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2025年6月12日 (木)

【金融・企業法務】 応訴者の訴訟活動に係る主張立証と裁判所が最終的に認定した事実との相違を不法行為の成否の前提として取り上げることは必ずしも相当とはいえないとした事例 東京高裁令和6年1月31日判決

 旬刊商事法務5/25号の新商事判例便覧に掲載されている裁判例です。

 Xは、Yに対して訴訟を提訴して、Xの主張は全て認容されました。

 ところが、この裁判では、Yは、Xの主張は事実ではないといろいろと反論したのですが、これにより、Xは、精神的苦痛を受けたとして、Yに対して、慰謝料請求を求めたところ、第1審は、Yの訴訟活動の一部は客観的事実に反することを知りつつなされたものであり、正当な訴訟活動の範囲を逸脱して社会的相当性を欠く違法なものとして、慰謝料55万円の範囲でXの請求を認めました。 

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                             (松山・でんぷん)

 民事訴訟を提訴した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られると解するのが相当である(最高裁昭和63年1月26日判決)。

                                ↓

 訴えの提起については、応訴すること自体が相手方の負担となるから、事実的法律的根拠を検討の上ですることを求めるとしても提訴者に酷ではないのに対して、

 応訴の場合は、①自ら裁判による紛争解決を求めた場合ではなく、提訴への対応として開始されるものであること、②このような応訴の性格上、応訴者としては提訴者の主張をまずは争いつつ、提訴者の訴訟活動に応じた対応を検討するということが、社会通念上許容されることが多いこと、③応訴した者の対応次第で提訴者の訴訟活動の負担は大きくなるが、それは自ら裁判による解決を求めた者に生ずる一般的負担として受忍すべきであることといった訴え提起の場合と異なる事情を考慮すべきである。

                                ↓

 したがって、応訴した者の訴訟活動が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとして違法となるのは、例えば、相手方を困惑させたり、訴訟による紛争解決を徒に遅延させたりするなどの不当な目的をもって、およそ裁判所に認められる余地のない場合が想定される(応訴者が訴訟活動においてする事実についての主張立証と、双方当事者の主張立証活動を踏まえて裁判所が最終的に認定した事実との相違を不法行為の成否の前提として取り上げることは必ずしも相当とはいえない。)

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 本件各陳述は、いずれもXに対する不法行為を構成するものではないとして、Xの請求を棄却しました。

 訴え提起が不法行為になる場合についての最高裁判例はあるのですが、応訴した者の訴訟活動が違法な行為になる場合についての最高裁判例はないことから参考になります😅

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