【交通事故】 日本賠償科学会第61回研究会 高次脳機能障害の今日的問題ー軽度外傷性脳損傷
12月1日、東京の日大法学部3号館で、日本賠償科学会第61回研究会が開催されました。
総合テーマは、「高次脳機能障害の今日的問題ー軽度外傷性脳損傷(MTBI)」となっています。
第1部は、MTBIの医学的考察として、4人のドクターによるシンポジウムがありました。
第2部は、MTBIの医学的考察として、2人の弁護士によるシンポジウムがありました。
吉本智信医師によれば、
「これまでに報告が無かったからといって、一部の少数のMTBIの人の高次脳機能障害の原因が脳の器質的損傷である可能性は残っている。しかし、MTBIにおける高次脳機能障害の原因が器質的損傷である可能性が低いことは確か」、
「WHOはMTBIの定義から画像所見を外している。つまり、画像所見はあってもなくてもよい。そして、何らかの意識障害が定義上必須であるとしている。そのように定義された患者において、現在のところまで、脳の器質的損傷による高次脳障害が発生したという確実な証拠はないと報告していた。翻って日本では、札幌高裁の判決にあるように画像所見なく意識障害もない患者において、脳の器質的損傷による高次機能障害が発生するかどうかが裁判上の問題となっている。WHOのMTBIよりさらに軽度の外傷において、脳の器質的損傷による高次脳機能障害が発生するという意見は、少なくとも現時点では科学的ではない」
と説明されています。
他方で、先崎章教授は、
「あくまで演者の私見として、誤解を恐れずに言及すると、患者の(経済的、心情的)救済を求めるなら石橋の著作の内容にそったものになる。一方で、科学的な真実の追求を理念とし、断定できることと、断定はできずに憶測にすぎないことを正確に判別すると吉本の著作の通りとなる。それだけMTBIの診断に難しい例がある。MTBIの症状とするには疑問を抱かざるをえない、執拗にあらゆる症状を主張する例がいる一方で、本来なら救済されるべき、医学的にMTBIと診断できる例が放置されているという現状がある。」
と説明されています。
MTBIの取扱いについては、議論の対立がありますが、医学界の方でも取扱いを調整してもらいたいものです。
法学的検討では、高次脳機能障害(主として軽度外傷性脳損傷)に関する判例の検討と考察の中で、弁護士の佐野真先生が、「若干の考察」として、4つの点を指摘されていました。
第1に、精神障害についての裁判所の考え方として、「精神症状の態様、症状出現時期、症状の信憑性(詐病でないか)等を考慮し、事故を契機として症状が発現したことが明らかであれば、後遺障害として認められる。」
第2に、器質的損傷としての高次脳機能障害認定の傾向として、「事故時の意識障害がなく、MRIの画像所見も認められない場合、非器質性精神精神障害が限度。MRIの画像所見は乏しいものの、一過性ないし軽度の意識障害が認められたケースでは、顔面骨折、歯牙障害等、頭部に強い衝撃を受けたことを推認させる事実が認められると、高次脳機能障害が認定される場合がある。」
第3に、WHOの提唱した軽度外傷性脳損傷(MTBI)概念の影響については、「精神障害が器質性か非器質性かを判断するにあたり、意識障害、画像所見を必ずしも重視しない判例の出現、軽度外傷性脳損傷の該当性の問題と、高次脳機能障害の該当性の問題に混乱」、
第4に、平成23年3月4日付「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」示された考え方については、「MTBIは機能的障害に基づく定義であり、MTBIの定義に該当しても直ちに器質的脳損傷が認められるわけではない。MTBI後の精神障害は、大多数で1年以内に正常化する。それを超えて精神症状が遷延する要因としては、訴訟・補償問題など心理社会的因子が最も有力である。器質的損傷としての高次脳機能障害を判別するにあたっては、意識障害及び画像所見が重視されるべきである。」、「自賠責における高次脳機能障害認定システムの基準が、現時点で最も妥当性を有する知見として、裁判所にも浸透・定着しつつあるのではないか」
と説明されていました。
私も、MTBIが絡んだ事案については、まだわずかしか経験したことがありません(損保側としてですが・・・)。
せっかく田舎ながらも勉強しているところなので、少なくとも、常時1件くらいは受任或いはご相談を受けている状況にしておきたいです。
参加者の皆様、大変お疲れ様でした。













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