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書籍紹介(交通事故)

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【脳脊髄液漏出症】

2017年9月17日 (日)

【脳脊髄液漏出症】 弁護士の杉田雅彦先生が、脳脊髄液減少症を認めた名古屋高裁平成29年6月1日判決を論難されています。

 最新の自保ジャーナルNo1997号で、杉田雅彦先生が、「最近までの高裁判例から見た目に見えにくい後遺障害(主観病)問題」と題する論文を公表されていました。

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 その中で、最近出た名古屋高裁平成29年6月1日判決が脳脊髄液減少症を認めていることから、この裁判例に対して、論難されています。

 要は、医学的診断基準を十分に示すことなく肯定されており、リーディング判決と先生が評価されている平成25年1月24日東京高裁判決以降の21件の判決はいずれも脳脊髄液減少症は認めておらず、今回の判例は自信なき判決でありながら、発症の疑いがあるとして安易に認めているとして厳しく論難されています。

 なお、先生は、「被告側は控訴審で十分な反論をしていないことは残念である。」と被告側の弁論活動についても疑問を呈されているように思われます。

 とはいえ、高裁レベルで積極的に認めた裁判例が出たという重みは否定することはできず、今後も、散発的には認める裁判例がでるのではないかと思います。

 この症例については司法では取り扱うのが難しいので、早く国の方で統一的な見解を示していただければと思います。

2017年8月15日 (火)

【脳脊髄液漏出症】 脳脊髄液減少症及び胸郭出口症候群の発症を認めた高裁裁判例がでました!

 自保ジャーナルNo1995号で紹介された名古屋高裁平成29年6月1日判決です。

 第1審は、脳脊髄液減少症等を否認して、約130万円程度の補償しか認めなかったのですが、高裁は、なんと約2300万円程度の補償を認めました。

 高裁は、脳脊髄液減少症の発症につき、以下のとおり判示しております。

 画像所見は、臨床の現場で実際に診療活動を行っている専門医らにより、RIシンチグラフィー及び頭部MRIによって脳脊髄液減少症の発症を十分に認め得るとされる画像が存在し、それが誤りであるとはいえない上、

 H医師は、平成18年4月20日に施行されたMRミエログラフィーにおいても、腰椎レベルでの髄液漏出の可能性を判断しており、同年8月23日にD病院におけるRI検査においても3時間後に軽度のRI膀胱集積が認められていることを考慮すると、

 本件において、脳脊髄液減少症を示す画像所見の存在一切を否定し去ることは困難というべきであるとし、画像所見を個別的にみると、厚生労働省研究班画像診断基準を満たすものではないが、同基準は本件事故後に作成されたものであり、かつ、今後の変更の余地がないとはいえないところであるから、現時点において、これら個々の画像が同基準に必ずしも合致しないからといって、その画像を臨床的な価値を全て否定する方向で同基準を用いることは相当ではないとして、

 Xには事故当初からの起立性頭痛が認められ、脳脊髄液の漏出を裏付ける画像所見が認められ、ブラッドパッチ治療により症状の改善が認められるといえるから、前記した諸基準を総合判断すると、3病院における臨床診断は十分に信頼性があり、これらに基づき、Xは、本件事故により脳脊髄液減少症を発症したものと認められるとして、脳脊髄液減少症を認定しました。

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 これまで、脳脊髄液減少症は、消極的な判断が続いていたように思いますが、今回は、名古屋高裁により、第1審の判断を覆して脳脊髄液減少症の発症を認めたもので、しかも、後遺障害については、当初は9級、途中で12級を認めたもので、脳脊髄液減少症に苦しんでいる被害者の方にとっては朗報ともいえる判決です。

 

2017年1月15日 (日)

【脳脊髄圧漏出症】 否定した裁判例 東京地裁平成28年8月24日判決

 自保ジャーナルNo1981号で紹介された東京地裁平成28年8月24日付判決です。

 外傷性頚部症候群で自賠責14級9号が認定されていた事案ですが、被害者は、低髄液圧症候群、高次脳機能障害で12級後遺障害を残したとして、約1700万円程度の損害賠償を請求したという事案です。

 裁判所は、

 ① 原告の訴える頭痛が起立性頭痛であると認めるに足りる的確な証拠はなく、原告の訴える症状に体位による変化を認めるに足りる的確な証拠もないことから、起立性頭痛や体位による症状の変化を否認

 ② RI脳槽シンチグラムについても、厚生省研究班基準では、参考所見とされ単独では異常所見とされていないこと、ブラッドパッチについても起立性頭痛が生じたと認められないので改善効果について検討する余地がない

 として、低髄液圧症候群を否認しております。

 最近は、低髄液圧症候群を認めている裁判例に接することはみかけなくなりました。

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2016年10月 8日 (土)

【脳脊髄液漏出症】 32歳女子主張の5級脳脊髄液減少症は、起立性頭痛なくブラッドパッチによる症状の改善認められないと否認して、頸椎捻挫等の14級後遺障害を認定した 神戸地裁平成28年2月17日判決

 自保ジャーナルの1974号で紹介された神戸地裁平成28年2月17日判決です。

 普通乗用車の助手席に同乗して停止中、被告乗用車に追突され、頸椎捻挫・腰部捻挫等から脳脊髄液減少症を発症し、5級2号後遺障害を残したとする32歳女子原告の事案です。

 裁判所は、原告は、C病院の診療予約申込書において、現在の症状について、起立性頭痛をうかがわせる症状を申告せず、常に頭痛がある旨申告している。そうすると、本件事故によって原告に起立性頭痛が生じたと認めることはできないとし、

 起立性頭痛は、立位又は座位をとると15分以内ないし30分以内に増悪する頭痛であり、その症状は特徴的なものであるというべきであるから、原告に起立性頭痛の症状が生じていたにもかかわらず、それを自覚できなかったとは考えにくいと起立性頭痛の発症を否認しました。

 ブラッドパッチによる症状の改善につき、

 原告は、ブラッドパッチを受けているものの、医療記録上、背部痛軽減と記載されているのみであり、頭痛そのほかの症状については記載がなく・・・Bクリニックを受診した際、ブラッドパッチしてから頭痛ひどくなっているなどと申告している等から、ブラッドパッチの施行により症状の改善があったとみることはできないとしました。

 そして、原告には、本件事故による起立性頭痛が認められず、ブラッドパッチの効果が認められないこと、脳脊髄液減少症の発症を裏付ける画像所見に乏しいことからすれば、

 原告が、本件事故により、脳脊髄液減少症を発症したと認めることはできないと判断しました。

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2016年9月11日 (日)

【脳脊髄液漏出症】 追突された37歳男子主張の脳脊髄液減少症、胸郭出口症候群、高次脳機能障害の発症は、認められず、後遺障害の残存も否認された事例

 自保ジャーナルNo1972号で紹介された岐阜地裁高山支部平成28年2月25日判決です。

 担当裁判官は、高木健司裁判官です。

 裁判所は、脳脊髄液減少症につき、原告には、本件事故による起立性頭痛ないし体位による変化があったとは認められず、髄液漏出を示す画像所見は、画像上、本件事故に起因する髄液漏出があるとの判断を下すことは困難であるとし、ブラッドパッチ療法におる症状の改善については、G病院において2回にわたりブラッドパッチ療法の施行を受けた後も頭痛が継続し、硬膜外生理食塩水パッチや人口髄液アートセレブのくも膜下腔注入治療を受け、それでも頭痛は残存しているのであり、原告の頭痛その他の症状が、ブラッドパッチにより顕著に改善したとは認められない等から、本件事故により脳脊髄液が漏出したと認めることはできないとして、脳脊髄液減少症を否認しました。

 最近の傾向ですが、脳脊髄液減少症に加えて、胸郭出口症候群とか、高次脳機能障害について主張される被害者が増えているのではないかと思われます。

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2016年8月12日 (金)

【脳脊髄液漏出症】 駐車場内で停止中に後退車両に衝突された38歳女子主張の脳脊髄液減少症及び胸郭出口症候群の発症を否認し、後遺障害の残存も認められないと否認した事例 大阪地裁平成28年1月28日判決

 自保ジャーナルNo1971号で紹介された大阪地裁平成28年1月28日判決です。

 裁判所は、原告の脳脊髄液減少症及び胸郭出口症候群の発症を否認し、後遺障害の残存も認められないと否認しました。

 以下、脳脊髄液減少症を否認した理由を中心に判決要旨を紹介いたします。

 ① 原告の起立性頭痛は、事故から1年近く経過した時期は格別、本件事故から間もない時期に起立性頭痛の症状が原告に出現していたことをうかがわせる記載は見当たらない、原告は本件事故から間もない時期に複数の医療機関を受診しているところ、各医療機関の診療録上、原告の主訴として記載されているのは頸部痛、右手指や右足の痛み等が中心であって、本件事故直後から起立性頭痛を訴えていたという事実は認められないとして、起立性頭痛を否認しました。

② 脳脊髄液減少症の発症については、

 RI脳槽シンチグラフィーでのRIの膀胱内早期集積の所見があるからといって、直ちに脳脊髄液減少症の発症が客観的に裏付けられるとはいいがたく、原告につき、RI注入後1時間経過して膀胱内にRIの集積が認められたことをもって脳脊髄液減少症を発症したと認めるには足りないとし、

 MRミエログラフィーにおいては、MRミエログラフィーの画像上、髄液漏れがあったことを裏付ける客観的な所見があると認めることは困難であると髄液もれを否認し、

 ブラッドパッチの効果では、原告は2回にわたりJ病院でブラッドパッチを受けているところ、J病院の診療録上、1回目の後はパッチ後痛み強くなった、2回目の後はパッチ後左手指のしびれ・背部痛ありと記載されている。そして、その後も、原告が、頭痛、頸部痛、吐き気、めまい、しびれ、耳鳴り、複視等の症状を訴え、複数の医療機関に通院を継続していたことをあわせ考慮すると、原告につき、ブラットパッチが奏功したと評価することは困難である

 として、原告が本件事故により脳脊髄液減少症を発症したとは認められないと、脳脊髄液減少症の発症を否認しました。

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               (千里浜なぎさハイウェイ)

2016年7月 5日 (火)

【脳脊髄液漏出症】 東京地裁平成27年6月9日判決(消極)

 交通事故民事裁判例集第48巻第3号(ぎょうせい)で紹介された東京地裁平成27年6月9日付判決(合議)です。

 裁判所は、消極的に判断しました。

 原告が事故により脳脊髄液循環不全を負ったか否かにつき、本件脳槽シンチにより認められるのは、片側極限性RI異常集積ではなく非対称性RI異常集積であり、厚労省研究班による脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準によると本件脳槽シンチによって脳脊髄液循環不全が認められるともいえず、起立性頭痛も発症していないと認められ、ブラッドパッチ治療も奏功しえいないとして、これを否定されました。

 起立性頭痛の存在とブラッドパッチ治療での効果が重要視されています。

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 脳脊髄液漏出症については、残念ながら、消極的な裁判例が続いております。

2016年6月29日 (水)

【脳脊髄液漏出症】 意識障害及び画像所見等なく13歳女子の高次脳機能障害を否認、脳脊髄液減少症も起立性頭痛及びブラッドパッチの改善認められないと否認 札幌地裁平成28年3月25日判決

 自保ジャーナルNo1968号で紹介された札幌地裁平成28年3月25日判決です。

 道路を横断中、被告乗用車に衝突され、「脳脊髄液減少症」に罹患し、9級「高次脳機能障害」等の併合8級後遺障害を残したとする13歳女子原告の事案です。

 裁判所は、高次脳機能障害について、原告には、本件事故後、意識障害並びに脳のCT及びMRI画像における異常所見が認められず、原告の物忘れの症状がいつ生じたのか明確でなく、L医師の診断の根拠となるSPECT検査が、医学的に確立された診断法であるか疑問がある上、原告がうつ症候群を併存した状態で実施されたものであること、原告の知能検査の成績が平成23年よりも平成26年に悪化していることなどを総合すると、

 原告が、本件事故により、高次脳機能障害を負ったとは認めることができないと否認しました。

 また、脳脊髄液減少症については、原告には、本件事故後の起立性頭痛又は本件事故と時間的に関連して始まった頭痛が認めらえず、画像上も、厚生労働省研究班「脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準」に該当するとまではいえないし、ブラッドパッチ後に処方薬が増えていることに照らし、ブラッドパッチによる症状改善があったことを認めることもできないとして、脳脊髄液減少症の罹患を否認しました。

 脳脊髄液減少症ガイドライン2007については、診断基準としては、消極的な判断を示しております。

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2016年6月28日 (火)

【脳脊髄液漏出症】  「脳脊髄液減少症の法的意義」を読んで。 続

 昨日の続きです。

 「交通事故診療と損害賠償実務の交錯 」の羽成論文についての概要の続きです。

 ICHD-Ⅲβ基準の内容を紹介します。

 特発性頭蓋内圧低下性頭痛

 (解説)

 特発性の低髄液(CSF)圧による起立性頭痛。通常は、項部硬直や主観的な聴覚症状を伴っている。髄液圧の正常化に伴い寛解する。

 診断基準(下記AないしDの条件を充たすことにより特発性頭蓋内圧低下性頭痛と診断)

 A 基準Cを満たす全ての頭痛

 B 低髄液圧(60㎜水柱未満)かつ/又は画像で髄液漏の証拠

 C 低髄液圧又は髄液漏と時間的に関連して始まった頭痛、又は、頭痛によりそれ(低髄液圧又は髄液漏)が発見された

 D その他の新基準の診断で、より適切に説明されない

 なお、篠永先生などが作成された脳脊髄液減少症ガイドラインに対しては、裁判例から次のような批判がされています。

 第1に、髄液漏出の診断基準として、「早期膀胱内RI集積」につき、何ら科学的根拠はないとの指摘があること、RI脳槽シンチグラフィー検査の画像単独では髄液漏出を確定的に診断することはできないとの指摘がなされていることなどをあげ、RI脳槽シンチグラフィー検査の結果のみによって髄液漏出を認めるのは相当でないとする東京地裁平成23年3月3日判決や、第2に、この基準については、専門家の間から、多様な症状を含むがゆえに不定愁訴を訴えるほとんどの人が該当する基準となっていることや、診断手法等につき、否定的な見解や疑問が示されているとして批判した東京地裁平成24年2月7日判決が紹介されています。

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 最後に、厳しい意見が付されています。

 「篠永教授らのグループが、事故ないし事件後に多彩な症状に苦しむ被害者に、脳脊髄液減少症の病名をつけ、救済しようとする努力は認めるものの、医学上の定説に反するような新説により、民事損害賠償はもとより、刑事、少年事件の犯罪の成立ないし量刑に重大な影響を与えるのみならず、裁判自体の長期化による当事者の負担増はもはや看過出来ない状況となっております。」

 「ガイドラインによる診断を中止し、厚労省基準ないしICHD-Ⅲβ版等の最新の診断基準によって被害者救済を図るべきである。」

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 医学的にも法律学的にも難しい問題ですね。

2016年6月27日 (月)

【脳脊髄液漏出症】  「脳脊髄液減少症の法的意義」を読んで。

 平成28年6月1日に、創耕舎から、「交通事故診療と損害賠償実務の交錯」 が発行されていましたので、日弁連会館の地下の本屋さんで購入しました。とてもわかりやすい良書だと思います。

 弁護士の羽成守先生が、脳脊髄液減少症についてわかりやすい論文を書かれておられましたので、その概要を紹介いたします。

 むち打ち症の難治性患者については、その原因を心因性に求められたり、詐病とまで言われてきましたが、平成13年に、医師の篠永正道先生が、交通事故後の難治性の多彩な症状が脳脊髄液の漏れにより、髄液圧が低下することによって生じることを発表し、ついに、平成17年2月に、軽微な外傷でも低髄液圧症候群が発症したことを認める福岡地裁行橋支部判決が出たことから、マスコミが大きく取り上げられることになりました。

 平成22年からは、脳脊髄液減少症の検査が健康保険適用となり、現在では、正式な病名として認知されました。

 問題は、その診断基準です。

 国際頭痛分類の基準

 脳脊髄液減少症ガイドライン基準

 日本神経外傷学会基準

 厚労省中間報告基準

 がありますが、脳脊髄液減少症ガイドライン基準に準拠する裁判例は少なく、多くの裁判例は、厚労省や国際頭痛分類等の基準によって、判断されることが主流となっております。

 「平成24年4月に厚労省研究班の中間報告基準が発表されて以降は、高裁で脳脊髄液減少症、低髄液圧症候群を認めたものはない。さらに、平成25年7月にICHDーⅢβ版が公表されて以降は、地裁レベルでも肯定するものはなく、却って、同基準を採用して否定する判決が続出している。」と説明されています(同書P174)。

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 立証責任については、「これを訴訟法的に考えれば、脊髄への直接かつ強度な外力、硬膜を損傷させるような外力が加わっていない事故態様によって低髄液圧症候群が発症したと主張する者(原告)は、当該事故によって、厚労省基準ないしICHDーⅢβ基準に該当する損傷を受けた旨の立証が求められることになろう。ガイドラインに適合するだけでは、立証が不十分という判断がなされる」と説明されています。