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2024年9月26日 (木)

【離婚】財産分与の審理上の留意点について No2

 昨日の続きです。

 まず、「4 特有財産について (1) 特有財産の立証について」です。

 「基準時に原告名義又は被告名義で存在する財産は、夫婦が協力して形成した財産(夫婦共有財産)と推定されるから(民法762条2項)、特有財産を主張する当事者において、特有財産であることを基礎づける事実(婚姻前財産、相続、親族からの贈与等)について立証する必要がある。」 20240901_1210472

                              (天空の鳥居)

 「(2)預金について ア 婚姻前の預金について」

 「当事者が、基準時の預金残高には婚姻前の預金(特有財産)が含まれているとして、基準時の残高から婚姻時の残高を控除した差額部分が夫婦共有財産である(又は、基準時の残高が婚姻時の残高を下回る場合は、夫婦共有財産は存在しない)と主張することがある(A説)。こうした算定方法については当事者双方に異議がないのであれば、これを基礎に特有財産を認定することができる。もっとも、この算定方法が争われた場合、これを許容できるか、各事案において検討を要する。

  確かに、①婚姻時から基準時までの間に、専ら入金が続いている場合には、残高が増加した部分が夫婦共有財産として特定できるし(婚姻時の残高はそのまま残存している)、②婚姻時から基準時まで専ら出金が続いている場合も、基準時の残高が婚姻前の預金であると特定できるため(そもそも夫婦共有財産は入金されていない)、特有財産の認定は容易であり、こうした場合は上記算定方法でも問題はない。

  しかしながら、③婚姻後に当該口座で入出金が繰り返されているような場合は、婚姻前の預金が夫婦共有財産と混在してしまうため、基準時の残高のうち、どの部分が婚姻前の預金(特有財産)であるか、容易に認定できるものではない。」

 「婚姻時から長期間が経過し、その間に入出金が繰り返されているような場合は、婚姻時の預金残高がそのまま特有財産として残存していると認められるケースは限定的ではないかと思われる。」

 「イ 親族からの相続又は贈与について」

 「この場合は、まず入金された金員の原資が親族の資産であることを立証する必要がある(なお、親族の口座から当該口座に振替入金されている場合はよいが、親族の口座からいったん払戻されて現金化された後、これを手渡しで交付し、当該口座に入金しているような場合は、日時が近接していない限り、原資の立証は難しいであろう)。そして、このケースでも、その後に当該口座において入出金が繰り返されている場合は、上記婚姻前預金の場合と同様に夫婦共有財産との混在問題に直面する。」

「(3)生命保険について」

 「計算式 分与対象財産額=基準時の解約返戻金相当額×婚姻後の同居期間(婚姻時~基準時)÷契約期間(契約時~基準時)」

「(4)退職金について」

 「(通常の場合)  分与対象財産額=基準時に自己都合退職した場合の退職金相当額×婚姻後の同居期間(婚姻時~基準時)÷(入社日~基準時)」

 「(定年退職が近い場合) 分与対象財産額=定年退職金相当額×婚姻後の同居期間(婚姻時~基準時)÷全勤務期間×定年退職時までの年数のライプニッツ係数 20240901_154000

                            (うどんまなべ)

「(5)不動産について」

 ア 夫婦の一方が婚姻後で基準時前に取得した不動産であれば、登記上の所有名義にかかわらず、夫婦共有財産であると推定され、不動産の取得の際、共有名義とした場合も、その登記上の持分割合にかかわらず、当該不動産全部について夫婦の共有財産であると推定される。

   ところで、不動産の購入の際し、夫婦の一方が、特有財産の出資による特別の貢献があると主張する場合がある。具体的には、夫婦の一方が、不動産の購入原資として、婚姻前の財産、親族から贈与された財産又は相続財産を頭金に充当したという事案が考えられる。」

 「次に、不動産の購入原資として特有財産からの出資が認定できる場合の算定方法として、①特有財産を出資した部分について、当該財産の形成についての寄与度として評価する方法もあるが(この場合は、全体的な分与割合【50%】とは別に当該財産についての個別の寄与度が評価されるが、計算過程が複雑となる。)、実務的には、②当該不動産のうち特有財産を原資とする部分を特有財産部分として割合的に控除し、残余部分のみを分与対象財産とする方法を適用している。

  特有財産部分=不動産の現在価格×特有財産出資額÷不動産の購入価格(頭金+住宅ローン元金)

  分与対象財産額=不動産の現在価格-特有財産部分 」

 「イ 婚姻後に特有財産で繰り上げ返済したケースについて」、「ウ 特有財産の住宅ローンを婚姻後の収入で返済したケース」についても、解説がされています。

(6)負債について

 「日常家事債務に該当しない負債でも、住宅ローン等のように、①夫婦共同生活の維持のために負担した債務又は②夫婦共有財産の形成のために負担した債務については、財産分与において負債として考慮するのが相当」

5 財産の評価について

(1) 不動産について

 「原則として、口頭弁論終結時の時価で評価する」

(2) 住宅ローン付不動産について

 「不動産については口頭弁論終結時の時価をもって評価するが、住宅ローンについては、対象財産確定基準時(別居時)の債務残高で評価し、これを上記不動産価格から控除する (19)」

 「現在の実務では、住宅ローン付不動産について、不動産は資産として、住宅ローンは負債として個別に評価し、それぞれ他の資産・負債とは切り離さず、総資産と総負債を通算して財産分与額を算定し、オーバーローン不動産の負債についても、債務超過額を他の資産と通算している」

 (19) 住宅ローンについては、対象財産確定基準時(別居時)の債務残高で評価するのが通常である。対象財産確定基準時(別居時)までの返済については、夫婦の経済的協力関係による貢献と評価できるが、その後の返済については、夫婦の協力による貢献があるとは考えがたいからである。夫婦の一方の名義の住宅について別居後の同人名義の住宅ローンを支払い続けたとしても、それは同人が自己の資産を形成しているに過ぎない」

 その他、「(3)預貯金について」、「(4)株式について」の解説もあります。

 最後は、「6 寄与度(清算割合)」です。

 「夫婦共有財産の清算割合については、原則として相等しいものとするのが相当であり(いわゆる「2分の1ルール」)、これとは異なる清算割合(寄与度)とするには、夫婦の一方がその必要性・相当性を具体的に主張立証する必要がある。そして、上記清算割合を修正する場合がないわけではないが、極めて稀ではないかと思われる。この点、実務上、配偶者の一方から、他方が家事労働を怠っていたとして、大量に日々のエピソードを集約して主張立証しようとする事例が散見される。しかしながら、仮にそうした事実が認定できたとしても、それが夫婦共有財産形成にどの程度影響しているのかまで認定できるものではないし、そうした主張立証はあまり意味がないように思われる。」

 これは、実務上、ある あるですね。 

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