【交通事故】 高次脳機能障害・厚労省基準は、障害福祉の観点で不法行為認定基準には採用しないと女子会社員に意識障害なく高次脳機能障害発症等否認した 名古屋高裁平成23年5月13日判決
自保ジャーナルNo1853号(名古屋地裁平成23年5月13日判決)です。
裁判所は、高次脳機能障害についての損害賠償実務上の基準を判示しました。
以下、判旨の概要を紹介いたします(同書P8~P9)。
厚生労働省基準は、「厚生労働省の福祉行政的な観点からの基準であるから、実際に生活上の支障が生じ、脳の器質的損傷がMRI等で確認できなくても、PET等で機能の異常が確認でき、そのような障害の発症する原因となりうる事故などが存在すれば広くこれを認めることができるとすることは、障害者福祉的な観点からは優れているともいえるので、C医師の判断もその意味では正当なものであると考えられる(むしろ、この場合は、自賠責のような基準は厳格に過ぎると評価し得るとも思われる。)。
しかし、単に患者を保護するだけでなく、加害者とされた者に損害賠償責任を負わせることとなる不法行為の認定の基準としては、これをそのままに採用することはできない。」
しかし、事故直後の原告は、「事故に遭ってしまったというショックと衝撃で、呆然としていました。そのまま運転席におりました」と供述しており、自ら救急車に乗り込んでいることからも、軽度でも意識消失が認められないこと、
診断医の「C医師は、一方で個々の症状は軽度であるとしながら、他方において原告の高次脳機能障害を「強いて言えば、援助があれば単純軽作業ができるレベル」とかなり仕事に大きな支障がある旨の評価をしており、原告の症状の評価に一貫性があるかも疑問である。」上、
「「脳損傷に伴う身体所見なしで患者の訴えのみがあるとする。その時に、PETで脳代謝の低下が出たときに、脳外傷が原因と判断していることは明らかな行き過ぎのように思われる」との医学文献もあり」、
「単に患者を保護するだけでなく、加害者とされた者に損害賠償責任を負わせることとなる不法行為の認定基準としては、これをそのまま採用することはできない」等から、
「ごく短時間の意識障害の発生についてもこれを認定し得ない原告については、本件事故による高次脳機能障害を認定することも困難であるといわざるを得ない」として、高次脳機能障害の発症、後遺障害を否認しました。
高次脳機能障害の認定基準については、最近は、MTBI等の議論もあるために、勉強しておく必要があります。
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