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2023年5月20日 (土)

【労働・労災】 懲戒免職処分に先行する自宅待機の間、市職員が公法上の給料等請求権を有しているとされた事例 令和2年10月6日付大津地裁判決

 判例時報No2548号で掲載された大津地裁令和2年10月6日判決です。

 解説によれば、「本判決は、法律や条例上の根拠を有しない無給の自宅待機命令がされたというやや特殊な事案であるが、行政実務における取扱いに際して注意喚起をするという意味でも参考になる事例であると思われるので、ここに紹介する次第である」と説明されています。以下、判決文をみてみたいと思います。

第3 当裁判所の判断
 1 平成30年3月(有給休暇期間)分の管理職手当について
  (1)証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成30年3月はその全日数にわたって年次有給休暇を取得したものと扱われていたこと,および,原告は,遅くとも同年4月10日付けの人事課長作成の事務連絡を受領するまでにその取扱いを認識したが,何ら異を唱えるなどしていないことが認められる。これらの事情からすれば,原告は,上記の年次有給休暇の取得をする黙示の意思表示をしていたと推認される。そうすると,被告が,平成30年3月分の管理職手当を支給しなかったことは,前提事実(6)イの定めに従うものとして相当である。
  (2)この点,原告は,前記第2の3(1)のとおり主張するが,その主張が採用できないことは上記(1)で認定説示したとおりである。
 2 平成30年4月分以降の給料等について
 (1)給料及び地域手当について
   ア 被告は,平成30年4月以降,原告は勤務をしていないから,給料を支給する理由がない旨主張する。
     しかし,証拠(甲1,2,4)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,前提事実(3)のような内容で本件自宅待機命令が出されたことを踏まえ,同命令に従った自宅待機をするとともに,地方公務員の兼業禁止規定に従い,他の仕事に就くことをせずに過ごしていたことが認められる。このような場合,原告は,被告の服務規律に従い,被告がした職務命令に従った対応をしているのであるから,原告と被告の任用関係に基づく労務の提供をしたと認めるのが相当であり,仮に,原告が具体的な労務の提供をしていないとしても,それは被告が自宅待機中になし得る労務を原告に与えなかった結果にすぎないというべきである。
     したがって,被告の上記主張は採用することができず,原告は,被告に対し,平成30年4月以降,別紙「給料」欄記載の金額の給料請求権を有していると認められる。そして,前提事実(6)ウの事実及び弁論の全趣旨からすれば,当該給料を前提とした場合,原告に支給されるべき地域手当は,別紙「地域手当」欄記載の金額となり,原告は,同月以降,同額の地域手当請求権を有していると認められる。
   イ ところで,被告は,本件においては,前記第2の2(2)ア(イ)に摘示したように,緊急にして合理的な理由に基づき本件自宅待機命令を出したのであるから,被告は原告に対する給料等支払義務を免れる旨の主張もし,当時,本件不正行為を巡る問題が社会に与えた影響が大きかったことを示す新聞記事の写し(乙5,6。各枝番号を含み,以下同じ。)を提出する。
     しかしながら,本件自宅待機命令が,原告の被告に対する給料請求権を失わせる効果をもたらすものというのであれば,それは原告に対する不利益処分として,地方公務員法29条4項に従って,法律や条例で定めなければならないのであるが,職員が無給となる自宅待機命令について定めた法律や条例上の根拠がないことは前提事実(3)のとおりである。法律や条例上の根拠がないまま,事実上,懲戒処分と同様の効果をもたらす措置を講じることは許されず,そのことは,被告が指摘するように本件不正行為を巡る社会的影響が大きかったという事情があったことによって左右されるものといえない。そして,他に,被告の原告に対する給料等支払義務が減免されることを正当化させる事情は見当たらない。
  したがって,被告の上記主張は,採用することができない。


2)管理職手当について
   被告は,平成30年4月以降,原告は勤務をしていないから,管理職手当を支給する理由がない旨主張する。
   しかし,原告が,被告の服務規律に従い,被告がした職務命令に従って任用関係に基づく労務の提供をしたと認めるのが相当であることは,上記(1)アで認定説示したとおりである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。
   そして,原告が,当時,総務課長の地位にあったところ(前提事実(1)),平成30年4月以降,原告に対する降格処分等がされたという証拠はない。以上を前提に,前提事実(6)イの事実及び弁論の全趣旨からすれば,原告に支給されるべき管理職手当は,別紙「管理職手当」欄記載の金額となり,原告は,同月以降,同額の管理職手当請求権を有していると認められる。


(3)勤勉手当について
   証拠(乙2ないし6)及び弁論の全趣旨によれば,被告における勤勉手当は,勤勉手当基礎額に,任命権者が条例及び規則所定の範囲で定める成績率を乗じた金額が支給されること,原告がした本件不正行為の内容等を踏まえ,任命権者である市長は,原告の成績率をゼロと定めたことが認められる。
   この点,原告は,前記第2の3(2)ウのとおり,原告が自宅待機という労務の提供をした以上,成績率をゼロと定めることが許されない旨の主張をする。しかし,本件不正行為が,公正な選挙を妨げ,民主主義の根幹を揺るがす犯罪行為であり,原告が管理職員でありながら本件不正行為を行ったことからすれば,任命権者である市長がした上記の成績率の判断が,裁量権の逸脱ないし濫用に当たるということはできない。
   したがって,原告が,平成30年4月以降,勤勉手当請求権を有していると認めることはできない

 3 小括
   以上によれば,原告は,平成30年2月以降,本件懲戒免職処分を受けるまでの間,別紙の「給与」欄中「管理職手当」欄の平成30年3月分,及び,「勤勉手当」欄記載の各金額を除く給料及び各手当の請求権として837万6984円を有していると認められる。」

 しっかりと、条例を作っておく必要があるようですね😅 

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