【行政】 4号請求住民訴訟における違法性の承継理論と判例法理の形成 No1
判例タイムズNo1435号で掲載された大藤敏元東京高裁判事の論文です。
最終章の「5 違法性の承継に関する判例法理の要約」がわかりやすく整理されていますので、引用したいと思います。
「以上のような違法性の承継に関連する最高裁判例の検討結果によれば、4号請求に係る財務会計上の行為の違法とそれに先行する原因行為の違法との関係について、最高裁判例によって形成された違法性の承継に関する判例法理は、以下のように要約することができるのではないかと考えられる。
(1)(ア)地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき、当該職員に対して損害賠償請求をするべきことを求める住民訴訟において、当該損害賠償責任を問うことができるのは、先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られる。
(イ)地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき、当該職員に対して損害賠償請求をすべきことを求める住民訴訟は、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員を被告として、財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し、職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を請求することを求めるものであるから、当該職員の財務会計上の行為がこれに先行する原因行為を前提として行われた場合であっても、当該職員の行為が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときは、上記の規定に基づく損害賠償責任を当該職員に問うことができると解するのが相当である。
上記の判例法理は、先行の原因行為の違法を理由として、後行の財務会計上の行為が違法であると主張されている4号請求住民訴訟のすべての事案に等しく適用される一般的な法理であると考えられる。したがって、先行の原因行為が行政機関による処分等の非財務会計上の行為であると、あるいは第三者との契約の締結などの財務会計上の行為であると問わないと考えられる。
(2)財務会計上の行為である原因行為が憲法に違反し、私法上無効であるときは、後行の財務会計上の行為を行う権限を有する者は、当該行為をしてはならないという財務会計法規上の義務があり、これに違反して当該行為を行った場合には、当該行為は違法となる。
上記の判例法理は、市の主催により神式に則り挙行された市体育館の起工式が憲法20条3項にいう宗教的活動にあたらない旨判示した最高裁昭和52年7月13日大法廷判決によって示されたものである。
(3)原因行為が普通地方公共団体の長から独立した権限を有する機関によってされた行政処分である場合において、当該処分に重大かつ明白な瑕疵はないが、これが著しく合理性を欠きそのためにこれに予算執行の適正確保の見地から看過しえない瑕疵が存する場合には、当該職員は当該処分につき是正権限を有していなくても、違法な原因行為をそのままにして財務会計上の行為をしてはならないという財務会計法規上の義務を負っているのであり、当該職員が当該処分の瑕疵の解消に努めることなく財務会計上の行為をすれば、その行為は違法なものになる。
上記の判例法理は、教育委員会が公立学校の教頭で退職勧奨に応じた者を校長に任命して昇給させるとともに、同日退職承認処分をしたことに伴い、知事がした昇給後の号給を基礎とする退職手当の支給決定の違法性が争われた最高裁平成4年12月15日判決によって示されたものである。同判決の趣旨に鑑みると、上記の判例法理は、普通地方公共団体の長から独立した権限を有する選挙管理委員会、人事委員会等の行政機関がした行為の違法を理由として、これら行政機関がした行為の違法を理由として、これら行政機関の行為を前提としてされた普通地方公共団体の長の財務会計上の行為の違法を主張する事案についても適用されるものと考えられる。
また、最高裁平成15年1月17日判決は、県議会議長が全国都道府県議会議員軟式野球大会に参加する議員に対して旅行命令をしたことに伴い、知事の補助職員がした旅費の支出負担行為及び支出命令が違法ではない旨判示し、その判決理由において、上記の判例法理が適用されることを明らかにしている。
さらに、最高裁平成17年3月10日判決は、先行の原因行為が、普通地方公共団体の長から権限の委任を受ける等して権限を有するに至った者がした所属職員に対する旅行命令であり、後行の財務会計の行為が、同命令を前提としてその直属の部下である総務係長がした支出命令である事案について、上記平成4年最高裁判決を引用していることに照らすと、原因関係と財務会計上の行為がこのような関係を有する場合にも、上記の判例法理が適用されるもののと考えられる。」
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