【労働・労災】 私傷病により復帰不能となった者に対する解雇
最近、東京労働大学講座に申込みをして、WEBで聴講しております。講師の先生方のお話を伺ったあと、復習を兼ねて菅野労働法を読んでいます。
今回は、私傷病による復帰不能となった者に対する解雇についての菅野先生の説明です。以下、引用します。
私傷病により業務遂行が困難となった者については、企業(特に長期雇用慣行の企業)は、業務内容・勤務時間の配慮や、傷病休暇・傷病休職などの休業制度により療養の便宜と機会を与え、病状の回復・改善を待つのが通例である。このことは、使用者の安全(健康)配慮義務(労契5条)の要請するところでもある。
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しかし、療養による回復・改善の機会を十分に与えても、業務を遂行できるような回復がない場合には、就業規則の該当解雇事由(心身虚弱のため勤務に堪えない場合、心身の故障のため、職務の遂行に堪えない場合等)に基づき、解雇を検討せざるを得ないことになります。
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そこで、傷病休職期間満了による退職扱いの是非については、「治癒」したといえるかどうかが問題となっている。
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近年の裁判例は、休職前の業務を支障なく遂行できるほどの完全な回復はしていないが、業務内容や勤務時間等において使用者が対応可能な勤務軽減を行いながら段階的に職場復帰すれば、完全復帰が可能である場合には、健康配慮義務の履行としてそのような配慮を行うことを認めている。解雇についても、同様の対応が求められる。
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「精神不調者の解雇」の例として、K社事件(東京地判平成17年2月18日)を挙げています。
事案は、営業所で資材官吏業務をしていたXが躁うつ病で欠勤が多くなり、出勤しても業務を全うできず、躁状態のふるまいで他の者の業務にも影響を与えたので、7か月余の休職を経て、様子見のため総務部で補助的業務を復帰させた。しかし、再び躁状態となっておかしなふるまいなやトラブルが多くなったので、復帰後約10か月目に会社は口頭で解雇通告をし、解雇通知を交付しようとしたところ、躁状態が悪化して入院となり、会社は1か月半後に同通知を郵送したというものです。
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この事案について、裁判所は、①解雇通告直後、かかりつけの医師が、躁うつ病の躁状態のため通院治療は必要だが事務作業は可能との診断書を提出していること、②会社が本件解雇に先立って専門医に助言を求めた形跡がないこと、③Xに対して適切な対応をとり、自宅待機や再度の休職も用いて適正な治療を受けさせれば治療の効果を上げる余地はあったとみられること などからすれば、解雇の時点でXの躁の症状につき程度が重く治療による回復可能性がなかったとはいえないから、解雇は客観的で合理的な理由を有するとはいえないと判断しております。
菅野先生は、P703においても、「精神疾患による休職においては、企業は、医師の専門的判断を参考にしつつ、労働者の協力を得て段階的に回復を図り復帰させていく配慮を要請されており、休職期間満了の際に復帰困難(退職)との判断をする場合には、そのような配慮を尽くしたか否かが問われるようになったといえよう」と書かれています。
企業(特に中小)にとって重たいと思いますが、「2013年の障害者雇用促進法の改正も考えると、企業は、心身の障害をもつ労働者に対して、障害のないように合理的な配慮を行うことによって雇用を維持できる場合には、解雇は認められないことになる」と書かれています(P753)。
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