【金融・企業法務】 買収防衛策として導入発動された新株予約権の無償割当てが、相当性を欠くものとして、その仮の差止めが認められた事例
金融法務事情NO2209号で掲載された仮処分命令認可決定に対する保全抗告事件です。
判例秘書が事案の概要などについて解説されていました。
「1 事案の概要
(1)本件は、上場会社である債務者の株主である債権者(当時の持株比率7.01%)が、買収防衛策として導入された差別的行使条件及び取得条項が付された新株予約権の無償割当て(「本件新株予約権無償割当て」という。)が、①株主平等原則に反する、②著しく不公正な方法によるものである(以下単に「不公正発行」という。)として会社法247条1号及び2号の類推適用により、その仮の差止めを求める事案である(以下「本件申立て」という。)。
(2)大阪地方裁判所が、本件申立てを認容する旨の決定をしたところ(仮処分決定:大阪地決令4.7.1判例秘書L07750621)、債務者は、これに対して保全異議の申立てを行ったが、同裁判所は、仮処分決定を認可する旨の決定(保全異議決定:大阪地決令4.7.11判例秘書L07750622)をした。
債務者は、保全異議決定を不服として、大阪高等裁判所に保全抗告をしたが、同抗告は棄却された(抗告審決定。以下、上記各決定と併せて「本件各決定」という。)。
なお、債務者は、抗告審決定について許可抗告を申し立て、これが許可されたが、最高裁判所は、同抗告を棄却したため、本件新株予約権無償割当ては中止された。
(3)後記6でもみるように、近年、本件と同様に買収防衛策として導入された新株予約権の無償割当ての有効性が問題となる裁判例が散見されるところ、本件の特徴的な点としては、①株式の取得方法が市場内買付けによるものであること、②複数の投資主体による株式取得以外の方法を広く含む行為に対する買収防衛策の導入を図るものであること、③買収防衛策の導入に先立って行われた臨時株主総会において現経営陣の取締役解任の議案が提出され、これが僅差で否決されたこと、④買収防衛策の導入について株主意思を確認する株主総会が開催され、その導入についていわゆる勧告的決議として普通決議がされていること(なお、その得票差も僅差であった。)、⑤仮処分決定を受けて、対象会社によって買収防衛策の一部が撤回、見直されたこと、⑥独立委員会の勧告を受けて導入された本件新株予約権の無償割当てが買収防衛策としての相当性を欠くものとして、著しく不公正なものである旨判断され、かかる結論が許可抗告審においても維持されたことなどを挙げることができる。」
あれ、基本的に金融法務事情の解説と同じじゃね。
「2 本件の争点及び本件各決定の概要
本件の争点は、①当該買収防衛策導入以降には債務者(保全異議申立人、保全抗告人、許可抗告人)の発行する株式を取得しておらず、その意向もない旨の表明をしている債権者(申立人、保全異議相手方、保全抗告相手方、許可抗告相手方)に対して当該買収防衛策が適用されるか否か、②本件新株予約権の無償割当てが不公正な方法によるものか否か(不公正発行該当性)、③本件新株予約権の無償割当てが株主平等の原則に反するものか否かである。
仮処分決定は、上記①及び②についてこれを肯定し(③については判断するまでもなく本件申立てを認容している。)、保全異議決定もこれらを肯定した。
抗告審決定は、後記5の判断を付加したほかは、仮処分決定をおおむね引用して、上記判断を是認し、抗告人の保全抗告を棄却した。」
各裁判所の判断を簡単に説明していただけています。なお、仮処分決定には、以前の田舎弁護士が生活している裁判所の元支部長が関与されていますね😅
「4 仮処分決定及び保全異議決定の要旨
(1)本件対応方針が債権者に適用されるか否かについて
仮処分決定は、債権者及びその関係者の役員の兼任関係、債務者株式の取得時期、取得株式数及びこれらの者が債権者による委任状勧誘に応じていることなどから、債権者とその他関係者との間で共同協調行為(大規模買付行為等)があるものと認定した。
上記認定においては、本件対応方針で定められた共同協調行為の判断要素に沿ったものかどうかという観点から考察されている。
(2)不公正発行該当性について
ア 本件対応方針及びその具体化である本件対抗措置は、複数の株主による共同協調行為に対する買収防衛策であるが、債権者に対する予期せぬ不利益や不意打ちとなる恐れがあることを指摘しつつも、このような複数の株主による経営支配権の取得を目的とする行為も買収防衛策の対象とすることは許容されるとする。
そして、買収防衛策は、企業価値ひいては株主共同利益の維持の必要性がある場合にはじめて許容されるものであるから、現経営陣の経営支配権維持のための場合には、これを正当化する特段の事情のない限り、不公正発行に該当するものとし、その判断については、現経営陣と買収者との間に経営支配権を巡る争いがある場合には、上記株主共同利益のために対応策を導入する必要があり、かつ、そのための手段として差別的行使条件及び取得条項が付された新株予約権の無償割当てを行うことが買収者の受ける不利益の内容及び程度、不利益を受ける買収者が撤退措置を採ることの可否及びその内容等に照らして相当といえるときには、不公正発行に該当しないとする。
イ そして、臨時株主総会における買収者である債権者と現経営陣との対応、委任状勧誘を行っていたことから、会社支配権の争いの存在を肯定し、その程度についても、上記総会における決議が僅差で可決されたものであったことから現経営陣において会社支配権を喪失する現実的な危険性が差し迫ったものとして存在し、現経営陣においてもこれを認識したものと認定されている。
ウ 次に、買収防衛策の導入の必要性については、債権者の株式取得の方法が市場内買付けによるものであり、金商法で定められた法定の提出期限を徒過して大量保有報告書を提出している上、債権者が目指す債務者の経営方針として明確なものが示されていたとは認めがたいことに加えて、本件対抗措置の目的も合理的であることや本件株主意思確認総会における決議の存在なども考慮され、株主共同利益の維持のためのものとしてこれが肯定されている。
エ そして、本件対応方針及び本件対抗措置の相当性については、これらには買収者の不利益の回避を意図した設計がされているとしつつも、本件の事実関係に照らすと、債権者からすれば撤回方法についての明確な認識を持つことが困難であったこと、仮処分決定における審理の過程で債務者が示した撤回方法が、株主権の本質的内容である議決権などの共益権が大幅に、かつ、長期間にわたって制限されるものであり、譲渡までも禁じられており、株主共同利益の保護のために必要な程度を大きく逸脱し、債権者関係者が上記撤回方法を許容する見込みは極めて少ないとして、大規模買付行為等の撤回方法が実質的に閉ざされているものと評価されている。さらに、債権者グループを非適格者とする認定(上記3(6))についても、債権者の現組合員以外の株主らについては共同協調行為が認められず、これらの株主はいずれも臨時株主総会において現経営陣の解任に賛同したものであり、その大半が非適格者と認定されているとして、現経営陣による恣意的判断の可能性が排除できないとされ、そのような恣意的判断の排除のために設置された独立委員会による勧告の内容も不明であるとして、これらを総合的にみると、手段としての相当性を欠くものとしている。
オ そして、本件においては、上記特段の事情も認められないとして、不公正発行に該当するものとされている。」
現経営陣の支配権維持のためは、原則として不公正発行に該当するとして、そうではない特段の事情はないと判断されています😅
「5 抗告審決定の要旨
(1)抗告審決定は、上記4でみた仮処分決定をおおむね引用し、次の各判断を付加して、いずれも抗告人(債務者)の主張を退けている。
(2)相手方(債権者)に本件対応方針が適用されるか否かについては、臨時株主総会において委任状勧誘を行っていたことから、共同して議決権を行使するとの合意を得られる株主を見つけようとしていたとして少なくとも「共同協調行為を行おうとする者」に該当するとした。
(3)不公正発行該当性について、本件株主意思確認総会において、現経営陣と相手方関係者のどちらに経営を委ねるべきかという点について株主の意思が示されたといえ、本件対抗措置には相当性があるとの主張に対して、同総会においては上記の観点から株主意思を問うものになっていたといえるものの、抗告人の議案に賛成しなければ非適格者と認定される懸念を生じさせるもので、実際に一部の株主はそのような懸念を表明していたことに加え、上記議案がかなりの僅差で可決されたことをもって、株主らが真に現経営陣を支持したか疑問が残るとしている。
また、撤回方法及び非適格者の範囲の見直しによって本件対抗措置の相当性が確保されたとする主張に対しては、そもそも共同協調行為につきいかなる条件が揃えば撤回されたものと扱うのか十分に検討していたか疑わしく、その方法も相当なものといえず、再度提示された撤回方法も、そのような見直しをすること自体相手方への配慮が十分でなかったことを示すものである上、その内容も合理性があるか疑問があるとして、上記相当性が確保されたということはできないとされている。
その他、抗告人の相当性の判断を客観的にすべきとする主張、独立委員会が有効に機能していたとする主張、今後の本件対抗措置の発動中止の可能性があるなどの各主張がいずれも排斥されている。」
独立委員会についても有効に機能していたという主張が排斥されています😖
なかなか厳しい決定例です。判例秘書か、金融法務事情でご確認下さい。
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