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2025年7月

2025年7月31日 (木)

【労働・労災】東京労働大学講座 労働法 労働契約4(配転、出向、転籍、昇進、降格) 小西康之明治大学法学部教授

 東京労働大学講座 労働法 労働契約4(配転、出向、転籍、昇進、降格)をWEBで受講しました。

 視点は、A日本の雇用システム全体での位置づけを意識する、B①権限があるか、②権限が認められても濫用と評価されないか、をチェックする。

一 配転

※包括的合意説VS契約説(テキストの立場)

※配転命令の制限

(1)契約による制約  ★就業規則に定めがあっても、労働契約のチェックも必要 労契法7条但書

 職種・職務内容の限定 専門職

 滋賀県社会福祉協議会事件 最高裁令和6年4月26日判決 職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意

 アナウンサーのケース 九州朝日放送事件 福岡高裁平成8年7月30日判決 格別の特殊技能があるとまでいえない

 裁判所は、職務・職務内容の限定を認めない傾向。職務内容がなくなった場合に、退職、解雇ということになる。

 勤務地の限定 ケースバイケース 海外勤務は?

  労基法15条、労基則5条 書面の交付等において明示すべき事項に、24年4月~ 就業規則・業務の変更の範囲が含まれる

(2)権利濫用法理による制約

 東亜ペイント事件 最高裁昭和61年7月14日判決 業務上の必要性と労働者の不利益を考量

 当該転勤につき業務上の必要性が存しない場合

 業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき

 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき

 業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもつて容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当ではなく、企業の合理的運営の寄与する点が認められる限りは

 ※ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき

 育介法26条 養育又は介護に対する配慮

 ネスレジャパンホールディング事件(第1審)神戸地姫路平成17年5月9日判決

二 出向(在籍出向)

 ※出向と労働者派遣

 ※民法625条1項 承諾(同意)が必要  同意とは? 個別的同意説、包括的同意説、包括的同意プラスα

 新日鐵(日鐵運輸)事件 最高裁平成15年4月18日判決 出向命令を発令できるし、権利濫用にも当たらない

 興和事件 名古屋地裁昭和55年3月26日 包括的同意

 ※出向命令権の濫用 労契法14条

  リコー事件 東京地裁平成25年11月2日判決

 ※出向中の労働関係 権利義務の分配は? 労働保護法の適用は?  

三 転籍(移籍出向)

※移籍元との労働契約の合意解約と移籍先との労働契約の締結

 又は、労働契約上の使用者の地位の譲渡

※転籍の要件

四 企業組織の変動

※労働契約の承継が強制される(つれていかれる)か、承継から排除される(おいていかれる)かという観点から整理

1 合併   合併会社に当然に承継される 合併の前後に労働条件の統一が行われることが多い → 労働協約、就業規則変更

2 事業譲渡 

  譲渡企業と譲受企業の個別の合意に基づいていかなる権利義務を移転するかを決定する

  労働者の承諾 民法625条1項の適用あり

  東京日新学園事件 東京高裁平成17年7月13日判決

3 会社分割  部分的包括承継

   労働契約承継法 異議 7条措置 5条協議

五 昇進・昇格、降格・(降職)

 人事管理制度は企業によってさまざま

 これまで多くの企業は職能資格制度をとってきた

 職能資格制度と役職位との区別 基本給は職能資格に連動する

 昇進・昇格には使用者の裁量が広く認められる

 降職の場合には相対的に使用者の裁量大 これに対して、職能資格上の降格にあたっては就業規則などによる規定が必要 いずれも、①権限チェック、②濫用チェックが必要

 アーク証券事件 東京地裁平成12年1月31日判決

六 休職

 解雇時の取り扱いを意識する

 近年問題となることが多い、精神的不調を理由とする休職の場合も意識

 休職の終了 

 独立行政法人N事件 東京地裁平成16年3月26日判決 解雇猶予のために設けられた 

 当該従業員の職種に限定がなく、他の簡易な職務であれば従事することができ、当該軽易な職務へ配置転換することが現実的に可能であったり、当初は簡易な職務に就かせれば程なく従前の職務を通常に行うことができると予測できるといった場合には、復職を認めるのが相当

 20250126_144825                              (東京大学駒場)

2025年7月30日 (水)

笠松山 新コース を散策してきました😇

 笠松山の登山道としては、メインは、野々瀬登山道、奥野々瀬登山道、野田登山道、世田山からの縦走ルートなどがあります。

 今回、野々瀬登山道の入り口から入り、案内板左側の沢沿いの道をとり、赤リボンのところで、沢を渡り、後は、急登の道を駆け上がり、8号目付近の野々瀬登山道に合流するという道が、新たに発見され、知っている人には利用されています。 

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 この案内板の左側の道に入ります。
 
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 小さな沢を渡ります。
 
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 あとは、急登の道を登るだけですが、シダジャングルもあります。また、花崗岩がボロボロになったところもあり、滑りやすいです。スライム岩は少し小さな広場になっており木陰もあり休憩ができます。
 
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 笠松山山頂では、今治市街を一望できますが、焼け跡のところは黒茶のままになっております。
 
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 山頂では、嫁ちゃん謹製の地獄の劇辛ナポリタンをいただきました。

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 四国山地は雲に覆われていました。
 
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 絶滅危惧種のモウセンゴケも健在です。
 
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 帰りは、奥野々瀬登山道を経由します。林道左側に、石積みがあります。笠松山城の石垣だったんでしょうか?
 

2025年7月29日 (火)

【弁護士考】民事裁判書類電子提出「mints」操作説明会(第3次運用開始対応) 23年4月20日開催

 日弁連の会員向けの総合研修サイトに収録されている「民事裁判書類電子システムmints操作説明会(第3次運用開始対応)」を聴講しました。

 ウェブ会議アプリ 現在、Teamsを利用 

 e事件管理機能   開発中

 e提出(mintsで活動)・e記録管理機能(開発準備中)

 mintsの操作の仕方。 システム利用時間 24時間365日

 AIさくらさんに質問する。

 裁判所チャンネル mints 操作説明動画あり。

 ホーム 事件一覧 招待キー 事件アクセスキー入力 

 重要なお知らせ(+メールにも連絡がくる) 新着情報

 クリックすれば、「事件情報」へ

 準備書面のアップロード 受領書のアップロード ※アップロードの前にプレビューで確認。

 アカウント設定 →事務職員の登録 現在のところ、弁護士1対事務職員1のみでしか対応できない。😵

 事務職員に3つのアカウントを作成する。→ 事務職員1人で弁護士3名対応できる 

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(高縄山から楢原山)

 招待キー → サインイン →今すぐサインアップ →利用者登録画面 (メールアドレス PW 氏名 住所 電話番号など) →2要素認証が都度必要(日本+電話番号)→コードの入力 →アカウント登録完了メール(+IDの通知)

 →事件一覧 →招待キー入力(招待メールに招待キーがついている)→事件との関連付がされるのでOKを押す →事件情報

 →書証の写し →アップロード →ファイルの選択 →追加 →ファイル選択 →追加 (削除も可能)→提出 ※A3又はA4 押印×

 参考書面 →時系列表(プレビューできない) 

 mintsは正式提出となる

 アカウント設定 → 編集(変更可能) ※二要素認証とIDは間違わない

2025年7月28日 (月)

【労働・労災】 就業規則の労働契約規律効

 東京労働大学労働法講座において、「労働契約規律効」についての解説がありました。解説を聴いてから菅野先生の基本書を読むと理解が深まりますね。

 まずは、労働契約の締結における就業規則の労働契約規律効です。

 労働契約法7条は、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定めている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と定めています。

 ①合理性と、②周知性があれば、就業規則で定める労働条件によるものとされています。

 次が、労働契約の変更における就業規則の労働契約規律効です。

 労働契約法8条は、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と定めています。

 労働契約法9条は、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りではない。」と定めています。

 労働契約法10条は、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして、合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分は、第12条に該当する場合を除き、この限りではない。」と定めています。

 就業規則の労働条件変更効の要件として、やはり、①合理性と、②周知が必要になりますが、労働契約法7条の合理性とは中味が異なっております。 

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(高縄山山頂)
 東京労働大学講座は、ありがた山です(^o^)

2025年7月27日 (日)

【労働・労災】 東京労働大学講座 労働契約3(就業規則・懲戒処分) 皆川宏行千葉大学教授

 東京労働大学講座労働法部門 労働契約3(就業規則、懲戒処分)を聴講しました。講師は、皆川 宏之(千葉大学大学院社会科学研究院教授)先生です。オンラインで受講できるので、地方参加者は大変ありがたいです。 

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(嫁ちゃんランチ)
Ⅰ 就業規則
1 就業規則とは
  →使用者が事業場ごとに作成を義務つけられる、当該事業場で就労する労働者の労働条件を統一的に定めた文書   
2 労働基準法上の使用者の義務
① 作成義務と記載事項
  常時10人以上(事業場単位で計算)は、作成義務 絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項
② 届出義務・周知義務・意見聴取義務 ←公法上の義務 違反は罰則
3 就業規則の私法上の効力
① 就業規則の最低基準効
  労契法12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分は無効とする。
② 就業規則の契約内容規律効の要件
  秋北バス事件 最高裁昭和43年12月25日判決
  電電公社帯広局事件 最高裁昭和61年3月13日判決 その定めが合理的なものであるかぎり、個別的労働契約における労働条件の決定は、その就業規則による 就業規則が労働者に対して、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべきことを定めているときは、そのような就業規則の来ていないようが合理的なものであるかぎりにおいて当該具体的労働契約の内容をなしている
                 ↓
  労契法第7条本文に具体化されている (要件) 合理性(日本郵便事件最高裁平成30年9月14日判決) + 周知(フジ興産事件最高裁平成15年10月10日判決)
③ 労働契約上の別段の合意の優先
  ※労契法7条ただし書
   →就業規則の内容と異なる合意があれば、就業規則の契約内容規律効が及ばない
    但し、労契法12条の最低基準効との関係に注意
   
④ 就業規則の労働条件変更効
   就業規則の作成・変更で、労働条件を不利に変更できるか?
   労契法8条  合意により、労働契約の内容である労働条件を変更
   労契法9条  (原則)合意することなく、就業規則の変更で、不利に変更はできない
   労契法10条 (例外)不利益に変更する場合には、周知+合理性(7条の合理性とは異なる)が必要
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                             (林道・九川線)
Ⅱ 懲戒処分
1 企業秩序の維持と懲戒
   服務規律に違反した労働者に対して、企業秩序の維持回復のため、使用者が当該労働者に対して行う制裁
2 懲戒処分
   ※諭旨解雇を行う場合には労働者が辞職すれば合意解約による退職となり退職金の支給が行われることになる点に懲戒解雇との相違がある。
3 懲戒権の根拠と要件
   固有権説 VS 労働契約説
   判例は、使用者の懲戒権の正当化について固有権説に近い表現をとっているものの、他方で、使用者が懲戒事由及び懲戒処分の種別を就業規則に定め、その規定が事業所で周知されている場合に使用者は懲戒権を行使できるとしており、懲戒権行使の要件については契約説に近い立場をとっているものと考えられる
4 懲戒事由
  ①職務懈怠  ②業務命令違反  ③職場規律違反  ④経歴詐称  ⑤競業禁止違反  ⑥秘密保持義務違反  ⑦私生活上の非行
5 懲戒権濫用
  労契法15条 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合
  ※ネスレ日本事件最高裁平成18年10月6日判決 企業秩序が回復していれば 暴行事件から7年経過後の諭旨解雇処分
  ※違反行為に比して懲戒解雇処分が重すぎる
  ※罪刑法定主義類似の諸原則 不遡及の原則、一事不再理の原則 適正手続
  ※山口観光事件 最高裁平成8年9月26日判決 懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、有効性の根拠付にならない。

2025年7月26日 (土)

【労働・労災】 労働能力の欠如を理由とする解雇(病気・ケガによる就労不能の場合)

 労働法の基本書は、田舎弁護士の認識知りうるところ、菅野先生と水町先生が執筆された各書籍がよく使われているように思います。

 病気・ケガによる就労不能の場合に、解雇できるかについては、7月15日の日誌にて菅野先生の書籍から引用して説明させていただきました。

 今回は、水町先生の基本書を見てみたいと思います。

 まず、私傷病による就労不能について、就業規則等に傷病(病気)休職制度が設けられている場合に、①休職を発令せずに解雇することや、②休職期間満了により解雇・退職扱いにすることが可能か?という点についてです。

 ①については、「基本的には、労働者の労働能力の欠如を理由とした解雇の客観的合理性・社会的相当性の有無の問題となる」(P556)と説明されております。

 ②については、「裁判例の多くは、従前の職務ではなく、より簡易な業務に従事または配置転換させて傷病の回復を待つ配慮を使用者に求めるようになる。すなわち、労働者の傷病が休職期間満了時に従前の職務を支障なく行える状態にまで回復していなくとも、①相当期間内に傷病が治癒することが見込まれ、かつ、②当人に適切なより簡易な業務が現に存在するときは、使用者は傷病が治癒するまでの間労働者をその業務に配置すべき信義則上の義務を行い、このような配慮をせずに労働者を解雇しまたは退職とした場合には、解雇権濫用または就業規則上の要件不該当として解雇や退職扱いを無効とする傾向にある。」(P561)

 20250713_130647                            (河野川の源流)

 

  

2025年7月25日 (金)

【建築・不動産】 通行地役権のおさらい

 通行地役権は、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の通行の用に供することができる物権としての通行権(民法280条)です。

 物権ではあるものの、他人の土地を直接支配できるというものではなく、承役地所有者の利用も全面的に排除せず、また重複して設定することも可能であるとされています。

 通行地役権の設定は、要役地所有者と承役地所有者との設定契約による場合と、取得時効による場合とがあります。前者は、黙示の契約による設定も多くみられるところです。

 もっとも、取得した通行地役権は、登記をしておかないと、原則としてその後承役地を取得した第三者に対抗することができません。

 黙示の設定契約については、分譲地に関するものが多そうです。

 自動車通行が可能かについては、肯定したもの、否定したもの、その他、多数の裁判例があるようです。

 対価については、判例は、無償に限るとしています。

 通行地役権の取得時効のための要件の1つとして、要役地所有者による通路の開設が必要ですが、砂利を敷いたり、舗装をしたりすることが例として挙げられています。

 なお、新聞や郵便の配達人や出入りの商人などが通行するのは、通行権者の権利の反射的効果によるものであると、安藤一郎先生の第7版私道の法律問題P10にて説明がされていました。 

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(大月山山頂)

2025年7月24日 (木)

マダニ😵

 マダニですが、マダニが媒介する感染症が致死率も高く、野外活動をする際には注意が必要です。

 マダニは、どこでも生息しているのですが、とりわけ、シカやイノシシ、ウサギなどの野生生物が出没する環境には多く生息しております。

 マダニ媒介SFTSですが、5~8月に多く発症しており、西日本を中心に感染者が多くいます。2016年度のデータですが、宮﨑が36名、高知が24名、愛媛が21名、徳島と広島が20名と、田舎弁護士が活動するエリアで、発症数が多いことがわかりました。

 ウィルスの潜伏期間は、6日~2週間とされているようです。

 マダニですが、幼ダニ、若ダニ、成ダニの各ステージで1回ずつ、生涯で3回吸血します。

 マダニに噛まれないように、①首にはタオルを書くか、ハイネックのシャツを着用する、②シャツの袖口は軍手や手袋の中に入れる、③ズボンの袖も靴下をかぶせるなどの身を守る服装が重要です。

 また、上着や作業着は家の中に持ち込まない、屋外活動後はシャワーや入浴でダニがついていないかチェックをすること、ガムテープを使って服についたダニを取り除くことなどが必要です。

 更に、忌避剤も有効とされていますが、マダニの付着を完全に防ぐものではないため、過信は禁物と言われています。

 田舎弁護士も、マダニは何度か遭遇したことがあります。

 注意したいと思います。 

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                             (松山・大月山)

 

 

 

2025年7月23日 (水)

【労働・労災】東京労働大学講座 「労働契約2(解雇、退職、雇止め)」 長谷川珠子岡山大学法学部教授

 今回の東京労働大学講座「労働契約2(解雇、退職、雇止め)」は、長谷川珠子岡山大学法学部教授が講師です。 

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(高縄山の案内板)
1 労働契約の終了場面は、①辞職、②合意解約、③解雇、④契約期間満了(雇止め)、⑤定年の5つがありますが、今回は、この5つについての説明です。
2 辞職
 ※実態として、トラブルは多い。
 ※労働者辞める自由(辞職の自由)は尊重されている。
 ※労働契約が無期の場合は、2週間の予告期間を置く必要がある。民法627条は強行規定。
 ※労働契約が有期の場合は、やむを得ない事由(理由)が必要。予告期間は不要。
  →やむを得ない事由が労働者の過失で生じた場合は?
    民法628条は損害賠償できるように見える。但し、ほとんどない。悪質な場合に限定されている。
3 合意解約
 ※両当事者の合意
 ※退職勧奨自体は、違法ではない。度を超えた場合(何度も言う、屈辱的な言動をする)は不法行為(下関商業高校事件・最高裁昭和55年7月10日判決
 ※退職の意思表示の欠缺・瑕疵
  →真意に基づく確定的な意思表示
4 解雇
 手続・時期に関する規制
  (1)解雇予告義務
     ※解雇の30日以上前に労働者に予告(特別法【労働基準法】が一般法【民法】に優先)
     ※解雇予告手当(解雇予告に代えて)
     ※即時解雇(労働者に相当重大な責任がある場合、天変地変等の場合)  
  (2)特別に解雇が制限される時期
     ※労災や産休  →これらの休業期間+その後の30日は解雇が原則禁止
 理由に関する規程
  (1)法律による特別な規制 ※差別的な解雇の禁止、法律上の権利行使を理由とした解雇の禁止
  (2)判例(労働契約法)による一般的な規制
    
 解雇権濫用法理
  ※判例法理(高知放送事件・最高裁昭和52年1月31日判決)→労契法16条
  ※ルールの具体的な内容 (客観的に合理的な理由があるか、社会通念上の相当性があるか)
   客観的に合理的な理由があるか
    労働者に仕事に対応する力がない(→解雇権濫用法理)、規律違反行為(→解雇権濫用法理)、経営上の理由(→こちらは整理解雇法理で判断)
   社会通念上の相当性があるか
    労働者の能力不足
    労働者の問題行動  改善可能性がないのか
     高知放送事件 寝過ごして放送事故を2度起こしたアナウンサーに対する解雇 
      →最高裁判決・労働者側に有利な事情もピックアップして判断
       (背景)長期雇用慣行 →雇用を維持する上での判断 
       他方で、長期雇用を前提としない場合は、相当性が認められやすい。フォード自動車事件 東京高裁昭和59年3月30日判決
 
  解雇無効=労働契約関係の継続 
 ※解雇紛争における留意点  
   解雇期間中の賃金
 ※整理解雇(普通解雇とは異なる)に関するルール
   労働者側の事情を直接の理由にした解雇ではないので、より厳しくチェックされる。
   整理解雇の4要件(4要素) あさひ保育園事件・最高裁昭和58年10月27日判決
   ①人員削減の必要性、②解雇回避義務、③人選の合理性、④手続きの妥当性
   安易な整理解雇は認められない 実際の訴訟では1つでも欠ければ解雇権濫用とされている   
5 契約期間満了(雇止め)
 ※有期契約の期間途中の解雇(中途解雇)
   →解雇権濫用でないという事情に加えて、期間満了まで待てないような事情が必要
     プレミアライン事件・宇都宮地栃木支決平成21年4月28日
     訴訟コストにみあわないために訴訟に至る例は少ない
   契約期間の上限 原則3年
 ※雇止め
   雇止め法理 → 労契法19条
    労働者が雇止めに異議を述べた場合、次の①②のどちらかにあてはまれば、雇い止めが制限される可能性がある
    ①実質無期契約型(労契法19条1号)
      東芝柳町工場事件 最高裁昭和49年7月22日判決
    ②期待権保護型(労契法19条2号)
      日立メディコ事件 最高裁昭和61年12月4日判決
       →雇用継続の期待に合理性がある場合 業務の客観的な内容、当事者の主観的な態様、更新の手続を総合考慮
  →第1ラウンド ①または②か → 第2ラウンドへ  → 労契法19条を当てはめて、雇い止めが濫用か否かの判断を行う
   労働者からの更新の申込みが必要。   
 ※無期転換と雇い止め
   →有期契約が更新等で通算5年を超えた場合、労働者は無期契約への転換を使用者に申し込むことができ、使用者は拒否できない
   (Q)無期転換に至らないように通算5年を限度として有期契約を締結・更新することは許されるか?
     不更新条項を盛り込む
   →一般論として、5年の限度を設けること自体が許されないわけではない 
   →但し、不更新条項が契約書等に盛り込まれただけでは、それらを超える期待の合理性が否定されるとは限らない
    使用者によって説明等の手続が尽くされているかもあわせて考慮
    なお、労働者がすでに合理的な期待を有するに至った後に、新たに上限等を設ける場合は、労働者が自由な意思で受け入れたといえるか、さらに慎重に判断  
6 定年
 ※高年法のポイント
   定年年齢        60歳以上
   高年齢者雇用確保措置  継続雇用制度、定年制の廃止、定年年齢の引き上げ
 ※継続雇用制度の法的なポイント
   定年でそれまでの労働契約は終了し、継続雇用の労働契約を新たに締結
   形式的には別の契約なので、労働条件を再設定できる
     九州惣菜事件・福岡高裁平成29年9月7日判決 フルタイムの労働者に対し、パートタイムで賃金月額が定年前の25%となる継続雇用を提示したことが不法行為に当たるとした
   継続雇用の有期労働者と定年前の無期労働者の間で、いわゆる同一労働同一賃金の問題が生じうる
 ※70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務 →就業の確保
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                             (7月の高縄寺山門)
 

2025年7月22日 (火)

【学校】 短大と専門学校の違い

 短期大学においても、専門学校においても、職業に役立つ知識や技能を学ぶ所ということでは、共通しております。

 通った教育機関が短期大学なのか、専門学校なのかは、どこで区別が付くかというと、学位・称号ということになります。

 大卒には、学士、短大には、短期大学士、の学位、そして、専門学校は、専門士又は高度専門士という称号が付与されます。

 弁護士の世界で、短大と専門学校の違いが必要になってくるのは、例えば、交通事故の際の補償に影響が出てきます。

 令和5年度の賃金センサス女子学齢計では、年399万6500円ですが、専門学校では、年411万8100円、高専・短大では、年425万9300円、大卒では、470万0200円となっております。

 従って、これをベースに計算する際には、休業損害や逸失利益の金額は異なってくることになります。

 

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(高縄山・河野水天宮)

 

2025年7月21日 (月)

フィッシングメール🙎

 1日に、こんなメールがたくさん届きます。詐欺メールの作成者や送信者については、刑法を改正して、最低でも10年以上の拘禁刑に処して欲しいです😵

 よく見ると、特定者に向けられているものなのにその情報がなかったり、また、問い合わせ先の電話番号がなかったり、さらには、メールアドレスは違和感を感じるものであったりですが、そこを確認しなければ、クリックしそうな内容です。

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(清澄庭園)

【最終通知】損失補償申請手続きのご案内(対応期限:2025年7月15日)

平素より●●証券をご利用いただき、誠にありがとうございます。

弊社セキュリティ対策部門において、お客様の口座に対し、第三者による不正アクセスの可能性が確認されました。

この件に伴い、弊社責任において損失補償の申請手続きをご案内申し上げます。
対応期限までに所定の手続きが完了しない場合、補償申請が無効となり、口座取引の一時制限が行われる場合がございます。

■ 補償申請手続きの流れ
1. 以下のリンクからログインし、本人確認を行ってください。
2. 弊社システムが異常取引履歴を自動判定します。
3. 補償対象と認定された場合、補償金額が確定します。
4. 登録口座への補償金振込(最短で当日中)が実施されます。

▼ 補償申請手続きに進む
https://●●.com

※ 本手続きは安全なSSL通信にて実施されます。
※ 確認時間は1分程度です。変更がない場合も確認操作が必要です。

■ ご対応期限
2025年7月15日(火)23:59(日本時間)

この期限を過ぎますと、補償対象から除外される可能性がございます。

■ ご注意事項
・対応期限までに申請がない場合、口座利用の一部が制限されることがあります。
・既に制限が発生している場合、本手続き完了のみで解除されない場合があります。
・本案内はセキュリティ強化の一環として、対象のお客様に順次お送りしております。

お客様の資産保護と安全な取引環境の維持のため、直ちにご対応くださいますようお願い申し上げます。

=======================
本メールは2025年7月13日時点で、●●証券にご登録のメールアドレス宛にお送りしております。

【お問い合わせ先】
●●証券 カスタマーサポートセンター
受付時間:平日9:00~17:00(土日祝除く)
=======================

20250713_153240
(石ケ峠)
 証券会社だけではなく、クレジット会社を装うこともあります。 

●●株式会社より、重要なご案内です。

最新のシステム監査により、未加算のポイント(4,260ポイント)が確認されました。
以下の手続きにて、未加算ポイントを加算いたします。

【重要】未加算ポイント
未加算ポイント:4,260ポイント
有効期限:受信後72時間
原因:登録情報の不一致による遅延

手続き方法
以下のリンクから手続きを行ってください。
▼ ポイント加算手続きを行う
https://●●-carb05.com    ← これは、実在するクレジット会社の表示になっています

※期限内に手続きを完了しない場合、未加算ポイントは無効となる可能性があります。

本メールは重要な通知です。
ご不明な点があれば、●●までお問い合わせください。

●●株式会社
カスタマーサポートセンター
受付時間:平日9:00~17:00(土日祝除く)

これも、顧客の表示がありません😵

2025年7月20日 (日)

【金融・企業法務】 中小M&A業界における情報共有の仕組みの到達点と実務に与える影響

 旬刊商事法務No2395号に掲載された「中小M&A業界における情報共有の仕組みの到達点と実務に与えるインパクト」という論文を読みました。

 今年の1月24日、中小企業庁が不適切な買い手を紹介したなどとして、登録M&A支援機関1社に対して初のM&A支援機関登録かrなお登録取消を実行しました。当該支援機関の提携先は、ただちに提携契約の解除等をリリースし、行政による登録取消しの効力がその本来の法的な意味を超えて、社会的ペナルティとして機能することが明確になりました。

 不適切な買い手とは、中小企業庁中小M&Aガイドラインによれば、「最終契約に定めた義務の不履行・M&A実施後に当事者双方がM&A実施前に想定していた内容と異なる事業運営(例えば、譲り渡し側の経営者保証を譲受側に移行させる想定であったにもかかわらず移行しない等)を行う譲受側」などと説明しており、経営者保証の未解除に限られず、最終契約上の合意事項を実施しない買い手が広く含まれています。

 2024年10月から、M&A支援機関協会が特定事業者リストの運用を開始しております。協会内で制度参加会員を募り、制度参加会員のうち1社が買い手の一定の不適切行為を認識した場合、協会に報告した上で、制度参加者会員全員が閲覧できるリストに一定期間当該買い手情報を登録する仕組みです。これにより、未履行リスクの高い買い手は業界レベルでマッチング対象から除外され得ることになります。

 但し、独占禁止法等の問題もあり、2025年4月からは、新しい形での新リストを運用されています。

 この制度により売り手のM&Aリスクは大きく減少し、他方で、買い手はリスト登録という新しいリスクに直面しております。

 リスト登録を回避するために、エスクローという制度が米国などでは活用されており、これを日本に定着させることが提唱されています。

 これは、中立的なエスクローエージェントが決済を処理して、後払いの履行を担保するというものです。

 我が国のM&Aはどんどん進化を遂げていくように思います

2025年7月19日 (土)

【労働・労災】東京労働大学講座 「労働契約1(基本原則、労働契約上の権利義務、採用)」 原昌登成蹊大学法学部教授

 東京労働大学講座「労働契約1(基本原則、労働契約上の権利義務、採用)」というテーマで、講師は原昌登成蹊大学法学部教授です。 

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(宇和島の商店街)
一 労働契約上の権利義務
1 労働契約の基本原則と契約内容の決定
  
  ※労働と賃金の支払いの合意で成立 労契法6条
  ※話し合って決定するだけではなく、就業規則、労働協約 労基法によつて契約の修正
  ※労基法の強行的・直律的効力 労基法13条
  ※労働契約を解釈するときの流れ 
    合意の内容を書面や口頭のやり取りなどを手かがりに明らかにしていく
    合意の内容が明らかではない場合 職場における労使慣行を探る
    合意も労使慣行も明らかではない場合 任意法規(民法91条) → これも不明のときは信義則補充的解釈
 
2 労働契約上の権利義務の内容と特徴
  ※働く義務(労務提供の義務)
    職務専念義務  就労請求権は基本的には認められない。
    債務の本旨に従った履行が必要 受領拒否(仕事をさせずに)、賃金の支払いを免れる
    病気の場合 正社員の場合は、労働者が配置される現実的可能性がある他の義務について労務を履行でき、かつ、その履行を申出ているのであれば、債務の本旨に従った履行の提供がある(片山組事件 最高裁平成10年4月9日判決)→休職
  ※賃金支払義務
  ※付随する権利義務(実務的にはとても需要)
    配慮義務、誠実義務を当然に負う(信義則)
  ※使用者の配慮義務
    安全配慮義務 労契法5条(確認の意味)
    職場環境配慮義務
  ※労働者の誠実義務
    秘密保持義務(不正競争防止法、在職中だけでなく退職後にも及ぶ)、競業避止義務(※退職後の競業避止特約)
  ※人事権
  ※権利濫用法理 (労契法3条5項、民法1条3項) 数多くの場面で用いられる
  ※労働者の損害賠償責任  故意 重い過失  信義則が損害額のうち一定割合に制限(茨城石炭商事件最高裁昭和51年7月8日判決)
二 採用
1 労働者の募集 (職業安定法)
2 採用
  ※採用の自由  例外 性別を理由とした採用拒否(男女雇用機会均等法5条) 採用時の年齢制限(労働施策総合推進法9条)
    障害者の雇用の促進 法定雇用率制度
  ※調査の自由  
  ※採用拒否の救済
3 採用内定 始期付・解約権留保付労働契約の成立 大日本印刷事件 最高裁昭和54年7月20日判決
    内定の取消 予約のキャンセルの問題などではなく、労働契約の解約(解雇)の問題
          権利の濫用に当たる場合には無効となる
    内定取消し事由
    内定者側による内定辞退  辞職の事由
    内々定の区別 ←実態に即して判断 採用を確信させる言動、他社への就職活動を妨げる拘束 法的には内定と解釈されうる
    内定期間中の法律関係 →内定者の義務
4 試用 
   解約権留保付の労働契約
    解雇権濫用の問題
    試用目的で有期契約を用いる →制限するというのが判例の立場
5 労働条件明示義務
   労基法15条 書面の交付 24年4月1日追加改正
三 労働者・使用者の概念
1 基本的な考え方
  労働者性 働き方の実態で判断  フリーランス
2 労基法・労契法上の労働者
   使用される者で、賃金を支払われる者
   ※使用性
     ①業務遂行に関する具体的な指揮監督がある
     ②仕事の依頼等への諾否の事由がない
     ③勤務時間・勤務場所の拘束がある
     ④他人による代替可能性が低い
3 労組法上の労働者
   賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者 ←定義が労基法労契法と大きく異なる 「概念の相対性」
   ※労組法の方が労働者の範囲が広い
     労働組合ときちんと交渉するということに尽きる(責任が労基法等と比べて重たくない)
   ※判断基準
     ①事業組織への組み入れ
     ②契約内容の一方的定型的決定
     ③報酬の労務対価性
4 使用者
  ※労働契約法上の使用者
  ※労基法上の使用者   上級の管理職等も含みうる広い概念 行為者罰 両罰規定
  ※労組法上の使用者 
(今回のポイント)
① 労働契約に基づき、様々な権利義務が労働者使用者生ずる
② 採用内定によって内定者と会社等に労働契約が成立する
③ 労働者に当たるか否かの判断は、働き方の実態に基づいて判断される

2025年7月18日 (金)

【交通事故】(公財)日弁連交通事故相談センター・25年度本部研修会に、WEBで参加しました😄

 (公財)日弁連交通事故相談センター25年度本部研修会に、WEBで参加しました。 

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(八王子城跡からみた東京市街)

(1) 全体会 (損害保険料率算出機構からのお願い)

  →「行政書士を代理人とする自賠責保険への請求事案について」   

    交通事故相談者に対して、行政書士を代理人とするメリット・デメリットを説明して欲しいとのこと。

     デメリットとして、「本来の損害賠償額を受け取ったのか不明瞭」

(2) 講演① 講演「車両損害の修理費と評価損」   講師中島太朗弁護士(札幌弁護士会)

 →被害車両が修理不能もしくは修理費よりも同等の中古車に買い替えたほうが安価となるいわゆる全損となつた場合は事故直前の交換価値をもとに賠償額を算定し、そうでない場合は修理費相当額をもとに損害算定する。修理が相当な場合で修理を行った場合も価格低下があるときは、評価損が認められる。

 ※東京高判昭和57年6月17日「交換価格より⾼額の修理費を要する場合にもなお修理を希望する被害者は、修理費のうち交換価格を超える部分については⾃ら負担すべきものとするのが公平の概念に合致」

 ※新しい車両、納車直後の車両、古い車両、特殊車両

 ※修理費用と評価損の合計額が時価額を上回ることができないという考え方

 ※評価損の請求権者の問題

(3) 講演② 講演「自転車同士の事故の過失相殺」  講師片桐武弁護士(第一東京弁護士会)

 →道交法における自転車の主な交通ルール

 →軽車両としての規制 ※路側帯の通行 ※二段階右折義務

 →運転者以外の者の責任 ※運転者が未成年者の場合

 →対等な関係にある者同士の事故として、四輪車同士の事故の過失相殺率を認定基準を参考にし、道路交通法令による優先関係、自転車の運転慣行・物理上の特性等を加味する

  ※交差方向から進行してきた自転車、対向方向に進行する際の事故、同一方向に進行する際の事故

  ※マイクロモビリティ

(4) 講演③ 講演「(独)自動車事故対策機構の自動車事故被害者支援事業について」  講師(独)自動車事故対策機構被害者援護部長

  →ナスバについての説明

    被害者に対する支援 療護センター(4カ所) (概ね3年間治療) 4人に1人以上が最重度障害から脱却

    ナスバ介護料は、損害賠償金から控除しない(被害者の家庭負担の軽減が目的であるため)(赤い本、青本にも記載あり)

    交通遺児に対する生活などの支援

    青本にも制度についての説明あり

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(スカイツリー)

2025年7月17日 (木)

【労働・労災】 懲戒解雇に伴う退職金の全部または一部の支給

 懲戒解雇に伴う退職金の全部または一部の支給については、実務上相談が時折あります。

 この点について、我が国を代表する労働法学者の基本書にどのように書かれているのかを確認したいと思います。

 第1に、菅野P658以下は以下のとおり解説されています。

 「懲戒解雇に伴う退職金の全部または一部の不支給は、これを退職金規程などに明記して労働契約を規律することによって初めて行いうるものであり、またそのように明定すれば賃金全額払いの原則に違反するものではない。そして、退職金の功労報償的性格に照らせば、そのような規程を一般的に公序良俗違反となすことも適切ではない。

                        ↓

  しかしながら、退職金の性格からは、退職金不支給規定を有効適用できるのは、労働者のそれまでの勤続の効を抹消(全額不支給の場合)ないし減殺(一部不支給の場合)してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限られると解するべきである。」

 第2に、水町P639以下は以下のとおり解説されています。

 「退職金減額・不支給条項をめぐって問題となるのは、同条項の合理性(就業規則規定としての有効性)およびその適用の当否である。

 裁判例等からすると、退職金の全額不支給が適法と認められるのは、退職金に功労報償的な性格が認められるという前提の下、当該決定(懲戒解雇等)に至った経緯、当該労働者の過去の勤務態度、同社における過去の割合的な支給事例等をも考慮しつつ、当該非違行為がその労働者の過去の功労をすべて抹消するほど重大なものであった場合に限定されるものといえよう」

 退職金を減額する場合には、どの程度減額されるべきかという問題になりますが、裁判例はばらつきがあるようです。

 ただ、小田急電鉄事件東京高判平成15年12月11日や、NTT東日本事件東京高判平成24年9月28日は、非違行為(痴漢行為)による懲戒解雇は有効としつつ、それまでの真面目な勤務態度、同社における過去の支給事例等を考慮して、退職金の3割の支払を命じております。 

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(大月山近くの展望台)

 

 

 

【労働・労災】東京労働大学講座・総合講座 労働法部門 「労働法総論」 神吉知郁子 東京大学大学院法学政治学研究科教授

 田舎弁護士ですが、(独行)労働政策研究・研修機構主催の「東京労働大学講座・総合講座・「労働法総論」」をWEBで聴講しました。

 講師の先生は、神吉知郁子東京大学教授です。 

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(富士山)
Ⅰ 労働法とは 
1 労働法の必要性
  (1)構造的な交渉力格差 (2)人的関係 (3)労働契約の白地性(契約の不完備性)
2 法体系における労働法
  憲法を最高法規とする体系に位置付けられ、一般法たる民法の特別法
3 労働法の種類
  個別的労働関係法、集団的労働関係法、労働市場法
Ⅱ 労働関係の当事者
1 労働者
 (1)労働基準法上の労働者
  フリーランス、プラットフォームワーカーの労働者性?
 
  ex.EUのプラットフォーム労働における労働条件改善に関する指令案
 (3) 労働組合法上の労働者 ← 労基法上の労働者よりも広い概念
3 使用者
 (1)労働基準法上の「使用者」
    課長は、「使用者」でもあり「労働者」でもある
 (2)労働契約における使用者
    使用者概念の拡張  法人格否認の法理、黙示の労働契約の成立
 (3)労働組合法上の使用者
    朝日放送事件 最高裁平成7年2月28日判決
 
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(福見山登山道)
 この日は広島から戻って、戻った後は山積みになつた仕事をかたづけたあとの聴講だつたので、身に入りませんでした😵

2025年7月16日 (水)

【法律その他】 第2版 主文例からみた請求の趣旨記載例集

 日本加除出版から令和7年5月に出版された「第2版主文例からみた請求の趣旨記載例集」です。

 これだけの訴訟の請求の趣旨のみを掲載されています。

 これは類書がないので、利用しやすいです。

 20250705_133258                            (広島・鈴ケ峰)

 請求の趣旨ですが、間違っているにもかかわらず、裁判官も気付かずにそのままスルーされると、勝訴しても取り返しのつかないことになるので、いつもひやひやしております😵

 第1章 給付訴訟
  第1 金銭請求関係訴訟
  第2 不動産を目的とする訴訟
  第3 動産等関係訴訟
  第4 作為不作為等を目的とする事件
  第5 付随的申立て・本案前の申立て
 第2章 確認訴訟事件
  第1 総論
  第2 確認の利益の具体的検討
  第3 各論
 第3章 形成訴訟
  第1 形成の訴え
  第2 形式的形成訴訟
 第4章 家事関係事件
  第1 総論
  第2 婚姻に関する訴訟
  第3 親子に関する訴訟
  第4 相続に関する訴訟
  第5 子の引渡しに関する訴訟
  第6 その他の訴訟
 第5章 会社関係訴訟
  第1 会社の組織に関する訴え
  第2 株主権等に関する訴訟
  第3 役員等に関する訴訟
  第4 役員等の責任追及等の訴訟
 第6章 労働関係訴訟
  第1 金銭請求関係訴訟
  第2 地位確認請求関係訴訟
  第3 退職者に対する差止請求権等
  第4 公務員への不利益処分に関する訴訟
  第5 労働災害関係訴訟
  第6 不当労働行為関係訴訟
  第7 争議行為関係訴訟
 第7章 執行関係、債権者代位・詐害行為取消訴訟
  第1 強制執行総論
  第2 執行判決・執行決定
  第3 執行文付与に関する訴訟
  第4 不当執行に関する訴訟
  第5 配当に関する訴訟
  第6 取立関係訴訟
  第7 倒産手続
  第8 債権者代位訴訟
  第9 詐害行為取消訴訟
 第8章 上訴審・再審
  第1 控訴審
  第2 上告審
  第3 抗告
  第4 再審
 第9章 行政関係事件
  第1 抗告訴訟
  第2 当事者訴訟
  第3 客観訴訟
  第4 国家賠償請求訴訟

2025年7月15日 (火)

【労働・労災】 私傷病により復帰不能となった者に対する解雇

 最近、東京労働大学講座に申込みをして、WEBで聴講しております。講師の先生方のお話を伺ったあと、復習を兼ねて菅野労働法を読んでいます。

 今回は、私傷病による復帰不能となった者に対する解雇についての菅野先生の説明です。以下、引用します。

 私傷病により業務遂行が困難となった者については、企業(特に長期雇用慣行の企業)は、業務内容・勤務時間の配慮や、傷病休暇・傷病休職などの休業制度により療養の便宜と機会を与え、病状の回復・改善を待つのが通例である。このことは、使用者の安全(健康)配慮義務(労契5条)の要請するところでもある。

                              ↓

 しかし、療養による回復・改善の機会を十分に与えても、業務を遂行できるような回復がない場合には、就業規則の該当解雇事由(心身虚弱のため勤務に堪えない場合、心身の故障のため、職務の遂行に堪えない場合等)に基づき、解雇を検討せざるを得ないことになります。

                              ↓

 そこで、傷病休職期間満了による退職扱いの是非については、「治癒」したといえるかどうかが問題となっている。

                              ↓

 近年の裁判例は、休職前の業務を支障なく遂行できるほどの完全な回復はしていないが、業務内容や勤務時間等において使用者が対応可能な勤務軽減を行いながら段階的に職場復帰すれば、完全復帰が可能である場合には、健康配慮義務の履行としてそのような配慮を行うことを認めている。解雇についても、同様の対応が求められる。

                             ↓

 「精神不調者の解雇」の例として、K社事件(東京地判平成17年2月18日)を挙げています。

 事案は、営業所で資材官吏業務をしていたXが躁うつ病で欠勤が多くなり、出勤しても業務を全うできず、躁状態のふるまいで他の者の業務にも影響を与えたので、7か月余の休職を経て、様子見のため総務部で補助的業務を復帰させた。しかし、再び躁状態となっておかしなふるまいなやトラブルが多くなったので、復帰後約10か月目に会社は口頭で解雇通告をし、解雇通知を交付しようとしたところ、躁状態が悪化して入院となり、会社は1か月半後に同通知を郵送したというものです。

                             ↓

 この事案について、裁判所は、①解雇通告直後、かかりつけの医師が、躁うつ病の躁状態のため通院治療は必要だが事務作業は可能との診断書を提出していること、②会社が本件解雇に先立って専門医に助言を求めた形跡がないこと、③Xに対して適切な対応をとり、自宅待機や再度の休職も用いて適正な治療を受けさせれば治療の効果を上げる余地はあったとみられること などからすれば、解雇の時点でXの躁の症状につき程度が重く治療による回復可能性がなかったとはいえないから、解雇は客観的で合理的な理由を有するとはいえないと判断しております。

 菅野先生は、P703においても、「精神疾患による休職においては、企業は、医師の専門的判断を参考にしつつ、労働者の協力を得て段階的に回復を図り復帰させていく配慮を要請されており、休職期間満了の際に復帰困難(退職)との判断をする場合には、そのような配慮を尽くしたか否かが問われるようになったといえよう」と書かれています。

 企業(特に中小)にとって重たいと思いますが、「2013年の障害者雇用促進法の改正も考えると、企業は、心身の障害をもつ労働者に対して、障害のないように合理的な配慮を行うことによって雇用を維持できる場合には、解雇は認められないことになる」と書かれています(P753)。

 

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(高縄山・千手杉)

 

【労働・労災】 人事・労務のトラブルのグレーゾーン70

 23年3月に労務行政から出版された「人事・労務のトラブルのグレーゾーン70」です。著者は、有名な経営者側の事務所です。 

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(鬼のさんぽ道)
 Q6-1は、あるある相談ではないかと思います。精神疾患のため休職している社員がいるのですが、本人は復職を希望しており、復職可とする主治医の診断書を提出しました。しかし、面談や試し出勤で様子を見る限りでは、休職前と同様のパフォーマンスを期待できるほど回復しているとは思えません。ほかに任せることができるような軽易な業務もないため、休職期間満了後に自然退職としたいのですが、可能でしょうか?
 主治医の診断書と会社の方針が異なる場合はやつかいです。会社としては、復職不可という判断するにあたっては、復職不可とする産業医や専門医の意見や、労務提供ができないことを裏付ける事実など、合理的な根拠が必要になります。
 主治医の診断書と異なる判断の可否については、P197において以下のとおり説明されています。
 厚労省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月初版、平成24年7月改訂版)にも「主治医による診断書の内容は、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それはただちにその職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らないことにも留意すべきである。また、労働者や家族の希望が含まれている場合もある」と記載されています。
 もっとも、合理的な理由もなく主治医の判断を否定することはできず、主治医の診断と異なる判断を行うには主治医の診断が疑わしいことを基礎付ける事情が必要です。その一つとして、他の医師による診断や医学的見地を基にした主治医の診断に対する疑問の提示があります。
 いずれにせよ、主治医の判断と異なる判断を会社が行う場合には、説得的な説明が必要ということになりますね。
 

2025年7月14日 (月)

【流通】 Q&Aカスタマーハラスメント対策ハンドブック(ぎょうせい)

 ぎょうせいから、今年の5月に出版された「Q&Aカスタマーハラスメント対策ハンドブック」です。

 ここ数年、カスハラが取り上げられることは増えました。

 とはいえ、現時点では確たる定義があるわけではありません。

 しかしながら、厚労省マニュアルでは、カスハラの定義を試みており、「顧客等からのクレーム・言動のうち、①当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、②当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、③当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。

 結局のところ、要求内容と、要求を実現するための手段・態様のいずれが、妥当でない、不相当と判断されたら、カスハラに該当することになります。 

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(鬼ヶ城山・八畳岩)
 本書では、Ⅰ平時の備えと、Ⅱ有事の対応に整理しています。
 Ⅰ平時の備えとしては、カスハラの発生を想定した事前準備が必要ということです。
  
  第1に、事業主の基本方針・基本姿勢の明確化
  第2に、エスカレーション体制の整備
  第3に、社内規程の整備
  第4に、対応方法、手順の策定(マニュアルの作成)
  第5に、社内対応ルールの従業員等への教育研修
 Ⅱ有事の対応としては、カスハラが起こった場合にとるべき手順を定めています。
  第6に、対応要領
  第7に、従業員への配慮の措置
  第8に、将来に活かすための取組です
 なお、本書で目新しいなと思ったのは、「出入り禁止」の可否や手順です。
 出入り禁止の可否については、契約自由の原則があるため、裁判例上も出入り禁止は比較的緩やかに認められる傾向にあります。
 例えば、執拗に迷惑行為を繰り返す顧客を出入り禁止にすることは、契約自由の原則に照らして、合理性が認められます。
 他方で、店舗の公共性や代替性の有無によっては、出入り禁止の可否が厳格に判断される場合もあります。

 

2025年7月13日 (日)

【学校】弁護士が解説 いじめ「学校調査」ガイドブック (学事出版) 

 今年の3月に出版された「弁護士が解説 いじめ学校調査ガイドブック」です。

 まず、「いじめ」といっても、民事の世界、刑事の世界、いじめ防止法の世界で、いじめの要件は異なっているということを前提にします。そして、本書では、いじめ防止法の世界を取り扱っています。

 そこで、いじめ防止法のいじめの定義を押さえる必要があります。いじめ防止法第2条でいじめの定義規定があります。

 第2条は、この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものというと定めています。

 そして、いじめに対する学校の措置は、①いじめの防止、②いじめの早期発見、③いじめへの対処となつております。

 いじめ防止法23条は、いじめに対する措置を定めております。

 まずは、いじめの事実があると思われるときは、情報の共有が必要です。そして、いじめの事実の有無の確認及び報告です。その上で、被害者への支援・加害者への指導/助言を行うことになります。

 そして、いじめ防止法23条に匹敵するほど重要な条文が「重大事態」を定めたいじめ防止法28条です。

 要は、重大な被害が生じていると疑われる場合は、重大事態として、特別の対応をすることが求められているのです。

 いじめ防止法28条1項では、①いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき(1号)、②いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき(2号)のいずれかに該当する場合を重大事態を定義しております。

 そして、重大事態かどうかの判断に際しては、重大な被害が生じた疑いがあると認めるときであって、いじめによって重大な被害が生じたときではありません。

 しかも、この判断は、学校の設置者又は学校が行うこととされてはいるものの、重大事態GLででは、児童生徒や保護者からいじめにより重大な被害が生じたという申立てがあったときは、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たるとされています。

 調査の結果についても、いじめを受けた児童等の保護者への情報提供は必要となりますし、また、調査結果についても、それぞれの報告先に報告することになります。

 対象児童生徒・保護者への設営は、調査報告書を用いて説明することが通常であること、また、追加の調査(再調査ではない)を要望された場合には、調査の要否を検討することになります。 

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                             (広島・鈴が峰&鬼ケ城山)

 いじめのご相談は、田舎弁護士は地方自治体の顧問をしている関係で、公立学校の場合は断っていますが、私立学校の事案であればコンフリクト上の問題はありません。 

2025年7月12日 (土)

【金融・企業法務】 月刊監査役 改正公益通報者保護法の概要と監査役等の留意点

 月刊監査役No777号で掲載された改正公益通報者保護法の概要と監査役等の留意点です。

 今回の法改正は、4項目です。

 2025年6月4日から1年6月以内で政令で定める日に施行が予定されています。

 ①事業者の公益通報体制整備の徹底と実効性の向上、②公益通報者の範囲拡大、③公益通報を阻害する要因への対処、④公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化です。

 第1に、事業者の公益通報体制整備の徹底と実効性の向上です。

 前回(2020年)改正では、事業者に内部公益通報対応業務従事者を指定する義務及び内部公益通報に対する体制整備義務が定められました。これらの義務の具体的内容を明らかにするものとして法定指針が定められ、その解釈について消費者庁による指針の解説が公表されました。また、報告徴求権限等が定められ、報告懈怠や虚偽報告には20万円以下の過料が導入されました。

                         ↓ しかし

 現実には従事者指定を行っていない、体制整備がなされていない事業者が散見されています。

                         ↓ そこで

 改正法においては

(1)従事者指定義務違反に対しては、現行法の指導・助言、勧告権限に加え、勧告に従わない場合の命令権を追加し、命令違反に対しては刑事罰(30万円以下の罰金)を導入。法人の両罰規定も導入され、行為者個人(自然人)と同等の罰金刑が定められました。

(2)従事者指定義務の施行に必要な場合の立入検査権限を新設しました。また、報告懈怠、虚偽報告、検査拒否に対して刑事罰(30万円以下の罰金)を新設し、法人に対する同等の両罰規定を設けました。

(3)内部公益通報に関する周知義務を、法定指針から、公通法に明示しました。 

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(厳島神社)
 第2に、公益通報者の範囲拡大です。
 
  現行法上、公益通報者の範囲に業務委託契約等の取引の相手方が含まれていませんが、現行法上、取引相手である事業者が法人等である場合は、その労働者等の個人は公益通報者に含まれるのに対して、取引相手が労働者をしようしない個人事業主(フリーランス)の場合は、当該個人事業主自身は公益通報者になり得ず、かつ、労働者等もいないために、公益通報をなしうる者がいないことに加えて、24年11月にフリーランス保護法が施行されたことを受けて、
 
                                ↓ 
  改正法では、公益通報者の範囲にフリーランス保護法上の特定受託事業者(業務委託関係終了後1年以内の者を含む)を追加することとなり、公益通報を理由として特定受託事業者に対し契約の解除や報酬減額等の不利益取り扱いをすることが禁止されました。
 第3は、公益通報阻害要因への対処です。
 まず、通報者探索の禁止については、現行法上定めはなく、法定指針の中で定められているにすぎませんでしたが、改正法においては、通報者探索禁止の規定を置き、それが1号通報に限らず全ての公益通報に適用されることを明確にしました。
 また、公益通報妨害禁止についても、現行法上定めはありませんでしたが、改正法においては、妨害行為を禁止し、これに反する合意その他の法律行為は無効としました。
 

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(寄井弥七の狛犬)
 第4に、不利益取扱いの抑止・救済の強化です。
 まず、現行法では、通報を理由とする不利益取扱いのうち無効とする定めが置かれているのは、1号事業者の行う解雇と2号事業者の行う労働者派遣契約の解除に限定されていましたが、改正法においては、1号事業者による懲戒処分も無効とされる行為に追加されました。
 また、通報後1年以内(2号通報及び3号通報については事業者が当該通報を知ってから1年以内)に行われた解雇・懲戒処分については、公益通報を理由としてなされたものと推定する旨の規定が新設されました。
 次に、改正法では、解雇・懲戒処分に限定した上で、通報を理由としてこれらの処分を行った個人に対して刑事罰(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)を新設しました。さらに、当該違反行為には両罰規定も新設した上、法人に課す罰金刑の上限を3000万円以下に引き上げました。
 執筆者によれば、今回の改正のように通報者保護を重視する一方で、従事者や事業者には刑事罰を含めた制裁をもって締め付けを強化するという方向が真に実効性のある通報制度をもたらすのか、いささかの懸念を近時得ない、昨今、特に前回改正後の内部通報対応の現場では、例えば、一方的かつ独善的な人事上の不平不満ばかりが通報される、真摯に対応しても調査結果に満足せず何度も通報が繰り返される、通報担当者に暴言を吐いたり威圧的な態度をとる通報者がいる、などの状況も散見され、通報担当者は強いストレスにさらされている、また、正当な調査手続であっても、その過程で通報者が特定された場合には通報者から従事者守秘義務違反で刑事告発されるのではないかとの恐怖におびえながら業務に当たっているという実情も見受けられること、以上からすれば、これまで健全な通報体制の整備に努めてきた事業者にとっては、更なる実効性向上に必要なのは従事者への締め付けではなくて支援であること、そして、監査役等としても、物心両面で内部通報対応部門の後ろ盾となることも重要であると締めくくっております。
 執筆者が指摘されるように、濫用的な通報者に対する導入も必要な時期にきているのかもしれません。

【労働・労災】 四国生産性本部・「労基署対応実務セミナー」に参加しました。

 四国生産性本部労基署対応実務セミナーに参加しました。講師の先生は、床田知志社会保険労務士です。 

 大変勉強になりました😇

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(東京・日比谷公園)
 1 はじめに
  ※目的は、労働者保護&法律を遵守した適切な経営の推進
  ※愛媛労働局行政運営方針(令和7年度では、人手不足対策を追加)
  ※最低賃金・賃金の引き上げ 非正規雇用への支援 愛媛県は賃金の上昇率は高い(全国比) 毎年50円位UP
   最低賃金(愛媛県956円)を下回っていないかの点検(月給制の時給換算)
   正社員転換の推進 主体的なスキルアップ 無期転換ルールの理解促進 職務給の導入 配偶者手当の見直し ジョブ型人事の導入
   雇用仲介業者への対応(お祝い金・転職勧奨禁止について職業紹介事業の許可条件に追加、労働者の登録から就職定着までの全ての過程における金銭等の提供を原則禁止、スポットワーク仲介業)、高齢労働者(65歳~70歳)への適切な措置、障碍者雇用の円滑な実施(法定雇用率2.7% なお、除外率10%ポイント引き下げ)、外国人労働者の適切な雇用
  ※雇用保険制度の適正な運営(助成金の不正受給が増加)支給決定前の能動的な実地調査を行う
  ※性差による差別的取り扱いの禁止 (常用労働者数301以上の事業主)情報の公表・履行確保
  ※仕事と育児・介護の両立支援 (令和7年4月~出生後休業給付及び育児時短就業給付の活用)、多様な働き方の実現の向けた環境整備、ワークライフ・バランスの促進(テレワーク、時季指定義務、計画的付与制度、時間単位年次有給休暇(年間5日取得にカウントされない) 
  ※産後パパ育休(出生時育児休業)(出生後8週間以内に4週間まで)と、育児休業(子が1歳になるまで) ★わかりやすい図表あり 
  ※ハラスメント パワハラダントツ セクハラ増 パワハラの基準 6類型 セクハラ対策(対価型 環境型) セクハラの判断基準
   「制度等の利用への嫌がらせ型」 上司は1発アウト 同僚は繰り返しでアウト 
   「状態への嫌がらせ型」 配慮であればOK
   事業主が雇用管理上講ずべき措置  
  ※令和7年行政運営方針 14次防の目標達成に向けた重点取組、1か月80時間超えの時間外・休日労働を行っている事業場への監督指導、過労死等の労災請求が行われた事業場への監督指導 ガイドライン(平成29年1月20日)に基づく適正な労働時間管理 賃金不払残業の是正指導 新たに定められた労働条件の明示事項の遵守
  ※労働条件通知書(24年4月からルール変更)
2 労基署の監督・指導の基本知識
  ※内部組織(方面(監督課)、安全衛生課、労災課、業務課)
  ※方面の主な業務 申告相談の受付 監督指導 司法警察事務
  ※事業場への立入調査 → (法違反あり)文書指導 →是正・改善報告 重大・悪質な事案は送検
  ※(主な法違反)36協定の届出、届出た上限時間を上回って残業を行わせた 割増賃金不払 労働条件を書面で明示、就業規則、賃金台帳、安全基準、健康診断
  ※送検リスク (賃金不払い、不適切な割増賃金、不適切な労働時間管理、不適切な解雇)
  ※臨検で準備するもの
  ※よく見られるポイント(労使協定の届出状況【賃金の預金口座振り込みに関する協定書、賃金控除に関する協定書は忘れがち】、労働時間の正確な把握、恒常的な長時間労働の有無、過去に指導されたポイント、労働衛生に係る項目【危険を示す表示の有無、人体に及ぼす作用の周知、定期検査の実施状況】←監督官の心証に大きく影響する
  ※特によくみられるポイント 
   ★賃金台帳と労働時間記録の突合→割増賃金の適正な支払い (※割増賃金の基礎となる賃金、割増率、残業時間の端数処理、歩合給の割増賃金、定額残業代、長時間労働36協定との整合性)
    「監督指導業務運営要領
3 是正勧告の原因
(1)労働時間と管理監督性
   ※管理者と管理監督者はイコールではない。管理監督者性の判断基準(4つ)    
(2)割増賃金(未払残業代)
   ※割増賃金の基礎から除外される賃金   
(3)定額残業代
   ※定額残業代の計算方法
     ①時間単価の算出  
      (365日-年間所定休日)÷12か月=月平均所定労働日数
      所定内賃金(★注意)÷月平均所定労働日数÷1日の所定労働時間=時間単価
     ②時間外単価の算出  時間単価×法定割増率
     ③定額残業代の算出  
(4)労働契約
   ※出勤簿、賃金台帳の内容と整合がとれている
   ※個別の処遇内容があればそれが反映
   ※有期契約の場合、契約更新時に雇用契約書が交付
   ※熟慮期間を設けて自由な意思の下で合意
(5)法定帳簿
   ※出勤簿(長時間労働、不正打刻、雇用契約書との整合性、変形労働制、保険加入状況、休暇取得状況) 賃金台帳(手当の種類と賃金規程の整合性、残業代計算方法の確認、控除項目の正確性、法定外の控除) 労働者名簿(定期的な更新、入退社の反映)
(6)協定届
   ※届出義務の有無
   ※協定締結の目的
(7)就業規則
   ※作成・届出義務
   ※届出単位
   ※(ポイント)定期的なリーガルチェック、出勤簿、賃金台帳との整合性確認
(8)年次有給休暇
   ※取得条件と付与日数 パートも有給休暇付与
   ※使用者による時季指定(使用者は、5日は取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければならない)
   ※年次有給休暇管理簿(法改正)
 
(9)安全・衛生
   ※定期健康診断(★会社は催促していることを記録化しておく)と事後処理
   
4 行うべき事前準備、対応策
 ★臨検目的を予測する 
   労働者名簿の整備(入社順にファイリング)
   就業規則・労使協定の変更と届出
   安全管理体制の構築
   労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき具体的措置
   ●来所通知の文面の印象と所要時間に注目
 ★指摘される主な項目
   メンタルヘルス、不払い残業、管理監督者性、偽装請負、最低賃金、不当解雇、ハラスメント、就業規則協定類、安全管理体制
5 実際の事例に学ぶケーススタディ

6 まとめ 

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(日弁連会館)

2025年7月11日 (金)

【学校】 杉野剛著 国立大学法人の誕生

 ジアース教育新社から出版された杉野剛著の「国立大学法人の誕生」を購入しました。

 朝日新聞のネット配信記事によれば、昨年6月7日に国立大学協会の永田恭介会長が記者会見を開き、国立大学の財務状況が危機的だとして、「もう限界です」などと国民に予算増額への理解と協働を訴える異例の声明を発表されたことは記憶に新しいところです。

 朝日新聞のネット配信記事によれば、運営交付金が国立大学が法人化された2004年は国立大学全体で1兆2415億円だったのが、行政改革の一環で15年度まで毎年度1%ずつの減額が続き、20年度以降は横ばいが続いており、24年度は1兆784億円になっています。

 講談社ネット配信記事には、さらに明確に、国立大学法人化で、運営交付金が大きく減らされ、国立大学が窮地に陥っているという有名教授のお話が掲載されていました。

 ところが、本書の証言の中には、「法人化したから予算は減った」というのは誤解で、法人化する前から政府の方針として10年間かけて定員を20%削減するとか決められておりその流れの中での話で、国立大学法人化とは関連がないこと、運営交付金の削減は国の財政構造によるものであること、法人化しなければもっとひどい目にあっていたこと等のお話が掲載されています。

 そして、長尾眞先生のお話として、「国からの運営交付金以外に外部資金を導入できる学問分野はいいけど、文学部とか、理学部といった純粋学問分野はますます疲弊していくという心配は確かにある。だけど、法人したからには、それぞれの大学がよく自覚して、学内予算の配分で文科系に配慮するとか、科研費についている間接経費をそちらに使うようにするといった自己努力によって解決すべきことだと思います。これこそが学長のリーダーシップの問題ですよ。要するに、法人化の枠組みが悪いというよりは、文科省と各大学が、この制度をどのように運用していくか、という運用の仕方が国立大学の将来を決めるのです。文科省は各大学の自主的運営を最大限尊重してもらって、あれこれ介入したり、評価によって運営交付金のさじ加減をするといったような姑息な手段はやめてもらって、少なくとも10年くらいはじっと眺めるだけにするといった度量が必要ですね」が紹介されています。

 また、有馬朗人東大元総長の証言も掲載されており、2014年当時の説明では、国立大学法人化については、単純に反対や賛成したことはないとしつつも、一定の評価をしているようなコメントも散見されていました。ところが、2020年のネット配信記事によれば、有馬先生は、運営交付金の減額との関連で、国立大学法人化は失敗だったとコメントされています。 

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                            (大島・自然研究路)

 いずれにせよ、運営交付金の減額というのは、特に地方の国立大学にとっては評判が悪いというのは一致しているように思います。国が、教育や研究にお金を惜しむようになれば、その国は衰退すると思いますね。 

 田舎弁護士も、大学には僅かですが時々寄附をしております😇

2025年7月10日 (木)

【金融・企業法務】 同意なき買収における特別委員会 答申書作成実務の課題とあり方

 旬刊商事法務No2394に、柴田堅太郎弁護士による同意な買収における特別委員会答申作成実務の課題と在り方という論文が掲載されていました。

 答申書の構成については、経済産業省が2019年6月に公表した「公正なM&Aの在り方に関する指針」(公正M&A指針)3.2.2において、特別委員会が答申3要件について検討・判断を行うことが求められていることから、その内容が踏襲されています。

 1)取締役会は特別委員会に対して、対象取引は少数株主の利益にとって不利益でないか、また、対象取引についてどのような意見をするべきかについて諮問する(諮問事項)。

   取締役会は、特別委員会への諮問の際して、対象取引に関する意見表明は特別委員会の答申を最大限尊重して行う旨を決定する。

 2)特別委員会は、諮問事項を検討する上で、①対象取引が企業価値向上に資するか(企業価値向上要件)、②対象取引の取引条件が合理的か(取引条件合理性要件)、③手続が公正か(手続公正性要件)の要件を定立し、答申3要件が充たされているかどうかを検討する。

 3)答申3要件のすべてを満たす場合には、対象取引が少数株主の利益に資すると判断する。その上で、取締役会による対象取引に対して賛同し、また株主に対して対象取引への応募を推奨する旨の意見(賛同・応募推奨意見)を行うことは合理的である旨、または行うことを勧告する旨の答申を行う。

 4)答申3要件のいずれかを満たさない場合には、対象取引が少数株主にとって不利益であると判断する。その上で、取締役会による対象取引に対して反対する旨の意見(反対意見)を行うことは合理的、または行うことを勧告する旨の答申を行う。

 公正M&A指針は、MBOや支配株主による従属会社の買収といった構造的な利益相反が認められるM&A取引を対象とするものですが、答申3要件は同意なき買収のように構造的な利益相反が認められない取引であっても、取締役会が対象取引についてどのような意見表明を行うかを検討するために適切なフレームワークであると考えているため、実務上広く採用されているとのことです。 

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(北三方ケ森登山道)

2025年7月 9日 (水)

【相続】 遺産分割に関する改正

 弁護士専門研修講座・改正相続法の実務に収録された「遺産分割に関する改正」です。

 第1は、持戻し免除の意思表示の推定(民法903条4項)です。同法903条4項は、「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」と定めています。

 第2は、遺産分割前における預貯金の払い戻しです。2本立てです。1つめが、家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い戻しを認める方策、もう1つめが、家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策です。

 第3は、一部分割の明文化です。

 第4は、遺産分割前になされた遺産に関する財産の処分ですが、処分をした相続人以外の相続人の同意が得られる場合には、遺産として存在するものとしてみなされることになりました。 

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(世田山) 

【金融・企業法務】 新リース会計基準と会社法

 上場会社等の役員に就任しているとしばしば「新リース会計基準」について、監査法人や監査役、経理担当スタッフ等との間で話がでてくることが最近増えています。

 ただ、法務中心の弁護士の場合は、会計についての知識は十分でないことも少なくなく、その都度勉強しているような状況です。

 旬刊商事法務No2394では、弥永真生明治大学教授の論文が掲載されていました。なお、田舎弁護士の会社法の基本書は弥永教授の会社法を使っていました。

 さて、問題の所在がわかりやすいので、引用します。

 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(新リース会計基準)では、借手はオペレーティングリースの場合であっても、短期リース、少額リースなど一定の例外に該当しない限り、使用権資産とリース負債を計上すべきこととされ、支払リース料ではなく、リース負債に係る利息費用および使用権資産の償却額を費用として認識するものとされています。

 第1に、従来の企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」の下では、借手としては、ファイナンス・リースに該当するかどうかを判断すればよく、ファイナンスリースに該当しなければ、リース資産に係る資産・負債を認識する必要はなく、かつ、当該会計年度(事業年度)に対応する(定額の)リース料を費用として認識すれば足りたのに対して、企業会計基準第34号の下では多くの見積もりと会計上の判断を伴う、手間のかかる会計処理が求められることになりました。

 第2に、リース負債は貸借対照表上の「負債」であるから、オペレーティング・リースに係るリース負債も認識しなければならないということになると、負債総額が増加するが、最終事業年度の貸借対照表に計上した負債総額が200億円以上となると会社法上の大会社(会社法2条6号)に該当することになり、会計監査人設置会社(同条11号)となるため、多くの規律に服することになります。

 そこで、企業会計基準第34号がどのような会社にとって、唯一の「一般医公正妥当と認められる企業会計の慣行」(会社法431条)に当たるのかが重要な問題になります

 そして、有価証券報告書提出会社、会計監査人設置会社(有価証券報告書提出会社を除く)、公開会社(会計監査人設置会社及び有価証券報告書提出会社を除く)について、検討を試みられています。

 検討の結果は、弥永先生の論文を読んでみて下さいな。 

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(北三方ケ森登山道)

 

2025年7月 8日 (火)

【相続】 配偶者短期居住権・配偶者居住権

 ぎょうせいから出版された「弁護士専門研修講座」改正相続法の実務を、東京出張の行き帰りの時間帯で斜め読みしました😅

 ①配偶者居住権・配偶者短期居住権、②遺産分割に関する改正、③自筆証書遺言の方式緩和・遺言書保管方法等、④遺言執行者の権限の明確化等、⑤遺留分、⑥特別の寄与料と残された問題の、6つのテーマでした。

 本日は、①のテーマに沿って、配偶者短期居住権、配偶者居住権を見ていきたいと思います。 

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(世田山・笠松山)
 第1に、配偶者短期居住権のポイントとして、4つに整理されていました。
 (1)被相続人の所有建物に居住してきた配偶者が、被相続人の死後も最低6か月間、無償で居住し続けられる、暫定的な権利。
 
    なお、「配偶者」は法律上の配偶者を指すと言われているとのことです。
 (2)(高齢)配偶者の、当面の生活を(短期的に)保護するための制度。
 (3)自動的に発生する権利であり、設定行為は不要。対価も不要。
 (4)相続人に使用貸借権を推認する判例(最判平成8年12月17日)を参考にして、創設された。
 第2に、 配偶者居住権のポイントとして、5つに整理されていました。
(1) 被相続人の所有建物に居住してきた配偶者が、被相続人の死後も、自分が亡くなるまで無償で居住し続けられる権利。
(2) 遺産分割または遺言等によって設定することができる(しないこともできる)。
    なお、裁判所に審判における遺産分割の場合において、配偶者居住権の取得につき反対する相続人がいる場合には、要件が加重されています。
(3) 遺産をめぐる法律関係において、財産的価値を有する権利として計算される
(4) 賃借権に似た面もあるが、賃料支払義務はなく、配偶者が死亡すると消滅する
(5) 対第三者対抗要件として、登記が必要である。
 配偶者居住権の簡易な評価方法の計算式も紹介されています。
 一戸建て(築10年、木造、固定資産税評価額は建物1000万円、土地4000万円)を対象として存続期間15年の配偶者居住権を設定した場合
 ② 建物の配偶者居住権付小宇検の価額
   =0円(法定耐用年数を超過するので)※築10年で、15年後に期間満了したときは築25年になっていて、そのときには法定耐用年数(22年)を超過しているので、建物の将来価額は0円。従って、それを現在価値に引き直した配偶者居住権付所有権も現在価値は0円。
 ③ 敷地の配偶者居住権付所有権の価額
   =4000万円×0.642(存続期間15年、年利3%のライプニッツ係数)=2568万円
 ① 配偶者居住権の価額
   =(1000万円+4000万円)-(0円+2568万円)=2432万円
 もっとも、今のところ、この制度のご相談を受けたことはほとんどありませんね😅
  

2025年7月 7日 (月)

【金融・企業法務】 リーガル・フロンティア 取締役の辞任と解任 「解任」

 リーガル・フロンティア 取締役の辞任と解任の「解任」です。  

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(日弁連会館)
 取締役の解任事案って、田舎弁護士の取り扱う案件でも、数年に1件あるかないかですね。株主総会が必要になりますので、よっぽどの場合に限られていると思います。
 コラム7の「生活保障等の目的で名目的に取締役の報酬が用いられている場合における解任と正当な理由」は参考になりますね。
 閉鎖的な非公開会社では、支配株主が、子の生活保障を目的として、業務へ関与しないとの合意のもとで取締役に就任させ、役員報酬を支払っている場合がある。その後子と争いが生じ、関係が著しく悪化したことを契機に、取締役としての職務を行うよう求めたところ、子がこれを拒否したために、当該拒否を理由に解任を行うことがあり得る。このような場合において、職務を執行しないことを前提として生活保障の目的で役員報酬を支払うという合意がなされているという事情は、正当な理由の判断において影響を与えるかが問題となる。
 一般的に、職務の不執行は、解任につき正当な理由があることを基礎付ける事情である一方、取締役の職務執行をせずにその報酬を受けるとの期待は、保護に値するものとは言い難い。また、役員の地位及び報酬は、家族間の情義を前提として、もっぱら生活の補助を目的とするものであったと解されるところ、そのような前提が失われれば、上記期待は一層保護に値しないといえる。
 そのため、上記のような合意がされているからといって、職務の不執行を理由とする解任につき、正当な理由があることは否定されないことになる。
 類似事案の裁判例として、東京地裁平成20年7月11日判決があります。

2025年7月 6日 (日)

【金融・企業法務】 リーガル・フロンティア 取締役の辞任と解任 「辞任」

 商事法務から2025年5月に出版された「リーガル・フロンティア 取締役の辞任と解任」です。田舎弁護士は企業法務を中心とした業務を行っていることから、実務上、取締役の辞任や解任というテーマで執筆されている書籍は参考になりますね。 

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(日弁連会館でのランチ)
 まずは、「辞任」についてです。「あれっ」と思った部分だけを拾っていきたいと思います。
 【Q3】辞任を制限する特約の効力 
    ⇒辞任を制限する特約の有効性についていずれの判断もありうる。   
     民法651条1項は委任契約なのでいつでも解除できると思っていましたが、当該規定は任意規定であるとのことです。
 【Q4】辞任時の違約金を定める特約の効力
    ⇒合意した違約金の支払義務を負う可能性が高い。
 【Q5】辞任時に株式を取得価格と同額で他の株主に譲渡しなければならない旨の株主間契約がある場合
    ⇒当該条項は有効であり、取得価格と同額で譲渡しなければならない可能性が高い。
 【Q6】早期辞任をした場合のサイニングボーナス(入社の際して支給される金銭)返還義務を定める合意の効力
    ⇒同条項が有効とされ、サイニングボーナスの返還義務を負う可能性が高い。なお、使用人兼取締役の場合は注意が必要。
 後半の部分は、違和感なく読めました。 

 

2025年7月 5日 (土)

【離婚】 最新事例にみる婚姻関係の破綻原因

 令和7年2月に新日本法規から出版された「最新事例にみる婚姻関係の破綻原因」です。著者は高裁の部総括判事であった赤西芳文弁護士です。

 第1例から、なかなか強烈なケースでした。

 【1】 妻が「犬は我慢させられないが、夫は我慢すべきとして同居を拒否し、犬の死亡後も同居しないことなどから、離婚請求が認められた事例(東京地判平16・6・23)

    ⇒夫は、犬以下のような発言ですね😵

 【4】 有責配偶者(不貞)からの離婚請求であるが、クレジットカードを取り上げる、携帯電話やメールを使えなくする等のことをした相手方配偶者にも破綻の責任があるとして、離婚請求が認められた事例(東京高判H26・12・24)

    ⇒第1審は、離婚請求を棄却しています。微妙なケースですが、このような判断もあり得るということでしょう。

 【10】 妻に不貞の疑いをかけ、ボイスレコーダーやGPS機器設置による監視をし、攻撃的追及・非難をしたことにより夫婦関係が破綻したことを理由に離婚及び妻の慰謝料が認容された事例(大阪公判H28・7・21)

    ⇒第1審は、離婚請求を認め、慰謝料については否定されています。根拠無き嫉妬に基づく典型的なモラハラと評価されたようです。

 【19】 夫が、妻が家事育児を担うという婚姻当初の役割分担を変更する必要を認めることができず、流産の際の冷淡な対応、無配慮な言動、育児に対する非協力等から、妻と夫の気持ちは大きくすれ違うようになったとして、離婚請求が認められた事例(東京高判H29・6・28)

    ⇒第1審は、破綻を認めずに、離婚請求を棄却しております。第2審の段階では別居期間が3年を超えているので、それも大きな原因になったのだと思います。

 【28】 夫が妻の不貞行為を一旦宥恕した場合、その後夫婦関係が破綻するに至った時は、夫が既に宥恕した不貞行為をもって有責配偶者からの離婚請求と主張することは許されないとして、妻からの離婚請求が認められた事例(東京高判H4・4・24)

    ⇒第1審は、妻の離婚請求を認めませんでした。宥恕した場合には、先の不貞と後の破綻原因とは因果関係がないということなのでしょう。

 【45】 別居期間が9年近くに及ぶ有責配偶者である夫からの離婚請求について、離婚すれば、婚姻費用の支払いがなくなり、妻が経済的に苛酷な状況に置かれ、精神疾患に罹患している三男の監護・福祉に著しい悪影響が及ぶ、夫の離婚給付の提案は不確実であるとして、離婚請求が棄却された事例(東京高判令和元・8・28)

    ⇒第1審は離婚請求を認めましたが、第2審は否定しました。第2審は、夫の有責性の程度が高く、離婚によつて妻が経済的に苛酷な状況におかける可能性が高いこと、そして、精神障害のある三男の監護福祉に悪影響を及ぼすことを理由にしております。

     有力な政治家のようですが、自分の妻子を大事にできない方はどうかと思いますね😵 

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(清澄白河・松平定信のお墓)

 

 

2025年7月 4日 (金)

【建築・不動産】 リフォーム・改修工事トラブルの解決ポイント

 ぎょうせいから令和2年に出版された「リフォーム・改修工事トラブルの解決ポイント」です。

 先日、日本弁護士連合会の住宅紛争処理機関検討委員会の全体会議が日弁連会館で開催されましたので、東京の行き帰りでななめ読みをしました。

 ここ数年、負担が大きい不動産や建築を巡る紛争は断っているために、感覚を取り戻すために購読しました。

 瑕疵担保責任・契約不適合責任と一般的な債務不履行責任という基本的な区別について整理できていない弁護士に当たったことがありますが、P2でも、冒頭からきれいな形で整理がされています。

 「リフォーム・改修工事契約は、一般的には民法632条以下において規定されている請負契約と理解されている。請負契約は、仕事の完成を目的とした契約であり(同法632条)、請負人は、仕事完成義務を負い、もしもその仕事の目的物に瑕疵ないし契約不適合があったときには、令和2年4月施行の改正前民法では634条以下の瑕疵担保責任を負い、改正民法では559条により売買の規定が準用され562条以下の契約不適合責任を負う。

 この請負人の瑕疵担保責任・契約不適合責任の法的性格については、債務不履行責任であると理解されており、瑕疵担保責任・契約不適合責任の規定は、一般的な債務不履行責任に関する規定(損害賠償に関する民法415条等)の特則であると理解されている。

 請負人の負う主たる債務は仕事完成義務であるが、状況によっては、これにとどまらず、仕事に付随して仕事完成義務とは異なる債務(付随義務)を負うこともある。この付随義務の位置づけについては、仕事完成義務の一部と理解することもあり得るが、本書では、わかりやすく整理する観点から、仕事完成義務とは別の付随義務であると整理し、その不履行については、瑕疵担保責任・契約不履行責任の問題ではなく、一般的な債務不履行責任の問題であると整理したいと考えている。」

 仕事完成義務違反以外の債務不履行責任(付随義務違反)については、P16以下で解説されていますが、報告や説明義務違反のようなケースを想定されているように読めました。

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                             (奥木地林道)

 2020年に同じ本を購入していました。トホホ。どうりで見たような気がしていたんです"(-""-)"

 

2025年7月 3日 (木)

【行政】情報公開・個人情報保護 自治体審査実務編

 信山社の「情報公開・個人情報保護」(自治体審査実務編)を購読しました。

 請求手続の実務、審査請求・審理手続の実務、答申案の作成実務ごとに、わかりやすく説明がされています。

 請求手続の実務では、開示処分、不開示処分、裁量的開示、そして、文書不存在について、簡潔な説明がされています。

 審査請求・審理手続の実務においては、弁明書・反論書についての解説、審査会の意義等について説明されています。

 答申案の作成実務は、まさに、どのような手順に従って作成したらよいのかについて説明されています。

 本書は、自治体の法務担当職員や顧問弁護士にとってはそろえていた方がよい書籍だと思いました。

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(東陽町・ウラロジ)

2025年7月 2日 (水)

【金融・企業法務】 取締役の競業取引・利益相反取引をめぐる諸問題

 判例タイムズNo1532号の新類型別会社訴訟35で掲載された論文です。

 競業取引・利益相反取引ですが、田舎弁護士が受験した平成8年の商法の口述試験で質問を受けた分野になりますが、途中で頭が混乱して、支離滅裂な回答をしたことを覚えております。

 そのため、特に、利益相反は今でもなぜか苦手意識を持っております。

 例えば、設例の第15では、基本的な質問が掲載されています。

 (1)から(3)の場合において、利益相反取引についての株主総会等の承認を得ることを有する株式会社は、どれか?

 (1)甲社と乙社の代表取締役であるAが、甲社・乙社間の取引をする場合。

  ⇒甲社、乙社共に必要

 (2)Aは甲社と乙社の代表取締役であるが、甲社の代表取締役Bと乙社の代表取締役Cとの間で両社間の取引をする場合。

  ⇒甲社、乙社いずれも不要

 (3)Aは甲社の代表取締役、乙社の取締役であるところ、Aが甲社の代表取締役として乙社の代表取締役C社との間で両社の取引をする場合

  ⇒本問における甲社・乙社間の取引は、(乙社の取締役である)Aが甲社の代表取締役として乙社(代表取締役C)との間で行うものである(従って、甲社からみると、その取引の相手は甲社の取締役ではない)から、Aは、当該取引が乙社との関係においてのみ会社法356条1項1号の「取締役が・・・株式会社と取引をしようとするとき」に当たるため、乙社においてのみ総会等の承認を得る必要がある。

  甲社(代A)  ⇔  乙社(代C) 取締役A

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(深川・えんま堂)

2025年7月 1日 (火)

【相続】 遺留分の法律と実務

 ぎょうせいから出版された「遺留分の法律と実務」(第3次改訂版)を購読しました。

 遺留分ですが、田舎弁護士の事務所では、年に数件相談があり、数年に1,2つご依頼があるようなイメージですね。

 遺留分の具体的な計算の方法って、依頼を受けている時は理解しておりますが、依頼事件が終わるとすぐに忘れてしまいそうです。結構複雑ですよ。

 少し説明してみますね。

 ① 相続開始時に、被相続人が有した財産を確定し、評価額を出す(評価基準時は相続開始時)。

 ② 加算される生前贈与(ここでは、相続人に対すると、相続人でない第三者に対するとを問わない)を確定し、評価額を出す(評価基準時は相続開始時)。

 ③ 控除される債務額を確定し、評価額を出す。

 ④ 上記①+②-③により、遺留分算定の基礎となる財産の総額を確定する。

 ⑤ 上記④に遺留分の割合を乗じ、さらに各自の法定相続分を乗じて、各遺留分権利者の遺留分額を算出する。

 ⑥ 上記⑤の各個別の額から、当該遺留分権利者の生前贈与の額を控除する。

 ⑦ 上記⑥の各個別の額から、当該遺留分権利者の特定物遺贈及び相続させる遺言により取得した財産の額を控除する。

 ⑧ 上記⑦の各個別の額から、当該遺留分権利者が相続開始時の被相続人から取得し得る額を控除する。

 ⑨ 上記⑧の各個別の額から、各遺留分権利者が負担する債務の額を加算する。

 これを計算して、侵害されている遺留分の金額を算出することになります。 

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(深川江戸資料館)

 

 

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