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2006年8月21日 (月)

これも懲戒(戒告)なのか・・・(自由と正義8月号)

 東京の弁護士会(自由と正義8月号)によって戒告処分とされた事例です。

 ケースは、以下のとおりです。

 甲弁護士は、区分所有建物であるマンションにつき管理委託を受けていた管理会社A社の代理人として、新たに管理組合の設立を目指す区分所有者であるB、Cらから、集会招集請求等の提出を受けました。

 この集会招集請求は、実は、2回目であり、初回の集会招集請求は、法定人数に満たないという指摘を甲弁護士から受けたものでした。

 ところが、2回目の集会招集請求も法定人数に満たないものでした。

 Bらは、この集会招集請求が適法という認識の下、新たな管理組合の成立を決議して、A社に対して、管理委託契約の解除と管理事務の引継を求めてきたのに対して、甲弁護士は、2回目の招集請求も法定人数に満たないため無効であると考え、管理事務の引継ぎを拒否したのでした。

 そこで、Bらから、懲戒申し立てが弁護士会になされました。

 弁護士会は、

 「一般に、弁護士が事件の相手方の手続不備にきづいた場合は遅滞なくそれを指摘すべき義務があるということはできないが、」としつつも、

 「弁護士は事件の相手方との関係においても職務を誠実にかつ公平に行い、信用を維持するようにしなければならないのであり、(略) 被懲戒者が不備を認識しながら集会終了後まで補正の指示をしなかったことは、不親切の域を超えて、弁護士倫理に触れ」と判断しております。

 しかし、本件事案において、仮に、甲弁護士が補正の指示をしたとすれば、甲弁護士とA社との関係はどうなるでしょうか?補正の指示は、明らかに、A社にとって不利益な内容を伴うものであり、補正の指示により、A社から、懲戒申し立てをされる可能性もあるのではないでしょうか。

 そもそも、Bらは、その責任において、集会を開いているのであり、その手続きに瑕疵があったとしても、それは、本来、甲弁護士とは関係がありません。集会に瑕疵があるのかどうか、A社と対立するBら自身が、甲弁護士とは異なる別の弁護士に相談すればいいだけではないかと思います。

 決定書には、「不親切の域をこえ」とありますが、一般論として、当事者が激しく対立している案件においては、通常の場合、相手方当事者の不利益までを配慮しなければならない法律上の義務はないのではないかと思います。

 決定書も原則は同様に考えていますが、例外が適用される基準が具体的ではなく、例外が拡大的に適用される可能性があります。

 とはいっても、私の扱う事案でも、弁護士に対する信用からか、逆に、対立当事者の一方からアドバイスを求められることも少なくないですが、一般論の範囲で回答するにとどめ、具体的なことは異なる弁護士に相談してほしい旨お願いしていますが・・・・ 

 ただし、こんな場合どうなんでしょうか? 

 たとえば、消滅時効期間が経過した貸金請求を受任した場合、相手方に対して、消滅時効期間が経過していることを告知する義務が弁護士にあるでしょうか?

 このあたり、ロースクールでの弁護士倫理の講義でも使われているテーマではないでしょうか? ロー生がおられたら、ご教示ください。 

 懲戒申し立てが対立する当事者からなされることは少なくありません。その多くは、不当な場合がほとんですが、中には、弁護士に大きな落ち度があるものもあります。

 ただ、本件事案の場合、懲戒に相当する落ち度が甲弁護士にあったのでしょうか? 

 懲戒の申し立てが乱用的に行われ弁護士に対する圧力的な手段になっている事案もあるため、本件事案において、甲弁護士が、なぜ、「不親切の範囲をこえて」いるのか、もっと具体的なことがわかるよう、記載していただなければ、今後の教訓としてどのように活用すればいいのかわかりません。

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