【労働・労災】 元従業員の競業
判タNo1327号(9月15日号)で紹介された最高裁平成22年3月25日付け判決です。
①第1審は、元勤務先 負け、②第2審は、元勤務先 一部勝ち、③ 最高裁は、元勤務先 負け という結果となりました。
元従業員が退職後に以前の勤務先と同じ仕事をして元の勤務先のお客さんなどを奪った場合、元の勤務先が元従業員に対して損害賠償をしたいという相談は、田舎でも結構あります。
このような場合、私などは、「退職後の競業避止義務を定めた就業規則や特約がありますか?」と質問して、「ない」という場合には、よっぽどの事情がなければ難しいとコメントしています。
ただ、高裁は、競業避止義務を定めた就業規則等がない場合でも、「上告人甲野らは、本件取引先を主たる取引先として事業を運営していくことを企図して保険競業行為を開始し、上告人甲野の上告人会社への代表取締役就任等の登記手続を遅らせるなど被上告人に気づかれないような隠蔽工作などをしながら、上告人甲野と本件取引先との従前の営業上のつながりを利用して被上告人から本件取引先を奪い、上告人の売上げのほぼすべてを本件取引先から得るようになる一方で、これにより被上告人に大きな損害を与えたものであるから、本件競業行為は、社会通念上自由競争の範囲を逸脱したものであり、上告人らによる共同不法行為に当たる」と判断しました。
あれ、競業避止義務を認めてしまっているぞ。すごいなあと思っていました。
でも、やっぱり、最高裁は、それについては、否定しました。
以下、判タの判決要旨を引用します(同書71ページ)。
金属工作機械部分品の製造等を業とするX会社を退職後の競業避止義務に関する特約等の定めなく退職した従業員において、
別会社を事業主体として、X会社と同種の事業を営み、その取引先から継続的に仕事を受注した行為は、
それが上記取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用して行われたものであり、
上記取引先に対する売上高が別会社の売上高の8~9割を占めるようになり、X会社における上記取引先からの受注額が減少したとしても、
次の(1)、(2)などの判示の事情の下では、社会通念上自由競争の範囲を逸脱するものではなく、X会社に対する不法行為にはあたらない。
(1)上記従業員は、X会社の営業秘密に係る情報を用いたり、その信用をおとしめたりするなどの不当な方法で営業活動を行ったものではない
(2)上記取引先のうち3社との取引は退職から5か月ほど経過した後に始まったものであり、残りの1社についてはX会社が営業に消極的な面もあったのであって、X会社と上記取引先との自由な取引が阻害された事情はうかがわれず、上記従業員においてその退職直後にX会社の営業が弱体化した状況を殊更に利用したともいえない
基本的には、自由競争の原理が妥当するのであり、その範囲を逸脱するような場合に限って、不法行為となるものですから、今回の判決例は至極当然ということになるのでしょう。
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