【行政】 岩沼市議出席停止処分事件 最高裁大判令和2年11月25日
判例時報No2476号で紹介された最高裁大判令和2年11月25日判決です。
3 原審は,普通地方公共団体の議会の議員に対する地方自治法135条1項3号所定の出席停止の懲罰の適否は,議員報酬の減額を伴う場合に は司法審査の対象となり,本件処分の取消し及び議員報酬の支払を求める訴えは適法であるとして,これを不適法とした第1審判決を取り消し,本件を第1審に差し戻した。
4 所論は,原審の判断は,普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は一律に司法審査の対象とならないとした最高裁昭和34年(オ)第10号同35年10月19日大法廷判決・民集14巻12号2633頁に反するというものである。
5(1) 普通地方公共団体の議会は,地方自治法並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し,議決により懲罰を科することができる(同法134条1項)ところ,懲罰の種類及び手続は法定されている(同法135条)。これらの規定等に照らすと,出席停止の懲罰を科された議員がその取消しを求める訴えは,法令の規定に基づく処分の取消しを求めるものであって,その性質上,法令の適用によって終局的に解決し得るものというべきである。
(2)ア 憲法は,地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則として,その施策を住民の意思に基づいて行うべきものとするいわゆる住民自治の原則を採用しており,普通地方公共団体の議会は,憲法にその設置の根拠を有する議事機関として,住民の代表である議員により構成され,所定の重要事項について当該地方公共団体の意思を決定するなどの権能を有する。そして,議会の運営に関する事項については,議事機関としての自主的かつ円滑な運営を確保すべく,その性質上,議会の自律的な権能が尊重されるべきであるところ,議員に対する懲罰は,会議体としての議会内の秩序を保持し,もってその運営を円滑にすることを目的として科されるものであり,その権能は上記の自律的な権能の一内容を構成する。
イ 他方,普通地方公共団体の議会の議員は,当該普通地方公共団体の区域内に住所を有する者の投票により選挙され(憲法93条2項,地方自治法11条,17条,18条),議会に議案を提出することができ(同法112条),議会の議事については,特別の定めがある場合を除き,出席議員の過半数でこれを決することができる(同法116条)。そして,議会は,条例を設け又は改廃すること,予算を定めること,所定の契約を締結すること等の事件を議決しなければならない(同法96条)ほか,当該普通地方公共団体の事務の管理,議決の執行及び出納を検査す
ることができ,同事務に関する調査を行うことができる(同法98条,100条)。議員は,憲法上の住民自治の原則を具現化するため,議会が行う上記の各事項等について,議事に参与し,議決に加わるなどして,住民の代表としてその意思を当該普通地方公共団体の意思決定に反映させるべく活動する責務を負うものである。
ウ 出席停止の懲罰は,上記の責務を負う公選の議員に対し,議会がその権能において科する処分であり,これが科されると,当該議員はその期間,会議及び委員会への出席が停止され,議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず,住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなる。このような出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと,これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして,その適否が専ら議会の自主的,自律的な解決に委ねられるべきであるということはできな
い。
そうすると,出席停止の懲罰は,議会の自律的な権能に基づいてされたものとして,議会に一定の裁量が認められるべきであるものの,裁判所は,常にその適否を判断することができるというべきである。
(3) したがって,普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は,司法審査の対象となるというべきである。
これと異なる趣旨をいう所論引用の当裁判所大法廷昭和35年10月19日判決その他の当裁判所の判例は,いずれも変更すべきである。
6 以上によれば,市議会の議員である被上告人に対する出席停止の懲罰である本件処分の適否は司法審査の対象となるから,本件訴えのうち,本件処分の取消しを求める部分は適法であり,議員報酬の支払を求める部分も当然に適法である。そうすると,本件訴えが適法であるとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
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