11月24日、四国生産性本部企業・企業会計研究会第4例会 企業が持続的に成長していくためのグループ事業再編(新日本監査法人系のコンサル)を受講しました。
(来島海峡大橋)
1 事業再編の状況
〇 日本企業においては、会社(グループ)単位での合併・買収や事業買収の増加に比べて、事業の「切出し」に対しては消極的な姿勢が続いている。
〇 日本企業は、欧米企業に比べると、低収益事業を抱え込む傾向があり、企業全体(グループ)の収益性が低くなる一因という面もある。
〇 事業セグメント数が一定数を超えた場合、これに比例してPER(株価収益率)が低くなる傾向にあり、経営資源の選択と集中について検討する余地がみれとれる。※マネジメントの限界 ※不採算事業を切り離し、中核事業に経営資源を集中することが企業価値につながる。
〇 不採算事業のテコ入れやイノベーションの創出を後回しにしてきたためか、米国に比べ日本では企業年齢が古くなるほど、総資産利益率(ROA)が低下する傾向がある。※日本企業は長期的な視点という名の下に大胆な事業転換への重要な意思決定を後回しにしてきた可能性。
〇 社長・CEO向けのアンケートの結果からは、事業売却や撤退に関する基準が明確ではなく、検討に際して各種調整が難航することが課題としてあげられている。
〇 社外取締役向けのアンケートの結果からは、事業売却や撤退に関する基準が明確ではないことに加え、取締役会や執行レベルでの議論が不足しているとの指摘があつた。
〇 企業向けアンケートでは、基準・プロセスの不明確さに加え、売却等による効果の定量化や、社内の抵抗感等が課題として挙げられた。
〇 事業の撤回・売却についての定量的な基準を定めている企業においては、利益指標、売上指標、キャッシュフロー指標等が主に採用されていると見受けられる
〇 事業セグメントの評価については、売上・利益の絶対額が重視されており、資本効率性に関する指標を重視する企業は少数に留まっている。
〇 企業と投資家が重要する経営指標を比較した場合、企業は売上や利益等の伸びを重視する一方、投資家はROIC(投下資本利益率)や資本コスト等の資本効率を重視している。※ROE重視は共通しているが。。。
〇 企業と投資家において、資本効率や資本コストに関する意識に乖離があると考えられる。
〇 日本企業の役員報酬の業績評価指標としては、利益指標等が重視されており、利益率や資本効率は劣後している状況である。
〇 役員報酬の業績指標を国際比較した場合、英米は中長期インセンティブには資本効率を重視する一方、日本は短期インセンティブと同様に利益指標を重視する傾向にある。
〇 社外取締役と投資家との積極的なコミニケーションは、現時点においては限定的である。※ほとんど参加せず
企業向けアンケートでは、自社の事業に対する理解の十分性や対話に関する負担の度合いから、社外取締役と投資家との対話を推進することに抵抗感があるとみてとれる。
現在、株主との対話は行ってはいないが、求められれば対話を行ってもよいと考えている社外役員は少なくない
投資家との対話については、投資家と企業における期待値のずれが大きく、今後の変化が期待されている。
〇 事業再編研究会においては、従業員の問題に関する認識についても言及されている
〇 事業再編のための仕組み・基準が不十分であること、経営者の意識・評価制度等により、事業再編は十分に実施されていない。
〇 環境変化・有事の際にも持続的に成長するためには、経営資源の集中・企業価値の向上に資する事業再編(事業ポートフォリオマネジメント)が必要になる。
2 事業評価の仕組みの構築と運用
〇 日本企業の持続的成長の実現に向けて、経済産業省から2022年7月末に事業再編実務指針が公表されており、その位置付けと目的は以下のとおり。※コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)、グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)、社外取締役の在り方に関する実務指針、事業再編実務指針
事業再生実務指針 企業の持続的成長に向けた事業再編を促進するため、経営陣・取締役会・投資家のレイヤーを通じコーポレートガバナンスを有効的に機能させる具体的な方策を示した指針
〇 事業再編への取組は、①なぜ今必要か、②対象事業は誰が持つべきか、③経営目標をどのようにし、経営者にどのように還元するかがポイントとなる。(事業再編への取組みに関する事業再編実務指針におけるポイント)
〇 日本企業における事業再編の事例紹介 日立製作所 武田薬品工業 オムロン等
〇 持続的な成長の実現に向けて、特に事業の切り出しについて消極的になる要因に対して、3つのレイヤーを通じた事業再編の促進を図る必要がある。経営陣 取締役会・社外取締役 投資家
〇 事業評価の実施体制として、基本方針の策定及び役割を明確にする必要がある
※経営者の他にもCFOやコーポレート部門が主導する実施体制が必要
〇 経営者には事業ポートフォリオ最適化のための仕組みづくりと「ベストオーナー」がどうかの目利きが求められ、結果として必要であれば事業再編が進むことになる
〇 持続的な実現に向け、事業ポートフォリオマネジメントを適切に行うためには、事業ごとの資本収益性と成長性を総合的に把握することが求められる。※資本収益性と成長性を軸とした4象限フレームワーク
C(成熟事業)⇒D(低収益・低成長の旧来事業)
Cで生み出された資金を収益性、成長性が低い部門の温存のための投資や補填に充てることは、企業の持続的な成長の妨げとなりうることに留意
〇 M&A等の投資採算の判断等に加重平均資本コストを含めた、各資本収益性に関する指標の整理
〇 ROICの定義とその分解
※株主と債権者からの調達コストに対するリターン(収益力)を測定する指標
※ROICを適切に分解し、各部門のKPIを設定することで各部門の取り組み意識が向上する
※事業評価の指標としてROICを導入する場合、事業ごとにBSを作成する必要がある
〇 事業セグメントごとのBSの作成方法 ※資産レバレッジ、ベンチマーク、実績配賦
(大島自然研究路)
3 経営目標や業績評価指標の設定
〇 経営目標や経営陣の業績評価指標については、経営戦略等も踏まえて体系的で一貫したものとなるように設定する必要がある
※企業価値 資本収益性(ROIC ROE) × 成長性(売上高成長率、利益成長率、投下資本の増加率 )
※市場価値 TSR(株主総利回り)
〇 他社事例では、事業セグメントごとに目標を設定しており、さらに財務戦略としてTSRについても記載している
〇 経営陣の報酬設計については、中長期的な企業価値の向上に資する事業再編に対し、適切なインセンティブが働くよう、長期インセンティブ報酬を高めていくことが課題となる。
(燧灘)
4 取締役の役割、投資家との対話
〇 取締役会・社外取締役は事業ポートフォリオに関して積極的な関与が求められている。投資家に対して事業ポートフォリオに関する具体的な説明が求められている。
〇 事業ポートフォリオに関する基本方針の決定及びその方針に基づくモニタリングは取締役会の役割であり、社外役員には当該モニタリング機能の中核を担うことが期待されている
※他社事例では、事業ポートフォリオに関して様々な開示がされている
〇 経営陣と投資家の建設的な対話は促進されるべきであり、これらをより有意義なものにするために適切な情報開示が期待されている
〇 事業ポートフォリオに関し、株主から合理的根拠に基づく真摯な提案を受けた場合、企業は、企業価値を最大化するという観点から適切な検討・対応を行うことが望ましい
※株主提案に対する対応として、ストラテジックレビューの実施及び外部アドバイザーを起用した事例がある。
〇 アクティブ運用期間投資家の株主提案・意見について、パッシブ運用等の機関投資家が中長期的な企業価値の向上の観点からその是非を判断する相互補完関係が合理的である。
5 実行段階における実務上の工夫
〇 事業の切り出しを実行する際には、経営陣の姿勢、労働組合や従業員との調整、適切なスキームの選択が重要な要素となる。
〇 切りだし方法の選択にあたっては、手法ごとの特徴を踏まえ、会社や対象事業等の状況に応じて適切なものを選択することが求められる。
〇 スピンオフによる効果として、経営の独立、資本の独立、上場の独立による企業価値の向上が期待できる
※国内のスピンオフとしては、コシダカHDの事例がある。コシダカHDでは、カラオケ事業を運営するコシダカとフィットネス事業を運営するカーブスジャパンなどを傘下にもつていた。2020年に祖業であるカラオケ事業と成長戦略や中期経営ビジョンの方向性が異なるフィットネス事業のスピンオフと実施している。
ふむ。ふむ。☺
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