【行政】随意契約の裁量の範囲 昭和62年3月20日最高裁判決
第一法規から出版された自治体財務Q&AP155です。先日、東京の弁護士会館をお邪魔した際に購入しました😅
随意契約ができる場合として、同書では、以下のとおりの説明がされています。
「公金により契約する以上、相手方を決めるのは、公平性、公正性を担保するため契約自由の原則を修正しており、契約方法、契約の解除などを制限する場合があり、また、契約方法は一般競争入札が原則ですが、全ての契約を競争入札によることは無理があります。
随意契約は特定の相手方を選択することになり、その目的を達成する上で合理的と判断される場合をいい、緊急性、必要性がなければできません。
随意契約を締結できる場合は、契約の内容、性質、目的等を考慮し、自治体の利益につながる場合とされています。」
そのことを明示された判例として、昭和62年3月20日最高裁判決が引用されています。
原審は、以上の事実を前提とし、本件請負契約の適否について、地方自治法施行令(昭和四九年政令第二〇三号による改正前のもの。以下「令」という。)一六七条の二第一項一号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」とは、同号が例示する不動産の買入れ又は借入れ等のほか当該契約をすることを秘密にする必要があるなどの場合をいうものであつて、その用途にかんがみ、品質、機能等において概ね同一の物件が他に存在する場合には、その仕様、設計に多少の差異があるからといつて、他に格別の事情のない限り、直ちに同号所定の事由に該当するということはできないと解した上、本件ごみ処理施設については、その用途にかんがみ、前記四社のいずれを相手方として契約を締結しても、品質、機能等において藤係長作成の「福江市ごみ処理施設施行基準」及び「焼却炉建設計画工事契約の基本条件」に定められた基準を充たす概ね同一のごみ処理施設が建設されたであろうということができ、他に格別の事情も見当たらないから、本件請負契約の締結は、令一六七条の二第一項一号に掲げる場合に該当しないというべきであり、また、随意契約によることができる場合として同項に掲げるその他の場合にも該当しないから、これを随意契約の方法により締結したことは違法である、と判断した。
しかしながら、右原審の判断は、是認することができない。
その理由は、次のとおりである。
地方自治法(以下「法」という。)二三四条一項は「売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし、同条二項は「前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。」としているが、これは、法が、普通地方公共団体の締結する契約については、機会均等の理念に最も適合して公正であり、かつ、価格の有利性を確保し得るという観点から、一般競争入札の方法によるべきことを原則とし、それ以外の方法を例外的なものとして位置づけているものと解することができる。そして、そのような例外的な方法の一つである随意契約によるときは、手続が簡略で経費の負担が少なくてすみ、しかも、契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定できるという長所がある反面、契約の相手方が固定化し、契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあるという短所も指摘され得ることから、令一六七条の二第一項は前記法の趣旨を受けて同項に掲げる一定の場合に限定して随意契約の方法による契約の締結を許容することとしたものと解することができる。
ところで、同項一号に掲げる「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」とは、原判決の判示するとおり、不動産の買入れ又は借入れに関する契約のように当該契約の目的物の性質から契約の相手方がおのずから特定の者に限定されてしまう場合や契約の締結を秘密にすることが当該契約の目的を達成する上で必要とされる場合など当該契約の性質又は目的に照らして競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難というべき場合がこれに該当することは疑いがないが、必ずしもこのような場合に限定されるものではなく、競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難とはいえないが、不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく、当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても、普通地方公共団体において当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合も同項一号に掲げる場合に該当するものと解すべきである。
そして、右のような場合に該当するか否かは、契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている前記法及び令の趣旨を勘案し、個々具体的な契約ごとに、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である。
そこで、以上の観点から本件請負契約の締結をみるに、原審の確定した前記事実関係によると、右契約の締結はごみ処理施設という複雑かつ大規模な施設の建設を目的とするものであつて、その請負代金としても高額にのぼるものであり、また、各社のプラントは炉体の構造等が異なつていて、各社はこの点に特許権まで有するものではないがロストルの揺動装置等には実用新案権を有していたというのであるから、これらの点にかんがみると、注文者たる福江市において、右施設自体の品質、機能、工事価格に関心を払うのは当然であるが、そればかりではなく、建設工事の遂行能力や施設が稼働を開始した後の保守点検態勢といつた点の考慮から契約の相手方の資力、信用、技術、経験等その能力に大きな関心を持ち、これらを熟知した上で特定の相手方を選定しその者との間で契約を締結するのが妥当であると考えることには十分首肯するに足りる理由があるというべきであり、他方、原審の確定した前記事実関係によつても本件請負契約の締結について公正を妨げる事情は何ら窺うことができないから、結局、亡喜一において本件請負契約をもつて令一六七条の二第一項一号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当すると判断したことに合理性を欠く点があるということはできず、したがつて、随意契約の方法によつて右契約を締結したことに違法はないというべきである。」
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