弁護士と元依頼人とのトラブル
判例タイムズNo1374号(9月1日号)で紹介された東京地裁平成24年1月30日付け判決です。
原告X(元依頼人)から、被告Y(弁護士)に対して、預り金(500万円)の返還と、名誉毀損等を理由とする損害賠償(220万円)が請求されたという事案です。
このタイトル記事を見るだけでは、最近増えている、弁護士の方に大きな問題のある事案かなあと思っていましたが、判決文を読むと必ずしもそのような事案ではないようです。
経緯は以下のとおりです。
XとXの妻との間の離婚案件を、Yが受任しました。これ自体は、着手金30万円程度、成功報酬金50万円の支払いを受けて終わっています。その際の合意書には、Xの妻の連帯保証人を今後5年をかけて解消する旨が記載されています。
Xの妻が、Xの連帯保証人になっていたことから、YはXの代理人として、Xの債権者である金融機関と交渉を開始しました。ただし、うまくいかなかったようです。
その後、Xは、Yに対して債務整理を依頼し、100万円を預けました。
Xの妻との約束が履行できないため、Xは、Yに対する報酬支払いとXの妻に対する解決金の支払いを相談しました。
その結果、Xは、400万円をYに、うち200万円はXの妻への詫び料、うち200万円はYの弁護士報酬の支払いのために、預けました。これに従って、Yは、Xの妻側に200万円支払いました(YはXに対して領収書の写しを送って説明しています。)。
Xは、別の債権者から訴訟を起こされ、第1審で敗訴、第2審で和解を成立させました。
ところが、XがYに対して、500万円の返還を求めました。
これに対して、Yは、①200万円はXの妻への支払いに充てていること、②100万円はYに対するXの妻への示談交渉のための弁護士費用、③残りの200万円は債務整理費用及び弁護士費用等に充てるために預金したとの回答をしました。
Xは、この回答に対して、弁護士費用は50万にして欲しいと言われたものの、Yは、①Xの妻との示談交渉については、弁護士費用として100万円は了承してもらっていたと思っていたが、大阪出張までしたこともあったので、70万円ではどうか、②別債権者の訴訟については、地裁高裁あわせて手数だけはかかってしまったので、23万円程度でどうか、③金融機関との交渉相談は50万円でどうか、④意見があれば知らせて欲しいという回答をしております。
Yとすれば、500万円のうち、△200万円+△70万円+△23万円+△50万円=△343万円、即ち、157万円を返金するということだったようですが、Xは納得がいかないということで、提訴しました。
裁判所は、Yの適正な報酬得額を100万円程度と考えて、Xの妻に支払った200万円を控除して、200万円の返還をYに対して求めました。
これを読んでまずなんで裁判になったのかな?と思いました。紛議調停の申立てをすれば解決していたのではないかと思われます。結果的には、弁護士費用の一部について否認されているものの、交渉経緯に照らす限り、Yは大きく問題のあるようなことはしていないように思われます。
ただ、Yとすれば、自認する157万円を先に返金しておけばよかったのかなと思います。
なお、抵当債務額が評価額を上回る不動産の任意売却による債務整理の委任を受けた弁護士の報酬について、不動産価格の1割を任意売却による経済的利益とみて、その着手金相当額に基づき、委任契約が解除された場合の相当額の報酬を算定しました。アパートの評価額が8000万円であれば、経済的利益を800万円として、弁護士報酬規程に基づく割合を乗じて、50万円と認定しています。
参考になりそうですね。
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