【金融・企業法務】 新型コロナウィルスによる株主総会の出席登録抽選制
金融法務事情No2208号で紹介された静岡地裁沼津支部令和4年6月27日決定です。 
(宇和島城)
「第2 事案の概要
1 債務者Y1銀行株式会社(以下「債務者会社」という。)の代表取締役である債務者Y2は、令和4年6月、株主らに対し、別紙株主総会目録記載の定時株主総会(以下「本件株主総会」という。)を、同月29日午前10時から静岡県沼津市〈略〉所在の〈略〉1階コンベンションホールA(以下「本件会場」という。)で開催することを通知したが、その際、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、健康状態にかかわらず、来場を控えて、郵送又はインターネットによる議決権の事前行使を検討すること、出席を希望する株主は事前に登録をして、事前登録の希望者が会場に設置する座席数を超える場合には事前登録者を抽選とする事前登録制とすること、事前登録をしなかった株主、抽選で当選しなかった株主及び入場の際に当選が確認できなかった株主は、会場に入場することができないことを併せて通知した。」
⇒ コロナ感染拡大防止の観点からは、このような制度(事前登録抽選制)を導入されたわけですね。
「2 本件は、本件株主総会において別紙株主総会目録記載の第4号議案ないし第13号議案(以下、併せて「本件提案」という。)を提案した株主である債権者らが、株主による株主総会への出席について事前登録制を採用することは、株主が株主総会に出席して、議題・議案に関する説明を求め、又は意見を陳述する機会や、株主提案の趣旨説明をする機会を不当に奪うものである旨主張して、主位的に、債務者会社に対し、株主の総会参与権に基づく妨害排除請求権として、又は、会社法360条の違法行為差止請求権に基づき、本件株主総会の開催の差止を求め、予備的に、債務者らに対し、総会参与権に基づく妨害排除請求権に基づき、本件株主総会に債権者らが出席して株主権を行使することの妨害禁止を求めたものであり、その主張の詳細は、株主権妨害禁止仮処分命令申立書及び債権者第1主張書面ないし債権者第3主張書面に記載のとおりである。
これに対し、債務者らは、本件申立ての被保全権利及び保全の必要性を争っており、その主張の詳細は答弁書記載のとおりである。」
⇒ 事前登録抽選制が総会参与権を侵害するかどうかが問題とされたんですね😅
「第3 当裁判所の判断
1 一件記録及び審尋の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 債務者会社において、本件株主総会において議決権がある株式を有する株主は、2万9029名である(乙16)。
(2) 債務者会社では、遅くとも令和元年以降、毎年、本件会場で定時株主総会を開催している。出席した株主数は、議決権がある株式を有する株主のうち、令和元年が556人、令和2年が183人、令和3年が248人であった。
(3) 本件会場の本来の収容人数は最大1000名程度であるが(甲10-1)、新型コロナウイルス感染症が流行した令和2年以降の定時株主総会では、出席した株主の座席間に間隔が設けられたため、本件会場に収容できる株主数が減少した(乙2)。そして、令和2年及び令和3年の定時株主総会では、出席する株主数が事前に制限されていなかったため、本件会場に収容できなかった株主は、同じ建物にあるコンベンションホールBに収容されたが、令和3年には会場が満員のため3名の株主が入場できなかった(乙16)。
(4) 本件株主総会では、事前登録制の抽選により出席できる株主数は、206名である(これは、本件会場に加え、コンベンションホールBに収容する株主も加えた人数である。)。また、株主以外に会場にいる役員、運営スタッフ、警備員等の人数は61名程度である(乙16)。
(5) 本件株主総会に出席を希望する株主は、令和4年6月20日午後5時までに受付専用ウェブサイトから申し込みを行い、同月22日にメールにより抽選結果が通知される。書面又はインターネット等による議決権行使の期限は同月28日午後5時到着分又は送信分であり、抽選に外れた株主も、書面又はインターネットによる議決権の行使が可能である。なお、本件株主総会では、ウェブでの参加等の措置は設けられていない(甲4)。
(6) 事前登録制による抽選の結果、債権者ら303名のうち83名が当選し、本件株主総会に出席できることになった。これは、債権者らの約27パーセントにあたる(甲30)。また、当選しなかった株主は、当選した株主の委任を受ければ代理出席が認められる(答弁書6頁)。
2 主位的申立てについて
(1) 債権者らは、株主は、株主総会に出席して、議題・議案に関する説明を求め、又は意見を陳述する権利(総会参与権)を有するところ、本件株主総会においては、事前登録の上抽選に当選しなければ株主総会に出席することができず、抽選に外れた場合には、総会参与権が不当に制限されることになるから、総会参与権を確保するため、健全な会社運営にかかる株主の利益を図るための妨害排除請求権として、本件株主総会の差止請求権を有していると主張する。
しかしながら、株主総会開催にあたっては会場の規模や時間的制約等により出席株主数を無制限とすることはできず、株主が総会参与権を有するとしても、希望すれば必ず株主総会に出席できる権利であると認めることはできない。したがって、株主の総会参与権に基づいて株主総会開催の差止請求権を観念することは困難であると言わざるを得ない。
(2) 仮に、株主の総会参与権に基づく株主総会開催の差止請求権を観念する余地があるとしても、本件では、次のとおり、事前登録制の採用には合理性が認められるから、債権者らの差止請求権は認められない。
ア 令和4年6月現在、新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数は、感染拡大のピーク時を下回っており、静岡県下においても、政府による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は発令されていないものの、新規陽性者は未だ途絶えることはなく、同月10日から同月16日までの新規陽性者数は、1日平均約275人となっている(甲19)。感染拡大のピーク時に比べると新規陽性者数が抑えられているとはいえ、今なお新型コロナウイルス感染症に感染する危険性を無視できる段階には至っていない。また、新型コロナウイルス感染症の流行下における株主総会の開催について、経済産業省及び法務省が令和2年4月2日付けで作成した「株主総会運営に係るQ&A」では、本件株主総会と同様の事前登録制を採用することが許容されているところ(乙7)、現在まで上記Q&Aに示された見解は変更されていない。さらに、令和3年6月の第210期定時株主総会においては、議事の最中に出席した株主が大声で不規則発言をしたり、議事の進行役を務める債務者Y2がいた会場前方の演台に複数の株主が係員の制止を無視して詰め寄る場面が散見されたりするなど(乙2)、飛沫感染等のリスクが懸念される状況が生じていたものである。
そうすると、債権者らが指摘するように、沼津市の他の企業では、事前登録制を採用せずに株主総会を開催している事実があることを踏まえても、現時点で、不特定多数の株主が債務者会社の定時株主総会に全国から集まる際に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止という公益目的のために出席する株主数を一定数に限定し、かつ、株主間の公平性を担保するために、事前登録の希望者が会場に設置する座席数を超える場合には事前登録者から抽選により出席者を選定するという事前登録制を採用することは、やむを得ないものであり、これが合理性を欠くものであるとは認められない。
なお、債権者らは、コロナ禍における令和3年6月開催の定時株主総会においては、事前登録制を採用していなかったことを指摘するが、前記のとおり、当該株主総会では来場希望者全員が入場できなかったから、本件株主総会において、あらかじめ出席者を選定しておく事前登録制を採用したことには合理的理由がある。
イ また、債務者会社の定款では、株主総会は沼津市で開催すると規定されているところ(甲1)、コロナ禍で開催された令和2年以降の定時株主総会の出席者数は、令和2年が183名、令和3年が248名であったこと、沼津市内で本件会場のような大規模集会場を確保することは容易でないこと、債務者会社では、株主総会の当日、新型コロナウイルス感染症の感染リスクに留意しつつ、多数の株主を適切に入場又は退場させるため、相当数の人員を各所に配置することも必要となること、さらに、本件会場の運営会社では、「静岡県 まん延防止等重点措置解除後の当面の対応(令和4年3月18日)」に基づき、当面の間、催事場人数を、5000人以下かつ各施設の収容定員の100%以下(大声なし)または50%以下(大声あり)の人数とする措置を継続するとともに、感染リスクを軽減するため、上記制限の範囲内であっても主催者が自主的に制限を設けることを要請している状況にあること(甲10-3)などからすると、本件株主総会の開催場所として本件会場を採用した上で、本件株主総会に出席できる人員数(株主及び債務者会社関係者等)を絞り、結果として、出席することができる株主数が206名に限定されることもやむを得ないものといわざるを得ない。
ウ したがって、本件株主総会の開催に関し、株主数を206名に限定したうえ事前登録制を採用したことには合理性が認められるから、この点においても、債権者らの主位的申立ては理由がない。」
裁判所は、事前登録抽選制の適法性を認めていただけたわけですが、5類以降も同様に適法といえるかについては問題とされるところです。
金融法務事情の解説にも、「実務上は、提案株主を含め実際の出席希望株主数を合理的に予測し、出席可能数を超えることが予想されるのであれば、通信設備で接続された複数の会場の設置を検討すること等が望ましい対応と考える」と記載されています。
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