判例時報No2459号で紹介された東京高裁令和元年5月16日判決です。解説によれば、「本件は、社会的に問題となった上場企業による長期間にわたる巨額の損失隠しとして行われた様々な行為、違法配当並びに企業に罰金及び課徴金を科せられたこと等について、当時の取締役らの責任が問われた事件である。本事案の中心となる損失分離スキームの構築・維持をめぐる様々な事実関係がまとめられる結果となったという点で一読の価値があるとともに、取締役らの責任の有無、損害及び因果関係の評価等についての重要な論点を含むものであり、実務上参考になる裁判例である。」と解説されています。
(朝倉・野々瀬古墳)
① 上場会社が巨額の金融資産の損失の計上を避けるために、ファンドに当該金融資産を簿価で買い取らせるなどして損失を分離するスキームを構築・維持したことについて、取締役の善管注意義務及び忠実義務違反は認められるが、上場会社に損害の発生が認められないとされた事例
② 損失分離スキームの発覚を防ぐことを目的として、疑惑を指摘した代表取締役を解職した取締役らの上場会社に対する損害賠償責任に関して、同解職から生じた上場会社の信用毀損による損害について、民事訴訟法248条により相当な損害額が認定された事例
③ 分配可能額を超える剰余金の配当等について会社法462条1項に基づく取締役に対する金銭支払請求が認められるとともに、別件訴訟において成立した和解により上場会社に支払われた金額を控除することが認められた事例
④ 有価証券報告書等の虚偽記載について上場会社が支払った課徴金及び罰金相当額について、当該有価証券報告書等の作成提出に関与した取締役の損害賠償責任は認められたが、作成提出時にはすでに退任していた取締役の善管注意義務違反と同損害との因果関係は認められないとされた事例
オリンパス事件って、大きくマスコミで取り上げられたので、まだ覚えておられる方もいるでしょう。
平成24年に提訴されているようですので、高裁の判決がでるまで、7年くらいかかっているんですね💦
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