する事項 または 労使関係の運営に関する事項

  ※経営生産事項は? ⇒ 労働条件との関連性で考える

4 団交の態様

  ※団交の開催条件(場所、時間、出席人数等) ⇒ 条件提示の合理性を考慮

  ※誠実交渉義務 カール・ツァイス事件 東京地判平成1年9月22日

   具体的に説明、資料を提示、論拠を示して反論する 合意達成の可能性を模索する義務

5 労使協議制 ←ソフトな情報共有がよくみられる 団交ではない

  労使間の情報共有・意思疎通の手段

2025年8月 9日 (土)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 非典型雇用 川田知子中央大学法学部教授

 東京労働大学講座労働法・非典型雇用の授業でした。講師は、川田知子中央大学法学部教授です。川田先生は、田舎弁護士が所属していた中央大学法修会研究室の顧問の先生でもあります。 

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(毒キノコ?)
Ⅰ パートタイム・有期雇用労働者法(パート・有期法)
1.立法政策の推移
 ※1993年 パートタイム労働法制定
 ※2007年 改正   労働条件の文書交付による明示、通常の労働者との差別的取扱いの禁止
 ※2012年 労働契約法改正 通常の労働者との労働条件の不合理な相違を禁止 ※有期にも拡大
 ※2014年 パートタイム労働法改正 均等・均衡待遇
 ※2018年 パート・有期法 有期も法の対象に含まれる 労契法20条 → パート・有期法8条
 ※2019年 厚労省「同一労働同一賃金のガイドライン」
2.パート・有期法の概要
 ※通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ること  適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置
 ※短時間労働者 一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用されている通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者
 ※有期雇用労働者 期間の定めのある労働契約を締結している労働者
 ※労働条件の明確化と納得性の向上
 ※就業規則の作成・変更手続 →パート・有期法7条 別々に作成 短時間労働者の過半数を代表するもの
 ※パートタイム・有期雇用労働者への説明・相談  雇い入れたとき  8条~13条の規定により措置を講ずべきこととされている事項
                         求めがあったとき  
3.差別的取り扱いの禁止(パート・有期法9条)均等待遇
  ※職務の内容の判断
  ①業務の内容(職種)が同じ → ②従事している業務のうち中核的業務が実質的に同じ →③責任の程度が著しくは異ならない ⇒「職務の内容」は同じ
  ※職務の内容・配置の変更の範囲が同じか否か
  ①転勤の有無 ⇒ ②転勤の範囲の判断 ⇒ ③職務の内容・配置の変更(職種の変更とか)の有無の判断 
  ※強行法規 ⇒不法行為による損害賠償、労働契約に基づく差額賃金請求  
4.不合理な待遇の禁止 均衡待遇
  ※比較対象となる「通常の労働者の待遇」  選択権説
  ※9条と同じ
Ⅱ 正規・非正規労働者間の待遇格差に関する判例
  ※ハマキュウレックス事件
  ※長澤運輸事件
  ※メトロコマース事件
  ※大阪医科薬科大学事件
  ※日本郵便事件
  ※名古屋自動車学校事件 
Ⅲ 労働者派遣法
1.労働者派遣法制定(1985年)と改正の経緯  
  ※2012年改正からは派遣労働者保護へ ※2018年改正 均等・均衡待遇
2.労働者派遣の基本概念
  ※紹介予定派遣  ミスマッチを防ぐ
 
3.労働者派遣事業の規制
4.派遣元事業主の講ずべき措置
5.派遣労働者のための均衡・均等待遇義務
  ※派遣法30条の3第1項・2項
    派遣先均等・均衡方式
    労使協定方式(派遣先にあわせる必要がない)
  ※派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化
 

2025年8月 8日 (金)

【労働・労災】東京労働大学講座 労働法 労働条件4(労働安全衛生と労災補償) 小畑史子京都大学教授

 東京労働大学講座労働法「労働条件4(労働安全衛生と労災補償)」で、講師は小畑史子京都大学教授です。 

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(横峰寺遍路道)
Ⅰ 労災補償
1 イントロ
  ※労働安全衛生は、労災の予防  労災補償は労災が起きてしまった場合の救済
  ※国から、労災保険法による労災保険給付 →業務によって負傷疾病障害死亡が生じたといえるか否か
  ※使用者等から、民法の不法行為や労働契約の債務不履行に基づく損害賠償 義務違反があつたか否か
  ※労災保険制度の誕生  不法行為に基づく損害賠償請求においては、過失責任主義 労働者に立証 また、使用者等に資力がない場合も
   → 無過失責任制度 負傷等が業務に起因する(業務起因性)といえれば、使用者等の過失の有無は問わない労災保険制度
     すべての事業主から保険料を徴収してプールをしておき、いざ労働者が労災にあつたときにそこから労災保険給付を支給する労使保険制度   
2 業務災害
(1)種類
   業務災害に関する保険給付 補償給付
   複数業務要因災害に関する保険給付(※兼業・副業の労働者の場合) 補償の2文字がとれている
(2)業務災害
   業務上とは、行政解釈によれば、業務起因性を意味する 業務起因性とは、業務又は業務行為を含めて労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることに伴う危険が具現化したものと経験則認められることと定義される
   業務起因性があるというためには、その災害が、労働者の事業主の支配ないし管理下にある中で起こったことが必要(業務遂行性)
(3)手続
(4)業務起因性の判断
(5)業務遂行性
    支配下、管理下
    休憩しているとき、始業前の災害、事業場外の労災、出張中
    ※大分労基署長事件 福岡高判平成5年4月28日 出張所で夕食中に飲酒した後階段から転落して死亡 「通常随伴する行為」
(6)業務上疾病
    ※職業病リスト
    ※その他業務に起因することの明らかな疾病
(7)脳血管疾患・虚血性心疾患の業務起因性
    ※過労死
    ※(1)①発症直前から前日までの間に発生状態を時間的及び場所的に明確にしうる異常な出来事に遭遇したこと
     ②発症に近接した時期において特に過重な業務に就労したこと    1週間
     ③発症前の長期間にわたって著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと               6か月
    ※(2)過重負荷  自然的経過を超えて
    ※国・岡山労基署長事件 福岡高判令和5年9月26日 過労死ライン 月80時間 月80時間が超えていなくても総合考慮
      連続勤務 勤務間インターバルの不足 総合的に考慮
(8)精神疾患とその末の自殺の業務起因性
    ※①ICD-10に分類あれる精神障害
     ②発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められる
     ③業務以外の心理的負荷及び個体的要因により当該精神障害を発病したとは認められない
    ※自殺は故意に死を至らしめるものではないか? しかし、業務上の精神障害によって正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され又は自殺を思いとどらせる精神的抑止力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたと認められる場合には、結果の発生を意図した故意には該当しない
    ※業務による心理的負荷評価表 業務以外の心理的負荷評価表
    ※国・熊本労基署長事件 福岡地判令和6年7月5日
(9)2020年労災保険法改正ー兼業・副業労働者の増加を受けて
    ※他の勤務先から得ていた賃金も、給付基礎日額の算定の際に合算
    ※単独では過労死ラインを超えることはないとしても、合計すると過労死ラインを超えていた場合、すべての勤務先での業務上の負荷を合計すると被災してもおかしくないレベルとなるならば、過労死・過労自殺・精神疾患は業務災害であると認定する
3 通勤災害
    ※補償の文字がつかない
    ※労働者にも一部負担金
    ※通勤
4 損害賠償
(1)民事損害賠償   
    ※労災は、慰謝料は含まない
    ※不法行為 債務不履行
(2)賠償責任の軽減
    ※労働者側にも相当の寄与要因がある場合、過失相殺法理の類推適用や過失割合の按分等により損害賠償責任が軽減
    ※電通事件 最高裁平成12年 労働者自身の性格や家族の対応が減額事由になるのか? 労働者の健康に配慮して適切に管理する義務
(3)労災保険給付と損害賠償
    ※二重取りはできない
    ※労災保険法の給付をすれば労基法の補償はしなくていい 労基法の補償を行えば民法の損害賠償はしなくていい
    ※原因が第三者にあれば国は保険給付の価額の限度で第三者に対する損賠賠償請求権を取得 被災者が第三者から賠償を受ければ政府はその価額の限度で保険給付をしない
Ⅱ 労働安全衛生
    ※労災の防止は昔は労基法
    ※労働安全衛生法へ 労働者も注文主もリース業者等も義務主体 ソフトな行政手法も併用 夥しい数の規則を従える 労基監督官が監督 義務の内容としては、有害物質の使用禁止、危険な機械の製造許可制度、安全措置設置義務付、管理体制整備等
    ※健康診断を行う義務 年1回  健康診断結果の記録、医師等の意見を聴取 それを勘案して就業場所の変更・労働時間短縮等適切な措置をとる
    ※健康プライバシー  会社に健康状態、特に精神的状態を知られてくない
     ストレスチェック(66条の10)  大きな会社であればいいのだが、そうでない会社の場合は。。。特定されてしまう
      毎年1回 年々自分のデータが溜まっていく 会社の方には知られない しかし、休職 専門家と相談したいと考えた場合には、健康プライバシーを外して、労働者の要望に応じて会社が措置していく
 
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(横峰寺山門)

2025年8月 7日 (木)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 労働条件3(休暇・休業)  竹内寿早稲田大学法学学術院教授

 東京労働大学講座労働法「労働条件3(休暇・休業)」で、講師は、竹内寿早稲田大学法学学術院教授です。

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                              (古権現山)

Ⅰ 総論:休暇、休業とは

1 法定の休暇、休業 / 法定外の(労働契約等に基づく)休暇、休業

  一時的に労働から離れる 本来は労働義務を負う日における労働義務が消滅ないし免除  VS 休日(もともと労働義務を負わない)  

2 休暇と休業  

Ⅱ 年次有給休暇

1 趣旨、沿革、実情

  ※賃金を受けながら休暇を保障

  ※ヨーロッパ諸国におけるバカンス制度に由来

  ※平成30年改正 5日分は使用者が時季指定して与えるよう義務付け

  ※令和5年 取得率65.3%

2 年休権の法的性格

  白石(しろいし)営林署事件 最高裁昭和48年3月2日判決 二分説  年休権を39条1項から3項に基づいて発生する使用者の義務ないし労働者の権利と、5項に基づく具体的な休暇の時季決定に関わる権利とに二分して理解する説

3 年次有給休暇の取得要件と日数

(1)概説 ①一定期間の継続勤務 + ②ある一定の期間における全労働美の8割以上の出勤

(2)継続勤務(労基法39条1項、2項も同様) ※雇い入れの日 ※在籍 ※勤務の継続性は実質的に判断

(3)全労働日の8割以上の出勤(労基法39条1項、及び、10項)※労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨

(4)年次有給休暇の日数及び単位(労基法39条1項、2項、3項、4項)

4 時季指定による年次休暇の取得

 ※時季指定の効果 具体的な時期が指定された場合には、使用者が適法に時季変更権を行使しない限り、当該具体的な時期に労働義務の消滅という効果+39条9項に基づく賃金(年次有給休暇手当)が発生

5 使用者の時季変更権

 ※事業の正常な運営を妨げる場合とは?

   →事業の内容、規模、当該労働者が担当する業務の内容、業務の繁閑、代替要員の確保の難易、同時季における休暇請求者の有無、人数などが諸般の事情を総合考慮して判断。

   一般的には、これらの諸般の事情を総合考慮して、①時季指定を行っている労働者の当該年休取得予定日における労働が事業にとって必要不可欠であり、かつ、②代替要員の確保が困難である場合(時季変更権の行使、不行使を判断する時点において、そのようなおそれ(蓋然性)が客観的に、具体的に認められる場合)には、事業の正常の運営を妨げる場合に該当すると判断される。

  時事通信社事件 最高裁平成4年6月23日判決 長期連続の年休の場合、労働者が使用者の業務計画や他の労働者の休暇取得等との事前の調整を経ないで長期連続の休暇について時季指定を行う場合には、休暇が事業運営にどのような支障をもたらすかの判断、休暇の時季や期間をどの程度変更するかの判断について、ある程度の裁量が認められている

6 年次休暇の利用目的

 →自由利用原則  休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由 白石営林署事件 

  使用者に目的を告知する義務を負わない 使用者は利用目的を尋ねることが許されず、利用目的の申告がなされないことを理由に時季変更権行使の適法性を根拠づけることもできない

 ※争議行為目的での年休利用?

7 計画年休  集団的にとる仕組み

 ※計画年休協定を締結することが必要

 ※各労働者の有給休暇のうち5日を超える部分であることを要する

 ※計画年休協定が締結された場合、当該労使協定が定める日数についてその定めに従い休暇日が特定される

 ※計画年休協定に基づく休暇付与に反対する労働者についても、発生する

8 使用者による時季指定を通じた年休付与の義務

 ※当該年度に付与される日数として10日労働日以上の年次有給休暇の権利を有する労働者に対して、年休日数のうち5日については、使用者が、時季を指定することにより、付与しなければならない

 ※労基法39条5項または6項の方式に年休が付与された場合、当該付与日数(5日を超える場合は5日)については、使用者が時季指定して年休を付与する必要はない

 ※使用者による時季指定にあたっては、あらかじめ対象労働者の意見を聴かなければならず、また、当該意見を尊重(して時季指定)するよう務めなければならない

9 年次有給休暇手当

10 取得されなかった年休の取扱い

 ※2年の消滅時効(労基法115条の「その他の請求権」)(令和2年の民法改正の変更を受けない)

 ※取得されなかった年休は、翌年度にのみ繰越可能

11 年休取得を理由とする不利益取扱い

 ※労基法39条は不利益取扱いを定めていない一方、附則136条が使用者は第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないと規定

 沼津交通事件 最高裁平成5年6月25日判決 附則136条はそれ自体としては使用者の努力義務を定めたもの 諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては、労基法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められない限り、公序に反して無効となるとすることはできない

Ⅲ 育児介護休業法に基づく休暇、休業

1 育児介護休業法の発展

2 育児休業、出生時育児休業、介護休業、子の看護等休暇、介護休暇の概要とこれらの休暇、休業の特徴

(1)育児休業

 ※満1歳未満の子を養育する労働者は、申出により、子が満1歳に達するまで、育児休業をすることができる

 ※事業主は申出を拒むことができない

 ※本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対し、事業主は、面談や書面交付等により休業の取得意向の確認を個別に実施しなければならない

 ※2回に分割して取得が可能

 ※事業主は、育児休業期間中の賃金の支払を義務づけられない 雇用保険法の下で、原則として、育児休業給付として休業前の賃金67%が支給される +出生後休業支援給付金(13%)   合計80% これは実質手取りに相当する

(2)出生時育児休業

 ※子の出生後、8週間以内の期間に、4週間を上限に取得可能 申出は、原則、休業2週間前まででよい

 ※労使協定の締結により、労働者が同意した範囲内で、休業中の就労が可能(休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分が上限)

(3)介護休業

(4)子の看護等休暇及び介護休暇

Ⅳ (年次有給休暇以外の)休暇、休業等の取得と不利益取扱い

1 不利益取扱いを禁止する明文の規定との関係

 ※産前産後の休業、育児介護休業法に基づく休暇、休業については、明文の規定あり

 ※強行規定

 ※これらの休暇、休業を申し出る等した労働者については、そのことを理由に、不利益取扱いをすることは、当該取り扱いがこれらの規定に違反しないと認めるに足りる合理的な特段の事情が存しない限り、原則、同条に違反するものとして違法となる

2 明文の規定に違反しない場合の公序(民法90条)違反の可能性

  →賃金の算定上、欠勤として取り扱うことは、違反しないが、休暇、休業を各種手当て、賞与の算定、昇給等との関係で欠勤扱いすることが、上記各規定に違反するとはいえない場合であっても、判例上は、更に、権利の行使を抑制し、ひいては法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるときは、休暇、休業を欠勤扱いとすることは公序に反して無効

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                           (古権現山登山道の落書き)

2025年8月 6日 (水)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法 労働条件2(賃金) 野川忍明治大学名誉教授

 東京労働大学講座 労働法 労働条件2(賃金)は、野川忍明治大学名誉教授の解説となります。 

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(楢原山・蓮華寺跡)

Ⅰ 労働契約における賃金の意義

 ※労働契約関係における最重要義務としての賃金の支払い

 ※原則は民法624条(ノーワーク・ノーペイ) 例外としての民法536条2項(危険負担)

Ⅱ 法律上の賃金規制

(1) 賃金額の規制 → 最低賃金法(契約の自由の制約)

(2) 賃金支払方法の規制 → 労基法24条の4原則 (通貨払い原則【デジタル貨幣の容認】、直接払い原則、全額払い原則、定期払い原則)

(3) 休業手当   民法536条2項(全額支払う) 労基法26条(6割でいい)との併存 →???

           民法と労基法とで、「責めに帰すべき事由」の内容が違う。

           民法は、過失責任主義 不可抗力の場合は仕方が無い。労基法は、民法上は責めに帰すべき事由がない場合でも、賃金を支払う必要がある。例えば電気が止まったような場合にも、労基法26条を使って6割まで請求できる。労基法は、どっちがリスクを負うべきかという視点で考える。  

Ⅲ 賞与と退職金をめぐる法律問題

(1)賞与をめぐる問題

 ※支給日在籍者条項の取扱い(大和銀行事件 最高裁昭和57年10月7日判決)

  →査定対象期間中在籍し、支給日に退職している労働者への不支給措置の有効性?

   最高裁は、条件付きで可能とする。  

(2)退職金 功労報償と賃金の後払いという二重の性格

 ※同業他社への就職と退職金減額措置(三晃社事件 最高裁昭和52年8月9日判決)

 ※懲戒解雇と退職金不支給措置(小田急電鉄事件 最高裁平成15年12月11日判決)

Ⅳ 賃金システムの改革と法的課題

(1)能力主義賃金制度の導入と評価制度

 ※就業規則による導入の不利益変更性 ノイズ研究所事件 東京高判平成18年6月22日判決

 ※合理性の判断 ハクスイテック事件 大阪高判平成13年8月30日判決

 ※労働協約による導入(合理性の判断不要) 

 ※人事評価 →人事評価権に内在する公正評価義務  (制度整備、開示説明、苦情処理システムの必要性)

(2)同一労働同一賃金の意義と課題

 ※働き方改革関連法における同一労働同一賃金の趣旨

  労契法20条 → パート・有期労働法8条

  最高裁平成30年6月1日判決 

  ハマキュウレックス事件  →各種手当ての相違につき多くを不合理と認定

  長澤運輸事件       →精勤手当及び超勤手当以外の不合理性否定

  最高裁令和2年10月13日判決

  大阪医科薬科大学事件   →前者は賞与につき不合理性否定

  メトロコマース事件    →後者は退職金につき不合理性否定

  日本郵便三(東京、大阪、佐賀)判決 最高裁令和2年10月15日判決 → 各種手当の相違につき多くを不合理と認定

  名古屋自動車学校事件 最高裁令和5年7月20日判決 → 基本給と賞与の格差

(3)賃金の切り下げをめぐる法的課題  

 ※労働条件変更としての賃金切り下げ  米国(量的【解雇】に対応) 日本(質的に対応)

   不利壁変更の手法 個別同意、労働協約、就業規則

 ※就業規則を用いた賃下げの諸相  

   大曲市農協事件 最高裁昭和63年2月16日判決 → みちのく銀行事件 最高裁平成12年9月7日判決 

 ※個別合意を用いた賃下げ

   山梨県民信用組合事件 最高裁平成28年2月19日判決

    →当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべき

2025年8月 5日 (火)

2025年7月 いよぎんホールディングス特別講演会 「なぜ人的資本の投資が必要なのか?」 小野浩一橋大学教授

 先日、今治国際ホテルで開催されました「いよぎんホールディングス特別講演会」「なぜ人的資本の投資が必要なのか?」に参加いたしました。

 講師は、中野浩一橋大学教授です。

 「人的資本」は、人間の持つ能力、才能、知識を意味すること、また、人的資本は、金融資本、物的資本と同様に、投資の対象として捉えられることを前提としています。

 そして、人的資本には、①一般的人的資本と、②企業特殊的人的資本の2つあり、その違いを知ることが大切です。つまり、①一般的人的資本とは、文字どおり、一般能力やスキルの意味であり、それは市場性が高く、どの会社でも通用する、例えば大学教育のようなものであり、他方、②企業特殊的人的資本とは、企業特殊的能力やスキルの意味であり、市場性は低く、他の会社では通用しないものです。

 これまでの日本は新卒者の終身雇用が予定され、大学生を新卒者として採用すると企業内で教育が予定されていますが、その教育の内容は、企業特殊的人的資本であり、一般的人的資本は個人自らが投資しないと陳腐化し、次第に市場価値自体が低下し、そのため、40~50歳代の中高年は、転職をすると賃金が低下するため、結果的に長期雇用になっています。

 我が国は、バブル前に、沢山の新卒者を採用し、その新卒者に対して、内部において教育を行っていたところ、バブル後は、入社している従業員は解雇できないために新卒者の採用を抑制し、他方で、非正規雇用の労働者を採用し、非正規雇用労働者に対しては教育を行うというという発想はないため、全体として、一般的人的資本を有する労働者が減少し続けたという説明をされていました。

 また、現在の賃上げについては、一時的なものであり、持続可能な賃上げのためには、人的資本投資が不可欠であるにもかかわらず、それを意識されていために、このままでは、長期的には持続できないと説明されていました。

 企業側からすれば、人的資本投資を行った場合、その労働者は市場価値が高まるために転職の可能性が大きくなるため、それが企業としてはリスクを感じるところですが、これについては、市場価値を高めた労働者がその会社に残ってくれるような組織を作ることで対応すべきだとされています。

 そしてその対応策として、①資格手当を与える、市場賃金を支払う、②選抜制度の導入、③出戻り制度、④陳腐化が激しいスキルには投資しないという4つの工夫を提言されています。

 意外と思ったのは、陳腐化が激しいスキルとして、デジタル、AIなど、高度で専門性が高いスキルは避けて、すぐには陳腐化しないコアスキルに重点的に投資すべきだと主張されています。 

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(楢原山)
 なるほどなと思いましたが、田舎弁護士に相談されるような中小企業には、一般的人的資本への投資は、なかなかハードルが高いような気がします。
 
 転職可能なスキルを獲得すると、転職する労働者が少なくないからです。😵

2025年8月 4日 (月)

【学校】愛媛大学デジタル人材育成機構・デジタル人材育成講演会 「デジタルで世界を見るということは何か?」

 池辺将之北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センター教授の「デジタルで世界を見るということは何か?」をWEBで参加しました。

 まずは、大学教授という仕事についてのお話から始まりました。

 国語(企画構成 論文を書く力)、数学(数式を新しく作り出す力)、英語(海外への発信、情報収集する力)は、基礎、理科(数式を実応用に結びつける力)、社会(立ち位置を知る力【マーケット・人】)は応用ということで、5教科の機能の説明に続きました。

 そして、池辺先生の研究、すなわち、イメージセンサの研究開発を述べられた後、それが、画像処理システムの研究開発(脳が感じる画像を作り出すシステム、関節リウマチ診断補助AI、視て触れることができる遠隔触診システム)に発展することに言及されました。 

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(木漏れ日の橋)

 ※アナログとデジタルとの違い

   アナログは連続、デジタルは量と時空間の2つの領域で離散化

   高級カメラとスマホと撮った画像 →何が違うのか? レンズボケの原理 イメージセンサ 画像処理 

                    「絞り」 焦点以外にもポイントがあう 高級カメラは美しいボケがつくれる

   現在、人工知能(AI)で、隠れた部分を埋めることが可能。隠れた部分を画像処理すると、高級カメラに近づく

   光学系(アナログ) → デバイス回路(デジタル) → 画像処理(デジタル)

 ※先生の伝えたいことは下記のとおりでした。

  本日は、アナログとデジテルの違いで「視る」ことについてのお話

  高校・大学・社会で学んだ内容は、基礎や応用に結びつき、得た知識は、物事の原理や異分野に触れると花開く

  興味をもって知りたい、学びたい気持ちが大切

 今まで積み重ねてきたことから得られた価値観が、1つ更新されることで、また変わっていくならば、生きる上で、この上ない生きがいを感じるかもしれません。

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                             (楢原山山頂)

2025年8月 3日 (日)

【弁護士研修】令和7年度日弁連夏期研修 災害時における弁護士業務 鹿瀬島正剛弁護士

 昨日の日記に続きます。次は、災害時における弁護士業務で、講師は鹿瀬島正剛弁護士です。

 ※2016年熊本地震 18年西日本豪雨災害 19年令和元年台風19号 20年令和2年7月豪雨(熊本) 24年令和6年能登半島地震

 ※被災者支援と弁護士との関係

 弁護士像・人と人との間に起きた法的紛争を解決する人 

 自然災害は相手が人間ではない、法的な紛争ではない、解決という言葉がびったりこない

 弁護士は、基本的人権を擁護・・・(弁護士法第1条)

 被災により、いろんな人権が一瞬で奪われる 弁護士としての本来的な活動であり使命ではないか。

 ※災害時における弁護士業務

  「相談」業務 日ごろの相談と災害時の相談とは別物か? 否 災害時だけの特別な内容の相談はなし。

  名称は、法律相談ではなくて、何でも相談 主たる目的は、解決ではなく、精神的支援、情報提供 

  ①災害対策基本法→罹災証明書 申請主義であるが、これでよいのか? ②災害救助法→応急修理制度(指定業者に修理を依頼)、応急仮設住宅 現物を支給する ➂被災者生活再建支援法 →被災者生活再建支度金 現金を給付する 阪神淡路の時はなかった制度 ④災害弔慰金法→災害弔慰金(災害死)、災害障害見舞金、災害援護資金貸付

 ※熊本県弁護士会の被災者支援活動  記録集をつくるときに、写真はない 記録係は必要 振り返る、つなげるためには必要

  くま弁ニュース

 ※電話相談 発災から9日後 1年間で7631件

  NTTに支払った電話代月200万円の負担 フリーダイヤルにしないと相談数は少ない

  福岡会、東京三会、大阪会の応援

 ※面談相談 発災から3週間後 1年間で4653件

 ※復旧期 「問題解決」

  自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(被災ローン減免制度)

   二重ローン問題への対応

   弁護士会はお金を配ることはできない 借金をなくす・減らすことはできる

   減免総額(委嘱750件・成立380件)1件につき1000万円減額 =約38億円

   要件 災害により借金の返済が困難になった個人 効果 債務の減額または免除  ローンであればなんでもOK

   ブラックリストにのらない 連帯保証人へ原則請求なし 費用負担なし(登録支援専門家に依頼)

 ※災害時に起きる紛争の典型例 隣の家との紛争(瓦・塀) 借地借家での紛争(補修・賃料)

  相手を責めづらい でも何とかしてほしい 裁判したくない

  災害ADR 弁護士が仲裁人となって両当事者から話をきき、妥当な解決案を提示し和解する制度

 ※政策・立法提言 弁護士法第1条第2項 法律制度の改善 →応急仮設住宅の入居要件、被害認定に関する要請書の発出

   借家については自分の物でないため解体証明書が出せない

 ※繰り返される課題

   (1)取り残される被災者 在宅避難者 

      国は申請しない人はなにもしない 

   (2)災害関連死 熊本地震 直接死50名 関連死219名

 ※これからの被災者支援の在り方(災害ケースマネジメント)

  国の被災者支援制度の特徴・欠陥  

 住屋の被害を基本としている しかし、勤務先は倒壊した 自分の家は大丈夫であったが、周囲の住屋が倒壊した

 世帯単位 世帯主の口座へ振込  世帯で振り込まれる

 申請主義(求めなければもらえない)

 被災者一人ひとりごとの生活基盤の被害を個別に把握し、専門家が連携し、被災者一人ひとりを個別に支援していく手法

 →福祉制度との一体化という視点が大切

 ※23年3月 内閣府 災害ケースマネジメントの手引き

  25年5月 弁護士・弁護士会 災害ケースマネジメント事例集

  25年7月 法改正 ①災害対策基本法 ②災害救助法  →メニュに、福祉サービスの提供が入った。物か現金かだったのを、サービスの提供、しかも、福祉サービスと一体化した形の改正

 仙台、岩手、桑本、鳥取、広島、静岡、徳島の弁護士会の各事例も資料として紹介されていました。

  なお、頑張ってくださいは、被災者にとってはNG 「できるしこ」(熊本の方言) できることを無理せずできる範囲でやること。

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(宇和島の商店街)
 わかりやすい講義でしたよ。 ( ..)φメモメモ   

2025年8月 2日 (土)

【弁護士研修】令和7年度日弁連夏期研修 「事件処理にあたって気をつけるべき税金と利用できる税金」 山下清兵衛弁護士

 7月25日高松で開催されました令和7年度日弁連夏期研修に参加いたしました。昔はもっと参加者多かったように思います。100名足らずではないでしょうか。研修会の後にある懇談会も40名少しのようです。寂しい限りです。

 第1番目のテーマは、山下清兵衛弁護士の「事件処理にあたって気をつけるべき税金と利用できる税金」のはずだったのですが、講義の大半は、これからの弁護士像についての大所高所のご意見でした。

 ※税務訴訟ではなくて税務調査に関与すべき。行政書士、税理士と公認会計士とお付き合いに尽きる。税務事件を弁護士に相談するというシステムがない。納税者保護に弁護士が関与しないのは問題。税務調査、査察事件の相談が税理士にいっているので、その税理士からいかに弁護士が相談を受けられるのか。弁護士だけで勉強しているだけでは依頼はこない。租税法学会を立ち上げる。

 ※例えば、3回めの退職金を得る方法。従業員、役員、常勤から非常勤になった場合(分掌変更)(通達) 新しいビジネスモデルの提案。

 ※目指すは租税訴訟ではなくて税務調査。

 ※税務調査の結果を納税義務者に説明しなければならない規定あり。税理士も知らない。国税通則法

 ※罪刑法定主義→(具体化)租税法律主義  実体要件はなにか?

 ※木更津木材事件  組合に払い下げて、組合員に対する転売の際には、登録免許税について軽減税率適用できるのであるが、登記の依頼を受けた司法書士が認識しておらず、通常税率適用となったので、還付請求をしたという事案

  軽減税率適用のためには、組合・組合員間の譲渡が実体要件である、それ以外は関係ない。知事証明書は手続要件に過ぎない。

  税法の課税するための実体要件だけをみること。

 ※民事要件事実論 訴訟を意識した概念。主張立証責任を意識した概念。

  売買は所与のものとして扱う(先決的私法的取引)

  しかし、租税訴訟の領域においては、課税庁に主張立証責任がある。

  課税庁は、民事取引が架空、不当な租税回避行為の主張をすることがある。先決 的私法的取引は税務署長は否定できない

 ※調査結果説明会(最終段階)で、弁護士が関与する。合意により租税債権の確定 国税通則法74条の11第2項第3項

 ※犯罪構成要件論 租税訴訟で理由づけに利用している

 ※小規模宅地評価事件 税理士さんが、遺言書作成があるので、小規模宅地評価減が使えると思って申告したところ、全相続人の同意が必要が必要であることから否認された。後日、全相続人の同意を得て更生の請求をかけたところ、小規模宅地評価減が認められた。P113~

 ※相続財産の確定と相続税額の確定 P61~ あとで読んでおいてほしい

 ※ヒノックス事件 手続違反で課税してきたケース

 ※破産管財人事件 裁判所への予納金を差し押さえしてきたケース

2025年8月 1日 (金)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働法コース 労働条件1(労働時間、休憩、休日) 櫻庭涼子一橋大学教授

 東京労働大学講座労働法コース 労働条件1(労働時間、休憩、休日) 櫻庭涼子一橋大学教授です。 

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(日本酒バーで)
※労働時間法制の基本的な枠組み(労基法)
 ①法定労働時間は1日8時間 1週40時間が上限(32条)
 ②休憩時間は労働時間が6時間を超えるときは45分、8時間を超えるときは1時間、途中に付与(34条)
 ③休日は1週に1日付与(35条)
 ④①を超えた労働時間、③の休日の労働につき割増賃金支払義務
  ただし、例外・適用除外・特別規制あり
※履行確保
 労働基準監督官による勧告、 刑罰(119条)、合意無効(13条)
※労働時間の概念
 労働者の行為が指揮命令下に置かれていたと評価できるかどうかにより客観的に定まる(三菱重工長崎造船所事件平成12年最判)
 指揮命令下説
 
 準備行為等の労働時間性 船舶の製造等の会社の労働者らの事案(三菱重工長崎造船所事件)
 ①準備行為を事業所内で行うことを、②義務づけられてOR余儀なくされたとき、③特段の事情のない限り、④社会通念上必要と認められる限り
 不活動仮眠時間の労働時間性 労働から離れることを保障されていてはじめて指揮命令下に置かれていないと評価できる(大星ビル管理事件 平成14年最判)
 待機時間の労働時間性 大林ファシリティーズ事件 平成19年最判 マンションの住み込み管理人
※労働時間の通算
 複数の事業場での労働について、労働時間は通算(38条1項)
 別の使用者との間での労働時間も通算されると解されている
※休憩・休日
 6時間を超える労働につき45分、8時間を超える労働につき1時間の休憩 休憩の一斉付与の原則
 週1日以上の休日(35条) 4週間で4日とすることも可能
 休日は就業規則において事前に特定することが望ましい
 事前に休日に振り替えると、時間外労働・休日労働の手当を支払う義務は生じない
 事後に休日を振り替えると、休日に労働をさせたことになり、時間外労働・休日労働の手当を支払う義務が生ずる
※割増賃金
 「通常の」賃金×割増率×時間外労働(休日労働)時間数(37条)
 「通常」賃金 参入しない 家族手当、通勤手当、住宅手当、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金等(5項、規則21条)
 割増率 時間外労働 2割5分、休日労働 3割5分、深夜業 2割5分(深夜業+時間外5割、休日6割)
 時間外労働がつき60時間を超えると5割に(1項ただし書)
 60時間を超えた分は割増賃金に代え代償休暇の付与も可能(3項)
※定額賃金の定額払
 一定額の支給によって割増賃金の支払いに代える取扱いは適法(テックジャパン事件平成24年最判、庚心会事件平成19年最判等)
 割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要
 割増賃金の権利を放棄していたといえるためには自由な意思に基づくものであることが明確でなければならない
 判別可能性に関連して、労働者に支払われる基本給や諸手当にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うとう方法が認められるためには、契約書等の記載のほか +具体的事案に応じ、
 使用者の労働者に対する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断(日本ケミカル事件 平成30年最判)
 日本ケミカル事件 薬剤師の労働者が、月ごとに基本給46万1500円、業務手当10万1000円とされていた
 康心会事件 年俸1700万円の病院の医師が、時間外労働・深夜労働に係る割増賃金の支払を求めた
 国際自動車事件 最高裁令和2年3月30日判決  割増賃金を、歩合給から減らす
 熊本総合運輸事件 最高裁令和5年3月10日判決 
※三六協定
 法定労働時間を超える労働や休日の労働であっても、①災害など臨時の必要のある場合は行政官庁の許可を受けて労働させられる(33条)、②過半数組合または過半数代表者との間で労使協定を締結することによって適法になる(36条1項)。
 延長の限度は、1か月45時間、1年間360時間(36条4項) 休日労働は含まない
 通常予見することができない業務量の大幅な増加等にともない臨時的に限度額を超えて労働させる必要があるときは特別協定により労働させることができる(5項)
 上限は1か月100時間未満 2-6か月の平均で1か月80時間以内 年間720時間 時間外労働につき1か月45時間を超える期間は6か月まで
 三六協定は、必要条件 過半数代表の選出の仕方には注意が必要 トーコロ事件 平成9年東京高判 →労働者が残業命令に従う義務はない
 過半数代表する者の選定の仕方、施行規則第6条の2
 就業規則や労働協約の法的根拠が必要 (三六協定だけでは足りない)
 個別的同意説は否定 包括的同意説の採用(日立製作所武蔵工場事件平成3年最判)
 トランジスターの步留りの向上を所管する係の労働者が、手抜き作業を見つかり、その補正のために時間外労働を命じられ、労働者は拒否し懲戒解雇された事件
※変形労働時間制
 1か月以内で平均
 1年以内で平均
 1週間以内で平均
 法定労働時間を超える日・週が特定されていなければならない
※フレックスタイム制
 始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる
※裁量労働制
 実際の労働時間数にかかわらず、事前に取り決めた労働時間業務に従事したとみなす制度
 専門業務型 企画業務型
※事業場外労働
 事業場外で業務に従事し、労働時間を算定したがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす(労基法38条の2)
 阪急トラベルサポート事件 ツアー添乗員 否定 平成26年最判
 外国人の技能実習に係る監理団体に雇用され、指導員として勤務した労働者の事案(令和6年4月16日最判) 肯定
※管理監督者(41条2号) ①事業経営に関する事項に関与しているのか、②労働時間を管理されていないかどうか、③ふさわしい処遇がなされているのかに着目して判断(マクドナルド事件 平成20年東京地判)
 ①ー③の判断は、厳格になされる
 ①ー③は、要件か、要素か
 適用除外されていても、深夜業の割増賃金請求はできる
※特別規制 高プロ 

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