田舎弁護士にとっては、「ミネルヴァ」という名前の法律事務所は、昔、吉野正三郎先生が創設された法律事務所の名称のことが先に頭に浮かびます。
今回、破産してしまった「東京ミネルヴァ法律事務所」というのは、テレビCMや折り込みチラシでみて、こんな派手な広告を出して、もう下火になっている過払金の集客ができるのかなと、内心不思議に思っていましたが、この事務所名を聞くたびに、吉野正三郎先生のことを思い出します。
(大三島・安神山)
司法試験受験生時代の田舎弁護士にとって、吉野先生は、中央大学法職研修室の答案練習会(答練)の出題者解説等を担当されて、まじめで気さくな大学教授というイメージしかありませんでした。
学者で当時は珍しく弁護士登録をされており、今でも記憶にありますが、吉野先生は、「弁護士って大変だよ。」、「裁判するにしても、印紙代も大きいし、クライアントにきちんと説明しておかないとトラブルになるよ。」、「でも、仕事は楽しいよ。」等を、お話されていました。
ところが、田舎弁護士も、駆け出し弁護士のころから、クレサラ事件を取り扱うようになり、吉野先生が、当時、最も問題とされていた商工ローンの大手1社の代理人をされていたことを知り、あの先生がと思い、少しショックを受けたことがあります。
その会社は、わずかの期間でしたが、田舎弁護士の地域にも営業所があり、同社を相手とする事案の依頼や相談を受けており、田舎弁護士の素朴な正義心からも、同社の姿勢には大きな疑問を抱いていたからです。
吉野先生も、弁護士会から懲戒処分を受けるなど、あの吉野先生がと思ったものです。
(大三島・宮浦)
閑話休題
このような経緯で、ミネルヴァという名前には、余りよい印象を持っておらず、今回倒産した法律事務所も「ミネルヴァ」という名前を冠しており、おそらく今後当分の間、この名称を使う法律事務所はないのではないかと思います。
ところで、倒産した法律事務所ですが、新しい代表者が引き継いだ段階で、すでに4億円という預かり金が消えていたということです。
預かり金は、弁護士会の規定で、預かり金口座で保管しなければならず、流用は許されない性質のものです。
ただ、引き継いだ段階で、そんな欠損金を知らされた後任者は、パニックに近い状態だったと思います。
本来、ミネルヴァは、知恵の神様だったと思いますが、よい知恵は浮かばなかったでしょう。
結局、負債総額が50億円と考えられない金額となっています。
今は、弁護士業界は、厳冬の時代を迎えています。
今回の不祥事は、厳冬の時代が背景にあると思います。
汚なすぎる事務所は論外ですが、素敵な場所にある素敵なオフィス、そして、たくさんのスタッフのいる法律事務所ですが、そのような事務所は、経費も莫大です。それを維持できるような仕事が受けられているのかを、弁護士になろうとする方は、入所の前には十分に確認しないと、前記の後任者のように、後で後悔してもリカバリーすることはできません。
田舎弁護士としては、現時点では、ごく普通のマチ弁の業務で、素敵な場所にある素敵なオフィス、そして、たくさんのスタッフのいる法律事務所は、維持できないと思います。
司法修習生であれば、裁判官や信頼できる弁護士から、就職される法律事務所についてのアドバイスをいただいた方がいいでしょう。
田舎弁護士のころは、法律事務所に入っても、2,3年で独立するのが当然のような風潮で、弁護士資格はプラチナ資格でしたから、独立した方が収入が大きくなりましたが、今は、そのような風潮も薄れているようです。
司法修習生は、法律事務所についての情報に必ずしも精通しているとは思えませんので、就職される場合には、十分な調査が必要です。
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