公立小学校の教員が、悪ふざけをした2年生の男子Xを追い掛けて捕まえ、その胸元を右手でつかんで壁に押し当て、大声で「もう、すんなよ」と叱った行為は、
上記男子が、休み時間に、通り掛かった女子数人を蹴った上、これに注意した上記教員のでん部付近を2回にわたって蹴って逃げ出したことから、このような悪ふざけをしないように指導するために行われたものであり、悪ふざけの罰として肉体的苦痛を与えるために行われたものではないなど判示の事情の下においては、
その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当せず、国家賠償法上違法とはいえないとして、
Xの請求を棄却しました。
(朝倉・古墳群)
第1審は、本件行為は学校教育法11条但書で禁じられている体罰に該当するとして、Xの請求を約65万円の支払を認められる範囲で認めました。
第2審も、①胸元をつかむという行為は、けんか闘争の際にしばしばみられる不穏当な行為であり、Xを捕まえるためであれば、手をつかむなど、により穏当な方法によることも可能であったはずであること、②Xの年齢、XとAの身長差及び両名にそれまで面識がなかったことなどに照らし、Xの被った恐怖心は相当なものであったと推認されること等を総合すれば、本件行為は、社会通念に照らして教育的指導の範囲を逸脱するものであり、学校教育法11条ただし書により全面的に禁止されている体罰に該当し、違法であると判断して、Xの請求を約21万円の支払を命ずる限度で認容しました。
最高裁は、Aの本件行為は、児童の身体に対する有形力の行使ではあるが、他人を蹴るというXの一連の悪ふざけについて、これからはそのような悪ふざけをしないようにXを指導するために行われたものであり、悪ふざけの罰として被上告人に肉体的苦痛を与えるために行われたものではないことが明らかであること、Aは、自分自身もXによる悪ふざけの対象となったことに立腹して本件行為を行っており、本件行為にやや穏当を欠くところがなかったとはいえないとしても、本件行為は、その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当するものではないというべきである。従って、Aのした行為に違法性は認められないと判断しました。
体罰については、学校が児童生徒の問題行動に適切に対応し、生徒指導の一層の充実を図ることができるよう、平成19年2月5日付の問題行動を起こす児童生徒に対する指導についてと題する通知を発出し、その別紙として、学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方をとりまとめました。
(1)児童生徒への指導に当たり、学校教育法第11条ただし書きにいう体罰は、いかなる場合においても行ってはならない。教員等が児童生徒に対して行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。
(2)(1)により、その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る、蹴る等)、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合には、体罰に該当する。
(3)個々の懲戒が体罰に当たるか否かは、単に、懲戒を受けた児童生徒や保護者の主観的な言動により判断されるのではなく、上記(1)の諸条件を客観的に考慮して判断されるべきであり、特に児童生徒1人1人の状況に配慮を尽くした行為であったかどうか等の観点が重要である。
(4)児童生徒に対する有形力(目に見える物理的な力)の行使にうより行われた懲戒は、その一切が体罰として許されないというものではない。
以上が、文科省見解です。
(横峰寺)
教員による体罰に関する判例のリーディングケース(※刑事事件のようです)とされる大阪高判昭和33年5月16日は、殴打のような暴力行為は、たとえ教育上筆余があるとする懲戒行為としてでも、その理由によって犯罪成立上違法性を阻却せしめるという法意であるとはとうてい解されないと判示し、体罰について、厳格な立場を示し、その上告審である最高裁も同判決を維持しております。
他方、東京高判昭和56年4月1日判決は、児童生徒に対する有形力の行使が一定の限度で許されるとの見解に立ち、その許容限度について、教育基本法、学校教育法その他の関連諸法令にうかがわれる基本的な教育原理と教育方針を念頭に置き、更に生徒の年齢、性別、性格、生育過程、身体的状況、非行等の内容、懲戒の趣旨、有形力の行使の態様・程度、教育的効果、身体的侵害の大小・結果等を総合して、社会通念に則り、結局は各事例ごとに相当性の有無を具体的・個別的に判定するほかないものといわざるを得ないと判示しました。
また、浦和地判昭和60年2月22日判決は、生徒の心身の発達に応じて慎重な教育上の配慮・・・のもとで行われる限りにおいては、状況に応じ一定限度で懲戒のための有形力の行使が許容されると判示し、担任教諭が授業中に離席した中学生を注意するために出席簿で頭を叩いた行為について、教師の懲戒権の許容限度内の適法行為であると判断しました。
(笠松山)
田舎弁護士が小中学校のころ、教師による体罰は散見されました。
小学校では、木の板で教師が尻を叩くという行為がありました。叩かれた行為は、学校外の任意の課外活動に誰1人クラスでの参加者がいなかったということに起因するものでした。現在では、アウトでしょう。
中学校では、刑事事件に発展してもおかしくない体罰を行う教師がいました。問題行動が多くて1年ほどで異動されました。理不尽な理由で、細いスチール棒で頭を叩かれたこともあり、その時は、田舎弁護士の父親が学校にクレームをつけにいきました。
いずれにせよ、児童生徒に有形力の行使に及ぶ場合には、体罰と評価される可能性もあります。日頃から、教師の皆様においても、児童生徒の有形力の行使に及んだ場合に、体罰と評価されることがないよう、考えておく必要があるでしょう。
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