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2009年11月12日 (木)

【労働・労災】 労災保険法の保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合に、被害者に対して休業給付金及び障害給付金として支払われた保険金を、加害者が被害者に対して負担する損害賠償債務の遅延損害金の支払債務に充当することの可否

 判例タイムズNo1305号(11月10日臨時増刊号)に、民法判例レビュー(第2期)第105回で、山口早大教授が紹介されていた大阪地裁平成21年2月16日判決が、目に入りました。

 最高裁平成16年12月20日判決は、

 不法行為の被害者の遺族が得た自賠責からの支払社会保険からの給付は、損害発生時から支払い時までに発生している遅延損害金にまず充当される

 と判断しています。

 大阪地裁平成21年2月16日判決は、

 自賠責保険及び任意保険と、労災保険とを区別して、労災保険給付の趣旨に鑑みれば、休業給付等は、加害者の被害者に対する損害賠償債務のうちの逸失利益に相当する部分のみを補償の対象とするものであり、これを超えて、同部分に対する遅延損害金という、上記損害賠償債務とは発生原因を異にする別個の債務をも補償の対象としているとみるのは困難であるとして、労災保険法の休業給付および障害給付として支払われた保険金を、加害者が被害者に対して負担する損害賠償債務の遅延損害金の支払債務に充当することを否定しました。

 (大阪地裁の考え方)

 自賠責保険・任意保険  → 民法491条1項(適用なしい準用)

 労災保険金         → 同一事由に基づく損害の元本充当

 この大阪地裁の判決は、最高裁平成16年判決の判断と一部異なっております。

 その理由はいくつか考えられます。

①労災保険金の支給を受けた被害者は、法律上当然に、保険給付の価額の限度でその損害賠償請求権を失うことになるが、これは、政府によって損害の填補がされるのに伴い、その限度で、被害者の損害賠償請求権が政府に移転し、これに伴って被害者が加害者に対する損害賠償請求権を喪失するからであって、上記保険給付によって加害者の被害者に対する損害賠償債務がその限度で消滅するからではないとして、被害者に対する労災保険金の支給は、債権の消滅原因となるものではないことを理由に、弁済の規定である民法491条1項の適用ないし準用ができない

②労災保険における休業給付及び障害給付は、加害者の被害者に対する民法上の損害賠償債務のうちの逸失利益(休業損害及び後遺障害逸失利益)と同一の性質の損害を填補するものであるため、これを超えて、損害賠償債務の遅延損害金という上記損害賠償債務とは発生原因を異にする別個の債務をも補償の対象としているとみるのは困難である

③仮に、遅延損害金をも填補すると考えた場合には、労災保険法12条の4の規定によって政府が取得する損害賠償請求権の範囲をどのように考えるかという問題が生じること

 実務的にも、平成16年最高裁判決の判断枠組みは、問題点が多いとして、歓迎されていないようです。

 被害者から依頼を受けたら、最高裁平成16年判決で計算して、加害者から依頼を受けたら、大阪地裁判決で計算するよう反論することになるかとは思います・・・・  

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