【労働・労災】 安全配慮義務 高松高裁平成21年9月15日判決
判例タイムズNo1329号(10月15日号)で紹介された高松高裁平成21年9月15日判決です。
事案は、以下のとおりです。
道路工事現場において、とび職人として高所作業に従事中、転落事故に遭い、左肘頭骨折、左上腕・前腕・大腿骨転子部骨折、骨盤骨折の傷害を負ったXが、同工事の元請であるY1、下請であるY2、孫請であるY3、Y3にXを派遣したY4、Y4にXを派遣したY5に対して、安全配慮義務違反に基づいて、損害賠償請求をした事案です。
元請Y1 → 下請Y2 → 孫請Y3
派遣元Y5 → 派遣先及び派遣元Y4 → 派遣先Y3
いやいや、すごい重層的な雇用関係ですね。
なお、高松高裁の判断は、ほとんど原審の高松地裁の判決文を引用しているため、原審の判断を引用させていただきます。
1 元請Y1について
特定元請事業者であるY1は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するために必要な措置を講じる義務を負っている(労働安全衛生法29条30条)と判断しました。
そして、Y1が、本件現場に監督事務所を設置し、所長を常駐させた上、作業工程ごとにY2、Y3及びY4らと打ち合わせをし、協議の上、本件現場の作業手順を決めており、また、安全推進室を設置して、安全推進員らにより、1時間に1回の巡視をするなどの安全管理を行っていた事実を前提に、
本件事故当日、定時の巡視を行っていたY1の従業員が、作業手順とは異なって本件現場の手すりが外されていることに気付き、また、そのような状態であるのに、安全帯を使用しないまま高所作業に従事している作業員がいることに気付き、口頭で注意をしているが、従業員らがすぐに親綱を張り安全帯を使用できるようにするのを確認しないままその場を離れてしまった点について、
Y3の代表者と連絡がとれるまではその従業員が転落の危険のある付近での作業を全面的に中断させるべきであり、その場にいる作業員全員に個別に明確な指示が行き渡るようにすべきであったとして、
Y1には安全配慮義務違反があると認めました。
2 下請Y2について
Y1の下請事業者であるY2は、本件工事のうち道路付け替え工事を除く工事には何ら関与しておらず、本件作業に従事していたXら作業員を直接指揮命令するなどの関係にもなかったと認めて、Y2は、本件作業につき、Xに対する安全配慮義務を負う立場にはなかったと判断しました。
3 孫請Y3について
Y4派遣の作業員らは、Y3の行う本件作業に派遣されたものであり、Y3の代表者は、本件現場の監督者として、Y4から派遣された職長に対し、作業内容等を具体的に指示していたから、Y3は、Xとの間に直接的な雇用関係にはないものの、本件作業についてXを指揮監督する関係にあったといえるから、Y3は、本件現場において、Xに対する安全配慮義務を負う。
Y3の代表者は、本件事故当日、上記職長から、資材の荷下ろしに手すりがじゃまになるので、作業効率を上げるために、前日の打ち合わせで決めた作業手順とは異なり、先に手すりを外して作業を進めたいとの申し出を請け、これを許可したこと
このような場合、手すりの撤去により転落事故の危険性が高まるのであるから、Y3代表者としては、上記職長に対し、どの範囲の手すりをどういう順番で撤去するのか、手すりの下部にある作業板についてはどうするのか、安全帯を使用できるようにするための親綱をどの部分に張るのかなどの安全上の措置について、本件現場で具体的な指示をすべきであったといえるにもかかわらず、
Y3の代表者は、漫然と手すりの撤去を許諾しただけで、上記安全上の措置について、何らの指示をしなかったことから、現場監督者としての安全配慮義務を尽くしたとはいえないと指摘して、Y3には、Xに対する安全配慮義務違反があると認めました。
4 Y3にXを派遣したY4について
Y4がXとの間に直接の雇用関係はなく、Y5からXの派遣を受けて、さらにY3にXを派遣したものであるから、本件現場において、Xを指揮命令する立場にはなく、通常は、当然に、事業場における安全配慮義務を負うことはない
↓しかし
派遣先の事業場が危険であることを知りながら労働者を派遣したというような個別事情によっては、派遣労働者に対する安全配慮義務違反の責任を負うことがある
↓本件では
建設業務における労働者の派遣は危険性が高いことから、建設現場について労働者を派遣した派遣元は、当該労働者の安全上に何ら問題がないことを実地に確認したなど特段の事情のない限り、建設業務の現場における安全配慮義務を尽くしたとは評価することはできない
↓
Y4は、自ら本件現場に赴いて、本件作業の内容がXの安全にとって何ら問題がないものであることを確認するなどはしておらず、本件現場にY4が派遣したXを含む作業班の職長が、Y4の従業員であるところ、その職長が本件事故当日、Y3の代表者の許諾を得て手すりの除去をしながら、Xら作業員に対して、親綱を張って安全帯を使用するための具体的な指示をしていなかったことから、安全配慮義務違反があると認めました。
5 Y4にXを派遣したY5
Y5は、Xを直接雇用していたので、安全配慮義務があることを認めています。
労災事故関係についいては、私の事務所でも、最近、ご相談が増えています。
労働災害事故関係については、使用者及び労働者側、いずれの側のご相談をお受けしております。
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