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2024年7月11日 (木)

【行政】 1日校長事件 平成4年12月15日最高裁判決

 1日校長事件という事件名で有名な平成4年12月15日付最高裁判決です。

 事案の概要は以下のとおりです。

  東京都教育委員会は、退職勧奨に応じた都内公立学校の教頭職にある者29名について、昭和58年3月31日付で1日だけ名目的に校長に任命し、名誉昇給制度を適用して2号給昇給させたうえ、退職承認処分をしました。これを受けて、都教育委員会の所掌事務に関する予算執行権限を有するY(東京都知事)は、昇給後の給与を基礎とした退職手当の支給決定をし、当該29名に対して退職手当が支給されました。

  これに対し、東京都の住民であるXらが、本件昇給処分は違法であるから、これを前提に行われた退職手当の支出決定も違法であるなどと主張して、地方自治法242条の2第1項4号に基づいて、Y個人に対し、都に代位して損害賠償を請求したという事案です。

  以下、最高裁判決を引用します。

 「地方自治法二四二条の二の規定に基づく住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである(最高裁昭和五一年(行ツ)第一二〇号同五三年三月三〇日第一小法廷判決・民集三二巻二号四八五頁参照)。そして、同法二四二条の二第一項四号の規定に基づく代位請求に係る当該職員に対する損害賠償請求訴訟は、このような住民訴訟の一類型として、財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し、職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならない。したがって、当該職員の財務会計上の行為をとらえて右の規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは、たといこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、右原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である。

 ところで、地方教育行政の組織及び運営に関する法律は、教育委員会の設置、学校その他の教育機関の職員の身分取扱いその他地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本を定めるものであるところ(一条)、教育委員会の権限について同法の規定するところをみると、同法二三条は、教育委員会が、学校その他の教育機関の設置、管理及び廃止、教育財産の管理、教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事などを含む、地方公共団体が処理する教育に関する事務の主要なものを管理、執行する広範な権限を有するものと定めている。もっとも、同法は、地方公共団体が処理する教育に関する事務のすべてを教育委員会の権限事項とはせず、同法二四条において地方公共団体の長の権限に属する事務をも定めているが、その内容を、大学及び私立学校に関する事務(一、二号)を除いては、教育財産の取得及び処分(三号)、教育委員会の所掌に係る事項に関する契約の締結(四号)並びに教育委員会の所掌に係る事項に関する予算の執行(五号)という、いずれも財務会計上の事務のみにとどめている。すなわち、同法は、地方公共団体の区域内における教育行政については、原則として、これを、地方公共団体の長から独立した機関である教育委員会の固有の権限とすることにより、教育の政治的中立と教育行政の安定の確保を図るとともに、他面、教育行政の運営のために必要な、財産の取得、処分、契約の締結その他の財務会計上の事務に限っては、これを地方公共団体の長の権限とすることにより、教育行政の財政的側面を地方公共団体の一般財政の一環として位置付け、地方公共団体の財政全般の総合的運営の中で、教育行政の財政的基盤の確立を期することとしたものと解される。

 右のような教育委員会と地方公共団体の長との権限の配分関係にかんがみると、教育委員会がした学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関する処分(地方教育行政の組織及び運営に関する法律二三条三号)については、地方公共団体の長は、右処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り、右処分を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり、これを拒むことは許されないものと解するのが相当である。けだし、地方公共団体の長は、関係規定に基づき予算執行の適正を確保すべき責任を地方公共団体に対して負担するものであるが、反面、同法に基づく独立した機関としての教育委員会の有する固有の権限内容にまで介入し得るものではなく、このことから、地方公共団体の長の有する予算の執行機関としての職務権限には、おのずから制約が存するものというべきであるからである。

 本件についてこれをみるのに、原審の適法に確定したところによれば、(1) 東京都教育委員会は、東京都内の公立学校において教頭職にある者のうち勧奨退職に応じた二九名について、昭和五八年三月三一日付けで校長に任命した上、学校職員の給与に関する条例(昭和三一年東京都条例第六八号)及び学校職員の初任給、昇格及び昇給等に関する規則(昭和三四年東京都教育委員会規則第三号)の関係規定に基づき、勧奨退職に応じた勤続一五年以上の職員を二号給昇給させる制度を適用して、二号給昇給させ(以上の各措置を「本件昇格処分」という。)、さらに、同日右二九名につき退職承認処分(以下「本件退職承認処分」という。)をした、(2) 東京都教育委員会の所掌に係る事項に関する予算の執行権限を有する東京都知事である被上告人は、本件昇格処分及び本件退職承認処分に応じて、右昇給後の号給を基礎として算定した退職手当につき本件支出決定をし、右二九名は右退職手当の支給を受けた、というのである。

 そして、以上の事実関係並びに原審の適法に確定した本件昇格処分及び本件退職承認処分の経緯等に関するその余の事実関係の下において、本件昇格処分及び本件退職承認処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものとは解し得ないから、被上告人としては、東京都教育委員会が行った本件昇格処分及び本件退職承認処分を前提として、これに伴う所要の財務会計上の措置を採るべき義務があるものというべきであり、したがって、被上告人のした本件支出決定が、その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものということはできない。所論の点に関する原審の判断は、結論において正当であり、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用することができない。」

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                             (宮島・藤い屋)

 実務住民訴訟P175以下には、一日校長事件として、概ね、以下のような記載があります。

 第1に、旧4号損害賠償請求代位請求(現4号損害賠償請求義務付け請求)における財務会計行為の違法(都知事の退職手当の支給決定及び退職手当の支給)と、これに先行する非財務会計行為(都教育委員会の昇給処分と退職承認処分)の違法との関係についての判示です。

 第2に、原因行為である非財務会計行為の本来的権限者(教育委員会)と財務会計行為の本来的権限者(都知事)が異なる場合についての判示です。

 次回から、少しこのあたりをつきつめたいと思います。

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