【法律その他】 文書提出命令ー公務秘密文書ー最高裁平成17年10月14日決定
最高裁平成17年10月14日決定は、いわゆる災害調査復命書が、民訴法220条4号ロの要件に該当するかどうかが争われた事案でした。

(伯方島)
決定要旨は、以下のとおりです。
一般論として、民事訴訟法220条4号ロにいう公務員の職務上の秘密を、国家公務員法100条1項についての、最高裁昭和52年12月19日決定等を引用して、実質秘であることが必要であるとしました。
さらに、「公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密であって、それが本案事件において公にされることにより、私人との信頼関係が損なわれ、公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるものも含まれると解すべきである」としております。
そして、復命書を、
調査担当者が職務上知ることができた本件事業場の安全管理体制、本件労災事故の発生状況、発生原因等のA会社にとっての私的な情報(①の情報)と、
再発防止策、行政上の措置についての調査担当者の意見、署長判決及び意見等の行政内部の意思形成過程に関する情報(②の情報)に分けるが、いずれも、4号ロの文書に該当すると判断しております。

(ロイヤルパークホテルから)
次に、4号ロにいう、その提出により公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるというためには、その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要であるとする。
そして、②の情報については、「行政内部の意思形成過程に関する情報が記載されたものであり、その記載内容に照らして、これが本案事件において提出されると、行政の自由な意思決定が阻害され、公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが具体的に存在することが明らかである」とする。
しかし、①の情報は、(ア)「本件文書には、Y会社の代表取締役や労働者から聴取した内容がそのまま記載されたり、引用されたりしているわけではなく、本件調査担当者において、他の調査結果を総合し、その判断により上記聴取内容を取捨選択して、その分析評価と一体化させたものが記載されていること」、(イ)労働安全衛生法上の調査担当者の立ち入り、質問、検査などの権限、労基署長等の、事業者、労働者等に対する、報告、出頭を命ずる権限、応じない場合の罰則の規定などにかんがみると、
「①の情報に係る部分が本案事件において提出されても、関係者の信頼を著しく損なうことになるということはできないし、以後調査担当者が労働災害に関する調査を行うに当たって関係者の協力を得ることが著しく困難になるということもできない。」、
「①の情報に係る部分が本案事件において提出されることによって公務の遂行に著しい支障が生ずるおそれが具体的に存在するということはできない」とする。
その結果、本件文書のうち①の情報に係る部分の特定等について更に審理を尽くさせるために、原決定を破棄して差し戻しました。

(伊豆・三島大社)
文書提出命令の理論と実務(第2版)P327~P328は、「文書提出を求められた公的機関は改正後法220条4号ロに該当すると主張する場合には、著しい支障のおそれのある事項と認められる事項を主張するともに、その支障の内容についても具体的なおそれが認められるだけの具体的な主張・立証が求められることになる。」と説明されています。
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