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2020年8月 6日 (木)

【金融・企業法務】 LPガス供給業者の切替営業が、同業者に対する不法行為ないし不公平な取引方法としての「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)に当たらないとされた事例 東京地裁平成30年5月10日判決

 判例タイムズNo1473号で紹介されたLPガス供給業者間でのトラブルです。会社名も記載されています。

 事件の概要は以下のとおりです。

 LPガスの供給、販売を行う株式会社である原告が、訴外会社Aの管理する賃貸用共同住宅(本件建物)に対してLPガスを供給していたところ、同じくLPガス供給事業を営む株式会社である被告Y1が、本件建物の所有者であるY2の了承の下で原告が設置したLPガス供給設備を撤去し、代わりに別のLPガス供給設備(本件供給設備)を設置するという切替工事をしたため(本件切替工事)、原告とY1・Y2との間で紛争が生じることになりました

 原告は、東京ガスエネルギー(株)、被告Y1は、日本瓦斯(株)、そして、訴外Aはレオパレス21です。

 原告は平成元年から平成5年頃までの間に、レオパレスとの間で、ガス供給に関する覚書を締結しており、本件建物は平成11年ころに完成したものですが、本来は200万円を超えるガス供給設備を代金1050円で設置して、以降、原告がLPガスを供給してきました。

 平成27年9月、被告Y1が、Y2の同意の下、本件切替工事を実施しました。

 なお、本件係争の背景には、被告Y1の積極的な切替営業にあるようです。被告Y1が平成21年から平成29年までの行った切替工事は少なくとも36件、そのうち、17件がレオパレス管理物件でした。平成27年の段階では、レオパレスは、同社の承諾のない切替工事は容認しないという方針をとっていました。

 そのため、本件建物の切替については、レオパレスは、被告Y1に抗議を行いました。

 ところが、他方で、レオパレスと被告Y1は、業務提携に関する交渉を継続していました。但し、レオパレスは、本件建物についての切替については応じられないという態度をとっておりました。

 それにもかかわらず、被告Y1は、Y2の同意を得て、切替工事を実施しました。

 他方で、平成28年2月、レオパレスとY1は業務提携に関する合意を締結した。

 そして、レオパレスは、平成28年12月以降、Y1との間で、LPガス供給契約を締結した。

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 原告は、LPガスを供給することができる独占的地位が侵害されたとして、主位的に、①被告Y1に対して、独禁法24条に基づく差止請求として、本件建物に対するLPガスの供給を中止し、本件供給設備を撤去することを求め、②被告らに対して、民法719条1項前段及び2項に基づき、連帯して、不法行為の日である本件切替工事の実施日から被告Y1が本件供給設備を撤去するまでの、1ヶ月当たり月平均利益に相当する金員の割合による損害賠償の支払いを求めたという事案です。
 裁判所は、原告が本件切替工事によって侵害されたと主張されたと主張するLPガス供給上の独占的地位については、原告とA社との間の覚書ないし本件建物についてガス供給設備工事の発注を受けてLPガスの供給を開始したことに基づく債権的なものにすぎず、当然に第三者を拘束するものではないから、本件において、被告Y1の不法行為責任が成立するためには、本件切替工事が自由競争を逸脱するような違法、不当なものであることを要するとしました。
 
 その上で、本件建物を一括して借り上げていただけで、直ちにA社が本件建物所有者である被告Y2を排してLPガス供給業者を選定、変更する権限を有していたと認めることはできず、本件切替工事もその態様や経緯にかんがみても違法、不当なものということはできない。結局、本件切替工事は、自由競争を逸脱する違法、不当なものまではいえず、これが原告に対する不法行為に該当するということはできないと判断しました。
 また、独禁法24条に基づく差し止め請求については、原告は、本件切替工事により、被告Y1が原告と本件建物の入居者とのLPガス供給取引を不当に妨害しており、これは、「競争者に対する取引妨害」に該当し、同法19条に違反する行為であると主張しました。
 
 しかし、裁判所は、本件切替工事の態様は直ちに違法性を有するものとはいえず、被告Y1による営業活動も社会的に相当性を欠くものではないことを考慮すると、本件切替工事によって原告が本件建物に対するLPガスの供給ができなくなったとしても、これをもって、被告Y1が原告の取引を「不当に妨害」(一般指定14項)したということはできないと判断しました
 
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 なお、「通達の定め」などは以下のとおりです。
 経産省は、平成9年3月19日、一般消費者などからの解除の申し出がされた場合について、液化石油ガス販売事業者は当該一般消費者等からの要求があれば原則として1週間以内に供給設備を撤去すべきこと(一週間ルール)などを定めた「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)の運用及び解釈の基準について」と題する通達を発出していたところ、その内容等に関し、平成28年3月10日、LPガス業界を巡る諸課題への対応を検討するための液化石油ガス流通ワーキンググループが開催された。
 同ワーキンググループにおいて、経産省は、LPガス業界における競争状況につき、LPガス供給業者1社当たりの平均得意先数は約2000戸であり、その内、同業他社との競争により顧客を獲得することが年間50戸、顧客を喪失することが年間30戸あり、約4%の顧客流動性がある旨報告しています。

 

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