月刊監査役No777号で掲載された改正公益通報者保護法の概要と監査役等の留意点です。
今回の法改正は、4項目です。
2025年6月4日から1年6月以内で政令で定める日に施行が予定されています。
①事業者の公益通報体制整備の徹底と実効性の向上、②公益通報者の範囲拡大、③公益通報を阻害する要因への対処、④公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化です。
第1に、事業者の公益通報体制整備の徹底と実効性の向上です。
前回(2020年)改正では、事業者に内部公益通報対応業務従事者を指定する義務及び内部公益通報に対する体制整備義務が定められました。これらの義務の具体的内容を明らかにするものとして法定指針が定められ、その解釈について消費者庁による指針の解説が公表されました。また、報告徴求権限等が定められ、報告懈怠や虚偽報告には20万円以下の過料が導入されました。
↓ しかし
現実には従事者指定を行っていない、体制整備がなされていない事業者が散見されています。
↓ そこで
改正法においては
(1)従事者指定義務違反に対しては、現行法の指導・助言、勧告権限に加え、勧告に従わない場合の命令権を追加し、命令違反に対しては刑事罰(30万円以下の罰金)を導入。法人の両罰規定も導入され、行為者個人(自然人)と同等の罰金刑が定められました。
(2)従事者指定義務の施行に必要な場合の立入検査権限を新設しました。また、報告懈怠、虚偽報告、検査拒否に対して刑事罰(30万円以下の罰金)を新設し、法人に対する同等の両罰規定を設けました。
(3)内部公益通報に関する周知義務を、法定指針から、公通法に明示しました。
(厳島神社)
第2に、公益通報者の範囲拡大です。
現行法上、公益通報者の範囲に業務委託契約等の取引の相手方が含まれていませんが、現行法上、取引相手である事業者が法人等である場合は、その労働者等の個人は公益通報者に含まれるのに対して、取引相手が労働者をしようしない個人事業主(フリーランス)の場合は、当該個人事業主自身は公益通報者になり得ず、かつ、労働者等もいないために、公益通報をなしうる者がいないことに加えて、24年11月にフリーランス保護法が施行されたことを受けて、
↓
改正法では、公益通報者の範囲にフリーランス保護法上の特定受託事業者(業務委託関係終了後1年以内の者を含む)を追加することとなり、公益通報を理由として特定受託事業者に対し契約の解除や報酬減額等の不利益取り扱いをすることが禁止されました。
第3は、公益通報阻害要因への対処です。
まず、通報者探索の禁止については、現行法上定めはなく、法定指針の中で定められているにすぎませんでしたが、改正法においては、通報者探索禁止の規定を置き、それが1号通報に限らず全ての公益通報に適用されることを明確にしました。
また、公益通報妨害禁止についても、現行法上定めはありませんでしたが、改正法においては、妨害行為を禁止し、これに反する合意その他の法律行為は無効としました。
(寄井弥七の狛犬)
第4に、不利益取扱いの抑止・救済の強化です。
まず、現行法では、通報を理由とする不利益取扱いのうち無効とする定めが置かれているのは、1号事業者の行う解雇と2号事業者の行う労働者派遣契約の解除に限定されていましたが、改正法においては、1号事業者による懲戒処分も無効とされる行為に追加されました。
また、通報後1年以内(2号通報及び3号通報については事業者が当該通報を知ってから1年以内)に行われた解雇・懲戒処分については、公益通報を理由としてなされたものと推定する旨の規定が新設されました。
次に、改正法では、解雇・懲戒処分に限定した上で、通報を理由としてこれらの処分を行った個人に対して刑事罰(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)を新設しました。さらに、当該違反行為には両罰規定も新設した上、法人に課す罰金刑の上限を3000万円以下に引き上げました。
執筆者によれば、今回の改正のように通報者保護を重視する一方で、従事者や事業者には刑事罰を含めた制裁をもって締め付けを強化するという方向が真に実効性のある通報制度をもたらすのか、いささかの懸念を近時得ない、昨今、特に前回改正後の内部通報対応の現場では、例えば、一方的かつ独善的な人事上の不平不満ばかりが通報される、真摯に対応しても調査結果に満足せず何度も通報が繰り返される、通報担当者に暴言を吐いたり威圧的な態度をとる通報者がいる、などの状況も散見され、通報担当者は強いストレスにさらされている、また、正当な調査手続であっても、その過程で通報者が特定された場合には通報者から従事者守秘義務違反で刑事告発されるのではないかとの恐怖におびえながら業務に当たっているという実情も見受けられること、以上からすれば、これまで健全な通報体制の整備に努めてきた事業者にとっては、更なる実効性向上に必要なのは従事者への締め付けではなくて支援であること、そして、監査役等としても、物心両面で内部通報対応部門の後ろ盾となることも重要であると締めくくっております。
執筆者が指摘されるように、濫用的な通報者に対する導入も必要な時期にきているのかもしれません。
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