弁護士である遺言執行者が、遺留分減殺請求事件について特定の相続人の代理人となることは、弁護士倫理に反し懲戒事由にあたるとされた事例(東京高裁平成15年4月24日)
愛媛弁護士会所属の弁護士に対する懲戒事案(判例時報1932号)です。
ケースは、以下のとおりです。
生前、Aさんは、丙に相続させる公正証書遺言を作成しましたが、Aさんは、B弁護士を遺言執行者に指定しました。
その後、Aさんはなくなり、相続人間で、紛争が生じ、相続人である甲や乙の代理人弁護士は、B弁護士に対して、遺言執行者として相続財産目録の交付を請求し、B弁護士は、調査中のため、猶予を求める通知をしていました。
その後、甲乙は、丙に対して、遺留分減殺請求の申立を、松山家庭裁判所今治支部に申し立てたところ、B弁護士は、丙の代理人になりました。
そこで、甲は、愛媛弁護士会に対して、Bが遺言執行者でありながら、特定の相続人(丙)の代理人になったことを理由に、懲戒の申立をしたところ、愛媛弁護士会は、Bが遺言執行者に就職したとは認められないとして、懲戒にふさない旨の決定をしました。
この決定に対して、甲は、日弁連に対して、異議の申し立てをしたところ、日弁連は、黙示的に遺言執行者に就職していたとして、Bを戒告処分としました。
これに対して、B弁護士は、東京高裁に対して、日弁連の処分の取り消しを求めた事案です(私も、弁護団の一員です。)。
まず、この事案を知ったときに、こんなケースで懲戒されるのかという想いです。
遺言者Aの希望は、丙に全て相続させたいということにあり、その考えから、弁護士Bを遺言執行者に指定しているはずだからです。つまり、本件遺言は、全ての財産を、丙に相続させる内容になっており、遺言執行者の立場と、丙代理人の立場とは、実質的には一致しているのではないでしょうか? 遺言者Aの気持ちを重視すると、B弁護士が丙の代理人に就職することは、問題がないように思えます。
しかし、東京高裁は、遺言執行者の中立的立場を重視しています。つまり、遺言執行者は、全ての相続人のために職務を遂行する義務があり、このことは、一人の相続人に遺産の全部を相続させる場合も異ならないというのです。
この判断は確定してしまったので、今後は、教訓として活かされなければなりません。
最終的にいえるのは、代理人の立場と、中立的立場が強く要請される立場とを、厳しく峻別しなければならないということです。なかなか難しいことですが、少なくとも、懲戒というわずらわしい処分を受けないためには、必要なことだと思います。
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トラックバック、ありがとうございます。
記事を拝見させて頂きました。
弁護士のかたは、双方代理の問題や、今回のようなケースなど、中立性に配慮せねばならず、たいへんですね。
税理士も法律の知識は必要です。細かい知識はムリでも、立法趣旨や法的思考は身につけねばと思っております。
また、今後もお邪魔させて頂きます。勉強させてください。
投稿: kimutax@税金まにあ | 2006年8月20日 (日) 11:39