【金融・企業法務】 A社の取立委任手形につき商事留置権を有するB銀行が、A社の民事再生手続開始決定後に同手形を取り立て、A社に対して有する債権に充当することの可否 東京高裁平成21年9月9日判決
旬刊金融法務事情No1879号(10月5日号)で紹介された裁判例です。
この判決は、金融機関の融資管理の担当者と話をする時には、必ずといってよい程話題になる判例の1つです。以前も地裁判決は紹介させていただいております。
知らないと恥をかきますので注意です。
事案は以下のとおりです。
A社とB銀行は、平成18年2月5日、銀行取引約定を締結しました。この約定には、
甲が乙に対する債務を履行しなかった場合には、乙は担保およびその占有している甲の動産、手形その他の有価証券について、かならずしも法定の手続によらず一般に適当と認められる方法、時期、価格等により取立または処分のうえ、その取得金から諸費用を差し引いた残額を法定の順序にかかわらず甲の債務の弁済に充当できるものとしますとの条項
A社が民事再生手続開始を申し立てた場合には期限の利益を喪失する旨の条項
が含まれていました。
A社は、再生手続開始の申立に先立ち、B銀行に複数の約束手形を取立委任のため裏書譲渡していましたが、B銀行は平成20年2月29日の同再生手続開始決定後、各約束手形を取立、同年3月19日、A社に対して、本条項に基づいて取立金を当座貸越債権に充当した旨通知しました。
これに対して、A社は、
① B銀行の当座貸越債権は、民事再生法84条1項の再生債権に該当し、同法85条1項により弁済が禁止される
② B銀行は、各約束手形に商事留置権を有していたが、商事留置権には法定の優先弁済権が認められていないから、銀行が取立金を当座貸越債権に弁済充当することは弁済禁止(民事再生法85条1項)に抵触し許されないと主張して、
銀行が取立金を本件各条項に基づき、当座貸越債権に弁済充当できるかが争点となりました。
東京地裁は、以前のブログで説明したとおり、B銀行の主張を認めませんでした。
東京高裁も、同様の結論です。以下、その概要を述べます。
民事再生法53条1項・2項は、別除権とされた各担保権につき新たな効力を創設するものではなく、別除権者は、当該担保権本来の効力の範囲内で権利を行使し得るにとどまる
↓
別除権の行使によって優先的に弁済を受けるためには、当該別除権社が他の債権者に対して優先して弁済を受けられる権利を有していることが必要である。
↓
留置権は、留置的効力のみを有し、優先弁済的効力を有しないことから、目的物を占有し、これを物質的に支配して弁済を促す権利を有するにすぎないのが本来的な性質であり、再生手続において商事留置権に法律上優先弁済権が付与されると解することはできない
↓
従って、B銀行は本件手形取立金についてなんら法的な優先権を有するものではなく、当該手形金をもって商事留置権の被担保債権の弁済に充当することはできないとして、B銀行の主張を排斥しました。
まさに、条文解釈と実務運用の狭間で揺れる民事再生手続における商事留置手形の取り扱いですね。。。
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