【学校】 限界の国立大学
朝日新書から出版された「限界の国立大学」を読みました。
新書でありながら、なかなかの分量で、通読するに苦労しました。
同書の概要をまとめました。
行財政改革の流れの中で、2004年に国立大学が法人化しました。いわゆる国立大学法人法の成立です。
そして、教職員の人件費や研究費に使われる基盤的経費である運営交付金が年々減らされました。
運営交付金は、2004年には1兆2415億円ありましたが、10年にわたり毎年1%減少され、2024年には1億784億円となっております。
そのため、教職員の人件費、研究費、光熱費などの支払に充てられるべき資金が減少しました。
さらに、研究費については、競争的資金から獲得する仕組みにしたため、若手を中心に非正規教員が増加するなど研究環境が悪化しました。
競争的資金を得るためには、応募するための書類を準備しなければならず、研究目的、研究計画、研究結果がもたらす効果や経費の見込み額まで10頁以上の書類が必要なこともあります。
また、2019年からは財務省主導の下で、運営交付金制度に傾斜配分枠をもうけたために、配分される金額の見通しも難しくなりました。
そして、苦しんでいる中で追い打ちをかけたのが、電気代などの光熱費や物価の高騰です。人事院勧告を受けて増加する人件費の圧迫は、大学の経営をより一層危機にさらすことになります。
解決策は、運営交付金の充実が必要ですが、財務省も首相官邸主導の有識者会議にも見向きもされておらず、究極の「選択と集中」とも言われる国際卓越研究大学制度が導入されました。
いずれにせよ、運営交付金の減額により、大学は研究力を低下させるという結果につながっております。
他方で、国立大学法人化により、メリットもあります。
やはり、学生に対する教育の質が飛躍的に向上したということがあります。
田舎弁護士のころの大学は、少なくとも田舎弁護士出身大学は、学生に対する教育環境は酷いものでした。学生も、大学4年間はレジャーランドと称して、勉学にいそしんでいる者は少数でした。
また、国立大学法人化により経営という観点が入ったこともポイントだと思います。
とはいえ、現状のままですと、いずれ、教育にも影響がでてくることになるのではないかと思います。
地方の国立大学は、地域の知の拠点であり、その拠点を失うことは、「知の総和」を十分に実現することもできません。
本書は国立大学の現状を知る上での読み応えのある書籍だと思います。
(嫁ちゃんランチ)
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