【金融・企業法務】 少数株主により招集された総会では、総会の議長に関する定款の規定は効力を有さず、議場であらためて議長を選任する
昨日の中村直人弁護士の株主総会ハンドブック第5版の続きです。
「少数株主により招集された総会では、総会の議長に関する定款の規定は効力を有さず、議場であらためて議長を選任する。」ということについて、複数の裁判例が紹介されていましたので、少し深掘りをすることにしました。
まず、横浜地決昭和38年7月4日です。
「次に本件総会の議長について審究するに、会社の定款第一八条に申請人等の主張のとおり株主総会の議長に関する定めがあること及び本件総会は株主が裁判所の許可を得て招集した総会であることは当事者間に争いがないところ、右定款の規定は取締役(又はこれに代る職務代行者)の招集による通常の株主総会を予定したもので、株主の招集にかかる総会には適用がなく、このような総会においては右規定によらず総会においてあらためて議長を選出すべきものと解する。しかして申請人等は、申請外奥平貞信は総会の選出によらず勝手に議長と称して議事を進行させたと主張するが、むしろ疎明によれば、本件総会において出席した株主(代理人を含む)全員の一致によつて奥平貞信が議長に選ばれ、出席株主及び職務代行者等から何等異議が出されることなく議事が進行したことを一応認めることができるので、この点でも申請人等の主張は認め難い。」
次に、広島高裁岡山支決昭和35年10月31日です。
「抗告人は議長選出方法が定款の規定に違反する旨主張するから、この点につき判断する。相手方会社の定款によれば、株主総会において議長は社長がこれにあたる旨定められていることは疏明により明らかであるが、右定款の規定は取締役会により総会が招集せられた通例の場合を予想して設けられたものであつて、少数株主の裁判所の許可を得た招集による総会の如き異例の場合には、右規定の適用はなく、従つて選挙により議長を定むべきものといわねばならない。蓋し少数株主が裁判所の許可により招集する場合はその総会の開催が社長の意に反するものであることが多いので、この場合にも社長が議長の席に就くときは議事運営の公正が疑われることとなり不当であるからである。この点に関し抗告人は、本件の場合社長は取締役会の決議と意見を異にし株主総会の開催を希望していたのであるから、かかる場合は社長を議長とするも差支えはないので、原則に帰り社長を議長とするのが定款の趣旨に適う旨主張するが、元来株主総会の議事についての規則は一種の手続規定であるから、その解釈にあたり手続の劃一性及び明確性の必要が適度に考慮されねばならない。しかして前記のように総会の招集が取締役会による場合及び少数株主の裁判所の許可による場合というように類型を分ち異つた取扱をするのはやむを得ないけれども、進んで具体的に総会開催が社長の意に沿うものかどうかという内面的且つ微妙な事柄により株主総会の議事手続の適否が決せられるものとするのは、劃一性又は明確性が要請される手続法の解釈としては適当でない。
ついで抗告人は、仮に当該総会において株主中より選出した者を以て議長とすべきであるとしても、株主立石欽一が議長の指名を自分に委任されたき旨をはかり、「異議なし」の声に応じて過半数の賛成ありたるものとして議長に小脇芳一を指名したが、前記(一)(原決定摘示事実第二の(A))について述べたと同様の理由により、右議長選任の議決に際し議決権の数が過半数に達しているかどうか不明であり、違法である旨主張するけれども、疏明(株主総会議事録、小脇芳一の陳述書)によれば、右議長指名委任に関する議決に際しては、出席株主の議決権の過半数に達する株主より議決権行使の委任を受けた板野醇平において、少くとも黙示的に賛成の意思表示をしていたことを窺い知ることができる。しかして少数株主の招集による株主総会においては、議長の選出に至るまでは当該少数株主中よりその代表者として選任せられた者が、仮に議長の席に就き議事の進行をつかさどるべきものと解するを相当とするところ、疏明によれば、右少数株主の代表者である立石欽一が議長の指名を自己に委任することの可否を議題としたところ、前記のとおり板野の賛成の意思表示のあつたため出席株主の議決権の過半数に達する賛成ありと認め、「御異議がないようでございます」という言葉でその旨の確認宣言をしたことを認めることができるから、右議長の指名を委任する旨の議決は適法有効のものといわねばならない。なお右の場合に議決権の過半数に達する賛成ありと認めた根拠につき出席株主全員に対し説明し納得了解せしめることが必要でないことは前記のとおりである。
よつて抗告人のこの主張も採用し難い。」
1つ1つ深掘りすると、楽しいですね😅
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