【金融・企業法務】 抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間でした、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と、上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを、直ちに対等額で相殺する旨の合意の効力を、抵当権者に対応することができるか?
判タ第1519号に掲載された最高裁令和5年11月27日判決です。
本件は、建物の根抵当権者であり、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえたxが、賃借人であるYに対して、当該賃料債権のうち未払いの支払いを求める事案です。
Yは、上記の差押えに先立ち、賃貸人との間で、期限の利益を放棄した賃料債務に係る債権と、Yの賃貸人に対する債権(根抵当権設定登記前に取得した債権と、同登記後に取得した債権がある)とを、直ちに対当額で相殺する旨の合意(本件相殺合意)を有していたことから、Yが本件相殺合意の効力をXに対抗できるか否かが争われました。
第1審と第2審は、相殺優先説をとり、Yを勝たせました。ところが、最高裁は、物上代位優先説をとり、Xを勝たせました。

(龍岡木地・素掘りのトンネル)
草野耕一裁判官の補足意見では、①登記後取得債権が、敷金返還請求権のように賃貸借契約の重要部分といえる合意から生じた債権(賃借人に固有の債権)である場合においては、物上代位優位論を否定し相殺優位論を肯定し得る場合があるかもしれない。②本意見で述べられていることは飽くまでも登記後取得債権と将来賃料債権の間における相殺の可否についてであって、抵当権設定登記の前に賃借人が取得した賃貸人に対する債権を自働債権とする相殺や差押えがされる前の期間に対応する賃料債権を受働債権とする相殺の可否についての見解を合意を含意するものではない。と述べておられます。☺
実務では、賃料支払いと敷金返還債務について相殺する旨の合意を設けていることを目にすることがありますが、草野裁判官によれば、このような場合には、相殺優位論を肯定できるかもしれないということのようですね😃
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