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2023年9月21日 (木)

【労働・労災】 「暴行及び謝罪強制が不法行為と判断された事案」 ヨドバシカメラほか事件 東京地裁平成17年10月4日判決

 まずは、身体的な攻撃が問題となった、ヨドバシカメラほか事件です。労働関係の裁判は、事件名に、会社名がついてしまうのです。この事件は、ヨドバシカメラさんの名前がついておりますが、電通事件などは有名なところです。パワハラで裁判になると、勝っても、負けても、ありがたくないことに、事件名に会社名がついてしまいます。


 では、ヨドバシカメラほか事件は、どのような事案だったのか、解説いたします。

 簡単にいうと、繰り返し、暴行・傷害が行われた事案です。ヨドバシカメラほか事件は、家電量販店で、雇用先が通信会社から受託した携帯用電話機の販売業務に従事していたAが、雇用先の従業員で教育担当のJ及びI並びに家電量販店の従業員Dから暴行及び謝罪の強制を受けたとして、雇用先及びその従業員J及びI、家電量販店及びその従業員D並びに通信会社に対して損害賠償の支払いを求めた事案です。 

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(弓削)

では、Aに対するどのような暴行がされたのかをみていきましょう。

① 雇用先の従業員Jが会話練習の際、Aに対し、怒号を発して、2つの机越しに、販売促進用ポスターを丸めた紙筒様の物で頭部を強く約30回殴打した後、同紙筒が破損したため、机上のクリップボードを取り、その表面及び側面を使って、ある程度力を込めて更にAの頭部を約20回殴打した(本件第1暴行)。

② 家電量販店の従業員Dが、Aの商品取り置きに関する問題について激昂し、間髪を入れず、Aの右横からAの大腿の外側膝付近を3回にわたって強く蹴った(本件第2暴行)。

③ 雇用先の従業員Iが、AのIに対する入店時間に関する虚偽の電話連絡について怒鳴りつけて叱責するとともに、暴行を行った。この暴行は、左頬を手拳で数回殴打し、右大腿部を膝を使って蹴り、頭部に対して肘や拳骨で殴打する暴行が合計約30回に及んだ(本件第3暴行)。Aは、本件第3暴行を受けた後、Iの便所掃除をさせる等の発言に嫌気がさして退職を決意した。

④ 雇用先の従業員Iが、Aの退職を翻意させようとしたが、Aがこれに全く応じず、話し合いを打ち切るべく「こんな話をしにここに来たんじゃない。」と言いながらソファーから立ち上がったことに激昂して怒号を発し、その襟首を掴んで、Aをソファーの上に四つん這いの状態にさせ、手拳や肘で殴打したり、足や膝で蹴るという暴行を合計約30回にわたって加えた(本件第4暴行)。そして、暴行の後、Aは、雇用先の従業員Iの指示で、通信会社で、通信会社の従業員であるL及びMに対し、3月13日に遅刻したこと及び入店時間について虚偽の連絡をしたことについて謝罪した。

 第1~第4の事件ですが、暴行傷害を負わせた社員以外にも、これを使用する勤務会社にも、使用者責任を問われて、慰謝料や治療費等、同額の損害賠償責任を負いました。

 ひどい内容の事件です。ちなみに、第1事件から第4事件で、裁判所が認めた慰謝料は、あわせていくらでしょうか?!

 合計160万円となっております。!

 慰謝料の金額は、第1事件が、20万円、第2事件が、10万円、第3事件が、30万円、第4事件が、100万円です。暴行・傷害については、業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできません。グレーゾーン部分がないため、セクハラと類似する構造があります。

 身体的な攻撃によるパワハラですが、意外とよく発生します。国会議員の秘書に対する、暴言、暴力は、マスコミ等でよく取り上げられています。精神的な攻撃とあわせて、アンガーマネジメントが必要なところです。  

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(弓削港から)
 なお、あかるい職場応援団のHPで掲載されている山岸功宗弁護士のコメントを引用します。
 「直接の加害者以外の者も損害賠償責任を負いうる。暴行は不法行為に当たり、直接の加害者以外の者も、使用者責任、安全配慮義務違反、共同不法行為により、損害賠償責任を負うことがあります。
 使用者責任の要件は、使用者と不法行為を行った直接の加害者との間に指揮監督の関係があり、暴行が使用者の業務に関連して行われたことです。判決は、本件第2暴行の直接の加害者Dの使用者である家電量販店について、当該暴行が家電量販店の業務に関連して行われたことを認定して、使用者責任を肯定しました。他方、通信会社は、本件各暴行及び本件謝罪強制の直接の加害者J及びIとの間に指揮監督の関係がないことを認定して使用者責任を否定しました。

 次に、安全配慮義務違反が認められるためには、従業員の生命・身体に対する危険の具体的な予見可能性が必要であると考えられています。判決は、本件各暴行及び本件謝罪強制について、Aの身体に対する危険について家電量販店及び通信会社には具体的な予見可能性があったとは認められないと判断して、安全配慮義務違反を否定したと考えます。

 最後に、雇用先の代表者であるGとAとの間には直接の契約関係はありませんが、自社の従業員であるIがAに対してGの目の前で本件第3暴行を加えており、早期の段階で制止する余地があったことから、条理上、GにIの本件第3暴行を制止するべき注意義務があったとして、共同不法行為責任を肯定したと考えます。」

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