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2015年10月 7日 (水)

【金融・企業法務】 民法478条における無過失の判断と本人確認

 金融法務事情No2025号で紹介された福岡高裁平成26年12月18日判決です。

 従業員が、社長が保管していた預金通帳と届出印を窃取して、普通預金口座を引き出したというとんでもない事件ですが、会社が銀行相手に裁判を起こしたところ、第一審判決は、半分だけの取り戻しを認めたものの、第二審判決は、会社の請求を棄却したという事案です。

 解説者によれば、「両判決の結論を分けた真の要因は、特段の事情の有無を判断するにあたり、両判決が採った観点の違いにある。

 すなわち、第一審判決は、特段の事情の有無を判断するにあたり、まず、①本人確認をすべきであったかという観点と、②本人確認を試みたが確認が取れなかった場合にどう対応すべきかという観点との違いがあるとしている。

 そして、①について、口座開設支店ではなく、入出金が日常的にされていた支店でもないこと、払戻請求者が預金者の代表者でもなく、窓口職員において払戻権限を有する者として認識されていなかったということ、計290万円という高額の払戻請求であったことから、本人確認をすべきであるとし、

 ②について、名刺・免許証の提示があったこと、細かく分けて払戻請求しており経理担当者の行為としては自然なこと、払戻し後も130万円の残額があること、本人に電話確認をしようとしたことは、①において、本人確認をしなかったことを正当化するものではないとしている。

 これに対して、本判決は、①②のように観点を分けることなく、本件払戻しに関する事情を同列に取り上げ、第一審判決とは逆に、第一審判決が②について挙げた事情を重視して、本件口座の払戻請求権限を有する者として不自然な言動があったとはいえないとし、第1審判決が①について挙げた事情があっても、特段の事情があったと認めることができないとしました。

 第一審判決が本人確認について2段の観点を区別しているのは、本人確認をすることは、預金の払い戻しにおいてまずクリアーしなければならない手続きであり、これを怠れば、原則として銀行には過失があるという考え方が基礎にあるからであるように思われるとコメントされています。

 これについては、第二審判決が、「なお、犯罪における収益の移転防止に関する法律及び同法施行令上の金融機関の取引時確認義務の規定は、債権の準占有者に対する弁済の効力の有無を規律する民法478条とは趣旨・目的を異にし、それが直ちに同条適用上の弁済者の注意義務を構成するものとはいえない」と述べており、やや特殊な考え方という位置づけをしているようです。

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