判例時報No2497号で紹介された東京高裁令和2年7月10日判決です。
事案は、外国法人であるXが、本邦の株式市場で相場操縦違反行為をしたとして、金商法により金融庁長官から課徴金納付命令を受けたのに対して、その取消を求めた事案です。
(笠松山・観音堂)
処分の対象となった違反行為は、Xが、その所属する法人グループの別法人であるAに資産運用を委ねたところ、Aが雇用する複数のトレーダーが、Xの資産運用にあたって意思を連絡して行ったとされた一連の行為であった。ここで、トレーダーらはXの計算で株式取引を行っていたが、XとAとは姉妹会社の関係にあるものの別法人であり、トレーダーらとXとの間には直接の雇用関係や指揮監督関係はなかった。一方、Xの代表者は、Aの唯一の取締役であり、両会社の全株式を保有する信託の唯一の受益者でもあった。
このような事実関係のもとで、本件では、Xが金商法174条の2第1項の違反者となり得るかどうかが問題となりました。
第1審は、一般論として、法人が金商法174条の1第1項の違反者となるためには、当該法人の役員、従業員もしくは当該法人による指揮監督、雇用管理等によりこれらと同視し得る者又は当該法人から具体的な指示を受けた者が、当該法人の計算で相場操縦違反行為を行ったことを要すると述べた上で、Xがトレーダーらを指揮監督したり、雇用を管理したり、その採否を決定したという実態はないと認定し、トレーダーらをXの従業員と同視することはできないから、Xは同項の違反者とならないと判断して、Xの請求を認容しました。
高裁は、一般論として、ある法人と形式的には別法人であっても、当該法人と実質的に同一体と言うべき法人の役職員が、当該法人のために金商法159条2項が禁止する行為をした場合には、当該法人が金商法174条の2第1項の違反者となると述べた上で、
本件においては、AはXが属する法人グループの資産運用としての有価証券取引のみを行っており、その雇用するトレーダーらの監督もXの完全子会社が行っているという実態を認定し、Aの運営はそれ自体独立して行われているのではなく、法人グループ全体で一括して行われていると判断し、XとAとは実質的に同一体であるとして、トレーダーらの行為について、Xが同項の違反者となると判断しました。
最高裁に上告・上告受理申立てがなされています。
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