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書籍紹介(交通事故)

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【MTBI】

2018年1月14日 (日)

【MTBI】 2級高次脳機能障害否認して7級後遺障害が認定された事案(労災は2級認定)

 自保ジャーナルN02005号で紹介された大阪高裁平成29年4月21日付判決です。

 原告が、2級高次脳障害を残したとして、それを前提に損害賠償請求を行ったという事案です。

 労災では、2級が認められていたのですが、損害保険料率算出機構は、事前認定中に提訴されたことに伴い、認定保留となっております。

 第1審は、5級の高次脳機能障害を認めましたが、第2審は、高次脳機能障害は否定しつつも、7級の後遺障害を認定しました。

 時折、労災の認定と自賠責保険での認定がずれることがあり、そのようなときは、たいてい、労災の認定の方が重くて、自賠責保険での認定に不満を抱いている被害者の方が少なくありません。一応、同じような基準での判断になっているのでしょうが、食い違いが生じているのです。

 閑話休題

 さて、今回の高裁は、

①Xに意識障害は認められるもののその程度は比較的軽度であり、JCSが3桁、GCSが8点以下の状態が6時間以上継続したことはなく、JCSが1~2桁、GCSが13~14点の状態が1週間程続いたこともない。

②また、画像所見についても、Xは、複数回にわたり、CT検査、MRI検査、MR検査、SPECT検査、MRI(薄いスライス)検査、SWI等の検査を受けているが、脳の器質的変性を示す所見は一切得られなかった

③神経心理学的検査の結果についても、検査結果の動揺はあるものの、成人知能評価、言語性、動作性、記銘力、有関係無関係対語、行動記憶などの諸要因において、事故後時間の経過とともに悪化傾向にあり、特に事故後約3年経過後になって、急激に悪化し、社会生活に障害を伴う程度に至っている そうすると、Xにおいて、症状固定時である平成23年10月31日の時点で、ADLの低下や前行性健忘、逆行性健忘、記銘力障害、書字障害、社会行動障害の症状が残存し、これらが高次脳機能障害の臨床像をうかがわせるものであったとしても、脳外傷後の急性期に始まり多少軽減しながら認知障害等が慢性期へと続く高次脳機能障害の病態とは大きく異なる他、

 Xの頭部外傷が、WHOの神経外傷作業部会報告におけるMTBIの基準を満たすとしても、大多数の研究において、成人のMTBIの急性期において認められた認知症状がほとんど3ケ月から12ケ月で回復し、症状が持続する場合に心理社会的因子以外の要因が関係することを一貫して示す証拠はほとんどないとされている。したがって、Xの頭部外傷がWHOの基準をみたすMTBIであったとしても、そのことからXの症状固定時の症状が本件事故により発生した高次脳機能障害によるものであったと認めることはできないとして、高次脳機能障害の発症を否認しました。

 第1審と第2審とで大きく内容がことなってしまいました。

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2017年1月27日 (金)

【MTBI】 MTBIについて、労災認定(12級)と、自賠責認定(裁判認定)(14級)と異なった事案

 判例時報NO2313号で紹介されたさいたま地裁熊谷支部平成28年3月14日判決です。

 裁判所は、原告には事故直後の意識障害もないことから、WHOによる軽度外傷性脳損傷の診断基準にそもそも該当せず、脳の器質的損傷を裏付ける画像所見がないこと、症状の経過も考え併せれば、原告について、本件事故により、軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を発症したと認めることはできないと判断しております。

 なお、労災は12級を認定しており、労災認定の根拠は、①軽度外傷性脳損傷による神経因性膀胱との診断及び②記銘力低下等といった原告の症状は、軽度の外傷性脳損傷があったと考えて矛盾せず、②については負傷に起因する残存障害に相当する可能性があるというものでしたが、

 裁判所は、①神経因性膀胱については外傷性とは考え難く、②記銘力低下についても本件事故との相当因果関係が明らかとはいえず、高次脳機能障害の存在が直ちに裏付けられるものではないとして、一蹴しております。

 労災では、高次脳機能障害が認められているのですが、自賠責や裁判所はそれを否定して、14級9号にとどめました。

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2016年11月 1日 (火)

【MTBI】 21歳女子5級主張のMTBIは、診断基準の第1要件みたさず等から否認し、後遺障害の残存も認められないとしました 神戸地判平成28年4月20日

 自保ジャーナルNo1976号で紹介された神戸地裁平成28年4月20日判決です。

 原付自転車で走行中、被告Y運転の普通貨物車に追突され(第1事故)、その約2ケ月後に交差点を原付自転車で進行中、被告Z運転の普通乗用車に出合い頭衝突されて(第2事故)、頸部痛等自賠責14級9号認定も、

 軽度外傷性脳損傷から四肢麻痺、膀胱直腸障害、排泄障害等の5級2号後遺障害を残したと主張する21歳女子原告の軽度外傷性脳損傷につき、

 原告は、第1事故後、救急搬送されているものの、搬送中の意識は正常であり、搬送後の初診時においても意識障害は認められないし、世界保健機関(WHO)が定めた軽度外傷性脳損傷の診断基準の第1要件を満たすと認めるに足りる証拠もないと軽度外傷性脳損傷の診断基準の第1要件を満たすと認めるに足りる証拠もないとして、MTBIの発症を否認しました。

 約1億4000万円請求して、認められたのはわずか50万円程度です。

 なお、WHOの診断基準の第1要件とは、「受傷後に混迷または見当識障害、30分以内の意識喪失、24時間未満の外傷性健忘症、またはこれら以外の短時間の神経学的異常、例えば局所徴候、痙攣、外科的治療を必要としない頭蓋内疾患等が少なくとも1つ存在すること」とされています。

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2016年10月 7日 (金)

【MTBI】 追突された55歳男子は事故直後の意識障害もなく診断基準に該当しないと軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を否認し、頸椎捻挫等の14級後遺障害と認定した事例 さいたま地裁熊谷支部平成28年3月14日判決

 自保ジャーナルNo1974号で紹介されたさいたま地裁越谷支部平成28年3月14日判決です。

 普通乗用車を運転して赤色信号停止中、被告乗用車に追突され、頸椎捻挫等から自賠責14級9号認定も、軽度外傷性脳損傷により高次脳機能障害を発症し5級2号後遺障害を残したとする55歳男子原告の症状について、

 原告が物忘れや計算ができない等、認知障害等の症状を訴えるようになったのは、本件事故から1年7ケ月余り経過した平成23年7月14日にJクリニックを受診した際であり、それ以前に上記症状が発現したと認めるに足りる的確な証拠はない

 高次脳機能障害は症状が遅発する症例があるとはいえ、本件事故発生の約1年7ケ月後の症状発現であること、

 発現後、症状の軽減はみられず、むしろ原告の訴える症状が増悪していることがうかがわれることを考慮すると、

 原告が訴える症状と本件事故との間に相当因果関係を認めることは困難であるとして、

 原告には事故直後の意識障害もないから、WHOによる軽度外傷性脳損傷の診断基準にそもそも該当せず、脳の器質的損傷を裏付ける画像所見がないこと、及び上記症状の経過も考えあわせれば、

 原告について、本件事故により、軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を発生したと認めることはできない

 と高次脳機能障害の発症を否認しました。

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2016年10月 4日 (火)

【MTBI】 44歳主婦の5級主張中心性脊髄損傷及び高次脳機能障害(MTBI)の発症を否認した裁判例 松山地裁平成28年3月15日判決 

 自保ジャーナルNo1974号で紹介された松山地裁平成28年3月15日判決です。

 T字型交差点を自転車で進行中、右方の一時停止道路から左折してきた被告タクシーに衝突され、労災5級、自賠責非該当も、中心性脊髄損傷及び高次脳機能障害から5級後遺障害を残したと主張された事案です。

 労災では、5級

 自賠責では、後遺障害非該当

 という何やら不思議な結果になっております。

 裁判所は、以下のとおり判断しています。

 中心性脊髄損傷は、受傷直後に最大の症状が完成するものであるにもかかわらず、原告は1度回復した症状が悪化している。

 また、麻痺が残った右側の腱反射が衰退し、感覚障害も麻痺が残る右側に生じていることは、中心性脊髄損傷が残存している場合に関する医学的知見から説明することは困難であるとして、

 本件事故によって、原告が不全型の中心性脊髄損傷を発症し、これが残存したものと認めることはできないと、中心性脊髄損傷を否認しました。

 また、高次脳機能障害については、原告は、本件事故によりMTBI(頭部外傷)の傷害を負い、平成22年10月19日、高次脳機能障害の症状固定の診断を受けたというのであり、MTBIから1年5ケ月も症状が遷延化している。これは、MTBIに起因する高次脳機能障害に関する医学的知見から説明がつかない。かえって、原告が物忘れが激しい旨を訴えたのは、MTBIの受傷から5ケ月以上経過した平成21年10月30日であること、

 原告の本人尋問の供述態度、本件事故後に自営業の夫を手伝ったり自賠責等の必要書類を自筆したりしたなどの事情に鑑みれば、原告が主張するような記憶障害、遂行能力障害を発症し、これが持続しているという点は、疑義がある等として、本件事故によって、原告が高次脳機能障害を発症し、これが残存したものと認めることはできないと、高次脳機能障害を否認しました。

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2016年9月19日 (月)

【MTBI】 追突された62歳男子主張の高次脳機能障害はWHO診断基準でもMTBIとはいえないと判断された事例

 自保ジャーナルNo1973号で紹介されたさいたま地裁平成28年3月29日判決です。

 普通乗用車を運転して赤信号停止中、被告乗用車に追突され、頸椎捻挫、頸髄損傷、外傷性脳損傷等から、自賠責非該当も、高次脳機能障害及び右上下肢麻痺の3級3号後遺障害を残したとする62歳男子原告の事案につき、

 原告には、本件事故後の錯乱や見当識障害、30分以下の意識消失、24時間以内の外傷後健忘、その他の一過性の神経学的異常のいずれもない。

 また、原告が本件事故日に受診したC病院でのGCSも、6点未満であって、13ないし15点には至っていない等から、WHOの診断基準でも、軽度外傷性脳損傷(MTBI)とはいえないとし、

 頭部CT検査及び頭部MRI検査で原告の脳の器質的損傷を裏付ける異常所見がみられず、また、本件事故の状況や車両の損傷程度からすると、本件事故の衝撃は必ずしも大きいとはいえないとして、

 原告が軽度外傷性脳損傷後の高次脳機能障害に罹患しているとはいいがたいとして、高次脳機能障害を否認しました。

 そして、後遺障害認定については、局部の神経症状を残すものとして、後遺障害等級第14級9号を認定しました。

 WHOの診断基準を満たさないということですので、MTBIを認めてもらうのは難しい事案といえましょう。

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2016年7月 7日 (木)

【MTBI】 京都地裁平成27年5月18日判決(積極)

 交通事故民事裁判例集第48巻第3号で紹介された京都地裁平成27年5月18日判決です。

 労災では後遺障害等級第2級、自賠責では認定保留になった事案ですが、被害者は第1級に該当するとして訴訟を提起し、被告はそれを全面的に争ったという事案です。

 裁判所は、

 頸椎捻挫、腰部打撲及び右膝内側側副靭帯損傷の傷害を負うとともに、事故当時、頭部に外力を受けて意識喪失を生じ、意識は比較的早期に回復したが、記憶障害、社会的行動障害が残存する原告について、

 脳の器質的変化は確認できないものの、

 それらの症状は高次脳機能障害によるものと認め、

 解離性障害が合併しているものの、症状固定後も前向性健忘、逆向性健忘、IQの低下、書字障害とともに、易怒性、衝動性、粘着性などの社会行動障害が残存することから、後遺障害等級第5級に該当すると判断しました。

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 MTBIで肯定されているのは、珍しいなあという印象を受けました。ただ、加害者側損保ですが、被害者を詐病扱いしています。ひどいなあ。

2016年6月20日 (月)

【MTBI】 MTBIを読んで

 交通事故診療と損害賠償実務の考察の中で、損害保険料率算出機構の手塚泰史先生がMTBIについて論文 を執筆されていました。

 脳外傷による高次脳機能障害は脳の器質的損傷に基づく障害ですが、最近問題となっているMTBIは、脳に画像上の異常所見がなくともびまん性脳損傷が起こりうるという疾病概念です。

 MTBIの定義については、統一された定義はありませんが、平成22年に開催された検討委員会では、軽症頭部外傷について、頭部に何らかの外力が加わった事故のうち軽度なもの(頭部外傷という事故が起きた中で、外力の頭部への加わり方や、外力の脳への伝達、帰結などの点において影響が比較的軽いもの)」と定義しました。

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 検討委員会の平成23年報告書によれば、「軽症頭部外傷後に1年以上回復せずに遷延する症状については、それがWHOの診断基準を満たすMTBIとされる場合であっても、それのみで高次脳機能障害であると評価することは適切ではない

 ただし、軽症頭部外傷後に脳の器質的損傷が発生する可能性を完全に否定することまではできないと考える。したがって、このような事案における高次脳機能障害の判断は、症状の経過、検査所見等も併せ慎重に検討されるべきである」と記載されています。

 他方で、自賠責保険には、加害者をも納得させ得る客観的な根拠に基づく判断が求められていることから、画像所見と意識障害の有無、症状経過や神経心理学的検査は重要であるとされています。

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  MTBIについての裁判例をみると、意識障害がなしとされながらも脳の器質的損傷を認めた裁判例は、東京高裁平成22年9月9日判例がありますが、少数であるとされています。

  田舎弁護士がMTBIについてのご相談や事件の対応を受けたことは数例程度しかありませんが、仮に被害者事案としてご相談を受けた場合に速やかに対応できるよう日々学習だけはしております。

 なお、MTBIについては、松居英二先生の「軽度外傷性脳損傷の後遺障害等級認定上の問題点」(賠償科学40号)が参考になります。

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