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書籍紹介(交通事故)

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【胸郭出口症候群】

2016年6月21日 (火)

【胸郭出口症候群】 胸郭出口症候群を読んで

 「交通事故診療と損害賠償実務の交錯 」の中で、損害保険料率算出機構の川谷良太郎先生の論文が紹介されていました。

 交通事故後の上肢のしびれ等の症状については、これまでは、頸椎捻挫による頸椎の過伸展・過屈曲によって引き起こされたものとして、「外傷性頸部症候群」との傷病名が一般に使用されてきました。

 近年、「外傷性胸郭出口症候群」との傷病名が一部の医師を中心に頻繁に使用されていることが多いようです。

 胸郭出口症候群とは、なで肩の女性や重いものを持ち運ぶ労働者に多い症例であり、神経障害と血流障害に基づく上肢痛、上肢のしびれ、頸肩腕痛を生じる疾患の1つとされています。

 診断ですが、上肢のしびれ等の症状は、腕神経叢損傷、頸椎椎間板ヘルニアなど、より重篤な傷病の可能性があるため、それらの傷病の可能性を排除してから、最終的に診断されるものとされています。

 また、胸郭出口症候群と診断するためには、頸部、肩、腕に神経や血管の圧迫症状が存在し、愁訴が比較的長期間持続又は反復することを前提に、もっぱら症状誘発テストの陽性所見があれば足り、画像所見は補助診断に過ぎないとされています。

 現時点では、真に、胸郭出口症候群の診断基準に該当するものについて、神経系統の障害を証明する他覚的所見が認められることはないと考えざるを得ないと説明されています。

 とすれば、胸郭出口症候群が後遺障害として残存したとしても、神経系統の障害としては、せいぜい14級どまりになりそうです。

 しかしながら、裁判例としては、胸郭出口症候群と事故との因果関係を認めて、12級の障害等級を認定したものも、5例ほどあるようです。

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 「なお、近年になるにつれて低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)と胸郭出口症候群の診断が並列されて争点となっていることが認められるが、自賠責保険の認定実務上も、「低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)」と診断する医療機関を受診した患者が「胸郭出口症候群」と診断されて第一肋骨切除術等を受けている傾向がうかがえることは特筆すべき点である」と紹介されています。

 いずれにせよ、現時点では、胸郭出口症候群については、①外傷性胸郭出口症候群という病態に関して明らかな診断基準がないこと、②裁判所における局部の神経症状の評価基準が明らかでないこと、③現在の診断基準を満たす場合には神経系統の障害を証明する他覚的所見がないこと、という問題があります。

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