最近、再び、遺産分割協議と否認権との関係が議論されるようになっています。その際には、東京地裁平成27年3月17日付判決の事例が取り上げられることが多いです。
(笠松山・山頂)
事実の経過は、以下のとおりです。
平成22年1月9日、被相続人Bの長男Yと次男Aは、以下の内容で本件遺産分割協議を行いました。
被相続人Bの遺産は、土地63筆、建物、D社の株式、預貯金及び出資金で、その価額は約2億3700万円である。
本件遺産のうち、Aが宅地1筆とD社株式を取得し、Yがその余の遺産全てを取得するとともに、相続債務および葬儀費用を負担する。
Yの取得額は2億1100万円、Aの取得額は2600万円程であり、Yの取得額のうち法定相続分を超える部分は約9200万円となる。
平成22年5月頃、Aは弁護士に債務整理を委任し、同月6日頃、同弁護士から債権者らに受任通知が送付され、Aは支払いを停止した。
平成23年6月15日、Aについて破産手続開始決定がなされ、Xが破産管財人に選任された。
管財人Xは、AとYとの間でなされた遺産分割協議のうち、Yが法定相続分を超えて遺産を取得するものと合意された部分が、Aの支払停止前6ヶ月以内にした無償行為にあたるとして、破産法160条3項に基づく否認権を行使するとともに、同法168条4項に基づき本件超過取得分相当額9200万円の価値償還を求めたという事案です。
なかなか、管財人やるな~
第1審判決は、無償性を認めるには、当該遺産分割において考慮された個別具体的な事情を検討し、これらを総合的に考慮しても当該遺産分割が共同相続人間の実質的公平を実現するものとはいえないと認められた場合であることが必要であるとして、その上で、遺産分割協議において考慮された個別事情を検討し、Yに法的相続分を超える財産を取得させる遺産分割協議をすることは直ちに公平でないとはいえないので、本件超過取得部分が無償行為として否認の対象となるとは認めがたいと判断しました。
第2審の東京高裁平成27年11月9日判決は、さらに進めて、
相続人中のある者がその法定相続分又は具体的相続分を超える遺産を取得する合意をする行為を当然に贈与と同様の無償行為と評価することはできず、遺産分割協議は、原則として破産法160条3項の無償行為には当たらない。
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もっとも、遺産分割協議が、その基準に定める民法906条が掲げる事情とは無関係に行われ、遺産分割の形式はあつても、当該遺産分割に仮託してなされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときには、破産法160条3項の無償行為否認の対象に当たりうる場合もないとはいえない。
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本件遺産分割協議はそのような特段の事情があることは困難である
また、本件遺産が事実上Aの財産を構成し、一般債権者もそこから弁済を受けることを合理的に期待し得る状態にあったとは評価することができないことを挙げて、
本件遺産分割協議は、破産法160条3項の無償行為にあたらないと結論付けました。
第1審も第2審も結論は一緒ですが、それに至る判断基準に差異があるように感じられました。
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